語彙|第21章 単語帳の使い方 — 語彙をどう増やすか
この章の狙い
要点: 文法は20章で終わったが、語彙には終わりがない。そして読めない原因の大半は、文法ではなく語彙にある。
この章で増やし方の手順を決め、第22章から第25章で A1 から B2 までの約2,500語を主題別に並べる。第26章が語法と熟語にあたる。
CEFRのレベルと語彙量
CEFR は、ヨーロッパで使われている言語能力の共通の物差しで、A1・A2・B1・B2・C1・C2 の6段階に分かれる(第1章で扱った)。フランス語の検定試験もこの段階に対応している。
| 段階 | できること | 語彙量の目安 |
|---|---|---|
| A1 | 自分と身の回りのことを、短い文で言える | 600〜1,000語 |
| A2 | 日常のことを一通り言える。簡単な物語が読める | 1,500〜2,000語 |
| B1 | 意見を述べ、経験を語れる。原文の小説に手が届く | 3,000語前後 |
| B2 | 抽象的な話題を論じられる。批評文と論文が読める | 5,000語前後 |
← 横に動かして読めます →
⚠️ 語彙量の数え方には幅がある
- 語族を1語と数えるか、別々に数えるかで大きく変わる。 travail / travailler / travailleur を1語とするか3語とするか。
- この単語帳は約2,500語を収める。語族はまとめて1つの項目にしてある。
- 数を目標にしない。「B1の章の8割が分かる」を目標にするほうが実際的にあたる。
語彙の3つの層
同じ「知っている」でも、3つの段階がある。
| 層 | 状態 | 必要な作業 |
|---|---|---|
| 認識語彙 | 見れば意味が分かる | 読むために必要。まずここを増やす |
| 理解語彙 | 文の中で正しく取れる。多義語も文脈で判断できる | 例文と一緒に覚える |
| 使用語彙 | 自分で書ける・言える。性と前置詞まで正確 | 作文と会話で使う |
← 横に動かして読めます →
⚡ どの層を目標にするか
- 原文を読むのが目的なら、認識語彙を優先する。数で押す。
- 授業で話す・書くなら、使用語彙を増やす。数は少なくてよい。
- この単語帳は、認識語彙を主に、重要な語だけ使用語彙までという配分にしてある。
- ⚡ の付いた語は、性と前置詞まで覚える。それ以外は意味が分かれば十分にあたる。
名詞は性ごと覚える
フランス語の名詞には性がある。性を後から付け足すのは、覚え直すのとほぼ同じ手間がかかる。
⚡ 必ず冠詞と一緒に覚える
- この単語帳では、名詞をすべて un / une を付けて示す。
- le / la ではなく un / une を使うのは、母音で始まる語でも性が見えるからである。 l'avion では性が分からないが、 un avion なら分かる。
- 声に出すときも冠詞ごと言う。「アヴィオン」ではなく「アナヴィオン」と塊で覚える。
語尾には傾向がある。絶対ではないが、迷ったときの手がかりになる。
| 語尾 | 傾向 | 例 | 例外 |
|---|---|---|---|
| -tion, -sion | 女性 | une nation , une décision | ほぼ例外なし |
| -té, -tié | 女性 | une liberté , une amitié | un côté , un été , un comité |
| -ure, -ude | 女性 | une culture , une habitude | — |
| -ance, -ence | 女性 | une chance , une science | un silence |
| -eur(抽象) | 女性 | une couleur , une peur | un bonheur , un honneur |
| -age | 男性 | un voyage , un courage | une page , une image , une plage |
| -ment | 男性 | un moment , un document | — |
| -eau, -ou | 男性 | un bureau , un genou | une eau , une peau |
| -isme | 男性 | un réalisme | — |
| -oir | 男性 | un espoir , un devoir | — |
← 横に動かして読めます →
⚠️ 性を間違えやすい語
- 男性: un problème , un système , un poème , un thème , un musée , un lycée , un livre , un groupe , un exemple , un article , un espace , un travail , un choix , un pays , un corps , un cœur
- 女性: une eau , une main , une fin , une nuit , une dent , une voix , une fois , une clé , une idée , une année , une méthode , une crise , une base , une phrase
語族で覚える
1語を覚えるとき、その語族をまとめて見ておくと、覚える量あたりの効果が大きい。
| 名詞 | 動詞 | 形容詞 | 副詞 |
|---|---|---|---|
| un travail 仕事 | travailler 働く | travailleur 勤勉な | — |
| une force 力 | forcer 強いる | fort 強い | fortement 強く |
| une pensée 考え | penser 考える | pensif 物思わしげな | — |
| une liberté 自由 | libérer 解放する | libre 自由な | librement 自由に |
| un changement 変化 | changer 変える | changeant 変わりやすい | — |
← 横に動かして読めます →
⚡ 接尾辞から品詞が分かる
- -tion , -ment , -age , -eur → 名詞
- -er , -ir , -re → 動詞の不定形
- -eux , -if , -able , -al → 形容詞
- -ment → 副詞(名詞の -ment と同じ形なので注意。 un moment は名詞、 lentement は副詞)
コロケーション
- 📘 コロケーション:どの語とどの語が一緒に使われやすいか、という結びつきのこと。辞書の訳語だけでは分からない。
動詞と名詞の結びつきは、そのまま覚えるしかない。
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| faire du sport | スポーツをする |
| faire attention | 注意する |
| faire des progrès | 上達する |
| prendre une décision | 決断する |
| prendre l'habitude de | 〜する習慣をつける |
| prendre des notes | ノートを取る |
| avoir besoin de | 〜が必要である |
| avoir envie de | 〜したい |
| avoir raison | 正しい |
| poser une question | 質問する |
| suivre un cours | 授業を取る |
⚠️ 日本語から直訳しない
- 「質問する」は demander une question ではなく poser une question にあたる。
- 「授業を取る」は prendre un cours より suivre un cours が普通である。
- 迷ったら、辞書の用例欄を見る。訳語の欄ではなく用例欄に、この情報がある。
偽の友
- 📘 偽の友:英語や日本語の外来語と形が似ているのに、意味が違う語のこと。
| フランス語 | 実際の意味 | まぎらわしい語 |
|---|---|---|
| une lecture | 読書 | 講義ではない |
| une librairie | 書店 | 図書館は une bibliothèque |
| assister à | 出席する | 手伝うではない |
| une expérience | 経験・実験 | 両方の意味がある |
| un roman | 小説 | ローマ風ではない |
| une conférence | 講演 | 会議は une réunion |
| actuellement | 現在 | 実際にはではない |
| une phrase | 文 | 句ではない |
← 横に動かして読めます →
覚え方の手順
⚡ 1日の回し方
- 1. 新しい語を10〜20語見る。主題ごとに、まとまりで。
- 2. 例文と一緒に声に出す。冠詞ごと、前置詞ごと。
- 3. 一問一答で確かめる。問題演習の「語彙」の分野を回す。
- 4. 翌日・3日後・1週間後にもう一度。間隔をあけて繰り返すほうが定着する。
- 5. 読んでいて出会ったら、印を付ける。再会した語が、本当に覚えた語にあたる。
⚠️ やってはいけない覚え方
- 五十音順やアルファベット順で覚える。関連のない語が並ぶので、思い出す手がかりがない。
- 訳語だけを覚える。性・前置詞・コロケーションが抜けると、読めても書けない。
- 一度で完璧にしようとする。忘れることを前提に、回数で押す。
- 例文を飛ばす。多義語は文脈がないと判断できない。
この単語帳の使い方
| 章 | 内容 | 語数の目安 |
|---|---|---|
| 第22章 | A1 — 生活の土台になる語 | 約600語 |
| 第23章 | A2 — 日常を語り切る語 | 約700語 |
| 第24章 | B1 — 意見と社会を語る語 | 約700語 |
| 第25章 | B2 — 論じるための語 | 約500語 |
| 第26章 | 語法と熟語 — 語をつなぐ形 | — |
← 横に動かして読めます →
⚡ 表の読み方
- 名詞は un / une 付き。そのまま声に出す。
- 動詞は不定形。不規則なものと、取る前置詞は注に書いてある。
- 形容詞は男性形と、括弧内に女性形の変化部分。 grand(e) は grand / grande にあたる。
- 各主題のあとに、注意すべき語の使い方と例文を置いてある。
- 例文は、その段階までに学んだ文法だけで書いてある。A1の章に接続法は出てこない。
⚡ 第21章の通過チェック
- CEFRの6段階と、A1からB2までの語彙量の目安を言える
- 語彙の3つの層を言い、原文を読むのに優先すべき層を言える
- 名詞を un / une で覚える理由を言える
- 女性名詞になりやすい語尾を4つ、男性名詞になりやすい語尾を4つ言える
- 語族でまとめて覚える利点を言える
- コロケーションとは何か、辞書のどこを見るかを言える
- 偽の友を4組言える
- 覚え方の5段階と、やってはいけない4つを言える
次章へ
次章から語彙の一覧に入る。まず A1 — 自分と身の回りのことを言うための約600語である。
人と家族、体、数と時間、食べ物、家、街、学校、そして最も使う動詞と形容詞。ここが抜けていると、上の段階の語をいくら覚えても文にならない。すでに知っている語が多いはずなので、確認しながら速く回す。