語をつなぐ|第12章 半過去・大過去と、過去時制の使い分け
この章の狙い
要点: 半過去は作り方がほぼ例外なしで、覚える負担は小さい。難しいのは複合過去とどちらを使うかである。この選択は規則では決まらず、話し手が出来事を「点」と見るか「線」と見るかで決まる。日本語にはこの区別がないので、意識して訓練する必要がある。
大過去は「過去のさらに前」を表す形で、作り方は複合過去の助動詞を半過去にするだけである。3つの過去がそろうと、物語を語れるようになる。
半過去の作り方
- 📘 半過去:過去において続いていた状態・繰り返していた習慣・場面の背景を表す時制。
作り方はすべての動詞で同じである。
⚡ 半過去の作り方
- 現在形の nous の形から -ons を取って語幹(ごかん)にする。
- 語尾は -ais / -ais / -ait / -ions / -iez / -aient。
- 例外は être だけ(語幹は ét-)。
| 不定形(ふていけい) | nous の現在形 | 半過去の語幹 | je の形 |
|---|---|---|---|
| parler | nous parlons | parl- | je parlais |
| finir | nous finissons | finiss- | je finissais |
| faire | nous faisons | fais- | je faisais |
| prendre | nous prenons | pren- | je prenais |
| aller | nous allons | all- | j'allais |
| avoir | nous avons | av- | j'avais |
| être | — | ét- | j'étais |
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語尾の音は3種類しかない。-ais / -ais / -ait / -aient はすべて [ɛ]、-ions が [jɔ̃]、-iez が [je] である。第5章の第1群現在形と同じく、音では nous と vous だけが違う。
綴りの調整も現在形と同じ理由で起きる。je commençais(c を [s] のまま)、je mangeais(g を [ʒ] のまま)。
半過去の3つの用法
| 用法 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 継続・背景 | そのとき〜していた | Il pleuvait quand je suis sorti. |
| 習慣・繰り返し | よく〜していた | Quand j'étais petit, j'allais à la mer chaque été. |
| 描写 | 〜だった(状態の説明) | La maison était grande et blanche. |
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3つとも共通しているのは、始まりと終わりを問題にしていないという点である。半過去は出来事を「幅のあるもの」として示す。
複合過去との使い分け
⚡ 点と線
- 複合過去=出来事の「点」。起きて、終わった。物語を前に進める。
- 半過去=状態の「線」。続いていた。場面を説明する。
同じ文の中で両方が使われると、この違いがはっきり見える。
| 例 | 分析 |
|---|---|
| Je regardais la télévision quand il est arrivé. | 見ていた(線)ところに、着いた(点) |
| Il faisait beau, alors nous sommes sortis. | 天気がよかった(背景)ので、出かけた(出来事) |
| Quand j'étais étudiant, j'ai visité Paris trois fois. | 学生だった(線)あいだに、3回訪れた(点) |
同じ動詞でも、どちらを使うかで意味が変わる。
| 文 | 意味 |
|---|---|
| Il a été malade. | 病気になった(そして治った。期間が閉じている) |
| Il était malade. | 病気だった(そのときの状態。終わりを問題にしていない) |
| J'ai su la vérité. | 真実を知った(知るという出来事) |
| Je savais la vérité. | 真実を知っていた(状態) |
⚠️ 使い分けでやりがちな間違い
- 期間が示されていれば半過去、と考える。pendant deux ans があっても、閉じていれば複合過去。
- 「〜していた」を機械的に半過去にする。日本語の「〜ていた」は両方にあたる。
- 会話文の中で全部を複合過去にする。背景の説明は半過去にしないと、場面が立ち上がらない。
判断に迷ったら、「その出来事は物語を先へ進めるか」を問う。進めるなら複合過去、場面を説明しているだけなら半過去である。
半過去のその他の用法
出来事の描写以外にも使う。どちらも頻出する。
| 用法 | 例 | 意味 |
|---|---|---|
| 語調をやわらげる | Je voulais vous demander quelque chose. | お尋ねしたいことがあるのですが |
| 提案する | Si on allait au cinéma ? | 映画に行きませんか |
| 仮定(si の中) | Si j'avais le temps, … | もし時間があれば…(第15章) |
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Si on + 半過去 ? は、提案するときの定型である。直訳では通じないので、形ごと覚える。
大過去
- 📘 大過去:過去のある時点よりさらに前に完了していたことを表す時制。
作り方は複合過去と同じ構造で、助動詞を半過去にするだけである。
| 型 | 例 |
|---|---|
| avoir の半過去 + 過去分詞(かこぶんし) | j'avais parlé |
| être の半過去 + 過去分詞 | j'étais allé(e) |
| 代名動詞(だいめいどうし) | je m'étais levé(e) |
助動詞の選択も過去分詞の一致も、複合過去とまったく同じ規則である(第11章)。
| 例 | 意味 |
|---|---|
| Quand je suis arrivé, il était déjà parti. | 私が着いたとき、彼はすでに出発していた |
| J'avais déjà lu ce livre. | 私はその本をすでに読んでいた |
「〜していた」ではなく「〜してしまっていた」にあたる。日本語では区別しないことが多いので、時間の前後関係を意識して選ぶ必要がある。
3つの過去の関係
| 時制 | 表すもの | 物語での役割 |
|---|---|---|
| 大過去 | それ以前に完了していたこと | さかのぼって説明する |
| 半過去 | 続いていた状態・背景 | 場面を作る |
| 複合過去 | 起きて終わった出来事 | 話を前に進める |
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この3つがそろうと、過去の話が自然に語れる。フランス語の物語の骨格は、ほぼこの組み合わせでできている。
読む・聴く
読み物 — Comment j'ai commencé(どうやって始めたか)
半過去と複合過去が交互に出る。どちらが背景でどちらが出来事かを、1文ずつ確かめながら読む。
| フランス語 | 日本語 |
|---|---|
| Quand j'étais au lycée, je n'aimais pas les langues. | 高校生のころ、私は語学が好きではなかった。 |
| Les cours étaient longs et je m'ennuyais souvent. | 授業は長く、私はよく退屈していた。 |
| Un jour, j'ai vu un film français à la télévision. | ある日、テレビでフランス映画を見た。 |
| Je ne comprenais rien, mais la langue me plaisait. | 何も分からなかったが、その言語が気に入った。 |
| Le lendemain, j'ai acheté un manuel. | 翌日、私は教科書を買った。 |
| J'avais déjà essayé l'anglais, mais cette fois, c'était différent. | 英語はすでに試したことがあったが、今度は違った。 |
| Depuis, je travaille tous les jours. | それ以来、私は毎日勉強している。 |
語注
| 語 | 品詞・意味 |
|---|---|
| lycée | 男性名詞。高校 |
| langue | 女性名詞。言語、舌 |
| cours | 男性名詞。授業(単複同形) |
| s'ennuyer | 代名動詞。退屈する |
| plaire à | 動詞(第3群)。〜の気に入る |
| lendemain | 男性名詞。翌日 |
| manuel | 男性名詞。教科書 |
| essayer | 動詞(第1群)。試す |
| depuis | 前置詞・副詞。それ以来 |
読みどころ
- j'étais / je n'aimais pas / étaient / je m'ennuyais はすべて背景。当時どうだったかを説明している。
- j'ai vu / j'ai acheté は出来事。この2つだけが話を前に進めている。
- Je ne comprenais rien, mais la langue me plaisait. は、出来事の最中の状態なので半過去。
- J'avais déjà essayé は大過去。映画を見た時点より前に起きたことをさかのぼって説明している。
- 最後の je travaille は現在形。depuis は今も続いていることを示すので、第8章のとおり現在形になる。
大学のフランス語で
文学史や評論では、半過去が時代の状況を説明するために使われる。
| フランス語 | 日本語 |
|---|---|
| Au dix-neuvième siècle, la bourgeoisie dominait la société. | 19世紀、ブルジョワジーが社会を支配していた。 |
| Les écrivains vivaient souvent de leur plume. | 作家たちはしばしば筆で生計を立てていた。 |
| C'est dans ce contexte que Flaubert a écrit son roman. | こうした状況の中でフローベールはその小説を書いた。 |
状況が半過去、個々の作品や出来事が複合過去という配分になる。この対比は、文学史の記述を読むときにそのまま現れる。作品そのものの中では複合過去の位置に単純過去(第19章)が入るが、線と点の対立という構造は変わらない。
⚡ 第12章の通過チェック
- 半過去の語幹の作り方と、唯一の例外を言える
- 半過去の3つの用法を、例つきで言える
- 複合過去と半過去を「点と線」で説明できる
- Il a été malade. と Il était malade. の違いを言える
- Si on allait … ? の意味と使い方を言える
- 大過去の作り方と、助動詞・一致の規則を言える
- 3つの過去の、物語での役割を言える
次章へ
過去を語る形がそろった。次章は未来である。単純未来は語幹に特徴があり、不規則な語幹を10語ほど覚える必要がある。
あわせて前未来(未来のある時点までに完了していること)を扱い、第5章で学んだ近接未来との使い分けも整理する。時を表す接続詞のあとで、フランス語は日本語や英語と違う時制をとるので、そこも同じ章で押さえる。