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CHAPTER 12 通史 読む目安 約10分 / ⚡暗記ボックス 2

通史|第12章 近代詩の誕生 — ボードレールから象徴主義へ

この章の狙い

要点: 19世紀後半に、詩は世界を写すことをやめた。かわりに、言葉そのものの力で別の何かを立ち上げようとする。20世紀の詩は、ほぼすべてこの章の4人から始まる。

ボードレール・ヴェルレーヌ・ランボー・マラルメ。この4人は、それぞれ違う方向を切り開いた。まとめて「象徴主義」と呼ぶと大事なものが落ちるので、1人ずつ、何を新しくしたのかで整理する。

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前段 — 高踏派

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

ロマン主義の後、感情の吐露に反発する詩の一派が現れる。

  • 📘 高踏派:19世紀後半の詩の一派。感情を抑え、彫刻のように完成された形式を目指した
詩人 主張・作品
テオフィル・ゴーチエ 芸術のための芸術。詩に有用性を求めない
ルコント・ド・リール 古代を題材に、非人称的で堅固な詩を書く
  • 📘 芸術のための芸術:芸術は道徳や有用性に奉仕すべきではないという立場。19世紀後半の詩と小説の両方に影響した

ロマン主義(感情)への反発が高踏派(形式)、その両方を組み替えるのがボードレールという順序になる。

4人は、それぞれ別の方向を切り開いた ボードレール 美しくないものを詩の題材に 万物照応/現代性/散文詩 ヴェルレーヌ 意味より音楽を 奇数音節/曖昧さ/雄弁の否定 ランボー 感覚を壊して見者になる 「私とは一個の他者である」 マラルメ 名指さずに暗示する 統辞の解体/余白の使用 まとめて「象徴主義」と呼ぶと落ちるものがある。位置がそれぞれ違う。 ボードレールは先駆、マラルメは中心、ランボーは運動の外にいた。
近代詩の四人

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ボードレール

⊳ この節の問題を解く(3問・2枚)

  • 📘 シャルル・ボードレール(Charles Baudelaire, 1821-1867):近代詩の出発点とされる詩人。美術批評家でもあり、翻訳者でもあった。
作品
『悪の華』 1857年(起訴・有罪、6篇の削除
『悪の華』第2版 1861年
『パリの憂鬱』(散文詩) 1869年(死後)

フローベール『ボヴァリー夫人』と同じ1857年に起訴されたが、こちらは有罪になった(第11章)。

何が新しかったか

ボードレールの3つの新しさ

  • 題材 — 都市、群衆、貧困、老い、腐敗。「美しくないもの」を詩の題材にした。
  • 万物照応 — 色・音・香りが互いに対応し、目に見える世界の背後にある何かを指し示すという考え。象徴主義の出発点になる。
  • 現代性 — 移ろいゆく現在の中に、永遠の美を見出すという構え。都市を歩く詩人という形を作った。
  • 📘 万物照応:自然界のさまざまな要素が互いに呼応し、感覚を越えた統一を示すという考え。ボードレールの同名の詩に由来する。
  • 📘 散文詩:韻律(いんりつ)を持たない散文の形で書かれた詩。『パリの憂鬱』がこの形式を確立した。

都市を歩き、群衆の中で孤独である詩人という形は、その後の文学と批評に長く影響した。19世紀のパリという都市そのものが主題になっている点で、文化史の領域とも直接つながる。

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ヴェルレーヌ

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

  • 📘 ポール・ヴェルレーヌ(Paul Verlaine, 1844-1896):音楽性を最優先した詩人。ランボーとの関係と、その破局で知られる。
作品
『サチュルニアン詩集』 1866年
『艶なる宴』 1869年
『言葉なき恋歌』 1874年

「詩法」という詩の中で、自らの立場を述べている。

主張 内容
何よりも音楽を 意味より響き
奇数音節(おんせつ)を 12音節のような偶数の安定を避ける
明確さより曖昧(あいまい)さを 輪郭をぼかす
雄弁を捨てよ 声高な主張を避ける

「秋の歌」がその実践である(フランス語の教材で音節を数えた詩)。4音節・4音節・3音節という不安定な形が、内容そのものになっている。

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ランボー

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

  • 📘 アルチュール・ランボー(Arthur Rimbaud, 1854-1891):10代で詩を書き、20歳前後で詩をやめた。以後は商人としてアフリカへ渡った。
作品
「酔いどれ船」 1871年
『地獄の季節』 1873年(自費出版
『イリュミナシオン』 1886年(本人の関与なく刊行)

1871年の「見者の手紙」が、その考えを示している。

見者の詩人

  • 詩人はあらゆる感覚の錯乱(さくらん)によって見者となる
  • 詩人は自分の感覚を意図的に壊すことで、他人が見ないものを見る
  • 私とは一個の他者である」——書く主体そのものを疑う。
  • この2つの句は、20世紀の詩と批評で繰り返し引かれる

言葉の自明な意味を壊すという方向は、シュルレアリスム(第14章)が自分たちの先駆と見なすことになる。

20歳前後で書くのをやめたという事実そのものが、後世の神話を生んだ。作品と生涯が切り離せない読まれ方をしている点で、第2章のヴィヨンと似た位置にある。

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マラルメ

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

  • 📘 ステファヌ・マラルメ(Stéphane Mallarmé, 1842-1898):言葉の配置そのものを詩にした詩人。英語教師として生計を立て、自宅の「火曜会」に若い作家を集めた。
作品
『半獣神(はんじゅうしん)の午後』 1876年
『骰子一擲(とうしいってき)』 1897年

難解さで知られるが、その理由は明確である。

方針 内容
暗示 「事物を名指すのは、詩の楽しみの4分の3を奪うことだ」。名指さずに示す
統辞の解体 語順を通常の文法から外し、複数の読みを同時に成立させる
余白の使用 『骰子一擲』では、活字の大きさと余白の配置そのものが意味を持つ

『骰子一擲』は、詩を紙面の空間として構成した作品で、20世紀の視覚詩と現代美術に影響した

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象徴主義

⊳ この節の問題を解く(2問・2枚)

  • 📘 象徴主義:1886年にモレアスが宣言を発表して名前が定着した文学運動。目に見える世界の背後にあるものを、直接名指さずに暗示によって示そうとした
事項 内容
宣言 1886年、ジャン・モレアスが新聞に発表
何への反発か 自然主義の即物性(第11章)
先駆 ボードレール(万物照応)、ヴェルレーヌ、マラルメ
広がり 詩だけでなく、演劇・美術・音楽へ

自由詩の登場も、この時期である。定型(12音節、押韻)から離れた詩が書かれ始め、20世紀にはこちらが主流になる

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この時代の作品を読む

作品 読みどころ 原文の難しさ
『悪の華』「万物照応」 ソネット形式。照応の考えがそのまま書かれている 14行。詩の入門に向く
『パリの憂鬱』 散文詩。韻律がないぶん、初級でも読める 短く、文は明晰
ヴェルレーヌ「秋の歌」 音節数と音の効果。声に出して確かめる 最も短く易しい
ランボー「酔いどれ船」 イメージの連鎖。意味を追うより流れを追う 語彙が広い
マラルメ まず注釈つきの版で 原文だけでは読めない。専門の講読で扱う

← 横に動かして読めます →

詩の原文読解は、散文より早く始められる。短いからである。ヴェルレーヌ → ボードレールの散文詩 → ボードレールの韻文(いんぶん)という順が、負担が小さい。

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主要作品の中身

⊳ この節の問題を解く(3問・1枚)

ボードレール『悪の華』(1857年/1861年)

詩集全体が1つの構成を持つという点が新しい。「憂鬱と理想」に始まり、芸術・愛・都市・酒・悪・反抗を経て「死」で終わる。上昇しようとして落ちるという運動が全体を貫く。

部立て 内容
憂鬱と理想 芸術による上昇の試みと、そこから落ちる憂鬱
パリ情景 都市の群衆・老人・貧者。第2版で加えられた
悪の華・反抗・死 悪をくぐり抜けて未知へ向かう
論点 内容
主題 美と悪の共存、都市の経験、現代性
試験で問われる点 起訴と6篇の削除、第2版での構成の変更、「万物照応」の位置

ボードレール『パリの憂鬱』(1869年、死後)

散文で書かれた短い詩の集まり。街で出会った出来事、貧者、窓の向こうの人生。韻律を捨てても詩が成り立つことを示した。序文で「韻律も脚韻もない詩的な散文」を求めたと述べている。

論点 内容
主題 都市の断片、道徳的に落ち着かない結末
試験で問われる点 散文詩というジャンルの確立、韻文の同題材作品との比較

ランボー『地獄の季節』(1873年)

自分の過去の詩作を振り返り、それを否定する散文作品。「かつて、私の記憶が確かならば…」と始まり、言葉の錬金術を試みて失敗したと語る。自費で刷られ、ほとんど流通しなかった。

論点 内容
主題 詩そのものへの訣別(けつべつ)。書くことの限界
試験で問われる点 「見者の手紙」との関係、詩作放棄との関連づけ方(伝記に還元しすぎない扱い)

マラルメ『骰子一擲』(1897年)

「骰子の一擲は決して偶然を廃さないだろう」という一文が、大小さまざまな活字で、見開きの紙面全体に散らして配置される。行を追って読むこともできれば、活字の大きさごとに拾うこともできる。

論点 内容
主題 偶然と必然。紙面の空間そのものを詩の要素にする
試験で問われる点 余白の使用、20世紀の視覚詩・現代美術への影響

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年表

⊳ この節の問題を解く(1枚)

出来事
1857年 ボードレール『悪の華』(起訴・有罪)
1866年 ヴェルレーヌ『サチュルニアン詩集』
1871年 ランボー「見者の手紙」
1873年 ランボー『地獄の季節』
1874年 ヴェルレーヌ『言葉なき恋歌』
1876年 マラルメ『半獣神の午後』
1886年 モレアスの象徴主義宣言/ランボー『イリュミナシオン』刊行
1897年 マラルメ『骰子一擲』

⚠️ この章で混同しやすい形

  • 4人をまとめて「象徴主義」と呼ぶ。ボードレールは先駆、ランボーは運動の外、マラルメは中心。それぞれ位置が違う。
  • 『悪の華』を無罪と考える。有罪で、6篇の削除を命じられた。無罪だったのは『ボヴァリー夫人』である。
  • 散文詩を「詩でないもの」と考える。韻律を持たない詩の形式である。
  • ランボーの評価を同時代のものと考える。『イリュミナシオン』は本人の関与なく刊行され、評価は後年である。

第12章の通過チェック

  • 高踏派の主張と、「芸術のための芸術」を説明できる
  • ボードレールの3つの新しさを言える
  • 万物照応と散文詩を説明できる
  • ヴェルレーヌ「詩法」の主張を3点言える
  • ランボーの「見者の手紙」の2つの句を言え、その影響先を言える
  • マラルメの3つの方針を言える
  • 象徴主義の宣言の年と、何への反発かを言える

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次章へ

次章は世紀の変わり目である。詩が言葉の限界を試していたころ、小説の側でも決定的な変化が起きる。

プルーストは、記憶と時間そのものを主題にした長大な作品を書く。ジッドは、小説の中で小説を書くという仕掛けを試す。19世紀的な小説の作り方が、内側から組み替えられていく。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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