考えを述べる|第15章 条件法と仮定文
この章の狙い
要点: 条件法(じょうけんほう)は、第13章の未来の語幹(ごかん)に、第12章の半過去の語尾を足すだけで作れる。新しく覚える形はほとんどない。重要なのはいつ使うかで、「もし〜なら」の帰結だけでなく、語調をやわらげる形として日常でいちばん多く使われる。
Je voudrais …(〜したいのですが)は条件法である。買い物でも授業でも最初に必要になる形が、この章の中心にある。
条件法現在の作り方
- 📘 条件法:現実そのものではないこととして述べるときの法。仮定の帰結、語調の緩和、伝聞などに使う。
⚡ 条件法現在の作り方
- 語幹は単純未来と同じ(不規則な語幹もそのまま)。
- 語尾は半過去と同じ -ais / -ais / -ait / -ions / -iez / -aient。
| 不定形(ふていけい) | 単純未来 | 条件法現在 |
|---|---|---|
| parler | je parlerai | je parlerais |
| être | je serai | je serais |
| avoir | j'aurai | j'aurais |
| aller | j'irai | j'irais |
| faire | je ferai | je ferais |
| pouvoir | je pourrai | je pourrais |
| vouloir | je voudrai | je voudrais |
| devoir | je devrai | je devrais |
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単純未来と条件法は、je の形で音が違う([paʁləʁe] と [paʁləʁɛ])。書くときは語尾の -ai と -ais を取り違えないようにする。
条件法過去
助動詞を条件法現在にして過去分詞(かこぶんし)を続ける。
| 型 | 例 |
|---|---|
| avoir の条件法現在 + 過去分詞 | j'aurais parlé |
| être の条件法現在 + 過去分詞 | je serais allé(e) |
助動詞の選択も過去分詞の一致も、第11章の規則がそのまま効く。
si の3つの型
仮定文は、si の中の時制で3種類に分かれる。帰結の時制はそれに応じて決まる。
| 型 | si のあと | 帰結 | 例 |
|---|---|---|---|
| 1. 現実にありうる | 現在形 | 単純未来 | Si j'ai le temps, je viendrai.(時間があれば行く) |
| 2. 現在の事実に反する | 半過去 | 条件法現在 | Si j'avais le temps, je viendrais.(時間があれば行くのだが) |
| 3. 過去の事実に反する | 大過去 | 条件法過去 | Si j'avais eu le temps, je serais venu.(時間があったら行ったのに) |
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⚡ si の中に未来形と条件法は入らない
- si のあとに来るのは 現在形・半過去・大過去 の3つだけ。
- ✕ Si j'aurai … / ✕ Si j'aurais …
- 第13章の「quand は未来形、si は現在形」と合わせて覚える。
型を混ぜることもできる。過去の条件が現在の結果につながる場合である。
| 例 | 意味 |
|---|---|
| Si j'avais commencé plus tôt, je serais déjà à un bon niveau. | もっと早く始めていたら、いまごろは良い水準にいるだろう |
si の中は大過去(過去の条件)、帰結は条件法現在(現在の結果)になっている。
条件法のその他の用法
仮定と関係なく使う場面のほうが、日常では多い。
| 用法 | 例 | 意味 |
|---|---|---|
| 語調をやわらげる | Je voudrais un café. | コーヒーをいただきたいのですが |
| Pourriez-vous répéter ? | 繰り返していただけますか | |
| 助言 | Tu devrais te reposer. | 休んだほうがいい |
| 伝聞・未確認の情報 | L'accident aurait fait dix blessés. | その事故で10人が負傷した模様だ |
| 後悔・非難(条件法過去) | J'aurais dû commencer plus tôt. | もっと早く始めるべきだった |
| Tu aurais pu me le dire. | 言ってくれてもよかったのに |
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⚡ 最初に使えるようにする3つ
- Je voudrais …(〜がほしいのですが) vouloir の直説法(ちょくせつほう) Je veux … は直接的すぎる。
- Pourriez-vous …?(〜していただけますか) 依頼の標準形。
- Tu devrais …(〜したほうがいい) 助言。
伝聞の用法は、報道記事で頻出する。「〜らしい」「〜という」に相当し、まだ確認されていない情報であることを示す。読解では、条件法が出てきたら「これは断定ではない」と読む。
条件法過去の後悔・非難は、devoir と pouvoir で作ることが多い。J'aurais dû(すべきだった)、Tu aurais pu(できたのに)は形ごと覚える。
si 以外の仮定表現
si を使わずに条件を示す形も多い。読解ではこちらのほうが見落としやすい。
| 形 | 例 | 意味 |
|---|---|---|
| à la place de | À ta place, je commencerais aujourd'hui. | きみの立場なら、今日始める |
| avec / sans | Sans toi, je n'aurais pas réussi. | きみがいなければ成功しなかった |
| ジェロンディフ | En travaillant un peu plus, tu réussirais. | もう少し努力すれば成功するのに |
| 命令法(めいれいほう) + et | Commence aujourd'hui et tu verras. | 今日始めてみろ、そうすれば分かる |
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ジェロンディフは第17章で扱う。条件法が出てきたら、その条件がどこに書いてあるかを探すという読み方をすると、これらの形に気づけるようになる。
⚠️ 条件法でやりがちな間違い
- si の中に条件法を入れる。si + 半過去が正しい。
- 単純未来と条件法を書き間違える。-ai と -ais の1文字違いである。
- 伝聞の条件法を「〜だろう」と推測に訳す。「〜という」「〜の模様だ」にあたる。
- Je veux … で依頼する。Je voudrais … にする。
読む・聴く
読み物 — Si j'avais plus de temps(もっと時間があれば)
si の3つの型のうち2つと、条件法のその他の用法が出る。
| フランス語 | 日本語 |
|---|---|
| Si j'avais plus de temps, je lirais deux romans par semaine. | もっと時間があれば、週に2冊小説を読むのだが。 |
| Mais je n'ai pas plus de temps. | だが、それ以上の時間はない。 |
| Alors je lis dix pages par jour. | だから1日10ページ読む。 |
| Si j'avais commencé plus tôt, je serais déjà à un bon niveau. | もっと早く始めていたら、いまごろは良い水準にいるだろう。 |
| Je n'y peux rien : je ne peux pas changer le passé. | どうにもならない。過去は変えられない。 |
| À ta place, je commencerais aujourd'hui. | きみの立場なら、私は今日始める。 |
| Demain, tu diras la même chose. | 明日も同じことを言うだろうから。 |
語注
| 語 | 品詞・意味 |
|---|---|
| par semaine | 週に |
| plus tôt | より早く |
| niveau | 男性名詞。水準、レベル |
| n'y pouvoir rien | どうすることもできない(決まった言い方) |
| passé | 男性名詞。過去 |
| à ta place | きみの立場なら |
| la même chose | 同じこと |
読みどころ
- Si j'avais …, je lirais … は型2(現在の事実に反する)。半過去 + 条件法現在。
- Si j'avais commencé …, je serais … は混合型。条件は過去(大過去)、結果は現在(条件法現在)。
- À ta place, je commencerais … は si を使わない仮定。条件法があるので、どこかに条件があると分かる。
- tu diras は単純未来。条件法ではないので、これは断定である。前の文の条件法と並べると、断定かどうかの違いが見える。
大学のフランス語で
条件法は、論文で断定を避けるときに使われる。
| フランス語 | 日本語 |
|---|---|
| On pourrait dire que ce roman annonce le surréalisme. | この小説はシュルレアリスムを先取りしていると言えるだろう。 |
| Il serait excessif d'y voir une critique politique. | そこに政治的批判を見るのは行き過ぎだろう。 |
| Selon certains critiques, l'auteur aurait écrit ce texte en prison. | 一部の批評家によれば、作者はこのテクストを獄中で書いたという。 |
1つ目と2つ目は主張の強さを調整する条件法、3つ目は伝聞の条件法である。
論文では、断定できることと推測にとどまることを書き分ける。その道具が条件法なので、読むときは「ここは筆者が言い切っていない」という信号として受け取る。第7章にあたる文学研究の領域で、自分が書くときにも必要になる形である。
⚡ 第15章の通過チェック
- 条件法現在の作り方を、語幹と語尾の出どころで説明できる
- 条件法過去の作り方を言える
- si の3つの型を、時制の組み合わせで言える
- si の中に入らない時制を2つ言える
- Je voudrais / Pourriez-vous / Tu devrais を場面つきで言える
- 伝聞の条件法を、報道と論文の例で説明できる
- si を使わない仮定表現を3つ言える
次章へ
条件法は「現実ではないこと」を述べる形だった。次章の接続法(せつぞくほう)も、同じく現実そのものとして述べない形である。
ただし使いどころが違う。接続法は、主節の動詞や接続詞によって強制される。「いつ使うか」を意味から考えると混乱するので、どの語のあとで使うかの一覧として整理する。フランス語の文法でいちばん難しいとされる箇所だが、覚える範囲そのものは限られている。