文の骨組み|第3章 名詞と冠詞 — 性・数と、3種類の冠詞
この章の狙い
要点: フランス語の名詞は、ほとんどの場合そのままでは文に入れられない。冠詞などの限定詞を必ず伴う。だから問題は「冠詞を付けるかどうか」ではなく「3つのうちどれを付けるか」になる。
日本語には冠詞がない。英語には a と the があるが、フランス語にはもう1つ、部分冠詞という第3の種類がある。しかも冠詞は名詞の性と数に合わせて形を変える。この2つが重なるので、最初にまとめて整理しておく価値がある。
この章を終えると、辞書で引いた名詞を、正しい冠詞と正しい複数形で文に置けるようになる。第2章で見たとおり複数形の s は音では聞こえないので、冠詞は聞き取りの手がかりでもある。
名詞には性がある
すべての名詞が男性名詞か女性名詞のどちらかに属する。生き物でなくても属する。
- 📘 名詞の性:フランス語のすべての名詞が持つ、男性・女性のいずれかの区分。冠詞・形容詞・代名詞の形がこれに従う。
le livre(本)は男性、la table(テーブル)は女性である。意味からは決まらないので、覚えるしかない。ただし語尾に手がかりがある。
| 語尾 | 性 | 例 |
|---|---|---|
| -tion, -sion | 女性 | la nation、la décision |
| -té, -tié | 女性 | la liberté、l'amitié |
| -ure, -ude | 女性 | la culture、l'habitude |
| -ette, -elle | 女性 | la fourchette、la nouvelle |
| -ment | 男性 | le gouvernement、le moment |
| -eau, -ou | 男性 | le bureau、le bijou |
| -age | 男性 | le voyage、le fromage |
| -isme, -ien | 男性 | le réalisme、le musicien |
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-age で終わる女性名詞(la page、la plage、l'image)のように例外はあるが、手がかりがあるだけで暗記の量はかなり減る。
⚡ 名詞は冠詞ごと覚える
- ✕ livre=本 → ○ un livre=本
- 単語帳に名詞を書くときは、必ず冠詞を付けた形で書く。性を別に覚え直すことがなくなる。
- 辞書では男性名詞が n.m.、女性名詞が n.f. と示される。
性が意味を分ける語もある。数は少ないが、どれも頻出語である。
| 男性 | 意味 | 女性 | 意味 |
|---|---|---|---|
| le livre | 本 | la livre | ポンド(重さ・通貨) |
| le tour | 一周、順番 | la tour | 塔 |
| le mode | 方法、(文法の)法 | la mode | 流行 |
| le poste | 職、ポスト | la poste | 郵便局 |
| le page | 小姓 | la page | ページ |
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⚠️ 性でやりがちな間違い
- 日本語の感覚で「大きいものが男性」のように意味から決める。決まらない。
- 覚えるときに冠詞を落とす。後から性だけを覚え直すことになる。
- 母音で始まる名詞で性を見失う。l'homme も l'heure も同じ l' なので、辞書で確認する。
複数形の作り方
原則は語末に s を足すだけである。ただし第2章のとおり、この s は発音しない。
| 型 | 作り方 | 例 |
|---|---|---|
| 原則 | +s | livre → livres |
| -s, -x, -z で終わる | そのまま | le fils → les fils、le prix → les prix |
| -eau, -eu で終わる | +x | le bureau → les bureaux、le jeu → les jeux |
| -al で終わる | -aux | le journal → les journaux、l'animal → les animaux |
| -ail の一部 | -aux | le travail → les travaux |
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不規則なものは数語しかない。l'œil → les yeux(目)、monsieur → messieurs、madame → mesdames。
⚡ 複数は音で聞こえない
- livre と livres は同じ音。単数か複数かは冠詞の音で決まる([lə] / [le]、[œ̃] / [de])。
- だから聞き取りでは、名詞より先に冠詞を聞く。
3種類の冠詞
冠詞は3種類ある。それぞれ男性単数・女性単数・複数で形が変わる。
| 男性単数 | 女性単数 | 複数 | |
|---|---|---|---|
| 不定冠詞 | un | une | des |
| 定冠詞 | le(l') | la(l') | les |
| 部分冠詞 | du(de l') | de la(de l') | — |
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- 📘 不定冠詞:聞き手にとって初めて出てくる、特定されていない「1つの/いくつかの」を示す冠詞。
- 📘 定冠詞:どれを指すか決まっているもの、種類全体、唯一のものに付く冠詞。
- 📘 部分冠詞:数えずに量として捉えるものに付く冠詞。英語にはない種類である。
母音または無音のhで始まる名詞の前では、le と la が l' になる(エリジオン)。de l' も同じ理由でできる形である。
選び方は2つの問いで決まる。
⚡ 冠詞を選ぶ2つの問い
- 1. 数えるか、量として捉えるか。 量なら部分冠詞(du pain)。
- 2. どれを指すか決まっているか。 決まっていれば定冠詞(le pain que j'ai acheté)、決まっていなければ不定冠詞(un pain)。
定冠詞の3つの用法
定冠詞は「the」と同じだと考えると、フランス語では足りない。用法が3つある。
| 用法 | 例 | 説明 |
|---|---|---|
| 特定されたもの | Ferme la porte. | どの扉かは場面で決まっている |
| 種類の全体(総称) | J'aime le café. | コーヒーというもの全般 |
| 唯一のもの | le soleil、la France | ほかにない |
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2つ目が英語と大きく違う。好き嫌いを言う動詞(aimer、adorer、détester、préférer)のあとは、必ず定冠詞になる。
| 文 | 意味 |
|---|---|
| J'aime le café. | 私はコーヒーが好きだ(コーヒーというもの全般) |
| Je bois du café. | 私はコーヒーを飲む(ある量のコーヒー) |
| Je voudrais un café. | コーヒーを1杯ください(1杯という単位) |
同じ名詞でも、動詞と場面で冠詞が変わる。この3文の対比が、この章でいちばん大事な区別である。
部分冠詞 — 数えない量
数えられないもの、または数えずに量として捉えるものに付く。
| 例 | 訳 |
|---|---|
| du pain | パン(いくらかの) |
| de l'eau | 水 |
| de la viande | 肉 |
| du courage | 勇気 |
| de la patience | 忍耐 |
抽象名詞にも使う。Il a du courage.(彼には勇気がある)は、勇気を量として捉えている。
活動を表す faire + 部分冠詞 の形も頻出である。
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| faire du sport | スポーツをする |
| faire de la musique | 音楽をやる |
| faire du français | フランス語を勉強する |
⚠️ 部分冠詞でやりがちな間違い
- 数えられる名詞に部分冠詞を付ける。un livre であって du livre ではない。
- 「〜が好き」に部分冠詞を使う。J'aime du café. は誤りで、J'aime le café. が正しい。
- 部分冠詞に複数形があると考える。部分冠詞に複数形はない。複数で漠然とした数を言うときは不定冠詞の des を使う。
否定の de
否定文では冠詞が変わる。これはフランス語の初級でつまずく点の1つである。
⚡ 否定の de
- 直接目的語に付いた不定冠詞・部分冠詞は、否定文で de(d') になる。
- J'ai un frère. → Je n'ai pas de frère.
- Je bois du café. → Je ne bois pas de café.
- Il y a des livres. → Il n'y a pas de livres.
変わらない場合が2つある。ここを混同すると誤りになる。
| 変わらない場合 | 例 |
|---|---|
| 定冠詞のとき | J'aime le café. → Je n'aime pas le café. |
| être の後(属詞)のとき | C'est un livre. → Ce n'est pas un livre. |
⚠️ 否定の de の間違い
- 定冠詞まで de に変えてしまう。Je n'aime pas de café. は誤り。
- être の後でも de にしてしまう。Ce n'est pas de livre. は誤り。
- 「ない」ことを言っているのに冠詞をそのままにする。Je n'ai pas un frère. は、「1人ではない」という特別な意味になってしまう。
des が de になるとき
形容詞が名詞の前に置かれると、複数の不定冠詞 des は de になる。
| 形 | 例 |
|---|---|
| 形容詞が後ろ | des livres intéressants |
| 形容詞が前 | de beaux livres、de grandes maisons |
これは書き言葉での規則で、話し言葉では des のまま言うことも多い。答案やレポートでは de に直す。形容詞の位置については第6章で扱う。
提示表現 — c'est と il y a
名詞を初めて話題に出すときの型が3つある。
| 型 | 使い方 | 例 |
|---|---|---|
| c'est / ce sont | これは〜だ、と示す | C'est un livre./Ce sont des étudiants. |
| il y a | 〜がある、いる | Il y a un chat dans le jardin. |
| voici / voilà | ここに/そこに〜がある | Voici mon livre./Voilà la gare. |
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c'est と il est の使い分けは、初級で最も間違えやすい点の1つである。
| 形 | 後ろに来るもの | 例 |
|---|---|---|
| C'est + 冠詞つき名詞 | 冠詞が要る | C'est un étudiant. |
| Il est + 職業・国籍 | 冠詞を付けない | Il est étudiant./Elle est française. |
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⚠️ 提示表現の間違い
- Il est un étudiant. と言ってしまう。職業・身分・国籍を il est で言うときは無冠詞。
- il y a の否定で冠詞を残す。Il n'y a pas de chat が正しい。
- ce sont を忘れて c'est を複数にも使う。書き言葉では Ce sont des étudiants. と直す。
読む・聴く
まず、この章の文法だけで書いた文を音にする。以下は本教材で作成した例文である。
| フランス語 | 意味 | 確認する点 |
|---|---|---|
| C'est un livre intéressant. | これは面白い本だ。 | 不定冠詞、c'est の後は冠詞つき |
| J'aime le sport et la musique. | 私はスポーツと音楽が好きだ。 | 好き嫌いの動詞の後は定冠詞 |
| Je fais du sport tous les jours. | 私は毎日スポーツをする。 | 活動の faire + 部分冠詞 |
| Il n'y a pas de café à la maison. | 家にコーヒーがない。 | 否定の de |
| La discipline est une habitude. | 規律は習慣である。 | 総称の定冠詞、属詞の不定冠詞 |
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次に、実際に目にする形で確かめる。フランスのカフェや店で使われる表現には、この章の3つの冠詞がそのまま出てくる。
| 表現 | どの冠詞か |
|---|---|
| un café, s'il vous plaît | 不定冠詞(1杯という単位) |
| de l'eau, s'il vous plaît | 部分冠詞(量) |
| l'addition, s'il vous plaît | 定冠詞(この席の勘定と決まっている) |
同じ「〜をください」でも冠詞が3種類とも出る。冠詞は文法の飾りではなく、話し手が対象をどう捉えているかを示す部分だと分かる例である。
⚡ 第3章の通過チェック
- 名詞の性の手がかりになる語尾を、男性・女性それぞれ3つ言える
- 複数形の作り方を5つの型で言える
- 3種類の冠詞の形を、男性単数・女性単数・複数まで書ける
- J'aime le café. / Je bois du café. / Je voudrais un café. の違いを説明できる
- 否定の de になる場合と、ならない2つの場合を言える
- C'est un étudiant. と Il est étudiant. の違いを言える
次章へ
名詞を冠詞つきで置けるようになったので、次はそれを主語にして文を作る。次章では主語人称代名詞と、être・avoir の現在形、そして否定文と疑問文の作り方を扱う。
この2つの動詞は、それ自体が頻出であるだけでなく、第11章の複合過去で助動詞として使う。ここでの活用が、後の章の土台になる。