導入|第2章 発音と綴り字 — 書いてある形から音を出す
この章の狙い
要点: フランス語の綴りは例外だらけに見えるが、実際は「綴り字(つづりじ)を見て音を出す」方向にかぎればほぼ規則どおりに決まる。この章では、その一方向だけを固める。
フランス語を始めた人がまず止まるのは、文法ではなく音である。教科書の1行目 « Bonjour, je m'appelle… » が読めない。辞書を引いても発音記号が読めない。授業で当てられても、目の前の単語をどう声に出すか分からない。
この状態は、覚える量が足りないから起きているのではない。規則を「音から綴りへ」の向きで覚えようとするから起きる。フランス語では、同じ音を表す綴りが何通りもある。[o] という音は o とも au とも eau とも書く。この向きで覚えようとすると、規則がいくらでも増えていく。
逆向きなら話は早い。eau と書いてあれば必ず [o] と読む。 例外はない。この向きの規則は、全部合わせても2時間で読める量しかない。書き取り(綴りを当てる方向)は語彙を覚えながら少しずつ身につければよく、最初にやることではない。
だからこの章の到達点は1つだけである。初めて見るフランス語の単語を、辞書を引かずに声に出せること。 意味は分からなくてよい。
綴りから音へ、一方向だけを固める
英語と比べると、この一方向性の価値がはっきりする。英語の though / through / tough / cough は、綴りが似ているのに読みがすべて違う。フランス語にはこの種の不規則がほとんどない。
- 📘 綴り字読み:綴りの並びから音を決める読み方。フランス語ではこれがほぼ例外なく通用する。
理由は歴史にある。フランス語の綴りは17世紀のアカデミー・フランセーズによって語源を重視する形で固定され、その後に発音のほうが変化した。つまり綴りが古い発音の化石になっている。語末の子音を読まないのも、かつて読んでいたものが読まれなくなり、綴りだけが残ったからである。この経緯は第20章で扱う。
覚え方の順序は次のとおりで、上から順に効く。
| 順 | 覚えるもの | なぜ先か |
|---|---|---|
| 1 | 語末の子音字を読まない | ほぼ全語に効く。最も出番が多い |
| 2 | 母音字の組み合わせ | 語の中心の音が決まる |
| 3 | 鼻母音(びぼいん) | 日本語にない音で、聞き分けにも直結する |
| 4 | 注意すべき子音字 | c・g・s の3つだけで大半が片づく |
| 5 | 語と語のつなぎ | 文で読むときに初めて要る |
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アルファベと5つの綴り字記号
文字は英語と同じ26字。ただし k と w はほぼ外来語にしか出てこない。
読み方で日本語話者がつまずくのは次の5字である。
| 文字 | 読み | 間違えやすい形 |
|---|---|---|
| E | ウ(口をやや丸めて) | 英語式に「イー」 |
| G | ジェ | 英語式に「ジー」 |
| I | イ | 英語式に「アイ」 |
| J | ジ | 英語式に「ジェイ」 |
| R | エール(のどの奥で) | 英語式に「アール」 |
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さらに、文字の上下に付く記号が5種類ある。これらは飾りではなく、音か語の区別を担っている。
- 📘 アクサン・テギュ:é に付く右上がりの記号。e を [e] と読ませる。
- 📘 アクサン・グラーヴ:è à ù に付く左上がりの記号。è では [ɛ] を表し、à と ù では音ではなく語の区別を担う。
- 📘 アクサン・シルコンフレクス:â ê î ô û に付く山形の記号。多くは、かつてそこにあった s が消えた跡である。
- 📘 トレマ:ë ï ü に付く2つの点。直前の母音字と続けて読まず、切って読むことを示す。
- 📘 セディーユ:ç に付く下の尾。a・o・u の前でも c を [s] と読ませる。
記号の働きを、実例で確かめる。
| 例 | 意味 | 記号の役割 |
|---|---|---|
| a と à | 「持つ」の活用形 と 前置詞「〜に」 | 音は同じ。綴りだけで語を区別する |
| ou と où | 「または」 と 「どこ」 | 同上 |
| foret と forêt | ドリル と 森 | 音が違う。forêt は s が消えた跡(英語 forest) |
| Noel と Noël | 誤り と クリスマス | トレマがないと oe を1つの母音として読んでしまう |
| ca と ça | 誤り と 「それ」 | セディーユがないと [ka] になる |
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⚠️ アクサンを書き落とす
- a と à、ou と où、la と là は、記号を落とすと別の語になる。答案では減点対象になる。
- é と è を取り違えると音が変わる。é は口を横に引いた「エ」、è は口を開いた「エ」。
- 大文字にアクサンを付けない書き方も見かけるが、現在は付けるのが標準である。
語末の子音字は読まない
フランス語で最も出番の多い規則がこれである。
⚡ 語末の子音字は原則として読まない
- Paris → [paʁi] 語末の s は読まない
- petit → [p(ə)ti] 語末の t は読まない
- grand → [ɡʁɑ̃] 語末の d は読まない
- vous → [vu] 語末の s は読まない
- beaucoup → [boku] 語末の p は読まない
語末の e も同じく読まない。table は [tabl]、France は [fʁɑ̃s] であって、末尾に母音は付かない。日本語の感覚で「ターブル」「フランス」と伸ばすと、余分な母音が入ってしまう。
読まれる語末子音もある。数は多くないので、まとめて覚えられる。
⚡ 語末でも読まれやすい子音は c・r・f・l
- avec [avɛk]/bonjour [bɔ̃ʒuʁ]/chef [ʃɛf]/il [il]
- 覚え方は英語の careful に含まれる4子音。
ただし r には大きな例外があり、-er で終わる語の r は読まない。動詞の不定形(ふていけい) parler [paʁle]、名詞 boulanger [bulɑ̃ʒe]、léger [leʒe] がこれにあたる。この形は動詞の不定形すべてに関わるので、例外というより第2の規則として扱ったほうがよい。
⚠️ 語末の扱いでやりがちな間違い
- 語末の e を「ウ」と読んでしまう(table を「ターブル」ではなく [tabl])。
- 動詞の -er を「エール」と読んでしまう(parler は [paʁle])。
- 複数形の s を読んでしまう。les livres の s はどちらも読まない。フランス語では、複数かどうかは音では区別できない場合が多い。
最後の点は文法にも効いてくる。le livre と les livres の違いは、名詞ではなく冠詞の音([lə] と [le])でしか分からない。冠詞を聞き取る訓練が要るのはこのためで、第3章で扱う。
母音字の読み方
母音は、1字のものと組み合わせのものに分けて覚える。
| 綴り | 音 | 例 |
|---|---|---|
| a, à, â | [a] | Paris、là、âge |
| i, î, y | [i] | il、île、style |
| o, ô | [ɔ] または [o] | port、hôtel |
| u, û | [y] | tu、sûr |
| é | [e] | été |
| è, ê | [ɛ] | père、fête |
| e(音節(おんせつ)の終わり) | [ə] または無音 | le、petit |
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このうち、日本語話者にとって新しい音は [y] だけである。
- 📘 [y] の音:u の綴りが表す母音。唇を「ウ」の形にすぼめたまま、舌は「イ」の位置に置くと出る。日本語のウでもユでもない。
tu(きみ)と tout(すべて)、rue(通り)と roue(車輪)は、この [y] と [u] の違いだけで別の語になる。この2つを取り違えると通じないので、最初に固めておく価値がある。
組み合わせのほうは数が多いが、規則性は完全である。
| 綴り | 音 | 例 |
|---|---|---|
| ou | [u] | vous、jour |
| au, eau | [o] | aussi、beau |
| ai, ei | [ɛ] | maison、Seine |
| eu, œu | [ø] または [œ] | deux、cœur |
| oi | [wa] | moi、trois |
| ui | [ɥi] | huit、nuit |
| ay, oy, uy | [ɛj]、[waj]、[ɥij] | pays、voyage、ennuyer |
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⚡ 取り違えやすい3組
- u [y] と ou [u] tu / tout、rue / roue
- é [e] と è [ɛ] été(夏)/ était(〜だった)
- eu [ø] と ou [u] peu(少し)/ pou(しらみ)
鼻母音 — 4つの音と、そうならない条件
- 📘 鼻母音:息を鼻に抜きながら出す母音。フランス語には3つ(話者によっては4つ)あり、日本語には対応する音がない。
綴りの上では「母音字 + n または m」の形で現れる。
| 綴り | 音 | 例 |
|---|---|---|
| an, am, en, em | [ɑ̃] | dans、chambre、enfant、temps |
| in, im, ain, aim, ein, yn, ym | [ɛ̃] | vin、simple、pain、faim、plein |
| on, om | [ɔ̃] | bon、nom、maison |
| un, um | [œ̃] | un、parfum |
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un の [œ̃] は、パリを中心とする現代の話者の多くが [ɛ̃] と同じに発音する。区別しなくても通じるが、聞くときは両方あると知っておく。
重要なのは、いつ鼻母音にならないかのほうである。条件は2つある。
⚡ n・m が鼻母音を作らない2つの場合
- n・m の直後に母音字が来るとき an [ɑ̃] だが année [ane]
- n・m が2つ重なるとき bon [bɔ̃] だが bonne [bɔn]
この規則は文法に直結する。形容詞の女性形は e を足して作ることが多く、その e が n を「母音の前の n」に変えるので、男性形は鼻母音、女性形は鼻母音でなくなる。
| 男性形 | 女性形 | 音の変化 |
|---|---|---|
| bon [bɔ̃] | bonne [bɔn] | 鼻母音が消え、n が読まれる |
| américain [ameʁikɛ̃] | américaine [ameʁikɛn] | 同上 |
| brun [bʁœ̃] | brune [bʁyn] | 同上 |
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⚠️ 鼻母音の間違い
- 「ン」を子音として付けてしまう。bon は「ボン」ではなく、口を閉じずに息を鼻へ抜く。最後に唇を閉じると別の語に聞こえる。
- homme や ennui のように、n・m の後ろに母音があるのに鼻母音で読んでしまう。
- 女性形でも鼻母音のまま読んでしまう。男性形と女性形が音で区別できなくなる。
注意すべき子音字
子音は大半が綴りどおりだが、次の3つは後ろの母音字で読みが変わる。この3つを押さえれば、子音の問題はほぼ終わる。
| 文字 | a・o・u の前 | e・i・y の前 | 調整の記号 |
|---|---|---|---|
| c | [k] café、code | [s] ce、cinéma | ç で a・o・u の前でも [s](français) |
| g | [ɡ] gare、gomme | [ʒ] genre、girafe | ge で a・o の前でも [ʒ](mangeons)、gu で e・i の前でも [ɡ](guerre) |
| s | [s] sac | [s] si | 母音に挟まれると [z](maison)。ss なら [s](poisson) |
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s の規則は語の意味を分ける。poison(毒)は [pwazɔ̃]、poisson(魚)は [pwasɔ̃] である。
残りは、組み合わせで決まるものをまとめて覚える。
| 綴り | 音 | 例 |
|---|---|---|
| ch | [ʃ] | chat、chercher |
| gn | [ɲ] | montagne、Espagne |
| qu | [k] | qui、quatre |
| ph | [f] | photo |
| th | [t] | théâtre |
| ill | [ij] | famille、travailler |
| h | 常に無音 | homme、heure |
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ill には例外が3語ある。ville、mille、tranquille は [il] と読む。この3語だけなので、そのまま覚えてしまえばよい。
h は「常に無音」だが、発音されないのに働きを持つ h がある。
- 📘 有音のh:発音はされないが、後ろの語とのつながりを拒む h。辞書では語頭に † や * の印が付く。
- 📘 無音のh:普通の h。母音で始まるのと同じように扱われ、エリジオンとリエゾンを受ける。
l'homme(無音のh、エリジオンする)と le héros(有音のh、エリジオンしない)が典型例である。どちらかは綴りからは分からないので、辞書で確かめて語ごとに覚える。数は多くない。
r については、のどの奥(口蓋垂)を震わせて出す音で、日本語のラ行とは作り方が違う。うがいをするときの位置で、息をこすらせると近い音が出る。最初から完璧でなくてよいが、日本語のラ行で代用し続けると聞き取りのほうも伸びない。
語と語をつなぐ3つの規則
ここまでは単語1つの話だった。文になると、語と語の切れ目が音の上では消える。フランス語が「切れ目なく聞こえる」のはこのためである。規則は3つで、混同しやすいので違いを押さえる。
- 📘 エリジオン:le・la・je・ne・de・que・se・ce・me・te・si などの語末の母音が、次の語が母音か無音のhで始まるとき脱落し、アポストロフで結ばれること。
- 📘 リエゾン:単独では読まない語末の子音字が、次の語の母音とつながって発音されること。
- 📘 アンシェヌマン:もともと発音されている語末の子音が、次の語の母音に移って一体化すること。
3つの違いは、次の対比で見ると分かりやすい。
| 規則 | 例 | 何が起きているか |
|---|---|---|
| エリジオン | le + homme → l'homme | 母音が消える。綴りも変わる |
| リエゾン | les + amis → [le‿zami] | 読まなかった s が復活してつながる |
| アンシェヌマン | il + est → [i‿lɛ] | すでに読んでいた l が移動するだけ |
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リエゾンでは、子音の音が変わるものがある。
⚡ リエゾンでの音の変化
- s、x、z → [z] les amis、deux ans、chez elle
- d → [t] un grand ami [ɡʁɑ̃tami]
- f → [v] neuf ans [nœvɑ̃]、neuf heures [nœvœʁ](この2語だけ)
- n、t、p → そのまま on a、petit ami、trop aimable
リエゾンには、必ずするもの・してはいけないもの・どちらでもよいものがある。まず「してはいけない」を覚えるほうが安全である。しすぎるほうが目立つ誤りになるからである。
⚠️ してはいけないリエゾン
- et の後ろ un livre et un cahier の et と un はつながない。
- 有音のh の前 les héros はつながない(les héroïnes も同じ)。
- 単数名詞の後ろ un enfant intelligent の enfant と intelligent はつながない。
- 主語が名詞のとき、その後ろ Paul est… の Paul と est はつながない。
必ずするリエゾンは、まとまりとして一体になっている組だと考えると覚えやすい。冠詞や所有形容詞と名詞(les amis、mon ami)、主語代名詞と動詞(nous avons、ils ont)、前置詞と後ろの語(en avion、dans un mois)、形容詞と名詞(un petit ami)である。
⚠️ ils ont と ils sont
- ils ont [ilzɔ̃](彼らは持っている)と ils sont [ilsɔ̃](彼らは〜である)は、リエゾンの [z] と s の [s] だけで区別する。
- 聞き分けも言い分けも、この1点にかかっている。教科書の音声で最初に確かめるべき組である。
e muet — 落ちる e
- 📘 e muet:発音されない、あるいは弱く曖昧(あいまい)に発音される e。「無音のe」とも呼ぶ。
語末の e が読まれないことはすでに見た。語の途中の e も、落ちることがある。
| 綴り | 実際の音 | 落ちるか |
|---|---|---|
| samedi | [samdi] | 落ちる |
| petit | [p(ə)ti] | 落ちても落ちなくてもよい |
| vendredi | [vɑ̃dʁədi] | 落ちない(落とすと子音が3つ続く) |
| je ne sais pas | [ʃsɛpa] とも | 話し言葉では大きく落ちる |
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判断の原則は1つで、落とした結果、発音しにくい子音の連続ができるなら落とさない。厳密な規則もあるが、初級のうちは「音声を聞いて、落ちているかどうかを確かめる」ほうが速い。
この e muet は、文学作品を読むときに別の意味を持つ。詩では、e muet を1音節として数えるかどうかが韻律(いんりつ)を決める。12音節の詩句(アレクサンドラン)を数えるときに必ず問題になるので、第19章でもう一度扱う。ここでは「詩を読むときには規則が変わる」とだけ覚えておけばよい。
読む・聴く — 音を実際に確かめる
規則を読んだだけでは音は出せない。声に出して、模範の音と比べるところまでが1セットである。
この教材の音声機能の使い方
この教材のフランス語は、どこでも選択すると読み上げボタンが出る。 ブラウザの音声合成を使っているので、追加のインストールは要らない。表の行ごと選んでも、日本語の部分は読み飛ばしてフランス語だけを読む。ボタンは3つある。
| ボタン | 何が起きるか | 使い方 |
|---|---|---|
| 読む | 通常の速さで1回読む | 聞く → 真似して声に出す → もう一度聞く |
| ゆっくり | 0.7倍の速さで1回読む | リエゾンや e muet の位置を確かめる |
| ディクテ | 2秒おいてから3回繰り返す | 押したら画面から目を離し、聞こえたとおりに書く |
← 横に動かして読めます →
ディクテのボタンに2秒の間があるのは、押してから画面を見ない体勢に入るためである。3回聞いて書き取り、それから画面に戻って綴りを照合する。
合成音声は、リエゾンや e muet の扱いが実際の話者と少し違うことがある。規則の確認には十分だが、生の音のリズムはそれだけでは身につかない。そのため、次の実素材と併用する。
実際のフランス語を聞く
| 素材 | 何が向くか |
|---|---|
| RFI「Journal en français facile」 | 学習者向けにゆっくり読まれるニュース。書き起こしが付く |
| InnerFrench(ポッドキャスト) | B1程度の話し言葉。話題が単調でなく続けやすい |
| France Culture | 通常速度の議論。3年次以降の目標 |
| Arte(仏独共同のテレビ局) | 映像つき。字幕をフランス語に切り替えて使う |
はじめのうちは、全部聞き取ろうとしない。1分の音声を選び、聞こえた語だけを書き出す。次に書き起こしと突き合わせる。聞こえなかった語が、綴りは知っている語だったという経験を積むのが目的である。
この章の音で読む
まず、規則の確認用に短い文を並べる。以下は本教材で作成した例文である。
| フランス語 | 意味 | 確認する規則 |
|---|---|---|
| Vous avez raison. | あなたは正しい。 | vous と avez のリエゾン [vuzave] |
| Les amis de Paul sont ici. | ポールの友人たちがここにいる。 | les amis のリエゾン、Paul の後ろは切る |
| Il est huit heures. | 8時だ。 | il est のアンシェヌマン、huit heures のリエゾン |
| C'est un bon exercice. | それはよい練習だ。 | エリジオン、bon の鼻母音、リエゾン |
| La discipline est plus fiable que la motivation. | 規律は意欲より当てにできる。 | discipline の語末 e、plus の s |
← 横に動かして読めます →
次に、実際の文学作品で確かめる。ポール・ヴェルレーヌ(Paul Verlaine, 1844-1896)の「秋の歌」(Chanson d'automne, 1866)の冒頭で、e muet と鼻母音がどちらも出てくる。著作権はすでに切れている。
| 原文 | 逐語の意味 |
|---|---|
| Les sanglots longs | 長いすすり泣きが |
| Des violons | ヴァイオリンの |
| De l'automne | 秋の |
sanglots の語末の s と t は読まない。longs の g も s も読まない。violons と automne はどちらも n を含むが、鼻母音になるのは violons だけである。automne は n の後ろに e があるうえ、この語では m も n も読まれない特殊な形で、[otɔn] となる。こうした語が出てきたときに「規則の例外だ」と処理せず、辞書で発音を確かめる習慣を作っておく。
この3行は第19章で、今度は音節の数え方の教材として読み直す。
⚡ 第2章の通過チェック
- 初めて見る単語を、辞書を引かずに声に出せる
- u [y] と ou [u]、é [e] と è [ɛ] を言い分けられる
- 鼻母音になる条件と、ならない2つの条件を言える
- エリジオン・リエゾン・アンシェヌマンの違いを、例を挙げて説明できる
- してはいけないリエゾンを4つ言える
- ils ont と ils sont を聞き分けられる
次章へ
ここまでで、書いてある形から音を出せるようになった。次章からは、その音を意味のある文にしていく。
最初に扱うのは名詞と冠詞である。フランス語ではすべての名詞に男性・女性の区別があり、冠詞がそれに従って形を変える。この章で見たとおり、複数形の s は音では聞こえないので、単数か複数かは冠詞の音でしか分からない。発音の規則がそのまま文法の聞き取りに直結する場所である。