文の骨組み|第4章 être と avoir、否定文と疑問文
この章の狙い
要点: être と avoir は、意味を持つ動詞であると同時に、後の章のほとんどで助動詞として働く。この2つの活用と、否定・疑問の作り方を先に固めると、文法の残りが全部その上に乗る。
フランス語の動詞は主語によって形が変わる。これを活用という。être と avoir はどちらも不規則で、しかも最も頻繁に使う。先に音で覚えてしまうのが結局いちばん速い。
この章では、この2つの活用、否定文の作り方、疑問文の3つの形、そして否定疑問への答え方までを扱う。
主語人称代名詞
動詞の前に置く主語の形は6つある(3人称は男女で分かれるので、形としては8つ)。
| 人称 | 単数 | 複数 |
|---|---|---|
| 1人称 | je(j') | nous |
| 2人称 | tu | vous |
| 3人称 | il / elle | ils / elles |
← 横に動かして読めます →
- 📘 主語人称代名詞:動詞の主語になる代名詞。フランス語では原則として省略できない。
いくつか注意がある。
| 形 | 注意 |
|---|---|
| je | 母音の前で j' になる(j'ai、j'habite) |
| tu と vous | tu は親しい相手、vous は敬意を払う相手と複数。大学の教員には vous |
| il / elle | 人だけでなく「もの」も指す。名詞の性に従う(le livre → il、la table → elle) |
| ils | 男性が1人でも混じれば ils になる |
| on | 3人称単数として活用するが、意味は「人々」「私たち」 |
- 📘 on:形は3人称単数だが、「人は一般に」「私たちは」の意味で使う代名詞。話し言葉では nous の代わりに広く使われる。
⚠️ 主語でやりがちな間違い
- 主語を省略する。日本語のように主語を落とすことはできない。
- ものを指すときに it の感覚で il だけを使う。女性名詞なら elle。
- 初対面の相手や教員に tu を使う。関係が変わるまでは vous。
être の現在形
être は「〜である」を表す。英語の be にあたる。
| 主語 | 形 | 発音の注意 |
|---|---|---|
| je | suis | 語末の s は読まない |
| tu | es | [ɛ] |
| il / elle / on | est | [ɛ] t は読まない |
| nous | sommes | [sɔm] |
| vous | êtes | [ɛt] vous êtes は [vuzɛt] とリエゾン |
| ils / elles | sont | [sɔ̃] |
← 横に動かして読めます →
第2章で見たとおり、ils sont [ilsɔ̃] と ils ont [ilzɔ̃] の区別は音の1点にかかる。この表を音で覚える段階で、その対比も一緒に確かめる。
être の主な使い方は3つある。
| 用法 | 例 | 注意 |
|---|---|---|
| 属詞(ぞくし)をつなぐ | Il est étudiant. | 職業・身分・国籍は無冠詞 |
| 状態を言う | Je suis fatigué. | 形容詞は主語に性数一致する |
| 場所を言う | Nous sommes à Paris. | 前置詞と組み合わせる |
← 横に動かして読めます →
属詞に形容詞が来ると、主語の性と数に合わせて形が変わる。Elle est fatiguée.、Ils sont fatigués. となる。詳しくは第6章で扱う。
avoir の現在形
avoir は「持っている」を表す。英語の have にあたる。
| 主語 | 形 | 発音の注意 |
|---|---|---|
| j' | ai | [e] je ai とは書かない |
| tu | as | [a] |
| il / elle / on | a | [a] |
| nous | avons | nous avons は [nuzavɔ̃] とリエゾン |
| vous | avez | vous avez は [vuzave] とリエゾン |
| ils / elles | ont | ils ont は [ilzɔ̃] とリエゾン |
← 横に動かして読めます →
avoir は所有以外にも広く使う。
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| avoir … ans | 〜歳である |
| avoir faim / soif | 空腹だ/のどが渇いた |
| avoir chaud / froid | 暑い/寒い(人が感じる) |
| avoir raison / tort | 正しい/間違っている |
| avoir besoin de … | 〜が必要だ |
| avoir envie de … | 〜したい |
⚡ 日本語と発想がずれる avoir の表現
- 「私は20歳です」は J'ai vingt ans. être ではなく avoir を使う。
- 「寒い」も、人が感じるなら J'ai froid. 天気なら Il fait froid.(第8章)。
- これらの表現では冠詞を付けない。J'ai faim. であって J'ai la faim. ではない。
否定文
動詞を ne … pas ではさむ。これだけである。
| 肯定 | 否定 |
|---|---|
| Je suis étudiant. | Je ne suis pas étudiant. |
| Il a un frère. | Il n'a pas de frère. |
母音または無音のhの前で ne は n' になる(エリジオン)。第3章で見たとおり、直接目的語の不定冠詞・部分冠詞は de に変わる。
pas の代わりに置ける語がいくつかあり、意味が変わる。
| 形 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| ne … pas | 〜ない | Je ne fume pas. |
| ne … plus | もう〜ない | Je ne fume plus. |
| ne … jamais | 決して〜ない | Je ne fume jamais. |
| ne … rien | 何も〜ない | Je ne comprends rien. |
| ne … personne | 誰も〜ない | Je ne vois personne. |
| ne … que | 〜しかない | Je n'ai que dix euros. |
← 横に動かして読めます →
ne … que は否定ではなく限定である。「〜しかない」であって「〜ない」ではないので、後ろの冠詞も de に変わらない。
⚠️ 否定でやりがちな間違い
- ne を落とす。話し言葉では実際によく落ちるが、書くときは必ず入れる。
- ne … que を否定と考えて冠詞を de にする。Je n'ai que du temps. のように冠詞はそのまま。
- 否定の位置を間違える。ne と pas は活用した動詞をはさむ。不定形(ふていけい)ではない。
疑問文の3つの形
同じ内容を3通りの形で聞ける。どれを使うかは、場面の改まり方で決まる。
| 形 | 作り方 | 例 | 改まり方 |
|---|---|---|---|
| イントネーション | 文末を上げるだけ | Tu es étudiant ? | くだけた話し言葉 |
| est-ce que | 文頭に付ける | Est-ce que tu es étudiant ? | 中立。話し言葉で最も安全 |
| 倒置 | 主語と動詞を入れ替える | Es-tu étudiant ? | 改まった言い方、書き言葉 |
← 横に動かして読めます →
倒置には注意点が2つある。
⚡ 倒置のときの決まり
- 動詞と主語を -(トレデュニオン) で結ぶ。Es-tu … ?、Avez-vous … ?
- 3人称単数で母音が続くときは -t- を入れる。A-t-il … ?、Y a-t-il … ?
- 主語が名詞のときは、名詞を前に出して代名詞で倒置する。Paul est-il étudiant ?
疑問詞を使うときは、疑問詞を文頭に置いて est-ce que か倒置を続ける。疑問詞そのものは第7章でまとめて扱う。
「はい」と「いいえ」— si の使い方
答え方は3つある。ここにフランス語に特有の形がある。
| 質問 | 答え | 意味 |
|---|---|---|
| Tu es étudiant ?(肯定の疑問) | Oui. | はい |
| Non. | いいえ | |
| Tu n'es pas étudiant ?(否定の疑問) | Si. | いいえ、学生です |
| Non. | はい、学生ではありません |
← 横に動かして読めます →
- 📘 si:否定の疑問文に対して、「いや、そうだ」と肯定で答えるときの語。oui は使えない。
否定で聞かれたときに肯定で返すなら si を使う。日本語の「はい/いいえ」は英語ともフランス語ともずれるので、答えの内容そのもの(学生かどうか)で決めると間違えない。
読む・聴く
この章の文法だけで書いた文を音にする。以下は本教材で作成した例文である。
| フランス語 | 意味 | 確認する点 |
|---|---|---|
| Je suis étudiant en littérature française. | 私はフランス文学専攻の学生です。 | être + 無冠詞の身分 |
| Nous avons un examen demain. | 明日試験があります。 | nous avons のリエゾン |
| Est-ce que vous avez faim ? | お腹がすいていますか。 | est-ce que、avoir faim |
| Je n'ai pas de temps aujourd'hui. | 今日は時間がない。 | 否定の de |
| Il n'est jamais en retard. | 彼は決して遅刻しない。 | ne … jamais |
| — Tu n'es pas fatigué ? — Si, un peu. | 「疲れていないの?」「いや、少し」 | 否定疑問への si |
← 横に動かして読めます →
授業で実際に使う表現も、この章の文法でできている。
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| Je ne comprends pas. | わかりません。 |
| Est-ce que vous pouvez répéter ? | もう一度言っていただけますか。 |
| Comment dit-on … en français ? | 〜はフランス語で何と言いますか。 |
| J'ai une question. | 質問があります。 |
この4つは、フランス語の授業で最初に必要になる文である。音で言えるようにしておくと、聞き取れなかったときに黙らずに済む。
⚡ 第4章の通過チェック
- être と avoir の現在形を、6つの形すべて音で言える
- ils sont と ils ont を言い分けられる
- avoir を使う表現(年齢・空腹・寒暖・正誤)を4つ言える
- ne … pas / plus / jamais / rien / personne / que の違いを言える
- 疑問文の3つの形を、同じ内容で作り分けられる
- 否定疑問に si で答える場面を説明できる
次章へ
主語と、最も重要な2つの動詞が入った。次章では、それ以外の動詞の現在形を扱う。フランス語の動詞は活用の型で分類でき、規則的なものが2群、頻出の不規則動詞が7つほどある。
そこで aller と venir を覚えると、aller + 不定形で近い未来、venir de + 不定形で近い過去が言えるようになる。時制を1つも新しく覚えずに、時間の幅が一気に広がる箇所である。