🧭全体地図📘文学史
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CHAPTER 1 導入 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 2

導入|第1章 全体地図 — 文学史を何のために学ぶか

この章の狙い

要点: 文学史は年表を覚える科目ではない。作品を読むための地図である。同じ一文でも、それが1660年に書かれたのか1860年に書かれたのかで、意味も効果もまったく変わる。文学史はその差を読み取るための道具にあたる。

だから覚え方も変わる。「誰がいつ何を書いたか」だけを覚えても、作品を読むときには使えない。必要なのは、なぜその時代にその形式が生まれ、誰がそれを読んだのかという筋である。この教材は、その筋の側から書いてある。

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文学史で何が分かるか

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

作品を1つ読むときに、文学史は3つのことを教える。

教えること
作品の位置 『ボヴァリー夫人』は、ロマン主義への反発として書かれた
形式の理由 17世紀の悲劇が三単一の規則を守るのは、宮廷の観客と当時の演劇観のため
読者の顔 18世紀の小説は、書簡体が多い。手紙という形式が読者に信じられていたため

3つ目が見落とされやすい。文学は誰かに読まれるために書かれるので、読者が変わると文学も変わる。中世は聞く文学、17世紀は宮廷の文学、19世紀は新聞を買う中産階級の文学である。この変化を追うことが、文学史の背骨になる。

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時代区分

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

この教材は、仏文専攻の各サイトで共通の時代区分を使う。フランス史・思想・文化のどのサイトを開いても同じ区切りなので、年号から相互に行き来できる。

11の時代区分。仏文シリーズの全サイトで共通 中世 〜1500 第2章 16世紀・ルネサンス 1500〜1600 第3章 17世紀・古典主義 1600〜1715 第4・5章 18世紀・啓蒙 1715〜1789 第6・7章 革命とナポレオン 1789〜1815 第8章 ロマン主義 1815〜1848 第9章 写実・自然主義 1848〜1885 第10・11章 世紀末・象徴主義 1885〜1914 第12・13章 両大戦間 1914〜1945 第14章 戦後 1945〜1968 第15章 現代 1968〜 第16章 区切りの年は目安。またがる作家は多い(ユゴーは1802-1885)。 区分は作家を分類する箱ではなく、地図の縮尺として使う。
フランス文学史の時代区分
区分 この教材の章
中世 〜1500 第2章
16世紀・ルネサンス 1500〜1600 第3章
17世紀・古典主義 1600〜1715 第4章・第5章
18世紀・啓蒙 1715〜1789 第6章・第7章
革命とナポレオン 1789〜1815 第8章
19世紀前半・ロマン主義 1815〜1848 第9章
19世紀後半・写実主義と自然主義 1848〜1885 第10章・第11章
世紀末・象徴主義 1885〜1914 第12章・第13章
両大戦間 1914〜1945 第14章
戦後 1945〜1968 第15章
現代 1968〜 第16章

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区切りの年は目安である。またがる作家は多い。ユゴーは1802年生まれで1885年に死んでおり、ロマン主義の中心にいながら晩年まで書き続けた。区分は作家を分類する箱ではなく、地図の縮尺だと考える。

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3つの軸で読む

⊳ この節の問題を解く(3問・2枚)

作品を文学史の中に置くとき、次の3つを毎回確かめると、覚えた知識が使える形になる。

文学史を読むときの3つの軸

  • 1. ジャンル — 詩か、演劇か、小説か。それぞれ別の歴史を持っている。
  • 2. 読者 — 誰が、どこで、どうやってその作品に接したか。
  • 3. 何への反発か — 新しい運動は、たいてい直前の運動への反発として現れる。

3つ目が、文学史をつなげて理解するための鍵になる。

運動 何への反発か
ロマン主義 古典主義の規則(三単一、高尚な語彙)
写実主義 ロマン主義の誇張と主観
象徴主義 自然主義の即物性
シュルレアリスム 理性と論理そのもの
ヌーヴォーロマン 19世紀的な小説の作り(筋、人物、心理)

「〜主義」という名前を単独で覚えると意味がない。何に対する反発だったのかとセットにすると、その運動が何を捨てて何を選んだのかが見えてくる。

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文学史の落とし穴

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

⚠️ 文学史でやりがちな誤り

  • 運動の名前を、当事者が使っていたと考える。多くは後世の命名か、敵からの呼び名である。「バロック」も「印象派」も、もとは悪口だった。
  • 作家を1つの運動に閉じ込める。ユゴーもボードレールも、複数の枠にまたがる。「代表作家」は便宜的な札にすぎない。
  • 直線的な進歩と考える。文学は良くなっていくものではない。変わっていくだけである。
  • 年表だけを覚える。年号は作品を位置づけるための道具であって、目的ではない。

とくに2つ目は、レポートで減点される原因になりやすい。「ボードレールはロマン主義の詩人である」と書くと誤りだが、「ロマン主義の影響下にありながら、そこから抜け出した」なら正確である。文学史の記述では、言い切りの強さを調整する必要がある。

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授業との対応

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

この教材は、明治大学文学部フランス文学専攻「フランス文学史A・B」の進度に合わせて並べてある。

授業 扱う範囲 この教材
フランス文学史A(春学期) 中世から19世紀ロマン主義まで 第2章〜第9章
フランス文学史B(秋学期) 写実主義から20世紀まで 第10章〜第16章

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授業の指定参考書は『フランス文学小事典(増補版)』である。この教材と併用することを前提にしている。役割は次のように分けられる。

役割
小事典 引く。個々の作家・作品・用語を調べる
この教材 通す。なぜその順で並ぶのかを理解する

人名と作品名の日本語表記は、小事典に合わせてある。表記が割れやすい領域なので、答案では一貫した表記を使う。

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他の分野とのつながり

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

文学史だけを読んでも、作品が生まれた条件までは分からない。この教材は、他の3つの領域と対にして使う。

領域 何を補うか
フランス史 王政・革命・共和政・戦争。作品が書かれた時点で何が起きていたか
思想・哲学 デカルト、ルソー、実存主義。作家が前提にしていた考え方
文化・社会 サロン、新聞、出版、教育。作品が誰にどう届いたか

本文では、他の領域で扱うべき事柄に触れたときに、その旨を書いてある。リンクは張っていない(各サイトはそれぞれ独立して作られるため)が、探す場所は分かるようにしてある。

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この教材の使い方

⊳ この節の問題を解く(1問)

3通りの使い方

  • 通読する。第2章から順に読む。文学史の筋が通るのは、この読み方だけである。
  • 作品を読む前に引く。授業で扱う作品が決まったら、その作家の節だけを読む。位置が分かってから読むと、作品の狙いが見える。
  • 試験前に要点集を通す。16章の要点が1枚に集まっている。

問題演習は、作家名と作品名から引き出せるかを確かめるためにある。読んで分かったつもりでも、名前が出てこなければ答案には書けない。分野別の成績で正答率が低い時代が、そのまま読み直す章になる。

第1章の通過チェック

  • 文学史が作品を読むために何を教えるかを、3つ言える
  • 共通の時代区分を、中世から現代まで順に言える
  • 文学史を読むときの3つの軸を言える
  • 主要な運動が「何への反発か」を4つ言える
  • 運動の名前について、やりがちな誤りを2つ言える
  • 小事典とこの教材の役割の違いを言える

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次章へ

次章から通史に入る。最初は中世である。

中世の文学は、いまのフランス語では読めない(古フランス語で書かれている)。書物として黙読されるのではなく、声に出して語られ、聞かれた。作者の名前が分からない作品も多い。現代の「文学」とは前提が違うところから始まることになる。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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