🧭全体地図📘フランス史
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CHAPTER 1 導入 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 5

導入|第1章 全体地図 — 文学のために歴史をどう使うか

この章の狙い

要点: 文学のための歴史は、年号を覚えるためではなく、「その時代に何が可能で、何が不可能だったか」を知るためにある。

『赤と黒』の主人公が聖職者を目指すのはなぜか。『レ・ミゼラブル』の暴動はどの事件か。『異邦人』でアルジェリアが舞台なのはなぜか。どれも歴史を知らないと、筋は追えても意味が取れない。

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歴史を「背景」として使うということ

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

  • 📘 背景:作品の外側にあって、作品の中の出来事や人物の行動を可能にしたり、制限したりしている条件のこと。政治体制・身分制度・宗教・戦争・経済・法律などが含まれる。

背景を使うときの3つの水準

  • 1. 事実の確認 — 作品に出てくる事件が実際に何年の何かを確かめる。最低限これは必要。
  • 2. 条件の把握 — 登場人物が置かれていた制度上の条件を知る。「なぜその選択肢しかなかったのか」が分かる。
  • 3. 論の根拠 — 作品の記述と、当時の状況とのずれを指摘する。ここまで来ると分析になる。

⚠️ 歴史を持ち出すときにやりがちな失敗

  • 作品を歴史の資料として読む。小説は記録ではない。書かれなかったこと、歪められたことにこそ意味がある。
  • 時代の空気で説明を済ませる。「当時は〜だった」で終わると、作品の記述を見ていないことになる。
  • 年号を並べて背景説明とする。レポートの序論が年表になり、本論に入る前に紙幅(しふく)が尽きる。

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11の時代区分

この教材と、文学史・思想・文化の各領域は、同じ区分を使う。どの領域を開いても同じ名前で同じ年に区切られているので、行き来ができる。

区分 この教材の章
中世 〜1500 第2〜4章
16世紀・ルネサンス 1500〜1600 第5章
17世紀・古典主義 1600〜1715 第6・7章
18世紀・啓蒙 1715〜1789 第8章
革命とナポレオン 1789〜1815 第9・10章
19世紀前半・ロマン主義 1815〜1848 第11章
19世紀後半・写実主義と自然主義 1848〜1885 第12・13章
世紀末・象徴主義 1885〜1914 第14章
両大戦間 1914〜1945 第16・17章
戦後 1945〜1968 第18章
現代 1968〜 第19・20章

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第15章(植民地帝国)だけは、複数の区分にまたがる。19世紀から20世紀まで続く事柄なので、まとめて1章にしてある。

共通規約の11区分と、この教材の章 中世 〜1500 第2〜4章 16世紀・ルネサンス 1500〜1600 第5章 17世紀・古典主義 1600〜1715 第6・7章 18世紀・啓蒙 1715〜1789 第8章 革命とナポレオン 1789〜1815 第9・10章 19世紀前半 1815〜1848 第11章 19世紀後半 1848〜1885 第12・13章 世紀末・象徴主義 1885〜1914 第14章 両大戦間 1914〜1945 第16・17章 戦後 1945〜1968 第18章 現代 1968〜 第19・20章 植民地帝国 区分をまたぐ 第15章 文学史・思想・文化の各領域も、同じ名前で同じ年に区切ってある。 だから領域をまたいで、同じ時代の章を並べて読める。 第15章だけは複数の区分にまたがるので、まとめて1章にした。
11の時代区分と章の対応

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政体が何度も変わる国

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

フランス史でいちばん混乱しやすいのが、政体の変わり方である。1789年から1958年までのあいだに、王政・共和政・帝政が入れ替わり立ち替わり現れる。

政体 元首
絶対王政 〜1792 国王
第一共和政 1792〜1804 (国民公会・総裁政府・統領政府)
第一帝政 1804〜1814/15 ナポレオン
復古王政 1814/15〜1830 ルイ18世・シャルル10世
七月王政 1830〜1848 ルイ・フィリップ
第二共和政 1848〜1852 大統領
第二帝政 1852〜1870 ナポレオン3世
第三共和政 1870〜1940 大統領
(ヴィシー政府) 1940〜1944 ペタン
第四共和政 1946〜1958 大統領
第五共和政 1958〜 大統領

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数字の付き方を覚える

  • 共和政は5回、帝政は2回、王政は復古と七月の2回。
  • 「第◯共和政」の番号は、途切れるたびに1つ増える。間に帝政や王政が挟まるからである。
  • 第二帝政の皇帝はナポレオン3世。ナポレオン2世は即位していない(第10章)。
  • 1940〜1944年のヴィシー政府は「第◯共和政」に数えない。共和政を停止した体制だからである。
共和政は5回、帝政は2回、王政は2回 濃い枠が共和政 絶対王政 〜1792 第一共和政 1792〜1804 第一帝政 1804〜1815 復古王政 1815〜1830 七月王政 1830〜1848 第二共和政 1848〜1852 第二帝政 1852〜1870 第三共和政 1870〜1940 ヴィシー 1940〜1944 第四共和政 1946〜1958 第五共和政 1958〜 番号は、途切れるたびに1つ増える。間に帝政や王政が挟まるため。 ヴィシーは共和政を停止した体制なので、番号に数えない。
1789年からの政体の移り変わり

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作品の刊行年から歴史を引く

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

実際の使い方は、作品の年から入ることが多い。

作品 刊行年 そのとき何があったか
『赤と黒』 1830 七月革命の年。作中は復古王政 第11章
『ゴリオ爺さん』 1835 七月王政の初め。作中は1819年 第11章
『ボヴァリー夫人』 1857 第二帝政。同年に裁判 第12章
『レ・ミゼラブル』 1862 第二帝政。作中は1815〜1832年 第11章
『脂肪の塊』 1880 第三共和政。作中は普仏戦争 第13章
『失われた時を求めて』 1913〜1927 ドレフュス事件と第一次大戦を挟む 第14・16章
『異邦人』 1942 ドイツ占領下。舞台は植民地アルジェリア 第15・17章

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⚠️ 刊行年と作中の年は違う

  • 『レ・ミゼラブル』は1862年の作品だが、描かれるのは1815年から1832年まで。
  • どちらの時代を論じるのかを決めてから書く。混ぜると論が崩れる。
  • 両方が関わることもある。「1862年の読者が、1832年の暴動をどう読んだか」は、それ自体が問いになる。

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史料と歴史書

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

  • 📘 史料:歴史を知るための元になる資料のこと。公文書・法令・書簡・新聞・回想録・統計など。
  • 📘 通史(つうし):ある地域や国の歴史を、始まりから現在まで通して書いたもの。まず1冊読み通すと全体の骨格ができる。

学部で使う順序

  • 1. 通史を1冊。細部は忘れてよい。流れと順序を頭に入れる。
  • 2. 事典で個別の事件を確かめる。年・場所・関係者。
  • 3. その時代を専門に扱った研究書。卒論で背景を論じるならここまで。
  • 4. 史料そのもの。法令や新聞は電子化されているものが多い(文学研究の方法の領域を参照)。

歴史の記述にも解釈の幅がある。「フランス革命はなぜ起きたか」の説明は、研究者によって重点が違う。1つの説明を唯一の真実として引かない。

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この教材の各章の形

第2章から第20章までは、同じ順序で並んでいる。必要な節だけを開けばよい。

何が書いてあるか
この章の狙い その時代の核心を一文で
年表 年と出来事の一覧
(2〜4の節) 何が起きたか、なぜ起きたか
社会の条件 その時代に生きた人が何に縛られていたか
文学とのつながり その時代の作品を読むときに要る知識
混同しやすい形 間違えやすい点
通過チェック 次に進んでよいかの確認

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レポートで背景を書く型

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

背景の記述は、長くする必要がない。必要なのは問いに関わる条件だけである。

3文で書く型

  • 1文目:時期を特定する。「本稿が扱う場面は、七月王政下の1830年代のパリに設定されている。」
  • 2文目:問いに関わる条件を1つ挙げる。「この時期、選挙権は高額納税者に限られており、有権者は人口の1%に満たなかった。」
  • 3文目:作品の記述と結ぶ。「主人公が政治的な上昇を考えないのは、この条件と対応している。」

⚠️ やってはいけない書き方

  • 年表をそのまま貼る。「1830年七月革命、1848年二月革命、1852年第二帝政……」は背景の記述ではない。
  • 問いと関係のない事実を並べる。その章の内容を全部書こうとしない。
  • 「当時は〜な時代だった」で済ませる。どの制度が、誰の何を制限していたかを書く。

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歴史用語を確かめる手順

⊳ この節の問題を解く(1問)

この教材の記述だけで足りないときは、次の順で確かめる。

使うもの
1 通史の索引で、その語が出てくる箇所を引く
2 歴史事典の項目。年・関係者・経過が確定する
3 その時代を扱う研究書。解釈の幅が分かる
4 史料(法令・新聞・統計)。卒論で背景を論じるならここまで

注意すること

  • 日本語の訳語が複数あることが多い。政体名の「政」と「制」、人名の中黒(なかぐろ)の有無など。1つに決めて統一する。
  • 年号は必ず2か所以上で確認する。記憶で書かない。
  • 歴史の記述にも解釈の幅がある。1つの説明を唯一の真実として引かない。

第1章の通過チェック

  • 文学のために歴史を使う3つの水準を言える
  • 歴史を持ち出すときの3つの失敗を言える
  • 共和政が5回、帝政が2回であることを言える
  • ヴィシー政府が「第◯共和政」に数えられない理由を言える
  • 刊行年と作中の年を区別する必要を、例を挙げて言える
  • 学部で歴史資料を使う順序を4段階で言える

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次章へ

次章はガリアからフランク王国へである。「フランス」という枠がどうやってできたのかを扱う。

ローマに征服された属州(ぞくしゅう)から、ゲルマン系の王国を経て、843年の分割で西の部分が独立する。そこがのちのフランスになる。言語も、宗教も、王権の形も、この時期に決まった。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

この章の問題を解く ▶
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