語をつなぐ|第14章 関係代名詞と強調構文
この章の狙い
要点: 関係代名詞は、読解でいちばん効く文法である。フランス語の長い文が読めない原因のほとんどは、単語ではなく「どの関係代名詞が、どこからどこまでを修飾しているか」を見失うことにある。
覚える形は4つ(qui・que・où・dont)と、前置詞を伴う形だけである。選び方は、関係代名詞が節の中で果たす役割で決まる。意味ではなく構造で決まるので、機械的に判断できる。
関係代名詞とは
- 📘 関係代名詞:2つの文を1つにまとめ、後ろの文で前の名詞を説明する語。
- 📘 先行詞:関係代名詞が指している、前に置かれた名詞。
| 2つの文 | 1つにした形 |
|---|---|
| Je lis un livre. + Ce livre est difficile. | Le livre que je lis est difficile. |
| J'ai un ami. + Cet ami habite à Paris. | J'ai un ami qui habite à Paris. |
関係代名詞のあとは、独立した1つの文になっている(主語と動詞がそろっている)。この見方ができると、長い文でも構造が取れる。
qui と que
この2つの選び方が基本になる。先行詞が人か物かは関係ない。
⚡ qui と que の決め方
- 関係代名詞が節の中で主語なら qui(後ろに動詞が続く)
- 関係代名詞が節の中で目的語なら que(後ろに主語+動詞が続く)
- qui はエリジオンしない(qui il のまま)。que は qu' になる(qu'il)。
| 例 | 節の中の役割 |
|---|---|
| L'homme qui parle est mon professeur. | qui が parle の主語 |
| L'homme que je vois est mon professeur. | que が vois の目的語(主語は je) |
| Le livre qui est sur la table … | qui が est の主語 |
| Le livre que j'ai acheté … | que が acheté の目的語 |
後ろに主語があるかどうかを見るだけで判断できる。これが最も確実な見分け方である。
où
場所と時を表す。英語の where と when の両方にあたる。
| 例 | 意味 |
|---|---|
| La ville où j'habite est petite. | 私が住んでいる町は小さい |
| Le jour où je suis arrivé, il pleuvait. | 私が着いた日、雨が降っていた |
| Il y a des moments où je ne comprends rien. | 何も分からないときがある |
時を表す où は、日本語話者が見落としやすい。le jour où、le moment où、l'époque où はまとまりとして覚える。
dont
de を含んだ関係代名詞である。「de + 名詞」の形になる部分をまとめて置き換える。
| もとの形 | dont を使った形 |
|---|---|
| Je parle de ce livre. | Le livre dont je parle … |
| J'ai besoin de ce livre. | Le livre dont j'ai besoin … |
| Le fils de cet homme est médecin. | L'homme dont le fils est médecin … |
3つ目の形が特に読みにくい。dont のあとに「定冠詞 + 名詞」が来たら、所有の関係(〜の…)だと考える。
| 例 | 意味 |
|---|---|
| L'auteur dont je connais le nom | 私が名前を知っている作家 |
| Un roman dont l'action se passe à Paris | 舞台がパリである小説 |
⚠️ dont のあとに所有形容詞を重ねない
- ✕ L'auteur dont son nom … → ○ L'auteur dont le nom …
- dont がすでに「その人の」を含んでいるので、所有形容詞は付けない。
前置詞を伴う関係代名詞
de 以外の前置詞のときは、先行詞が人か物かで形が変わる。
| 先行詞 | 形 | 例 |
|---|---|---|
| 人 | 前置詞 + qui | La personne à qui je parle … |
| 物 | 前置詞 + lequel | La table sur laquelle j'ai posé le livre … |
← 横に動かして読めます →
lequel は先行詞の性数で変化する。
| 男性 | 女性 | |
|---|---|---|
| 単数 | lequel | laquelle |
| 複数 | lesquels | lesquelles |
← 横に動かして読めます →
à と de は縮約(しゅくやく)する。auquel・auxquels・duquel・desquels。ただし de 単独なら dont を使うほうが普通である。
ce qui / ce que / ce dont
先行詞が名詞ではなく「こと」のときに使う。
| 形 | 節の中の役割 | 例 |
|---|---|---|
| ce qui | 主語 | Ce qui m'intéresse, c'est la littérature. |
| ce que | 目的語 | Ce que je veux dire est simple. |
| ce dont | de を含む | Ce dont j'ai besoin, c'est du temps. |
← 横に動かして読めます →
「〜すること」「〜するもの」にあたる。qui / que / dont の選び方は、先行詞がある場合とまったく同じである。
Ce qui …, c'est … の形は、強調としてよく使う。書き出しでよく現れるので、読解でも作文でも役に立つ。
que と過去分詞の一致
第11章の一致の規則が、ここで実際に働く。
| 例 | 一致 |
|---|---|
| La lettre que j'ai écrite | する(que が指す la lettre が前にある) |
| Les livres que j'ai lus | する |
| La femme qui est arrivée | する(être + 自動詞なので主語に一致) |
que のときだけ、avoir をとる動詞でも一致が起きる。qui のときは節の中の主語なので、動詞は主語に合わせて活用する。
強調構文
フランス語には、語順を変えずに一部だけを強調する型がある。
⚡ c'est … qui / c'est … que
- 強調するのが主語なら c'est … qui
- 強調するのがそれ以外なら c'est … que
| もとの文 | 強調した形 | 何を強調しているか |
|---|---|---|
| Paul a écrit cette lettre. | C'est Paul qui a écrit cette lettre. | 主語(ポールが書いた) |
| C'est cette lettre que Paul a écrite. | 目的語(この手紙を書いた) | |
| Je travaille ici depuis 2020. | C'est ici que je travaille. | 場所 |
← 横に動かして読めます →
動詞は強調された語に一致する。C'est moi qui ai raison.(正しいのは私だ)で、ai は moi に合わせた形である。
強調構文は話し言葉でも書き言葉でも非常に多い。とくに評論では、論点を絞り込むために繰り返し使われる。
読解のコツ — どこまでが関係節か
長い文を読むときの手順は決まっている。
⚡ 関係節を切り出す3手順
- 1. 関係代名詞を見つける(qui・que・où・dont・前置詞 + lequel)。
- 2. その直前の名詞が先行詞。
- 3. 次の動詞のかたまりが終わるところまでが関係節。カンマがあればそこで切れることが多い。
- 切り出したら、関係節をいったん外して主文だけを読む。主語と動詞が見えたら、説明を戻す。
この手順は、フランス語の学術論文を読むときにそのまま使う。1文が5行になることも珍しくないが、構造は同じである。
読む・聴く
読み物 — Ce que je lis(私が読んでいるもの)
4つの関係代名詞がすべて出る。それぞれの先行詞を確かめながら読む。
| フランス語 | 日本語 |
|---|---|
| Le livre que je lis en ce moment est difficile. | 今読んでいる本は難しい。 |
| C'est un roman qui parle de la guerre. | それは戦争について語る小説だ。 |
| L'auteur, dont je ne connaissais pas le nom, est mort en 1960. | その作家は、私が名前を知らなかったのだが、1960年に亡くなった。 |
| Il y a des passages où je ne comprends rien. | まったく分からない箇所がある。 |
| Ce que je fais alors est simple : je relis. | そのとき私がすることは単純だ。読み返す。 |
| Ce qui compte, ce n'est pas la vitesse, c'est la régularité. | 大事なのは速さではなく、続けることだ。 |
語注
| 語 | 品詞・意味 |
|---|---|
| en ce moment | いま、目下 |
| guerre | 女性名詞。戦争 |
| auteur | 男性名詞。作家、著者 |
| passage | 男性名詞。(本の)箇所、通路 |
| relire | 動詞(第3群)。読み返す |
| compter | 動詞(第1群)。数える、重要である |
| vitesse | 女性名詞。速さ |
| régularité | 女性名詞。規則正しさ、継続 |
読みどころ
- que je lis は目的語。後ろに主語 je があるので que。
- qui parle は主語。後ろにすぐ動詞が続くので qui。
- dont je ne connaissais pas le nom は「その名前を知らなかった」。dont のあとに le nom が来ているので、所有の関係である。
- où je ne comprends rien の où は場所ではなく、本の箇所を指している。
- Ce que je fais と Ce qui compte は、先行詞のない形。fais には主語 je があるので ce que、compte には主語がないので ce qui。この対比が、qui と que の見分け方をそのまま示している。
- 最後の文は Ce qui …, c'est … の強調の型である。
大学のフランス語で
論文では、関係節が何重にも重なる。手順どおりに切り出せば読める。
| フランス語 | 日本語 |
|---|---|
| C'est dans ce contexte que l'auteur écrit son roman. | 作者がその小説を書くのは、こうした文脈においてである。 |
| Le problème dont il s'agit ici n'est pas nouveau. | ここで問題になっていることは新しくない。 |
| Ce qui frappe le lecteur, c'est la simplicité du style. | 読者を打つのは、文体の簡素さである。 |
2つ目の dont il s'agit(第8章の il s'agit de と組み合わさった形)と、3つ目の Ce qui …, c'est … は、批評文で最も頻繁に出会う2つの型である。この2つを形ごと覚えておくと、論文の読み始めが軽くなる。
⚡ 第14章の通過チェック
- qui と que を、節の中の役割で選び分けられる
- qui はエリジオンせず、que は qu' になることを言える
- où が時にも使われることを、例で示せる
- dont が置き換えるものを言え、所有の形を読める
- dont のあとに所有形容詞を置かない理由を説明できる
- ce qui / ce que / ce dont の選び方を言える
- c'est … qui と c'est … que を使い分けられる
- 関係節を切り出す3手順を言える
次章へ
ここまでは、起きたこと・起きること・状態を述べる形だった。次章からは、現実ではないことを述べる形に入る。
条件法(じょうけんほう)は「もし〜なら〜だろう」を表すほか、語調をやわらげる形として日常でも頻出する。作り方は、第13章で覚えた単純未来の語幹(ごかん)に半過去の語尾を足すだけである。新しく覚えることはほとんどない。