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CHAPTER 2 中世 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 6

中世|第2章 ガリアからフランク王国へ — 枠の成立

この章の狙い

要点: 「フランス」は最初から存在していたのではない。ローマの属州(ぞくしゅう)だった土地に、ゲルマン系の王国ができ、それが843年に3つに割れ、西の部分がのちのフランスになった。

この時期に決まったものが3つある。キリスト教が国の宗教になったこと、王が教会によって聖別(せいべつ)されるようになったこと、そして話し言葉がラテン語から離れ始めたことである。

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年表

出来事
前58〜前51年 カエサルのガリア征服。前52年にアレシアで決着
1〜4世紀 ローマ領ガリア。都市・道路・ラテン語が広まる
4世紀 ローマ帝国でキリスト教が公認され、のち国教になる
5世紀 ゲルマン諸族の移動。西ローマ帝国が滅びる(476年)
481年ごろ クロヴィスがフランク王国の王になる
496年ごろ クロヴィスの改宗。カトリックを選ぶ
732年 トゥール・ポワティエ間の戦い。カール・マルテルがイスラム勢力を退ける
751年 ピピンが王位に就く。カロリング朝が始まる
800年 カール大帝がローマで戴冠(たいかん)
842年 ストラスブールの誓い。古フランス語の最古の記録の一つ
843年 ヴェルダン条約。帝国が3つに分割される
9〜10世紀 ノルマン人の侵入。911年にノルマンディー公領が生まれる
987年 ユーグ・カペーが王に選ばれる。カペー朝の開始

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ローマ領ガリア

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  • 📘 ガリア:現在のフランス・ベルギー・スイス西部などにあたる地域の、ローマ時代の呼び名。住んでいたのはケルト系の諸部族だった。

カエサルが8年ほどで征服した。その記録である『ガリア戦記』が、この地域についての最初のまとまった記述になっている。

ローマが残したもの

  • ラテン語 — 支配と行政の言語。やがて話し言葉のラテン語が変化してフランス語になる。
  • 都市 — リヨン、ナルボンヌ、パリなど。街道でつながれた
  • 法と行政の枠組み — のちの王権もこれを受け継ぐ。
  • キリスト教 — 4世紀以降に広まり、司教(しきょう)が都市の有力者になる。
  • 📘 俗ラテン語:文章語ではない、日常で話されていたラテン語のこと。地域ごとに変化し、フランス語・イタリア語・スペイン語などに分かれていった。

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フランク王国とクロヴィスの改宗

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

5世紀、ゲルマン系の諸族が西ローマ領内に入る。そのうちフランク族が北部を押さえ、クロヴィスが諸部族をまとめた。

クロヴィスの改宗が決定的だった理由

  • 当時のゲルマン諸王の多くは、アリウス派というキリスト教の一派を信じていた。ローマ教会からは異端(いたん)とされていた。
  • クロヴィスはローマ教会と同じカトリックを選んだ。
  • その結果、ガリアの司教たちと、ローマに残っていた支配層の支持を得られた。
  • 王権と教会が結びつくという形が、ここから千年以上続く。
  • 📘 メロヴィング朝:クロヴィスの一族による王朝(5〜8世紀)。王国は相続のたびに分割され、王権は弱まっていった。

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カロリング朝と帝国の分割

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

8世紀、実権は宮宰(きゅうさい)という役職の一族に移る。カール・マルテルが732年にイスラム勢力の北への進出を止め、その子ピピンが751年に王位そのものを取った。

751年に起きたことの意味

  • 教皇の承認を得て王位を交替した。力ではなく、宗教的な正当化を伴っている。
  • 聖別の儀式が行われた。王は油を注がれることで、単なる支配者とは違う存在になる。
  • この形式は、のちのフランス国王の戴冠式に受け継がれる。
  • 📘 カール大帝(742ごろ-814):カロリング朝の王。800年にローマで皇帝として戴冠した。西ヨーロッパの広い範囲を一時的に統一し、学問と写本の復興を進めた。

帝国は長続きしなかった。孫の代で争いが起き、843年のヴェルダン条約で3つに分割される。

分割 のちの姿
西フランク のちのフランス
中フランク イタリア北部からロレーヌにかけての帯状の地域。のちに分解する
東フランク のちのドイツ

⚠️ ヴェルダン条約で「フランスができた」と単純に言わない

  • 分割されたのは支配権であって、国民でも国境でもない。
  • 「フランス」という名と枠が実体を持つのは、もっと後の時代にあたる。
  • ただし、西と東が別々の歴史をたどり始める分岐点としては重要である。

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言語が分かれ始める

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

842年のストラスブールの誓いは、カール大帝の孫たちが同盟を結んだときの文書である。互いの兵に分かるよう、一方は古フランス語、もう一方は古高ドイツ語で読み上げられた。

この記録が重要な理由

  • 話し言葉がもうラテン語ではなくなっていたことの証拠になる。
  • 古フランス語で書かれた最古級の記録にあたる。
  • 言語の分化と、政治の分割が同じ時期に起きている。

813年には、教会の会議で「説教は俗語で行うように」と決められている。ラテン語では民衆に通じなくなっていたということである。

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社会の条件

この時期のガリア・フランクに生きた人は、次の条件の下にいた。

条件 内容
生活 ほぼ全員が農業。都市は縮小し、人口も減った
支配 王の力は弱く、地方の有力者が実際に土地を支配していた
宗教 カトリックが唯一の枠組み。修道院が学問と写本を担う
文字 読み書きができるのは聖職者がほとんど。書かれるのはラテン語
安全 9世紀以降、ノルマン人の侵入が繰り返される

書かれたものが少ないのは、書ける人が少なかったからである。この時代の文学として残っているものは、ほとんどがラテン語で、教会に関わるものにあたる。

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文学とのつながり

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

この時代が作品に現れるところ

  • 『ロランの歌』の背景は、カール大帝のスペイン遠征(778年)にある。ただし作品が書かれるのは11〜12世紀で、300年以上あとになる。
  • つまり『ロランの歌』は、歴史の記録ではなく、後の時代がつくった過去の像にあたる。
  • 異教徒との戦いという枠組みは、作品が書かれた時期の十字軍の意識を反映している(第3章)。
  • フランス語で書かれた文学が現れるのは、話し言葉がラテン語から離れたあとである。この章の言語の話が、そのまま文学の前提になる。

⚠️ この時代で混同しやすい形

  • クロヴィスとカール大帝を同じ王朝と考える。クロヴィスはメロヴィング朝、カール大帝はカロリング朝にあたる。
  • 800年の戴冠を「フランス王」の戴冠と考える。カール大帝は皇帝であり、支配範囲はのちのフランスより広い。
  • 『ロランの歌』を778年の記録と考える。成立は11〜12世紀である。
  • ガリア=フランスと考える。ガリアはローマ時代の地域名にあたる。

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残ったものを見る

この時代のものは、いまも目に見える形で残っている。作品を読むときの手がかりになる。

残っているもの 由来
地名 ローマ時代の都市名が変化したもの、ゲルマン系の人名に由来するもの
ローマの街道の一部が、後の街道と重なっている
教会の建物 初期の教会の跡地に、後の時代の聖堂が建てられた例が多い
語彙 フランス語の基本語彙の大半はラテン語由来。ゲルマン系の語も一定数入っている

言語に残った層

  • ケルト系 — ごく少数。地名と一部の語に残る。
  • ラテン語圧倒的多数。話し言葉のラテン語が変化してフランス語になった。
  • ゲルマン系 — 戦争・色・身体に関わる語などに入っている。
  • この3つの層が重なっているのが、フランス語の語彙の基本構造にあたる。詳しくはフランス語の教材の語源の章で扱う。

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「フランス」という呼び名

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⚠️ 名前と実体を分けて考える

  • 「フランク人の土地」を意味する語が、地域の名として使われるようになった。
  • 西フランク王国の王が「フランス王」と呼ばれるようになるのは、もっと後にあたる。
  • カペー朝の初期でも、支配できた範囲はごく狭い(第3章)。
  • したがって、この時代について「フランスが〜した」と書くときは注意が要る。「西フランク王国が」「王が」と書き分けるほうが正確である。

第2章の通過チェック

  • カエサルのガリア征服の時期と、その記録の名を言える
  • ローマがガリアに残したものを4つ言える
  • クロヴィスの改宗がなぜ決定的だったかを説明できる
  • メロヴィング朝とカロリング朝の交替が751年に起きたことと、その正当化の形を言える
  • 843年のヴェルダン条約の3分割と、そのうちどれがフランスになるかを言える
  • ストラスブールの誓いが言語史上なぜ重要かを言える
  • 『ロランの歌』の題材と成立時期のずれを説明できる

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次章へ

次章はカペー朝と封建社会である。987年から1328年まで、弱い王が少しずつ力をつけていく340年間を扱う。

この時期に、三つの身分・封建的な主従関係・都市の成立・大学の誕生という、中世社会の骨格ができあがる。そして十字軍が始まり、『ロランの歌』や騎士道物語が書かれるのもこの時代にあたる。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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