考えを述べる|第18章 話法と時制の一致、論理をつなぐ表現
この章の狙い
要点: 人の発言を伝える形(話法)には、時制を一段ずらすという規則がある。ここまでに学んだ時制がすべて関わるので、この章は初級文法の総仕上げにあたる。あわせて、意見を筋道立てて述べるための接続表現をまとめる。
話法は読解でも作文でも避けて通れない。小説では登場人物の発言が、論文では先行研究の主張が、どちらも間接話法で書かれる。論理をつなぐ表現は、レポートを書くときにそのまま使う道具になる。
直接話法と間接話法
- 📘 直接話法:発言をそのままの形で引用する言い方。フランス語では « » で囲む。
- 📘 間接話法:発言を話し手の言葉に直して伝える言い方。que に導かれる従属節になる。
| 直接話法 | 間接話法 |
|---|---|
| Il dit : « Je suis fatigué. » | Il dit qu'il est fatigué. |
| Elle dit : « J'ai fini. » | Elle dit qu'elle a fini. |
人称が変わることに注意する。「私は」と言った人を、伝える側は「彼は」と呼ぶ。
疑問文と命令文の間接話法
もとの文の種類によって、つなぐ語が変わる。
| もとの文 | つなぐ語 | 例 |
|---|---|---|
| oui / non で答える疑問文 | si | Il demande si tu viens. |
| que / qu'est-ce que(物・目的語) | ce que | Il demande ce que tu fais. |
| qu'est-ce qui(物・主語) | ce qui | Il demande ce qui se passe. |
| qui、où、quand、comment、pourquoi | そのまま | Il demande où tu habites. |
| 命令文 | de + 不定形(ふていけい) | Il me dit de venir. |
← 横に動かして読めます →
⚡ 間接話法の3つの注意
- si は「もし」ではない。ここでは「〜かどうか」を表す。
- est-ce que は消える。間接話法では倒置も est-ce que も使わない。
- 命令文は de + 不定形になる。否定なら Il me dit de ne pas venir.
時制の一致
主節の動詞が過去のとき、従属節の時制が一段ずれる。
| 直接話法(もとの時制) | 間接話法(主節が過去のとき) |
|---|---|
| 現在 | 半過去 |
| 複合過去 | 大過去 |
| 単純未来 | 条件法(じょうけんほう)現在 |
| 前未来 | 条件法過去 |
| 例 | 変化 |
|---|---|
| Il a dit : « Je suis fatigué. » → Il a dit qu'il était fatigué. | 現在 → 半過去 |
| Il a dit : « J'ai fini. » → Il a dit qu'il avait fini. | 複合過去 → 大過去 |
| Il a dit : « Je viendrai. » → Il a dit qu'il viendrait. | 単純未来 → 条件法現在 |
⚡ 変わらない時制
- 半過去・大過去・条件法は、すでにずれた形なのでそのまま。
- 主節が現在のときは何も変わらない(Il dit qu'il est fatigué.)。
この規則があるので、条件法が「未来の代わり」として現れることがある。第15章で見た条件法の用法に、もう1つ加わることになる。読解で条件法を見たら、時制の一致による形かどうかも確かめる。
時と場所の副詞の書き換え
主節が過去のときは、副詞も基準を移す。
| 直接話法 | 間接話法 |
|---|---|
| aujourd'hui | ce jour-là |
| hier | la veille |
| demain | le lendemain |
| maintenant | alors |
| ici | là |
Il a dit : « Je pars demain. » → Il a dit qu'il partait le lendemain.
「明日」は発言した人にとっての明日なので、伝える時点では「その翌日」になる。日本語でも同じことをしているが、フランス語では語が決まっている。
論理をつなぐ表現
意見文やレポートで使う接続表現を、働きごとにまとめる。この一覧が、そのまま作文の骨組みになる。
| 働き | 表現 |
|---|---|
| 列挙 | d'abord(まず)/ensuite、puis(次に)/enfin(最後に) |
| 追加 | de plus、en outre(さらに)/aussi(〜も) |
| 対立 | mais(しかし)/cependant、pourtant(それでも)/en revanche(一方) |
| 原因 | parce que(〜だから)/car(というのも)/puisque(〜なのだから)/comme(〜なので) |
| 結果 | donc(だから)/alors(それで)/c'est pourquoi(だから)/par conséquent(したがって) |
| 譲歩 | bien que + 接続法(〜だが)/malgré + 名詞(〜にもかかわらず) |
| 例示 | par exemple(たとえば)/en effet(実際) |
| 要約 | bref(要するに)/en somme(つまり)/en conclusion(結論として) |
⚠️ 紛らわしい組
- parce que と car parce que は理由を尋ねられた答えになれるが、car は文頭に置けない。
- puisque と parce que puisque は相手も知っている理由を示す。
- en effet と en fait en effet は「実際そのとおりで」(確認)、en fait は「実は」(訂正)。意味が逆に近い。
意見を述べる型
レポートでも口頭発表でも使う、決まった言い方がある。
| 型 | 例 |
|---|---|
| 意見を示す | À mon avis, …/Selon moi, …/Je pense que + 直説法(ちょくせつほう) |
| ぼかす | Il me semble que …/On pourrait dire que …(第15章) |
| 反論する | Certes, …, mais …(たしかに〜だが) |
| 例を出す | Par exemple, …/Prenons l'exemple de … |
| まとめる | En conclusion, …/Pour conclure, … |
Certes …, mais … は、フランス語の論述で非常によく使う型である。相手の主張をいったん認めてから反論する形で、レポートの説得力を上げる。
読む・聴く
読み物 — Ce que mon professeur m'a dit(先生に言われたこと)
間接話法・時制の一致・論理をつなぐ表現がすべて出る。
| フランス語 | 日本語 |
|---|---|
| Mon professeur m'a dit que la lecture était la clé. | 先生は、読書が鍵だと私に言った。 |
| Il m'a demandé si je lisais chaque jour. | 先生は、私が毎日読んでいるかと尋ねた。 |
| Je lui ai répondu que je commençais tout juste. | 私は、始めたばかりだと答えた。 |
| Il m'a dit de ne pas m'inquiéter : d'abord la régularité, ensuite la vitesse. | 先生は心配するなと言った。まず継続、次に速さだと。 |
| À mon avis, il a raison. | 私の考えでは、先生は正しい。 |
| Cependant, je pense qu'il faut aussi écrire. | しかし、書くことも必要だと思う。 |
| En effet, on ne retient pas ce qu'on ne réutilise pas. | 実際、使い直さないものは身につかない。 |
| Donc j'écris trois phrases par jour. | だから私は1日に3文書く。 |
語注
| 語 | 品詞・意味 |
|---|---|
| lecture | 女性名詞。読書 |
| clé | 女性名詞。鍵 |
| tout juste | ちょうど、〜したばかり |
| s'inquiéter | 代名動詞(だいめいどうし)。心配する |
| régularité | 女性名詞。規則正しさ、継続 |
| retenir | 動詞(第3群)。覚えている、保つ |
| réutiliser | 動詞(第1群)。再利用する |
| phrase | 女性名詞。文 |
読みどころ
- m'a dit que la lecture était la clé は時制の一致。もとの発言は « La lecture est la clé. » で、主節が複合過去なので半過去になっている。
- m'a demandé si je lisais は、oui / non で答える疑問文の間接話法。si は「もし」ではない。
- m'a dit de ne pas m'inquiéter は命令文の間接話法。de + 不定形で、否定は ne pas を不定形の前にまとめて置く。
- d'abord …, ensuite … は列挙、Cependant は対立、En effet は例示・確認、Donc は結果。4種類の接続表現が1つの段落に入っている。
- je pense qu'il faut は、penser que の肯定文なので直説法(第16章)。ただし il faut のあとに que が続けば接続法(せつぞくほう)になる。
大学のフランス語で
論文では、先行研究の主張が間接話法で紹介される。
| フランス語 | 日本語 |
|---|---|
| Barthes affirme que l'auteur est mort. | バルトは作者は死んだと主張する。 |
| Certains critiques ont soutenu que ce texte était une satire. | 一部の批評家は、このテクストが風刺(ふうし)であると主張した。 |
| Certes, cette lecture est séduisante, mais elle néglige le contexte. | たしかにこの読解は魅力的だが、文脈を軽視している。 |
1つ目は主節が現在なので時制の一致が起きず、2つ目は主節が複合過去なので était になっている。この違いは、読むときに「筆者がいま述べているのか、過去の議論を紹介しているのか」を分ける手がかりになる。
3つ目の Certes …, mais … が、先行研究を扱うときの標準的な型である。まず相手の議論を正確に紹介し、そのうえで自分の位置を示す。これは第7章にあたる文学研究の作法そのもので、レポートの評価に直接効く。
⚡ 第18章の通過チェック
- 直接話法を間接話法に直せる(平叙文・疑問文・命令文)
- si が「〜かどうか」を表す場合を説明できる
- 時制の一致の4つの対応を言える
- 変わらない時制を3つ言える
- 時と場所の副詞の書き換えを5組言える
- 論理をつなぐ表現を、働きごとに3つずつ言える
- parce que と car、en effet と en fait の違いを言える
- Certes …, mais … の使い方を説明できる
次章へ
ここまでで、現代フランス語の初級文法はひととおり終わった。次章では、文学作品を原文で読むために必要な形を扱う。
小説の地の文で使われる単純過去、その複合形の前過去、そして古い文章に出てくる接続法半過去。どれも自分で書くことはないが、読めなければ作品に入れない。あわせて、詩を読むための音節(おんせつ)の数え方(第2章の e muet がここで効く)も扱う。