文の骨組み|第8章 前置詞と縮約、数・時刻・日付と非人称構文
この章の狙い
要点: 前置詞そのものは短い語だが、定冠詞と結びつくと形が変わる(縮約)。この縮約を知らないと、辞書を引いても出てこない語に見える。あわせて、日常でいちばん使う数・時刻・日付と、天候を言うための非人称構文(ひにんしょうこうぶん)をここでまとめる。
この章の内容は、文法の理屈というより手持ちの材料にあたる。読んで納得するだけでは足りず、口から出るまで反復する部分である。
縮約 — à と de が定冠詞と合わさる
à と de は、定冠詞 le・les と合わさると1語になる。
| もとの形 | 縮約 | 例 |
|---|---|---|
| à + le | au | au cinéma |
| à + les | aux | aux étudiants |
| de + le | du | du professeur |
| de + les | des | des étudiants |
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la と l' は縮約しない。à la maison、de l'école のままである。
⚠️ 縮約でやりがちな間違い
- à le、de le と書いてしまう。この形は存在しない。
- du・des を見て、部分冠詞・不定冠詞だと決めつける。de + 定冠詞の縮約である場合がある。je parle du livre は「その本について話す」で、部分冠詞ではない。
- 縮約形のまま辞書を引く。au は à、du は de に戻して考える。
à と de の基本用法
どちらも意味の幅が広い。「どこへ・どこで」が à、「どこから・何の」が de を軸にすると整理しやすい。
| 前置詞 | 用法 | 例 |
|---|---|---|
| à | 場所(〜へ、〜で) | Je vais à Paris. |
| 時刻 | à huit heures | |
| 所属・用途 | une tasse à café(コーヒー用のカップ) | |
| de | 起点(〜から) | Je viens de Paris. |
| 所有・所属 | le livre de Paul | |
| 材料・内容 | une tasse de café(コーヒー1杯) |
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une tasse à café と une tasse de café の違いは、この2語の性格をよく表している。à は用途、de は中身である。
国名・都市名に付ける前置詞
国名は性と語頭の文字で前置詞が決まる。都市名は常に à である。
| 種類 | 「〜に・〜で」 | 「〜から」 | 例 |
|---|---|---|---|
| 女性の国名 | en | de | en France、de France |
| 母音で始まる国名 | en | d' | en Iran、d'Iran |
| 男性の国名 | au | du | au Japon、du Japon |
| 複数の国名 | aux | des | aux États-Unis、des États-Unis |
| 都市名 | à | de | à Paris、de Paris |
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-e で終わる国名はたいてい女性である(la France、l'Italie、la Chine)。例外は le Mexique。
場所と時の前置詞
場所を表すものは、位置関係をそのまま覚える。
| 前置詞 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| dans | 〜の中に | dans la boîte |
| sur / sous | 〜の上に/下に | sur la table / sous la table |
| devant / derrière | 〜の前に/後ろに | devant la gare |
| entre | (2つの)間に | entre Paris et Lyon |
| chez | 〜の家に、〜のところに | chez moi、chez le médecin |
| près de / loin de | 〜の近くに/遠くに | près de l'université |
| à côté de | 〜のとなりに | à côté de la fenêtre |
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- 📘 chez:人を表す語の前に置いて「〜の家で」「〜のところで」を表す前置詞。建物ではなく人に付くのが特徴で、chez Molière(モリエールの作品では)のようにも使う。
時を表すものは、似た意味の4語の区別がそのまま問題になる。
| 前置詞 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| depuis | 〜から(今も続いている) | J'apprends le français depuis un an.(1年前から学んでいる) |
| pendant | 〜の間(続いた期間全体) | J'ai étudié pendant deux heures.(2時間勉強した) |
| il y a | 〜前に(過去の一点) | Je suis arrivé il y a deux jours.(2日前に着いた) |
| dans | 〜後に(未来の一点) | Je pars dans deux jours.(2日後に出発する) |
| en | 〜で(かかった時間) | J'ai fini en deux heures.(2時間で終えた) |
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⚡ 4つの区別のしかた
- depuis は起点。いまも続いているので、動詞は現在形になる。
- pendant は幅。終わった期間にも、これからの期間にも使える。
- il y a は過去の一点、dans は未来の一点。日本語ではどちらも「〜後」と訳せてしまう。
- pendant と en の違いは、かかった時間を「幅」で見るか「所要」で見るか。
数 — 基数
0から20までは1つずつ覚える。21以降は組み合わせで作れる。
| 数 | 綴り | 数 | 綴り |
|---|---|---|---|
| 1 | un | 11 | onze |
| 2 | deux | 12 | douze |
| 3 | trois | 13 | treize |
| 4 | quatre | 14 | quatorze |
| 5 | cinq | 15 | quinze |
| 6 | six | 16 | seize |
| 7 | sept | 17 | dix-sept |
| 8 | huit | 18 | dix-huit |
| 9 | neuf | 19 | dix-neuf |
| 10 | dix | 20 | vingt |
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16から17で作り方が変わる。seize までが1語、dix-sept からは足し算の形になる。
70以上が、フランス語で有名な難所である。
⚡ 70・80・90 の作り方
- 70 = soixante-dix(60 + 10) 71 = soixante et onze 79 = soixante-dix-neuf
- 80 = quatre-vingts(4 × 20) 81 = quatre-vingt-un
- 90 = quatre-vingt-dix(4 × 20 + 10) 91 = quatre-vingt-onze 99 = quatre-vingt-dix-neuf
- ベルギーやスイスでは septante(70)、nonante(90)を使う。フランスでは使わない。
綴りの決まりが2つある。
| 決まり | 例 |
|---|---|
| 21・31・41・51・61・71 は et で結ぶ | vingt et un、soixante et onze |
| quatre-vingts の s は、後ろに数が続くと消える | quatre-vingts / quatre-vingt-deux |
| cent の s も同じ | deux cents / deux cent un |
| mille は変化しない | deux mille |
序数
基数(きすう)に -ième を付けるのが原則である。
| 基数 | 序数(じょすう) | 注意 |
|---|---|---|
| un | premier / première | -ième を使わない |
| deux | deuxième(second / seconde) | second は2つしかないときに使う |
| trois | troisième | |
| quatre | quatrième | 語末の e を落とす |
| cinq | cinquième | u を入れる |
| neuf | neuvième | f が v になる |
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時刻・曜日・日付
時刻は Il est … heures. で言う。この il は誰も指さない(後述の非人称構文)。
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| Il est une heure. | 1時です |
| Il est deux heures et quart. | 2時15分です |
| Il est deux heures et demie. | 2時半です |
| Il est trois heures moins le quart. | 3時15分前です |
| Il est midi / minuit. | 正午/真夜中です |
時刻表や公式の場面では24時制を使う(quinze heures trente=15時30分)。その場合 et quart などは使わない。
曜日と月には冠詞を付けない。ただし定冠詞を付けると意味が変わる。
| 形 | 意味 |
|---|---|
| lundi | (今度の・この前の)月曜日に |
| le lundi | 毎週月曜日に |
日付は「le + 数 + 月」の順で、数は基数である。1日だけ例外で序数を使う。
| 例 | 意味 |
|---|---|
| le 14 juillet | 7月14日 |
| le premier mai | 5月1日 |
月の名前は小文字で書く(janvier、février、mars…)。曜日も同じく小文字である。
非人称構文
- 📘 非人称構文:主語の il が具体的な何も指していない構文。天候・時刻・必要性などを表す。
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| Il fait beau / mauvais. | 天気がよい/悪い |
| Il fait chaud / froid. | 暑い/寒い |
| Il pleut. / Il neige. | 雨が降る/雪が降る |
| Il y a du vent / du brouillard. | 風がある/霧が出ている |
| Il est huit heures. | 8時だ |
| Il faut + 不定形(ふていけい) | 〜しなければならない |
| Il s'agit de + 名詞 | 〜が問題である、〜についてである |
il faut は主語を立てずに「〜する必要がある」を言う形で、非常によく使う。誰がするのかを言いたいときは、第9章の間接目的補語を使う。
⚠️ 天候と体感の取り違え
- Il fait froid. は「(気温が)寒い」。J'ai froid. は「(私が)寒く感じる」。
- 第4章の avoir の表現と対になっている。天気は非人称の il fait、人の感覚は avoir。
- Il est froid. は「それは冷たい」で、ものの性質を言う別の文になる。
il s'agit de は、論文や評論で頻出する形である。主語を変えられないので、「この本は〜についてである」を Ce livre s'agit de … とは言えない。Dans ce livre, il s'agit de … の形になる。第19章以降の学術的な文章で必ず出会う。
読む・聴く
この章の文法だけで書いた文を音にする。以下は本教材で作成した例文である。
| フランス語 | 意味 | 確認する点 |
|---|---|---|
| Je vais à l'université à neuf heures. | 私は9時に大学へ行く。 | à の2用法、縮約しない à l' |
| Il vient du Japon et habite en France. | 彼は日本出身でフランスに住んでいる。 | 国名の前置詞 |
| J'apprends le français depuis six mois. | 半年前からフランス語を学んでいる。 | depuis + 現在形 |
| Je pars dans trois jours. | 3日後に出発する。 | 未来の一点の dans |
| Il fait froid, mais je n'ai pas froid. | 寒いが、私は寒くない。 | 非人称の il fait と avoir |
| Le cours commence le premier octobre. | 授業は10月1日に始まる。 | 日付の序数、月は小文字 |
| Il faut commencer par le plus petit. | いちばん小さいことから始めなければならない。 | il faut + 不定形、最上級 |
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数は、音で言えることが読めることより先に必要になる。値段・時刻・ページ番号は、授業でも日常でも耳で受け取ることが多い。70から99は特に、聞いた瞬間に数として入るまで繰り返す。
⚡ 第8章の通過チェック
- 4つの縮約形と、縮約しない2つを言える
- une tasse à café と une tasse de café の違いを説明できる
- 国名に付く前置詞を、女性・男性・複数・都市で言い分けられる
- depuis / pendant / il y a / dans を使い分けられる
- 70・80・90 の作り方を言え、99 まで数えられる
- 曜日に定冠詞を付けたときの意味の変化を言える
- Il fait froid. と J'ai froid. の違いを説明できる
次章へ
ここまでで、名詞を使って文を組み立てる材料がそろった。次章からは、その名詞を代名詞に置き換える話に入る。
フランス語の代名詞は、動詞の前に置くという日本語とも英語とも違う語順を持つ。しかも2つ重なると順番が決まっている。第9章はその語順を身につける章になる。