考えを述べる|第17章 受動態・現在分詞・ジェロンディフ・使役と知覚
この章の狙い
要点: この章で扱う4つは、どれも文の組み立てを変える仕組みである。受動態は主語を入れ替え、分詞は2つの文を1つに畳み、使役と知覚は「他人にさせる・他人がするのを見る」を1つの動詞句で言う。
読解での出番が多い一方、作文では使わなくても済むという共通点がある。だから優先順位は「読んで分かる」が先で、「書ける」は後でよい。とくに現在分詞とジェロンディフは形が似ていて働きが違うので、そこを分けることがこの章の中心になる。
受動態
- 📘 受動態:「〜される」を表す形。être + 過去分詞(かこぶんし)で作り、過去分詞は主語に一致する。
| 能動態 | 受動態 |
|---|---|
| Paul écrit la lettre. | La lettre est écrite par Paul. |
| Paul a écrit la lettre. | La lettre a été écrite par Paul. |
| Paul écrira la lettre. | La lettre sera écrite par Paul. |
⚡ 受動態の3つの点
- 時制は être が担う。過去分詞は変わらない。
- 過去分詞は主語に性数一致する(第6章の形容詞と同じ)。
- 直接目的補語をとる動詞だけが受動態にできる。
動作主を示す前置詞は2つある。
| 前置詞 | 使う場合 | 例 |
|---|---|---|
| par | 具体的な動作 | Le livre a été traduit par un spécialiste. |
| de | 状態・感情 | Il est aimé de tous. |
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動作主を示さないことも多い。Ce livre a été publié en 1942.(誰が出版したかは問題にしない)。
受動態を避ける2つの方法
フランス語では、受動態より次の2つのほうがよく使われる。読解ではこちらのほうが出会う頻度が高い。
| 方法 | 例 | 意味 |
|---|---|---|
| on を主語にする | On a écrit cette lettre en 1942. | この手紙は1942年に書かれた |
| 代名動詞(だいめいどうし)の受動用法 | Ce livre se vend bien. | この本はよく売れる |
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代名動詞の受動用法は第10章で扱ったものである。「〜される」と訳す必要があるのに、形の上では受動態でないので、読解で見落としやすい。
| 例 | 意味 |
|---|---|
| Ce mot s'emploie rarement. | この語はまれにしか用いられない |
| Le texte se divise en trois parties. | このテクストは3部に分かれる |
| Cela ne se dit pas. | それは言わないものだ |
現在分詞
- 📘 現在分詞:動詞から作る -ant の形。名詞を修飾したり、理由や同時に起きることを表したりする。
⚡ 現在分詞の作り方
- 現在形の nous の形から -ons を取って -ant を足す。(半過去と同じ語幹)
- parler → parlant、finir → finissant、prendre → prenant
- 例外は3語。être → étant、avoir → ayant、savoir → sachant
用法は2つある。
| 用法 | 例 | 意味 |
|---|---|---|
| 名詞を修飾する | Les étudiants parlant français sont nombreux. | フランス語を話す学生は多い |
| 理由・同時を表す | Ayant peu de temps, il est parti. | 時間がなかったので、彼は出発した |
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複合形もある。ayant / étant + 過去分詞で、主節より前に起きたことを表す。
| 例 | 意味 |
|---|---|
| Ayant vécu la guerre, il écrit avec sobriété. | 戦争を経験したので、彼は抑制して書く |
この形は書き言葉に特有で、会話では使わない。論文や小説の地の文で頻繁に出会う。
ジェロンディフ
- 📘 ジェロンディフ:en + 現在分詞の形。同時・手段・条件・譲歩を表す。
作り方は現在分詞に en を付けるだけである。働きは大きく違う。
⚡ 決定的な違いは「誰の動作か」
- ジェロンディフの主語は、必ず主節の主語と同じ。
- 現在分詞は、直前の名詞を修飾できる(主語が違ってよい)。
| 例 | 誰が読むのか |
|---|---|
| En lisant ce roman, on comprend l'époque. | 読むのも理解するのも on(同じ) |
| J'ai vu un homme lisant ce roman. | 読むのは un homme(主語 je とは別) |
ジェロンディフの意味は4通りで、文脈で決まる。
| 意味 | 例 |
|---|---|
| 同時(〜しながら) | Il travaille en écoutant de la musique. |
| 手段(〜することで) | En travaillant chaque jour, on progresse. |
| 条件(〜すれば) | En commençant aujourd'hui, tu finiras à temps. |
| 譲歩(tout を付けて) | Tout en sachant cela, il a continué. |
過去分詞の形容詞的用法
過去分詞は、形容詞として名詞を修飾することもできる。名詞に性数一致する。
| 例 | 意味 |
|---|---|
| une porte fermée | 閉じられた扉 |
| des livres écrits en français | フランス語で書かれた本 |
| assis、debout | 座っている、立っている |
assis(座った)は過去分詞、debout(立った)は副詞で、形が違うのに意味が対になっている。よく問われる組である。
使役 — faire と laisser
- 📘 使役:「〜させる」を表す形。faire + 不定形(ふていけい)で作る。
| 例 | 意味 |
|---|---|
| Je fais réparer ma voiture. | 車を修理してもらう |
| Le professeur fait lire ce texte aux étudiants. | 教員は学生にこのテクストを読ませる |
| Ce livre fait réfléchir. | この本は考えさせる |
faire と不定形の間には何も入らない。代名詞は faire の前に置く(Je le fais lire.)。
laisser は「〜させておく、〜するままにする」で、放置や許可を表す。
| 例 | 意味 |
|---|---|
| Je laisse les enfants jouer. | 子どもたちを遊ばせておく |
| Laisse-moi parler. | 私に話させてくれ |
知覚動詞
voir、entendre、écouter、regarder、sentir は、不定形を続けて「〜するのを見る・聞く」を表す。
| 例 | 意味 |
|---|---|
| Je vois les enfants jouer. | 子どもたちが遊んでいるのが見える |
| Je l'entends chanter. | 彼(女)が歌うのが聞こえる |
| Je regarde le train partir. | 列車が出ていくのを見る |
知覚の対象が動作をするという構造で、使役と形が似ている。faire なら「させる」、voir なら「するのを見る」と区別する。
⚠️ この章でやりがちな間違い
- 受動態の過去分詞を一致させ忘れる。主語に一致する。
- ジェロンディフの主語を主節と別にする。必ず同じでなければならない。
- 現在分詞の例外を規則どおりに作る。étant / ayant / sachant の3語だけ別。
- faire と不定形の間に語を入れる。間には何も入らない。
読む・聴く
読み物 — Un roman de 1942(1942年の小説)
受動態・代名動詞の受動用法・ジェロンディフ・現在分詞の複合形・知覚動詞・使役がすべて出る。
| フランス語 | 日本語 |
|---|---|
| L'Étranger a été publié en 1942. | 『異邦人』は1942年に刊行された。 |
| Il est encore lu aujourd'hui dans le monde entier. | それは今日も世界中で読まれている。 |
| En lisant ce roman, on comprend mieux l'époque. | この小説を読むと、その時代がよりよく分かる。 |
| L'auteur, ayant vécu la guerre, écrit avec une grande sobriété. | 作者は戦争を経験しており、きわめて抑制された筆致で書いている。 |
| On voit le personnage principal hésiter, puis agir. | 主人公がためらい、それから行動するのが見える。 |
| Le style, très simple, se lit vite. | その文体はきわめて簡素で、速く読める。 |
| Mais il fait réfléchir longtemps. | だが長く考えさせる。 |
語注
| 語 | 品詞・意味 |
|---|---|
| publier | 動詞(第1群)。刊行する |
| le monde entier | 世界中 |
| époque | 女性名詞。時代 |
| sobriété | 女性名詞。簡素さ、抑制 |
| personnage | 男性名詞。登場人物 |
| principal | 形容詞。主要な |
| hésiter | 動詞(第1群)。ためらう |
| style | 男性名詞。文体 |
| réfléchir | 動詞(第2群)。よく考える |
読みどころ
- a été publié / est lu は受動態。時制は être が担っている(複合過去と現在)。
- En lisant はジェロンディフ。読むのも理解するのも on なので、主語が同じである。
- ayant vécu は現在分詞の複合形。書き言葉に特有の形で、「〜したので」にあたる。
- On voit … hésiter は知覚動詞。ためらうのは le personnage であって on ではない。
- se lit は代名動詞の受動用法。「読まれる」を代名動詞で言っている。
- il fait réfléchir は使役。主語は le styleで、「文体が読者に考えさせる」という構造である。
『異邦人』(L'Étranger, 1942)はアルベール・カミュ(Albert Camus, 1913-1960)の小説で、フランス文学専攻で最初に原文で読む作品の1つである。第19章で、その冒頭を実際の文体の例として扱う。
大学のフランス語で
批評文では、この章の形が集中して現れる。
| フランス語 | 日本語 |
|---|---|
| Ce texte peut être lu de deux manières. | このテクストは2通りに読むことができる。 |
| En comparant les deux versions, on découvre des différences importantes. | 2つの版を比較すると、重要な違いが見つかる。 |
| Cette question, longtemps négligée, a été reprise récemment. | この問題は長く軽視されてきたが、近年あらためて取り上げられた。 |
3つ目の longtemps négligée は過去分詞の形容詞的用法で、名詞のあとにカンマで挟んで置かれている。この挿入の形は論文で非常に多く、挿入部分をいったん飛ばして主語と動詞をつなぐという読み方(第14章の手順と同じ)が要る。
⚡ 第17章の通過チェック
- 受動態の作り方と、時制・一致の担い手を言える
- 動作主の par と de の使い分けを言える
- 受動態を避ける2つの方法を、例つきで言える
- 現在分詞の作り方と、3つの例外を言える
- ジェロンディフと現在分詞の決定的な違いを言える
- ジェロンディフの4つの意味を言える
- 使役 faire と知覚動詞 voir の構造の違いを言える
次章へ
次章では、人の発言を伝える形(話法)と、文をつなぐ論理の語を扱う。
話法の書き換えには時制の一致という規則があり、ここまでに学んだ時制がすべて関わる。あわせて、意見文を書くときに必要な接続表現をまとめる。第18章は、初級文法の総仕上げにあたる章である。