語をつなぐ|第11章 複合過去 — 助動詞の選択と過去分詞の一致
この章の狙い
要点: 複合過去は「助動詞 + 過去分詞(かこぶんし)」で作る。決めることは3つだけである。過去分詞の形、助動詞に avoir を使うか être を使うか、そして過去分詞を一致させるかどうか。この3つを分けて考えると、複雑に見える規則が整理できる。
複合過去は、話し言葉と現代の書き言葉で、過去を語るときの基本形である。日記も会話も新聞もこの形で書かれる。文学作品の地の文だけが別の形(単純過去、第19章)を使う。
作り方
- 📘 複合過去:avoir または être の現在形に過去分詞を続けて作る過去時制。完了した出来事を表す。
| 主語 | 助動詞 | 過去分詞 |
|---|---|---|
| J' | ai | parlé |
| Tu | as | parlé |
| Il | a | parlé |
← 横に動かして読めます →
助動詞は活用し、過去分詞は原則として変わらない。否定・疑問・代名詞は、すべて助動詞のほうに付く。
| 型 | 例 |
|---|---|
| 否定 | Je n'ai pas parlé. |
| 疑問(倒置) | As-tu parlé ? |
| 代名詞 | Je l'ai vu./Je ne l'ai pas vu. |
⚠️ 位置でやりがちな間違い
- 否定で過去分詞をはさむ。J'ai pas parlé ではなく、Je n'ai pas parlé.(ne … pas は助動詞をはさむ)
- 代名詞を過去分詞の前に置く。Je l'ai vu. であって、J'ai le vu. ではない。
過去分詞の作り方
群ごとに規則がある。第3群だけが不規則だが、頻出のものは数十語しかない。
| 群 | 作り方 | 例 |
|---|---|---|
| 第1群(-er) | -é | parler → parlé、aller → allé |
| 第2群(-ir) | -i | finir → fini、choisir → choisi |
| 第3群 | 不規則 | 下の表 |
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| 不定形(ふていけい) | 過去分詞 | 不定形 | 過去分詞 |
|---|---|---|---|
| avoir | eu | voir | vu |
| être | été | lire | lu |
| faire | fait | boire | bu |
| prendre | pris | savoir | su |
| mettre | mis | pouvoir | pu |
| dire | dit | vouloir | voulu |
| écrire | écrit | devoir | dû |
| ouvrir | ouvert | recevoir | reçu |
| offrir | offert | connaître | connu |
| venir | venu | vivre | vécu |
| tenir | tenu | suivre | suivi |
| partir | parti | attendre | attendu |
| naître | né | répondre | répondu |
| mourir | mort | perdre | perdu |
← 横に動かして読めます →
-u で終わるものが多い(vu、lu、bu、su、pu、voulu、connu、vécu)ことに気づくと、覚える負担が減る。
avoir か être か
ほとんどの動詞は avoir をとる。être をとるのは2種類だけである。
⚡ être をとるのは2種類だけ
- 移動や状態の変化を表す自動詞(16語ほど)
- すべての代名動詞(だいめいどうし)
être をとる自動詞は、対になる語で覚えると入りやすい。
| 対 | 動詞 |
|---|---|
| 行く/来る | aller / venir |
| 着く/出発する | arriver / partir |
| 入る/出る | entrer / sortir |
| 上がる/下がる | monter / descendre |
| 生まれる/死ぬ | naître / mourir |
| とどまる/落ちる | rester / tomber |
| 戻る(3語) | retourner / revenir / rentrer |
| なる | devenir |
同じ語でも、目的語をとると avoir に変わる。これは読解でも作文でも効く。
| être(自動詞) | avoir(他動詞) |
|---|---|
| Je suis monté au troisième étage.(3階へ上がった) | J'ai monté les valises.(スーツケースを上げた) |
| Elle est sortie.(彼女は出かけた) | Elle a sorti son livre.(彼女は本を取り出した) |
| Nous sommes passés devant la gare.(駅の前を通った) | Nous avons passé un examen.(試験を受けた) |
目的語があるかどうかで判断する。意味で覚えようとすると必ず崩れる。
過去分詞の一致
3つの場合に分けて考える。この分け方をしないと、規則が矛盾して見える。
1. être をとる自動詞のとき — 主語に一致する
| 主語 | 例 |
|---|---|
| 男性単数 | Il est allé. |
| 女性単数 | Elle est allée. |
| 男性複数 | Ils sont allés. |
| 女性複数 | Elles sont allées. |
形容詞の一致(第6章)と同じ形である。女性形の e で語末の子音が読まれるようになるものもある(Elle est morte [mɔʁt])。
2. avoir をとるとき — 原則として一致しない
Elle a parlé. Ils ont mangé. 主語が何であっても過去分詞は変わらない。
ただし例外が1つある。直接目的補語が過去分詞より前にあるときだけ一致する。
| 例 | なぜ一致するか |
|---|---|
| Je les ai vus. | les(直接目的補語)が前にある |
| La lettre que j'ai écrite. | que が指す la lettre が前にある(第14章) |
| Quels livres as-tu lus ? | 疑問詞が前にある |
前に出ていない場合は一致しない。J'ai vu les livres. はそのままである。
3. 代名動詞のとき — 代名詞が直接目的補語なら一致する
代名動詞は必ず être をとるが、一致するかどうかは se の役割で決まる。
| 例 | 一致 | 理由 |
|---|---|---|
| Elle s'est lavée. | する | se が直接目的補語(自分自身を洗った) |
| Elle s'est lavé les mains. | しない | 直接目的補語は les mains で、se は間接 |
| Ils se sont téléphoné. | しない | téléphoner à なので se は間接目的補語 |
← 横に動かして読めます →
⚠️ 一致でやりがちな間違い
- avoir のときに主語に一致させる。Elle a allée は誤り(そもそも aller は être をとる)。Elle a mangée も誤りで、Elle a mangé が正しい。
- 代名動詞をすべて一致させる。Ils se sont téléphoné は一致しない。
- 体の部分が続くのに一致させる。Elle s'est lavé les mains.(lavé のまま)
複合過去が表すもの
複合過去は、終わった出来事を「点」として示す。
| 例 | 意味 |
|---|---|
| Hier, j'ai lu ce livre. | 昨日この本を読んだ(読み終えた) |
| Il est parti à huit heures. | 彼は8時に出発した |
| J'ai habité à Paris pendant deux ans. | 2年間パリに住んでいた(期間が閉じている) |
3つ目のように、期間が示されていても、その期間が終わっていれば複合過去を使う。続いている状態や背景は次章の半過去で表す。この対立が、フランス語の過去で最も重要な区別である。
読む・聴く
読み物 — Hier(昨日)
この章までの文法だけで書いた文章である。助動詞が avoir か être かを、1文ずつ確かめながら読む。
| フランス語 | 日本語 |
|---|---|
| Hier, je me suis levé à cinq heures. | 昨日、私は5時に起きた。 |
| Je suis allé à la salle de sport. | 私はジムへ行った。 |
| J'ai fait une heure d'exercices. | 1時間運動をした。 |
| Après, j'ai pris une douche froide. | そのあと、冷たいシャワーを浴びた。 |
| Je suis rentré chez moi et j'ai lu vingt pages. | 家に帰り、20ページ読んだ。 |
| Le soir, j'ai préparé mes affaires pour le lendemain. | 夕方、翌日の支度をした。 |
| Je ne me suis pas couché tard. | 遅くは寝なかった。 |
語注
| 語 | 品詞・意味 |
|---|---|
| salle de sport | 女性名詞句。ジム、スポーツ施設 |
| exercice | 男性名詞。運動、練習問題 |
| douche | 女性名詞。シャワー |
| rentrer | 動詞(第1群)。帰る。être をとる |
| lendemain | 男性名詞。翌日 |
| tard | 副詞。遅く |
読みどころ
- je me suis levé と Je ne me suis pas couché は代名動詞なので être。否定は助動詞をはさむので、ne me suis pas の順になる。
- Je suis allé / Je suis rentré は移動の自動詞なので être。
- J'ai fait / j'ai pris / j'ai lu / j'ai préparé はすべて avoir。
- 書き手が女性なら、être をとる4文だけ e が付く(je me suis levée、je suis allée、je suis rentrée、je ne me suis pas couchée)。avoir の文は変わらない。この対比が一致の規則そのものである。
大学のフランス語で
論文や解説文でも、事実を述べるときは複合過去を使う。
| フランス語 | 日本語 |
|---|---|
| Flaubert a publié Madame Bovary en 1857. | フローベールは1857年に『ボヴァリー夫人』を刊行した。 |
| Ce roman a été traduit en japonais. | この小説は日本語に訳された。 |
| Les critiques l'ont beaucoup discuté. | 批評家たちはそれを盛んに論じた。 |
2つ目は受動態の複合過去(第17章)、3つ目は直接目的補語が前に出て一致している形である。
ただし、小説の地の文では複合過去ではなく単純過去が使われる。『ボヴァリー夫人』の本文は単純過去で書かれている。この違いは第19章で扱う。「解説は複合過去、作品本文は単純過去」と覚えておくと、読むときの構えができる。
⚡ 第11章の通過チェック
- 過去分詞を、3つの群それぞれの規則で作れる
- 不規則な過去分詞を20語以上言える
- être をとる自動詞を、対にして10語以上言える
- monter・sortir・passer が avoir をとる場合を説明できる
- 一致の3つの場合を、それぞれ例つきで言える
- Elle s'est lavée. と Elle s'est lavé les mains. の違いを説明できる
- 否定文と代名詞の位置を、助動詞を基準に説明できる
次章へ
複合過去は出来事を点として示す形だった。次章では、続いていた状態・繰り返していた習慣・場面の背景を表す半過去を扱う。
フランス語の過去は、この2つの使い分けがすべてと言ってよい。日本語には対応する区別がないので、規則ではなく「何を言おうとしているか」で選ぶ訓練が要る。あわせて、過去のさらに前を表す大過去もここで扱う。