🧭全体地図📘理論
KEY POINTS ⚡ 200 個 / やってはいけない形 384 件 / 通過チェック 20 章

要点200

枠組みごとに、覚える中身・混同しやすい形・通過チェックを並べてあります。レポートで理論を使う前と、卒論の方法を決めるときに使ってください。 各章は 結論 → ⚡ 覚える中身 → やってはいけない形 → 通過チェック の順に並びます。 それぞれの下のリンクから、その要点が出てくる本文の節に戻れます。

導入 第1章 全体地図 — 理論とは何をする道具か

理論は、作品を説明するための正解ではなく、作品の別の面を見えるようにする道具である。
⚡ 1

順序

  • 07が先。問いの立て方と引用の作法がないと、理論を使っても論にならない。
  • 04は並行でよい。概念の出どころが気になったときに引く。
  • この教材は、07の上に載る選択の話にあたる。
本文で読む:04・07との分担 ▶
⚡ 2

手順

  • 1. 引っかかりを特定する。作品のどこが気になるのか。まだ枠組みは要らない。
  • 2. 引っかかりの種類を見る。それは語りの問題か、欲望の問題か、社会の問題か、読者の問題か。
  • 3. その種類を扱える枠組みを選ぶ。この教材の早見表が対応表になっている。
  • 4. 枠組みの術語を定義してから、作品の記述に当てる。
本文で読む:理論を使う4段階 ▶
⚡ 3

だから複数を組み合わせる

  • 1つの枠組みですべてを説明しようとしない。
  • ただし、無闇(むやみ)に混ぜない。術語が衝突すると、何を言っているのか分からなくなる。
  • 学部のレポートでは、主となる枠組みを1つ決め、必要なら1つ補助に使う。この形が扱いやすい。
本文で読む:理論が「見えなくするもの」 ▶
⚡ 4

各章の中でも、読む順序がある

  • 「この枠組みで何が見えるか」と「何が見えなくなるか」を先に読む。
  • 使うと決めてから、枠組みの中身に戻る。
  • 「分析の手順」と「当ててみる」が、実際に書くときの型になる。
本文で読む:この教材を読む順序 ▶
✓ 通過チェック

第1章の通過チェック

  • 理論が「正解」ではなく「道具」である意味を説明できる
  • 04・07・08の分担を、中心の問いの面から言える
  • 理論を使う4段階を言え、問いと枠組みの順序を言える
  • どの枠組みも何かを見えなくすることを、例を挙げて言える
  • 理論を使うときの3つの危険を言える
  • この教材が原文を引用しない理由を言える
本文で読む:術語をどう調べるか ▶

導入 第2章 理論以前 — 実証批評と印象批評

理論が現れる前、文学は主に2つの仕方で論じられていた。作家の生涯と時代から作品を説明するやり方と、読んだ印象を語るやり方である。
⚡ 5

やってきたこと

  • 本文の確定。版を比べ、異文を整理する(07の領域)。
  • 年譜(ねんぷ)と書誌の作成。いつ何を書いたかを確定する。
  • 典拠(てんきょ)の探索。作家が何を読み、どこから素材を得たか。
  • 書簡と証言の収集。執筆の事情を復元する。
本文で読む:実証批評 ▶
⚡ 6

この蓄積は今も使われる

  • 批評版と注釈は、この方法の成果にあたる(07の領域)。
  • 年譜と書誌がなければ、どの理論も作品を扱えない。
  • したがって実証批評は、否定されたのではなく、土台として残った。
本文で読む:実証批評 ▶
⚡ 7

主張

  • 批評とは、傑作に接した魂の冒険を語ることであるという趣旨の言い方がされた。
  • 客観的な基準はない。あるのは出会いの記録だけだとする。
  • 批評そのものが創作に近づく。
本文で読む:印象批評 ▶
⚡ 8

共通する前提

  • 作品の意味は、どこか外側にある。作者の生涯か、読者の心の中か。
  • テクストそのものの構造は、分析の対象にならない。
  • したがって「なぜこの形なのか」という問いが立たない。
本文で読む:2つの共通点 ▶
⚡ 9

論争の帰結

  • どちらかが勝ったのではない。
  • 実証の蓄積は残り、理論の枠組みも定着した。
  • 現在の研究は、両方を使う。版を確定したうえで、枠組みを選ぶ(07の領域)。
  • したがってこの教材も、07の基礎の上に載っている(第1章)。
本文で読む:大学の批評と、新しい批評 ▶
⚡ 10

伝記的な事実を使ってよい場合

  • 条件として示すとき。「この作品は占領下に刊行された」(03の領域)。
  • 草稿と刊行版の差を扱うとき(第16章)。
  • 作家の位置を論じるとき(第12章の場の理論)。
  • いずれの場合も、原因として断定しない。「〜という指摘がある」の形で書く。
本文で読む:この対立が今も残っている場面 ▶
⚡ 11

3つ目が理論以後の読み方にあたる

  • 数えられる。したがって検証できる。
  • 本文の記述だけを根拠にしている。
  • そのうえで「この配置は何をしているか」と問う。ここから枠組みの選択が始まる。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 12

なぜ場を知ると読みやすいか

  • 論争の相手が誰かが分かる。多くの批評は、特定の相手への応答として書かれている。
  • 分量の制約が、書き方を決めている。
  • 想定された読者が違う(第10章)。
本文で読む:批評はどこで行われてきたか ▶
⚡ 13

見分け方

  • 根拠がテクストの外にあるか、内にあるか。
  • 他人が確かめられるか。
  • この2つを自問すれば、ほとんどの誤りは防げる(07の領域)。
本文で読む:現在も残る2つの型 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第2章の通過チェック

  • 実証批評がやってきたことを4つ言える
  • 実証批評の蓄積が今も使われる理由を言える
  • 印象批評の主張と、その批判を言える
  • 2つの批評が共有していた前提を言える
  • 1960年代の論争の対立点を、4つの面から言える
  • 伝記的な事実を使ってよい3つの場合を言える
本文で読む:現在も残る2つの型 ▶

形式と構造 第3章 形式への注目 — 異化と手法

意味は内容にあるのではなく、形の側にある。同じ出来事を語っても、語り方が違えば別の作品になる。
⚡ 14

中心にある3つの主張

  • 文学性 — 研究の対象は「文学とは何か」ではなく、あるテクストを文学たらしめている性質である。したがって扱うのは形式にあたる。
  • 異化(いか) — 日常の知覚は自動化している。芸術は、対象を見慣れないものにすることで、知覚し直させる。
  • 素材と手法 — 素材(出来事・題材)と、それを配置する手法を区別する。同じ素材でも手法が違えば別の作品になる。
本文で読む:枠組みの中身 ▶
⚡ 15

なぜこの区別が効くか

  • 筋の要約が同じでも、作品はまったく違うものになりうる。
  • したがって「あらすじ」を語ることは、作品を語ることではない(07の領域)。
  • 分析の対象は、素材ではなく手法になる。
本文で読む:枠組みの中身 ▶
⚡ 16

取り出せるもの

  • 技法の目録。その作品が使っている手法を列挙できる。
  • 手法の働き。その手法が、読者の知覚に何をしているか。
  • 手法の分布。どの場面で、どの手法が集中しているか。
  • 同じ素材を扱う他の作品との差。手法の面で比較できる。
本文で読む:この枠組みで何が見えるか ▶
⚡ 17

5段階

  • 1. 一節を選ぶ。長くて2ページ。
  • 2. 素材を一文で書く。「登場人物が部屋に入り、手紙を見つける」。
  • 3. 手法を列挙する。順序・視点・速度・省略・繰り返し・言い換え。
  • 4. 素材と手法のずれを特定する。素材の順序と、語りの順序は同じか。
  • 5. ずれが読者の知覚に何をしているかを述べる。
本文で読む:分析の手順 ▶
⚡ 18

本文

  • « Un Agneau se désaltérait / Dans le courant d'une onde pure. »
  • 訳:一頭の子羊が喉を潤していた/澄んだ流れの中で。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 19

ここから言えること

  • 待たされることと、大文字による人格化が、寓話の枠組みを作っている。
  • 「澄んだ」の一語が、後の不当な言いがかりを準備している。手法の分布を追うと、結末が冒頭から仕込まれていることが分かる。
  • 素材(子羊が水を飲む)だけを取り出しても、この効果は説明できない。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 20

どこへ流れたか

  • 物語論へ。手法の体系化が、筋と語りの分析につながる(第4・5章)。
  • 記号論へ。テクストを体系として扱う発想が引き継がれる(第9章)。
  • 文体論へ。語の選択と統語の分析。
  • 一方、社会批評からは「歴史を無視している」と批判された(第8章)。
本文で読む:形式主義のその後 ▶
⚡ 21

何を数えるか

  • 語彙 — 語の種類の多さ、繰り返される語、特定の分野に偏った語。
  • 構文 — 文の長さ、従属節の深さ、並列と従属の比率。
  • 時制 — 分布と切り替え(07の領域)。
  • — 頭韻、母音の反復(07の詩法)。
本文で読む:文体論という隣接分野 ▶
⚡ 22

形式への注目との違い

  • 文体論は、言語の単位で数える。
  • 形式主義は、手法の単位で捉える。
  • 両者は補い合う。数えた結果を、手法として意味づけるという順序で使う。
本文で読む:文体論という隣接分野 ▶
⚡ 23

1作品につき1枚の表を作る

本文で読む:手法の目録を作る ▶
⚡ 24

表の使い方

  • 箇所と回数を先に埋める。働きの欄は後で埋める。
  • 回数の多い手法から扱う。
  • この表が、レポートの記述の章になる(第20章)。
  • 数えられるので検証できる(07の領域)。
本文で読む:手法の目録を作る ▶
⚡ 25

異化として読む

  • 見慣れた「鳥を捕まえる」という行為が、王を辱(はずかし)める行為として提示される。
  • 語彙の選択だけで、知覚が組み替えられている。
  • 素材を要約しても、この効果は残らない。
  • これが「素材と手法」の区別の実際の意味にあたる。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶
✓ 通過チェック

第3章の通過チェック

  • 文学性・異化・素材と手法の3つの主張を言える
  • 素材と手法の区別が、あらすじの扱いに何をもたらすかを言える
  • この枠組みで見えるものを4つ言える
  • 見えなくなるものを3つ言い、それを引き受ける章を言える
  • 分析の5段階を言える
  • ラ・フォンテーヌの例で、手法を3つ指摘できる
  • 形式主義が後の枠組みにどう流れたかを3つ言える
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

形式と構造 第4章 物語論(1)— 筋の文法

すべての物語には、共通する型があるのではないか。登場人物を役割に還元し、出来事を機能に還元すると、数十の民話が同じ骨格を持っていることが見えてくる。
⚡ 26

出発点になった発想

  • 民話を大量に集め、共通する要素を抽出する。
  • 人物の名前や属性は変わっても、その人物が果たす働きは共通している。
  • したがって、人物ではなく機能を単位にすれば、物語の骨格が取り出せる。
  • 機能の並ぶ順序にも規則がある。
本文で読む:枠組みの中身 ▶
⚡ 27

この枠組みの強み

  • 人物の数と、役割の数が一致しないことが見える。
  • 役割が途中で入れ替わることが特定できる。助力者が敵対者になる瞬間。
  • 対象が何であるかが、作品によって曖昧なことが分かる。その曖昧さ自体が論点になる。
本文で読む:機能と行為項 ▶
⚡ 28

よく使われる5段階

  • 1. 初めの均衡 — 状態が安定している。
  • 2. 均衡を破る出来事 — 何かが起きる。
  • 3. 不均衡の展開 — 探索・試練・対立。
  • 4. 均衡を取り戻す行為 — 解決の試み。
  • 5. 新しい均衡 — 元とは違う安定。
本文で読む:筋の型 ▶
⚡ 29

取り出せるもの

  • 役割の配置と、その入れ替わり。
  • 筋の骨格と、そこからの逸脱。
  • 複数の作品の構造上の比較。時代もジャンルも違う作品を並べられる。
  • 繰り返しの構造。同じ機能が何度現れるか。
本文で読む:この枠組みで何が見えるか ▶
⚡ 30

6段階

  • 1. 出来事を時系列で書き出す。箇条書きでよい。
  • 2. 各出来事を機能で言い換える。「〜が〜する」の形に統一する。
  • 3. 行為項の表を作る。6つの役割に、人物を割り当てる。
  • 4. 役割が入れ替わる箇所に印を付ける。
  • 5. 5段階の型に当て、当てはまらない部分を特定する。
  • 6. 当てはまらない部分が何をしているかを述べる。ここが結論になる。
本文で読む:分析の手順 ▶
⚡ 31

行為項で見る

  • 主体 — 前半は一行(出発を求める)。後半も一行のまま。
  • 助力者と敵対者が入れ替わる。主人公は前半では助力者、後半では障害として扱われる。
  • 対象 — 「出発」だが、後半では「自分たちの体面」も対象になっている。
  • 最後の均衡は、最初の均衡と形が同じで内容が反転している。食事の場面が2回あり、2回目は与えられない。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 32

ここから言えること

  • 構造が対称になっている。2つの食事の場面が枠を作る。
  • 役割の入れ替わりが、道徳的な評価の反転と一致している。
  • 「新しい均衡」は、実は最初より悪い。5段階の型の第5段階が、通常とは逆に働いている。
  • この構造上の指摘は、作品を読んでいない人にも検証できる。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 33

したがって

  • 小説では、型からの逸脱が論点になる(本章)。
  • 「当てはまらない」という結果が、そのまま発見にあたる。
  • 19世紀以降の小説ほど、逸脱が大きくなる傾向がある。
本文で読む:民話と小説の違い ▶
⚡ 34

それでも使う理由

  • 手続きがはっきりしている。誰がやっても同じ結果になる部分が大きい。
  • 作品を読んでいない人にも検証できる。
  • 他の枠組みの土台になる。構造を確定してから、意味づけに進める。
  • レポートの「記述の章」に最も向く(第20章)。
本文で読む:筋の分析の限界 ▶
⚡ 35

短編で練習する

  • 長編でいきなりやると、出来事の書き出しだけで挫折する。
  • 短編なら、1時間で機能の一覧が作れる。
  • 『脂肪の塊』のような、構造のはっきりした短編から始めるとよい。
本文で読む:筋の分析の限界 ▶
⚡ 36

小説と比べる

  • 童話では、機能の順序がほぼ固定している。
  • 19世紀の小説では、この順序が崩れる。加害が最後に来る、解決がない、均衡が回復しない。
  • 『ボヴァリー夫人』を童話の型に当てると、「助力者」に当たる人物がすべて敵対者に転じることが分かる。
  • この「当てはまらなさ」が、そのままレポートの論点になる(本章)。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶
✓ 通過チェック

第4章の通過チェック

  • 物語論が扱う問いを、内容との対比で言える
  • 機能と行為項の定義を言える
  • 6つの行為項を言える
  • 筋の5段階を言え、機械的に当てない理由を言える
  • この枠組みで見えるものと見えなくなるものを、それぞれ3つ言える
  • 分析の6段階を言い、どこが結論になるかを言える
  • 『脂肪の塊』の構造上の対称を説明できる
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

形式と構造 第5章 物語論(2)— 語りの体系

同じ筋でも、誰がどこから語るかで作品は変わる。
⚡ 37

なぜ3つに分けるか

  • 「物語」という語が、この3つを混ぜて使われているため、議論が噛み合わなくなる。
  • 分けると、比較の軸が定まる。同じ物語内容を持つ2作品を、物語言説の面で比べられる。
  • 第4章が扱ったのは物語内容の水準にあたる。この章は残りの2つを扱う。
本文で読む:3つの水準 ▶
⚡ 38

速さの5段階

  • 省略 — 物語内容の時間が流れるが、テクストは0行。「三年が過ぎた」以下。
  • 要約 — 長い時間を短く語る。
  • 場面 — 物語内容の時間とテクストの時間がほぼ等しい。会話がその典型。
  • 引き伸ばし — テクストのほうが長い。細部の描写。
  • 休止 — 物語内容の時間が止まり、テクストだけが進む。風景や人物の描写。
本文で読む:時間 ▶
⚡ 39

測れるので使いやすい

  • 1ページあたり、作中で何時間が流れているかを測る。
  • 極端に遅い箇所が作品の重心にあたる。極端に速い箇所は、省略が意味を持つ。
  • 表にすれば、そのままレポートの根拠になる(07の領域)。
本文で読む:時間 ▶
⚡ 40

層が重なる例

  • 枠物語 — 誰かが誰かに物語を語る、という枠がある。枠の内と外で、語り手が違う。
  • 層を数えると、誰が誰に語っているかが整理できる。
  • 層の境目が壊れる作品は、それ自体が論点になる。
本文で読む:態と人称 ▶
⚡ 41

取り出せるもの

  • 語りの構造の全体像。誰が、どこから、どの速さで語っているか。
  • 変化する箇所。焦点化が切り替わる位置、速度が変わる位置。
  • 矛盾する箇所。内的焦点化のはずなのに人物が知りえない情報が出てくる。
  • 他作品との比較。同じ主題でも語りの構造がまったく違うことが示せる。
本文で読む:この枠組みで何が見えるか ▶
⚡ 42

6段階

  • 1. 一節を選ぶ。
  • 2. 語り手の位置を判定する。物語の中にいるか、いつ語っているか、層は何重か。
  • 3. 焦点化を判定する。誰の知覚を通しているか。
  • 4. 速さを測る。1段落ごとに、物語内容の時間がどれだけ流れるか。
  • 5. 変化する箇所に印を付ける。
  • 6. 変化の位置と、意味の展開を重ねる。これが結論になる。
本文で読む:分析の手順 ▶
⚡ 43

変化の位置を特定する

  • 冒頭の「私たち」が消える位置。これは語りの層の消失にあたる。
  • エマ以外の内面に入る箇所。内的焦点化からの逸脱として数えられる。
  • 自由間接話法が集中する箇所。エマの心理が破綻に近づく部分と重なるかを確かめる。
  • この3つを表にすると、そのままレポートの根拠になる。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 44

表の作り方

  • 章ごと、または節ごとに1行。
  • 速さは5段階のどれかを書く(本章)。
  • 切り替わる箇所に印を付ける。
  • この表が、そのままレポートの根拠になる(07の領域)。
本文で読む:分析の表を作る ▶
⚡ 45

手がかりの型

  • 矛盾。語り手の述べることが、別の箇所と食い違う。
  • 他の人物の反応。語り手の説明と、周囲の反応が合わない。
  • 知りえない情報。内的焦点化のはずなのに知っているはずのないことを語る。
  • 極端な自己弁護。説明が過剰になる。
本文で読む:信頼できない語り手 ▶
⚡ 46

ここから言えること

  • 速さの偏りが、この作品の設計そのものにあたる。数十年を扱いながら、数分に何ページも使う。
  • 頻度の扱いが、記憶の主題と結びつく。繰り返された過去は、1回として語られる。
  • 「語る私」と「体験した私」の距離が、作品の全体を組み立てている。
  • これらはすべて、第5章の3つの水準の語彙で記述できる。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第5章の通過チェック

  • 3つの水準を言え、なぜ分けるのかを説明できる
  • 時間の3つの見方を言える
  • 速さの5段階を言える
  • 語り手の位置を判定する3つの観点を言える
  • 焦点化の3つの型を言い、語り手との違いを説明できる
  • 分析の6段階を言い、どこが結論になるかを言える
  • 『ボヴァリー夫人』で特定すべき変化の位置を3つ言える
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

意味を読む 第6章 意識の批評 — 主題を追う読み

1人の作家の全作品を通して、同じ主題やイメージが繰り返される。その繰り返しを追うと、その作家に固有の世界の捉え方が見えてくるのではないか。
⚡ 47

前提にしていること

  • 作品は、1人の意識が世界と関わる仕方の現れである。
  • その意識は、繰り返されるイメージの中に読み取れる。
  • したがって、1作品ではなく全作品を材料にする。
  • 現象学の影響を受けている(04の領域)。意識と世界の関わりを記述するという構えが共通する。
本文で読む:枠組みの中身 ▶
⚡ 48

集め方

  • 語そのものではなく、感覚の質で集める。「水」という語がなくても、流れる・溶ける・浸すは同じ系列にあたる。
  • 全作品から集める。1作品では偶然かもしれない。
  • 対立する項を探す。乾と湿、明と暗。対立が見つかると構造が見える。
  • 中心になるイメージが1つか2つに絞れたら、それがその作家の核にあたるとされる。
本文で読む:何を集めるか ▶
⚡ 49

取り出せるもの

  • 作家に固有のイメージの体系。
  • 作品をまたぐ一貫性。初期作と後期作をつなぐ線。
  • 描写の細部の意味。背景として読み飛ばされる部分が、体系の一部として意味を持つ。
  • 他の作家との差。同じ主題を扱っても、感覚の質が違う。
本文で読む:この枠組みで何が見えるか ▶
⚡ 50

6段階

  • 1. 1つの感覚の系列を決める。まずは1つだけ。
  • 2. 作品からその系列に属する記述を全部拾う。ページ番号つきで。
  • 3. 数える。何箇所あるか。総数を示す(07の領域)。
  • 4. 分布を見る。どの部分に集中しているか。誰に結びついているか。
  • 5. 対立する系列を探す。あれば、対の構造として整理する。
  • 6. 例外を書く。系列に合わない箇所を明示する。これが恣意性への対策になる。
本文で読む:分析の手順 ▶
⚡ 51

ここから言えること

  • 詩集全体に「上がろうとして落ちる」という運動があるという指摘が可能になる。
  • 「アホウドリ」は、この運動を1篇に凝縮した詩として読める。空では優美な鳥が、甲板では歩けない。
  • 例外の詩が、この運動の単純化を防いでいる。
  • 数と分布を示せば、この読みは検証できる。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 52

共通するもの

  • 説明する前に記述するという構え。
  • 意識と世界の関わりを扱う。
  • 科学的な説明への距離。
本文で読む:現象学的批評との関係 ▶
⚡ 53

手順の細部

  • 紙に印刷して、色分けする。画面上より速い。
  • 系列ごとに色を決める。水/火/上下/内外。
  • 色の分布を眺める。どの部分に集中しているかが目で見える。
  • 集中している部分だけを精読する(07の領域)。
  • 数を数える。印象で「多い」と書かない(07の領域)。
本文で読む:実際の読み方 ▶
⚡ 54

1作品から始める

  • 本来は全作品を材料にする枠組みだが、学部では1作品でよい。
  • その場合、「この作品では」と範囲を限定して書く。
  • 「この作家は」と書くには、複数の作品を確かめる必要がある。
  • 範囲の限定を明示することが、この枠組みを使うときの最低条件にあたる(第18章)。
本文で読む:実際の読み方 ▶
⚡ 55

注意

  • 「ラシーヌの意識」とは書かない(本章)。この作品ではと限定する。
  • 他の作品にも同じ系列があるかは、比較しないと言えない。
  • この系列は、脱構築の読み(第11章)とも接続する。光を避けながら光を求めるという矛盾が、決定不能の箇所を作る。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第6章の通過チェック

  • 主題批評が前提にしている4つを言える
  • 集める対象を5種類言える
  • 語ではなく感覚の質で集める理由を言える
  • この枠組みで見えるものと見えなくなるものを、それぞれ3つ言える
  • 現在の主な批判を3つ言える
  • 分析の6段階を言い、恣意性への対策がどれかを言える
  • 『悪の華』の上下の系列について、言えることと言えないことを分けられる
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

意味を読む 第7章 精神分析批評 — 無意識をどう読むか

なぜこの人物は同じ失敗を繰り返すのか。なぜこの場面だけが語られないのか。
⚡ 56

2つ目の扱い方

  • 人物は実在しないので、病名を当てない。
  • 代わりに、テクストが人物の何を語り、何を語らないかを見る。
  • 「この人物は〜という症状を示している」ではなく、「この人物についての記述は〜という形をしている」と書く。
本文で読む:何を対象にするか ▶
⚡ 57

なぜこの4つが使えるか

  • いずれもテクストの表面で確認できる。反復は数えられ、欠落は位置を示せる。
  • したがって検証できる。
  • 一方、「抑圧された欲望」といった内容の推定は検証できない。形の指摘にとどめる。
本文で読む:使える概念 ▶
⚡ 58

取り出せるもの

  • 説明のつかない反復。筋の必然性では説明できない繰り返し。
  • 不自然な欠落。語られるはずの場面が飛ばされている箇所。
  • 過剰な描写。筋に必要な以上に書き込まれている対象。
  • 人物の関係の型。同じ形の関係が、相手を変えて繰り返される。
本文で読む:この枠組みで何が見えるか ▶
⚡ 59

6段階

  • 1. 反復を探す。同じ形の場面・語・関係を数える。
  • 2. 欠落を探す。語られるはずなのに飛ばされている箇所を特定する。
  • 3. 過剰を探す。筋に必要な以上に書き込まれている対象。
  • 4. 3つを並べる。互いに関係しているか。
  • 5. テクストの形として記述する。内容の推定に踏み込まない。
  • 6. 他の枠組みで説明できないかを確かめる。筋の必然性や当時の慣習で説明がつくなら、そちらを採る。
本文で読む:分析の手順 ▶
⚡ 60

記述としてどう書くか

  • 「テクストは、主人公の母についてほとんど語らない。一方、父との対立は◯箇所で描かれる。」
  • 「上昇の場面の直後に、自ら危機を招く行動が◯回置かれている。」
  • ここまでが検証できる記述にあたる。
  • 「主人公は母への欲望を抑圧している」とは書かない。それは推定であり、テクストからは出てこない。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 61

他の説明を先に試す

  • 反復2は、当時の社会的な上昇の困難で説明できないか(03の領域)。
  • 欠落は、当時の小説の慣習で説明できないか。
  • 過剰は、ナポレオンの記憶が19世紀前半に持っていた政治的な力で説明できないか(03の領域)。
  • これらを検討したうえで、なお残るものだけを扱う。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 62

どう使われているか

  • 単独で使われることは減った。ジェンダーの批評やポストコロニアル批評と組み合わせられることが多い(第13・14章)。
  • テクストの構造を扱う方向が主流になっている。内容の推定は避けられる。
  • 一方、「語りえないもの」を扱う議論とは接続する(04の領域の証言の問題)。
本文で読む:この枠組みの現在 ▶
⚡ 63

どう扱うか

  • 枠組みを捨てるのではなく、限定して使う(第18章)。
  • 「この枠組みは、19世紀の市民家族を描いた作品には有効だが、〜には当てはまらない」と書く。
  • ジェンダーの批評(第13章)と組み合わせると、この前提そのものを論点にできる。
本文で読む:家族の枠組みへの批判 ▶
⚡ 64

基準は1つ

  • テクストの表面で確認できるか。
  • 確認できるなら使える。できないなら、推定として明示するか、使わない。
  • この基準を守れば、この枠組みの誤用のほとんどは防げる。
本文で読む:使ってよい概念と、使わない概念 ▶
⚡ 65

他の枠組みと組み合わせる

  • 単独では現在ほとんど使われない(本章)。
  • ジェンダーの批評(第13章)、ポストコロニアル批評(第14章)と組み合わせる形が多い。
  • 語りの分析(第5章)とも接続する。信頼できない語り手の分析と重なる。
本文で読む:使ってよい概念と、使わない概念 ▶
⚡ 66

記述としてどう書くか

  • 「要求に応じる場面は、テクストには書かれていない。前後の記述から読者が補う。」——検証できる記述にあたる(第10章の空白)。
  • 「食料の描写は◯行に及び、他の描写より長い。」
  • 「主人公の内面は、他の人物より少なく語られる。」
  • ここまでが記述で、そこから先は解釈にあたる。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶
⚡ 67

他の枠組みで説明できないか

  • 欠落は、当時の出版の慣習で説明できないか(03の領域)。
  • 食料の過剰な描写は、飢餓という筋の必然で説明できないか。
  • これらを検討したうえで、なお残るものだけを扱う(本章の6段階目)。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶
✓ 通過チェック

第7章の通過チェック

  • 3つの対象を言い、扱えるものと扱えないものを分けられる
  • 登場人物を扱うときの書き方の違いを言える
  • 使える4つの概念を言い、なぜ検証できるかを言える
  • この枠組みで見えるものと見えなくなるものを、それぞれ3つ言える
  • 分析の6段階を言い、最も重要な段階を言える
  • 『赤と黒』で、検証できる記述と推定を書き分けられる
  • この枠組みの現在の使われ方を言える
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

意味を読む 第8章 社会批評 — 生産・階級・イデオロギー

作品を、書かれた社会の条件の中に置き直す。
⚡ 68

共通する前提

  • 作品は、社会の外にあるのではない。書く条件も、読まれる条件も、社会の中にある。
  • しかし作品は、社会をそのまま反映するのでもない。ずれと歪(ゆが)みがある。
  • したがって分析の対象は、そのずれにあたる。
  • 反映と見るか、ずれと見るかで、立場が分かれる。
本文で読む:枠組みの中身 ▶
⚡ 69

3つ目が中心にあたる

  • 作品が「当たり前のこと」として提示しているものを取り出す。
  • その当たり前が、いつ、どんな条件で作られたのかを問う。
  • これは第9章の記号論とも重なる。自然に見えるものを歴史に戻す作業である。
本文で読む:3つの水準 ▶
⚡ 70

取り出せるもの

  • 作品が前提にしている社会の像。誰が働き、誰が働かないか。
  • 描かれない領域。召使いが背景に留まる、労働の場面が省かれる。
  • 金の描写の細かさ。金額が具体的に書かれるかどうか。
  • 作品の流通の条件。新聞連載か、単行本か、部数はどれくらいか(03の領域)。
本文で読む:この枠組みで何が見えるか ▶
⚡ 71

6段階

  • 1. 作品の中の、金と労働に関わる記述を全部拾う。金額・職業・所有・相続・賃金。
  • 2. 数える。何箇所あるか、誰に結びついているか。
  • 3. 描かれない領域を特定する。登場するのに描写されない人物、省かれる場面。
  • 4. 当時の条件を確かめる(03の領域)。制度・法・価格・階層。
  • 5. 作品と条件のずれを特定する。一致ではなく、ずれが論点になる。
  • 6. そのずれが何をしているかを述べる。
本文で読む:分析の手順 ▶
⚡ 72

ここから言えること

  • 人物の紹介に収入が添えられるという形式そのものが、この社会の見方を運んでいる。
  • 富の源泉が描かれないことが、作品の視野を示している。
  • 2つの序列の重なりが、この時期の社会の実際とどう対応するかを、03の領域で確かめる。
  • 1と2は数えられる。したがって検証できる。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 73

何ができるようになるか

  • 作品の選択を、位置取りとして読める。なぜこの形式を選んだのか。誰と差別化しようとしたのか。
  • 成功と失敗を、作品の質だけでなく、場の構造から説明できる。
  • 「純文学」と「大衆文学」の区別そのものが、場の中で作られることが見える。
  • 詳しくは第12章で扱う。
本文で読む:文学場という考え方 ▶
⚡ 74

調べられること

  • 初版の部数。書誌と出版史の研究にある(07の領域)。
  • 価格。当時の賃金と比べる(03の領域)。
  • 掲載媒体。新聞連載か、雑誌か、単行本か。
  • 書評。どの新聞に、どんな論調で載ったか。
  • 図書館と貸本の記録。残っている場合がある。
本文で読む:読者層と部数を調べる ▶
⚡ 75

代わりにどう書くか

  • 「作品は当時の社会を反映している」ではなく、
  • 「作品は当時の◯◯という条件の下で書かれ、その条件に対して〜という位置を取っている」と書く(第12章の場)。
  • 一致ではなくずれを論点にする(本章の分析の手順)。
本文で読む:反映論という問題 ▶
⚡ 76

ここから言えること

  • 法的な条件と、作品の筋のずれが、そのまま論点になる。
  • 金融の用語の頻度を数えれば、破滅の進行を数量で示せる。
  • 「金が人を破滅させる」という一般論ではなく、どの制度の下で、どの手続きを経て破滅するかを書く。
  • 03の領域を確かめてから書く(本章の4段階目)。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶
✓ 通過チェック

第8章の通過チェック

  • 社会批評に共通する前提を3つ言える
  • 3つの水準を言い、中心になるものを言える
  • この文脈でのイデオロギーの定義を言える
  • この枠組みで見えるものと見えなくなるものを、それぞれ3つ言える
  • 分析の6段階を言い、どこが論点になるかを言える
  • 『ゴリオ爺さん』で、描かれない領域を指摘できる
  • 場という考え方で何ができるようになるかを言える
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

意味を読む 第9章 記号論と間テクスト性

作品の外にあるのは社会だけではない。他のテクストがある。
⚡ 77

2つの層

  • 第一の層 — 記号が直接に指しているもの。
  • 第二の層その記号が二次的に運ぶ含み。ここに価値観が入り込む。
  • 分析の目的は、第二の層を取り出し、それが「自然なこと」として提示されている仕組みを示すことにあたる。
本文で読む:記号論 ▶
⚡ 78

文学の分析にどう効くか

  • 文体そのものが第二の層を運んでいるという見方が可能になる。
  • 「中立な書き方」はあるのかという問いが立てられる。
  • 描写の細部——服装・食事・室内——を、意味を運ぶ記号として読める。
  • 社会批評と重なる(第8章)。自然に見えるものを歴史に戻すという作業が共通する。
本文で読む:記号論 ▶
⚡ 79

取り出せるもの

  • 他の作品の反響。引用・ほのめかし・書き換え。
  • ジャンルの約束の使い方。守っているか、外しているか。
  • 決まり文句の扱い。そのまま使うか、ずらすか。
  • 描写の細部が運ぶ含み。服装や室内が何を語っているか。
本文で読む:この枠組みで何が見えるか ▶
⚡ 80

6段階

  • 1. 反響を疑う箇所を特定する。引用符のない引用、既視感のある表現。
  • 2. 元になるテクストを探す。事典・注釈つきの版・電子テクストの検索(07の領域)。
  • 3. 見つかったら、両者を並べる。どこが同じで、どこが違うか。
  • 4. 違いを記述する。変形されている部分が論点になる。
  • 5. 影響関係の証拠があるかを確かめる。あれば明示し、なければ「反響が見られる」と書く。
  • 6. その変形が、作品の中で何をしているかを述べる。
本文で読む:分析の手順 ▶
⚡ 81

書き方

  • 「この詩は◯◯の影響を受けている」とは書かない。証拠がない。
  • 「詩人を鳥に喩える伝統を踏まえたうえで、それを反転させている」と書く。
  • 伝統の側の具体例を1つか2つ示す。示せない場合は「伝統がある」とだけ書き、断定しない。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 82

なぜ有効か

  • 決まり文句は、誰のものでもない言葉である。出所が特定できないのに、意味を運ぶ。
  • 作品が決まり文句をそのまま使うか、ずらすかで、その作品の姿勢が見える。
  • 『ボヴァリー夫人』の分析では、この観点が長く用いられてきた。人物の言葉が決まり文句で埋まっていることが、作品の主題と結びつく。
  • 数えられる。同じ言い回しが何回、誰の口から出るかを表にできる。
本文で読む:決まり文句の分析 ▶
⚡ 83

分析の要点

  • 3つとも、元のテクストを読者が知っていることを前提にしている(第10章の期待の地平)。
  • したがって、想定された読者の知識を復元する材料になる。
  • どこを残し、どこを変えたかを表にする。変えた部分が主張にあたる。
  • プルーストが複数の作家の模作を書いている。文体の分析としても読める。
本文で読む:パロディと模作 ▶
⚡ 84

書き方

  • この場合は、影響関係の証拠がある。寓話集の翻案であることは自明にあたる。
  • したがって「〜を典拠とする」と書ける。
  • 論点は、変形の部分である。何を足し、何を変えたか。
  • 典拠が明らかな作品は、間テクスト性の分析の練習に向く。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第9章の通過チェック

  • 記号の2つの層を言い、分析の目的を言える
  • 間テクスト性と影響関係の違いを、証拠の要否から説明できる
  • 反響の現れ方を5つ言える
  • この枠組みで見えるものと見えなくなるものを、それぞれ3つ言える
  • 分析の6段階を言い、省いてはいけない段階を言える
  • 「アホウドリ」の例で、書いてよい形と書いてはいけない形を分けられる
  • 決まり文句の分析がなぜ有効かを言える
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

テクストと読者 第10章 受容理論 — 意味は誰が作るか

ここまでの章は、意味がテクストの側にあると前提していた。
⚡ 85

中心にある3つの考え方

  • テクストは穴だらけである。すべては書かれていない。読者が補って初めて場面が成立する。
  • 期待の地平 — 読者は、それまでの読書経験から作られた期待を持って読む。その期待との一致とずれが、作品の効果を作る。
  • 受容の歴史 — 同じ作品でも、時代によって読まれ方が違う。作品の意味は、受容の歴史の中で変わる。
本文で読む:枠組みの中身 ▶
⚡ 86

1つ目が最も使いやすい

  • テクストの中に手がかりがある。「読者よ」という呼びかけ、説明されない事柄、前提とされる知識。
  • 数えられる。呼びかけの回数、注釈のない固有名詞の数。
  • したがって検証できる。
本文で読む:読者の3つの意味 ▶
⚡ 87

取り出せるもの

  • テクストが読者に何を求めているか。知識・注意・忍耐。
  • 説明されない部分。読者が補うことを前提にしている箇所。
  • 読者への呼びかけと、その位置。
  • 受容の歴史。同じ作品が、いつどう読まれてきたか。
本文で読む:この枠組みで何が見えるか ▶
⚡ 88

6段階

  • 1. 読者への呼びかけを全部拾う。「読者よ」「ご存じのように」。
  • 2. 説明されない事柄を拾う。注のない固有名詞、前提とされる知識。
  • 3. 想定された読者の像を組み立てる。どんな知識と経験を持つ人か。
  • 4. 当時の実際の読者と比べる。部数・書評・読者層の史料を確かめる(03・07の領域)。
  • 5. ずれを特定する。想定と実際が食い違う箇所。
  • 6. 受容の歴史を確かめる。その作品がいつ、どう評価されてきたか。
本文で読む:分析の手順 ▶
⚡ 89

ここから言えること

  • 冒頭の「私たち」は、読者を巻き込む装置として働き、それが消えることで読者は宙づりになる。
  • 語りの分析(第5章)と受容の分析が、同じ箇所で交わる。
  • 裁判が受容の歴史の一部であり、「不道徳な作品」という読み方が最初期に定着したことが、その後の受容を規定した。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 90

使える史料

  • 同時代の書評。新聞と雑誌(03・07の領域)。
  • 部数と版の記録。
  • 教育での扱い。いつから教科書に入ったか。
  • 翻訳の時期。いつ他の言語に訳されたか。
  • 後の作家の言及。
本文で読む:受容の歴史を調べる ▶
⚡ 91

どこに空白があるか

  • 人物の外見が書かれていない。読者が補う。
  • 時間の飛躍。「三年が過ぎた」の三年(第5章の省略)。
  • 動機が説明されない。なぜその行動を取ったか。
  • 会話の間。答えが書かれない問い。
  • 結末の後。その後どうなったか。
本文で読む:空白を数える ▶
⚡ 92

数える

  • 1章あたり、時間の飛躍が何回あるか。
  • 説明されない動機が何箇所あるか。
  • 表にすれば、テクストが読者にどれだけ委ねているかが示せる。
  • 作品によって差が大きい。19世紀の小説と20世紀の小説を比べると顕著にあたる。
本文で読む:空白を数える ▶
⚡ 93

「読者」をさらに分ける

  • 同じ時代の読者も一枚岩ではない(本章)。
  • 階層・性別・地域・教育によって、読み方が違う(03・13の領域)。
  • したがって「当時の読者は〜と読んだ」と書くときは、どの層かを示す。
  • 書評は、書いた人の属する層の読み方を示す資料にあたる。
本文で読む:読者の共同体 ▶
⚡ 94

ここから言えること

  • 教訓の位置と長さを数えると、どの寓話が読者に多くを委ねているかが分かる。
  • 献辞と教訓の言葉づかいを比べると、想定された読者の像が組み立てられる。
  • 「子どものための本」という現在の位置づけが、いつ定着したかは受容の歴史の問題にあたる(第12章)。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶
✓ 通過チェック

第10章の通過チェック

  • 受容理論の3つの考え方を言える
  • 期待の地平の定義と、作品との3つの関係を言える
  • 「読者」の3つの意味を言い、最も使いやすいものとその理由を言える
  • この枠組みで見えるものと見えなくなるものを、それぞれ3つ言える
  • 分析の6段階を言える
  • 『ボヴァリー夫人』の冒頭で、語りと受容が交わる点を説明できる
  • 受容の歴史に使える史料を4つ言える
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

テクストと読者 第11章 脱構築の読み — 決定不能性

テクストが、自分で自分を裏切る箇所を探す。
⚡ 95

3段階の手続き

  • 1. 対立を特定する。そのテクストが前提にしている二項の対立を取り出す。
  • 2. 優位を確認する。どちらが正しい・自然・本来のものとされているか。
  • 3. 崩れを示す。優位に置かれた項が、実は劣位の項に依存していることを、テクストの記述から示す。
本文で読む:枠組みの中身 ▶
⚡ 96

取り出せるもの

  • 作品が前提にしている対立の一覧。
  • その対立が揺らぐ箇所。
  • 決定できない語や場面。どちらの読みも根拠を持つ箇所。
  • 作品が自分の主張を裏切る瞬間。
本文で読む:この枠組みで何が見えるか ▶
⚡ 97

6段階

  • 1. 作品が繰り返し使う対立を拾う。3つか4つ。
  • 2. どちらが優位に置かれているかを、記述から確かめる。
  • 3. 優位の項が、劣位の項によって定義されている箇所を探す。
  • 4. 決定できない語・場面を特定する。どちらの読みも本文から支持できる箇所。
  • 5. その箇所を引用し、両方の読みを併記する。
  • 6. 決定できないことが、作品の中で何をしているかを述べる。
本文で読む:分析の手順 ▶
⚡ 98

書き方の要点

  • 「この台詞は曖昧である」で終えない。
  • 2つの読みを、それぞれ本文の根拠とともに示す。
  • そのうえで、どちらとも決められないことが劇の構造とどう関わるかを述べる。
  • 決定不能性は、作品の欠陥ではなく仕組みとして扱う。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 99

使わないという選択

  • 説明できないなら使わない(第1章)。
  • 「両方の読みが本文から支持できる」と書けば足りる場面が多い。
  • 術語を使わずに同じ内容を書けるなら、そのほうが安全にあたる。
本文で読む:誤用の見分け方 ▶
⚡ 100

どこを探すか

  • 同じ語が、両立しない2つの意味で使われている箇所。
  • 登場人物の言葉と、地の文が食い違う箇所(第5章の自由間接話法)。
  • 作品が価値を置くものが、その反対のものに依存している箇所。
  • 結末が、始まりの前提を崩している箇所。
本文で読む:反復と決定不能 ▶
⚡ 101

自由間接話法との関係

  • 誰の声か決まらないという事態は、この枠組みの好例にあたる(第5章)。
  • 皮肉とも共感とも読める。どちらも本文から支持できる。
  • したがって『ボヴァリー夫人』は、この枠組みでよく扱われる。
  • ただし「決定できない」で終えず、その宙づりが作品の何を作っているかを述べる(本章)。
本文で読む:反復と決定不能 ▶
⚡ 102

代わりの書き方

  • 「両方の読みが本文から支持できる」と書く。術語なしで同じ内容が書ける。
  • 「この語は、◯ページでは〜の意味だが、◯ページでは〜の意味で使われている」と具体的に書く。
  • この書き方なら、誤用の危険がない。
本文で読む:いつ使わないか ▶
⚡ 103

書き方の注意

  • 「教訓と物語が矛盾している」と書いて終えない。
  • 2つの読みを、それぞれ根拠とともに示す(本章)。
  • そのうえで、決定できないことが読者に何をさせるかを述べる。
  • この寓話集は、教訓と物語の関係が単純でないため、この枠組みの練習に向く。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第11章の通過チェック

  • 脱構築の3段階の手続きを言える
  • やってはいけない3つを言える
  • 決定不能性の定義を、曖昧さとの違いから言える
  • この枠組みで見えるものと見えなくなるものを、それぞれ3つ言える
  • 分析の6段階を言い、最も難しい段階を言える
  • 『フェードル』の例で、2つの読みを併記できる
  • 誤用の5つの型を言える
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

テクストと読者 第12章 文学史の理論 — 正典・ジャンル・場

個々の作品から、文学という制度そのものへ視点を移す。
⚡ 104

正典は自然にできるのではない

  • 学校の教科書と入試が、読まれる作品を決める(03の領域)。
  • 出版社の叢書(そうしょ)が、何が古典かを形にする。
  • 批評と文学史の記述が、位置を確定する。
  • 翻訳が、国境を越えた正典を作る。
  • したがって「なぜこの作品が残ったのか」は、作品の質だけでは答えられない。
本文で読む:正典という問い ▶
⚡ 105

分析できること

  • ある作品が、いつから文学史に載るようになったか。
  • 同時代に人気があったのに消えた作家。その理由。
  • 正典の中の偏り。誰が入り、誰が入らないか(第13・14章)。
  • 正典が組み替えられた時期。19世紀の学校制度、20世紀後半の見直し。
本文で読む:正典という問い ▶
⚡ 106

ジャンルは3つのものを同時に指す

  • 形式の型 — 韻文か散文か、行数、構成。
  • 読者との約束 — この形式ならこう読む、という期待(第10章の期待の地平)。
  • 制度上の区分 — 出版・教育・書店の棚・賞の分類。
本文で読む:ジャンル ▶
⚡ 107

場で見えるようになること

  • 作品の選択が、位置取りとして読める。なぜこの形式か、誰と差別化しようとしたか。
  • 2つの極がある。すぐに売れることを目指す極と、同業者からの評価を目指す極。
  • 後者では、売れないことが価値になるという逆転が起きる。
  • 「純文学」と「大衆文学」の区別が、場の構造の中で作られることが見える。
本文で読む:場という考え方 ▶
⚡ 108

取り出せるもの

  • 作品の位置。同時代の中で、どんな立場を取っていたか。
  • ジャンルの規則と、その逸脱。
  • 正典化の過程。いつ、誰によって評価が確定したか。
  • 消えた作品と作家。なぜ消えたか。
本文で読む:この枠組みで何が見えるか ▶
⚡ 109

6段階

  • 1. 作品の刊行年と、当時の位置を確かめる(02・03の領域)。
  • 2. 同時代の評価を調べる。書評・部数・賞(07の領域)。
  • 3. その後の評価の変化を追う。教科書・全集・研究の量。
  • 4. ジャンルの規則を特定する。その形式の型と、読者の期待。
  • 5. 作品がどこで規則を外れているかを示す。
  • 6. 位置取りとして記述する。「この選択は、当時の場の中で〜という位置を取ることだった」。
本文で読む:分析の手順 ▶
⚡ 110

注意

  • 1〜3は史料で確かめる。推測で書かない。
  • 4〜5は本文の記述から示す。
  • 6は解釈であり、「〜と見ることができる」と書く。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 111

枠そのものを問う

  • 国民国家の枠組みで文学史を書くのは、19世紀に定着した形にあたる(03の領域)。
  • フランス語で書かれた作品のすべてが「フランス文学」とされるわけではない(第14章)。
  • ベルギー、スイス、ケベック、マグレブ、カリブ海。どこまでが入るのか。
  • この線引きは、誰が、いつ、どんな理由で引いたのか。
本文で読む:「フランス文学」という枠 ▶
⚡ 112

レポートの切り口になる

  • ある作家が文学史に載る時期と、載らない時期。
  • 教科書の目次の変化。
  • 全集の構成。
  • これらは史料で確かめられる(07の領域)。
本文で読む:「フランス文学」という枠 ▶
⚡ 113

ここから言えること

  • ジャンルの序列が、作品の評価を決めていたという点が確かめられる。
  • 教育への組み込みが、正典化の主要な経路にあたる(本章)。
  • 「子どものための本」という現在の位置づけは、19世紀の学校制度の産物である可能性がある。
  • 教科書の採録の歴史を調べれば、史料で確かめられる(07の領域)。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第12章の通過チェック

  • 正典が作られる4つの経路を言える
  • ジャンルが同時に指す3つのものを言える
  • 境界の作品がなぜ分析に豊かかを言える
  • 場の2つの極を言い、時間の尺度の違いを言える
  • この枠組みで見えるものと見えなくなるものを、それぞれ3つ言える
  • 分析の6段階を言い、史料で確かめる段階と解釈の段階を分けられる
  • 『脂肪の塊』の位置取りを説明できる
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

立場から読む 第13章 ジェンダーの批評

作品の中で、性差はどう描かれているか。誰が語り、誰が語られるのか。そして正典そのものに偏りはないのか。
⚡ 114

3つ目が最も射程が広い

  • 語り手を「中立」と読む習慣そのものが問われる。
  • 「普遍的な人間」を描いたとされる作品が、実は特定の視点から書かれているという指摘(04の領域)。
  • したがって、この枠組みは他のすべての章に跳ね返る。
本文で読む:3つの水準 ▶
⚡ 115

取り出せるもの

  • 誰が語り、誰が語られるか。視点の配分(第5章)。
  • 描写の量と質。身体の描写が誰に集中しているか。
  • 行為と受動。誰が動き、誰が待つか。
  • 語彙。同じ行為が、人物によって違う語で語られていないか。
  • 結末。誰がどう終わるか。19世紀の小説では、逸脱した女性が死ぬ形が繰り返される。
本文で読む:描かれ方を分析する ▶
⚡ 116

数えられる

  • 焦点化が誰に置かれているかを、章ごとに数える。
  • 身体の描写の語数を、人物ごとに比べる。
  • 発話の量を数える。誰が何行話すか。
  • これらは表にできる。表にすれば検証できる(07の領域)。
本文で読む:描かれ方を分析する ▶
⚡ 117

問えること

  • 文学史に載っている作家の構成(第12章)。
  • 同時代に読まれていたのに、文学史から落ちた作家。
  • 落ちた理由。ジャンルの序列(書簡・回想録・小説)、出版の条件、批評の言葉。
  • 再発見の動き。20世紀後半以降、忘れられた作家の再刊と研究が進んだ。
本文で読む:書き手の位置と正典 ▶
⚡ 118

これまでの章に跳ね返る

  • 第5章 — 「中立な語り手」という読みは成り立つか。
  • 第6章 — 集められた「普遍的なイメージ」は、誰の経験に基づくか。
  • 第7章 — 精神分析の枠組み自体が、特定の家族の形を前提にしていないか。
  • 第12章 — 正典の構成そのもの。
本文で読む:読み方の枠組みを問う ▶
⚡ 119

6段階

  • 1. 水準を決める。描かれ方か、書き手の位置か、枠組みの検討か。
  • 2. 数える。視点・描写量・発話量・結末。
  • 3. 表にする。人物ごとに並べる。
  • 4. 偏りを特定する。数の上で明らかな差がある箇所。
  • 5. 当時の規範を確かめる(03・04の領域)。その偏りは当時の一般的な形か、この作品固有か。
  • 6. 差を記述する。一般的な形なら、そう書く。固有なら、それが何をしているかを書く。
本文で読む:分析の手順 ▶
⚡ 120

ここから言えること

  • 視点の配分と、描写の対象がずれている。エマの目から語られるのに、エマの身体が最も多く描かれる。
  • この二重性は、語りの分析(第5章)とジェンダーの分析が交わる点にあたる。
  • 数と分布を示せば検証できる。
  • 「この作品は女性を対象化している」という結論だけを書かない。どの箇所で、どういう仕組みでそうなっているかを示す。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 121

見落とされやすい点

  • この枠組みは、女性の描かれ方だけを扱うのではない。
  • 男性人物がどう描かれるかも同じ方法で分析できる。
  • 「男らしさ」がどう作られ、どう揺らぐか。
  • 語り手が男性であることが「中立」として扱われてきたという指摘が、この枠組みの出発点にあたる(本章)。
本文で読む:男性性も分析の対象になる ▶
⚡ 122

19世紀の小説での例

  • 軍・決闘・名誉といった主題が、男性人物にどう結びついているか。
  • 出世の物語で、何が「男らしさ」の証明とされるか(03の領域)。
  • 数えられる。誰にどの語が使われるかを表にする。
本文で読む:男性性も分析の対象になる ▶
⚡ 123

ここから言えること

  • 道徳的な評価の反転(第4章)と、視点の配分が一致していない。
  • 読者は、主人公に共感するよう導かれながら、主人公の内面には入れない。
  • この不一致が、作品の効果を作っている。
  • 語りの分析(第5章)とジェンダーの分析が、ここでも交わる。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第13章の通過チェック

  • 3つの水準を言い、最も射程が広いものを言える
  • 描かれ方で数えられるものを4つ言える
  • 正典の偏りを論じるときの注意を2つ言える
  • この枠組みが他の章に跳ね返る例を3つ言える
  • 見えなくなるものを3つ言える
  • 分析の6段階を言い、省いてはいけない段階を言える
  • 『ボヴァリー夫人』で、論になる二重性を説明できる
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

立場から読む 第14章 ポストコロニアル批評

誰の視点が書かれ、誰の視点が欠けているかを問う枠組みである。
⚡ 124

中心にある3つの論点

  • 表象 — 支配された側が、どう描かれてきたか。描き方そのものが、支配の一部として機能していなかったか。
  • 視点の非対称語る側と語られる側が固定されていること。
  • 書き返し旧植民地の作家が、正典の作品を別の視点から書き直すという実践。
本文で読む:枠組みの中身 ▶
⚡ 125

取り出せるもの

  • 名前を持つ人物と、持たない人物の分布。
  • 視点の配分。誰の内面が語られ、誰の内面が語られないか(第5章)。
  • 描写の語彙。集団としてまとめられているか、個人として書かれているか。
  • 舞台の扱い。植民地が背景として使われているか、それ自体が主題か。
  • 沈黙。語られない領域と、その位置。
本文で読む:この枠組みで何が見えるか ▶
⚡ 126

数えられる

  • 固有名詞を持つ人物の数を、集団ごとに数える。
  • 発話の行数を比べる。
  • 焦点化が置かれる箇所を数える。
  • 表にすれば検証できる(07の領域)。
本文で読む:この枠組みで何が見えるか ▶
⚡ 127

6段階

  • 1. 作品の舞台と時代を、歴史の側から確かめる(03の領域)。
  • 2. 人物を一覧にする。名前の有無、出自、職業。
  • 3. 視点と発話を数える。誰が語り、誰が語られるか。
  • 4. 描写の語彙を拾う。個人として書かれているか、集団としてか。
  • 5. 語られない領域を特定する。
  • 6. 記述する。「この作品は植民地的である」ではなく、「この作品の視点の配分は〜である」と書く。
本文で読む:分析の手順 ▶
⚡ 128

どう書くか

  • 「テクストは、殺された人物に固有名詞を与えていない。一方、他の人物には名が与えられている。」——これは検証できる記述にあたる。
  • 「この非対称は、作品が一人称で書かれていることと切り離せない。」——構造の指摘。
  • 「したがって作者は植民地主義者である」とは書かない。作品の構造と作者の立場は別の問いである(04の領域)。
  • 「この構造をどう評価するかは論争が続いている」と書く。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 129

どういう営みか

  • 正典の作品を、別の視点から書き直す。登場しなかった人物の側から語り直す。
  • 20世紀後半以降、複数の言語圏で行われてきた。
  • 『異邦人』についても、21世紀に、被害者の側から書き直した小説がアルジェリアの作家によって発表された。
  • 書き返しは批評でもある。原作の構造を、実作によって明るみに出す。
本文で読む:書き返しという実践 ▶
⚡ 130

分析にどう使うか

  • 原作と書き返しを並べる。何が補われ、何が変えられたか。
  • 補われた部分が、原作の沈黙を示している。
  • これは第9章の間テクスト性の分析でもある。変形の記述が中心になる。
本文で読む:書き返しという実践 ▶
⚡ 131

押さえておくこと

  • フランス語で書く作家は世界中にいる(03の領域)。カリブ海、西アフリカ、マグレブ、インドシナ、ケベック。
  • 「フランス文学」と「フランス語圏文学」を分ける区分そのものが、分析の対象になる。
  • なぜ分けるのか。誰が分けたのか。この問いは第12章の正典の問いと重なる。
  • 09フランス語圏の領域を作るときは、この論点が土台になる。
本文で読む:フランス語圏の文学との関係 ▶
⚡ 132

この枠組みで扱えること

  • どの作品が翻訳され、どの作品がされなかったか。
  • 翻訳の時期。独立の前か後か。
  • 翻訳での変更。削除・注釈・題名の変更。
  • 受容の非対称。中心から周縁への流れと、その逆の流れの量の差。
本文で読む:翻訳と受容 ▶
⚡ 133

調べ方

  • 翻訳の書誌を確かめる(07の領域)。
  • 序文と訳者あとがきを読む。どう紹介されているかが分かる。
  • これは第10章の受容の分析でもある。
  • 09フランス語圏の領域を作るときの土台になる。
本文で読む:翻訳と受容 ▶
⚡ 134

手順

  • 数える。固有名詞の数、発話の行数、描写の語彙。
  • 同じ作家が本国を描く場面と比べる。描写の質が違うかを確かめる。
  • 当時の他の記録(旅行記・新聞)と比べる(03・15の領域)。
  • 記述を確定してから、評価に進む(本章)。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶
✓ 通過チェック

第14章の通過チェック

  • この枠組みの3つの論点を言える
  • 他者化の定義を言える
  • 数えられるものを3つ言える
  • 見えなくなるものを3つ言える
  • 分析の6段階を言い、最も重要な段階を言える
  • 『異邦人』について、検証できる記述と、書いてはいけない断定を分けられる
  • 書き返しがなぜ批評でもあるかを言える
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

立場から読む 第15章 文化研究とメディア

文学の外へ出る。
⚡ 135

前提にしていること

  • 意味は、正典の作品だけが持つのではない。
  • 受け手は受け身ではない。与えられたものを、独自の仕方で使う。
  • 文化の産物は、それが流通する条件と切り離せない(第8章)。
  • 「高級/大衆」という区分自体が、歴史的に作られた(第12章)。
本文で読む:枠組みの中身 ▶
⚡ 136

取り出せるもの

  • 文学と他のメディアの相互の関係。新聞連載が小説の形を変えた(03の領域)。
  • 「文学」という区分の歴史。いつ、誰が、何を排除したか。
  • 受け手の使い方。同じ作品が、層によって違う仕方で使われる。
  • 流通の条件と形式の関係。媒体が形式を規定する。
本文で読む:この枠組みで何が見えるか ▶
⚡ 137

6段階

  • 1. 対象を1つに絞る。「広告」ではなく「ある年のある雑誌の1つの広告」。
  • 2. 媒体の条件を確かめる。発行部数・読者層・価格・掲載の位置。
  • 3. 使う枠組みを1つ選び、移せる部分と移せない部分を述べる。
  • 4. 分析する。記号論なら第二の層を、物語論なら構造を。
  • 5. 文学作品と比べる。同じ主題を扱う作品との差を示す。
  • 6. 「文学」との境界について何が言えるかを述べる。
本文で読む:分析の手順 ▶
⚡ 138

ここから言えること

  • 19世紀の長編小説の形は、この経済的な条件と切り離せない。
  • 形式の分析(第3〜5章)と、媒体の条件の分析が同じ対象で交わる。
  • 「文学」の内と外の境界が、この時期に引き直されたという指摘ができる。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 139

この章の使いどころ

  • 作品の媒体を確かめる。新聞連載か、単行本か、雑誌掲載か(07の領域)。
  • 媒体が形式に与えた条件を書く。
  • 同時代の他のメディアと比べる。同じ事件が新聞と小説でどう扱われたか。
  • 「文学とは何か」という問いを、歴史的に扱う。本質ではなく、境界の歴史として。
本文で読む:文学研究にどう戻すか ▶
⚡ 140

絞り方の基準

  • 1つの対象を、全部見られる大きさにする。
  • 比較するなら、対応する部分だけを比べる。
  • 史料が手に入る範囲にする(07の領域)。
本文で読む:対象を絞る練習 ▶
⚡ 141

分析の要点

  • 何が保たれ、何が変えられたかを表にする(第9章の間テクスト性と同じ手続き)。
  • 媒体の制約による変更と、解釈による変更を分ける。
  • 前者は必然、後者は選択にあたる。選択のほうが論点になる。
  • 翻案は、原作の読み方の1つでもある。したがって批評として読める(第14章の書き返し)。
本文で読む:適応と翻案 ▶
⚡ 142

なぜ文化研究の例になるか

  • 裁判の記録は、文学作品ではないが、文学の境界を決めた文書にあたる。
  • 法廷の言葉と、批評の言葉を比べられる。
  • 同じ作品が、法廷・新聞・文芸誌でどう語られたかを並べられる。
  • 史料が残っており、確かめられる(07の領域)。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第15章の通過チェック

  • 文化研究が前提にしている4つを言える
  • 対象ごとに使える枠組みを3組言える
  • 道具を他のメディアに持ち込むときの注意を言える
  • この枠組みで見えるものと見えなくなるものを、それぞれ3つ言える
  • 分析の6段階を言い、最初の段階で何をするかを言える
  • 新聞連載が小説の形式に与えた条件を説明できる
  • 文学研究にこの章をどう戻すかを4つ言える
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

素材と現在 第16章 生成研究 — 書かれる過程を読む

完成した作品ではなく、書かれる過程そのものを読む。
⚡ 143

前提にしていること

  • 完成した本文は、過程の最後の一状態にすぎない。
  • したがって、本文だけを見ると、選択の跡が見えない。
  • 書かれなかったもの、削られたものが、書かれたものを規定している。
  • 作品は「もの」ではなく「過程」として捉えられる。
本文で読む:枠組みの中身 ▶
⚡ 144

フランスでこの方法が発展した理由

  • 19世紀以降の作家の草稿が、まとまって残っている。
  • 公的な機関が収集し、整理してきた。
  • 電子化により、一部が公開されている(07の領域)。
  • フローベールとプルーストの草稿が、この方法の代表的な材料になってきた。
本文で読む:何が材料になるか ▶
⚡ 145

取り出せるもの

  • 語の選択。どの語が、どの語に置き換えられたか。
  • 削除の跡。何が消されたか。消された部分が、本文の緊張を説明することがある。
  • 構成の変更。場面の順序が入れ替わった痕跡。
  • 作品の設計。人物表や年表から、作者の計画が見える。
  • 書く速度。どこで筆が止まったか。
本文で読む:この枠組みで何が見えるか ▶
⚡ 146

6段階

  • 1. 草稿が公開されているかを確かめる(07の領域)。所蔵機関・電子版。
  • 2. 一節を選ぶ。刊行版の1ページ程度に対応する部分。
  • 3. 段階を並べる。構想メモ → 下書き → 刊行版。
  • 4. 差を記述する。語の置き換え、削除、追加、順序の変更。
  • 5. 差を分類する。語彙の変更か、構文の変更か、内容の変更か。
  • 6. その変更が、刊行版の効果とどう関わるかを述べる。
本文で読む:分析の手順 ▶
⚡ 147

書き方

  • 「下書きAでは〜と書かれていたが、刊行版では〜になっている」——検証できる記述。
  • 「この変更は、説明を削る方向に一貫している」——複数の例から言える一般化。
  • 「作者は非人称性を目指した」——これは書簡などの別の資料が要る。草稿だけからは言えない。
  • 段階を分けて書く。記述と推定を混ぜない(07の領域)。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 148

版と本文の問題と直結する

  • どの版を使うかという問題(07の領域)は、どの段階を本文とするかという問題にほかならない。
  • 作者の最終意志を本文とするのか、初版を本文とするのか。
  • 生成研究は、この「最終」という考え方自体を相対化する。
  • したがって、批評版の作り方にも影響を与えてきた。
本文で読む:07との関係 ▶
⚡ 149

手順

  • 1. 批評版の解説を読む。草稿の所在と点数が書かれていることが多い(07の領域)。
  • 2. 所蔵機関を確かめる。公的な図書館・文書館。
  • 3. 電子版が公開されているかを調べる。近年、複数の作家の草稿が公開されている。
  • 4. 先行研究を探す。既に翻刻(ほんこく)され、分析されている部分がある。
  • 5. 翻刻された部分から始める。手稿を直接読むのは、訓練が要る。
本文で読む:草稿をどう探すか ▶
⚡ 150

引用の形

  • 削除された語を示す記号は、翻刻の方針によって違う。
  • 使った版の凡例(はんれい)を確かめ、その記号をそのまま使う。
  • 勝手に整形しない(07の領域)。
本文で読む:電子版を使うときの注意 ▶
⚡ 151

書ける形

  • 「削除は、説明を減らす方向に一貫している。」——複数例から言える。
  • 「この削除により、刊行版では読者が補う部分が増えている。」——第10章の空白と接続する。
  • 記述と推定を分ける。これがこの章の最大の注意にあたる。
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第16章の通過チェック

  • 生成研究と前テクストの定義を言える
  • この方法が前提にしている4つを言える
  • 材料になるものを5つ言い、最も情報量が多いものを言える
  • この枠組みで見えるものと見えなくなるものを、それぞれ3つ言える
  • 意図の推定に流れる危険と、その対策を言える
  • 分析の6段階を言える
  • 07の版の問題と、この方法がどう関わるかを説明できる
本文で読む:もう1つ当ててみる ▶

素材と現在 第17章 現在の潮流 — 認知・情動・デジタル

2000年代以降に力を持ってきた方向を扱う。
⚡ 152

何を扱うか

  • 読者が人物の心をどう推測するか。テクストの手がかりから、内面を組み立てる過程。
  • 比喩の理解。日常の思考にも比喩の構造があるという主張を、文学の分析に用いる。
  • 視点の取得。焦点化(第5章)が、読者の側でどう働くか。
  • 記憶と予測。長い作品を読むとき、読者が何を保持し何を予測するか。
本文で読む:認知的なアプローチ ▶
⚡ 153

使えるところ

  • 語りの分析の裏づけとして。「なぜ内的焦点化は読者を巻き込むのか」に説明を与えうる。
  • ただし、それだけで論にはならない。作品の記述と結びつける必要がある。
本文で読む:認知的なアプローチ ▶
⚡ 154

何を扱うか

  • テクストが読者の身体に及ぼす効果。
  • 意味に還元されない部分。リズム・音・反復。
  • 感情の表象ではなく、感情が生じる仕組み。
本文で読む:情動をめぐる方向 ▶
⚡ 155

使えるところ

  • 音とリズムの分析とは接続しやすい(07の詩法)。数えられる要素から入る。
  • 反復の分析(第7章)とも重なる。
本文で読む:情動をめぐる方向 ▶
⚡ 156

何ができるようになったか

  • 1作品では見えない規模の分析。数百冊の小説を一度に扱える。
  • 語の頻度と分布。ある語がいつから使われ始めたか。
  • 文体の計量。文の長さ、語彙の多様さ、機能語の分布。
  • 正典の外の作品を含められる(第12章)。忘れられた作品も数に入る。
本文で読む:デジタルな方法 ▶
⚡ 157

学部で使えるところ

  • 1作品の中での語の分布を数える。これは道具がなくてもできる(07の領域)。
  • 電子テクストを検索して、語の出現箇所を全部拾う。
  • 表にする。この程度の計量なら、レポートの根拠として十分に使える。
  • 大規模な分析は、道具と訓練が要る。無理に手を出さない。
本文で読む:デジタルな方法 ▶
⚡ 158

それでも押さえておく理由

  • 卒論で使うかどうかは別として、現在の研究がどこへ向かっているかを知っておくと、先行研究を読むときに位置が分かる(07の領域)。
  • とくにデジタルな方法は、電子テクストを使う場面で必ず関わる。
  • この教材の他の章の方法と、組み合わせられる部分がある。
本文で読む:3つに共通する注意 ▶
⚡ 159

注意

  • 総数を示す(07の領域)。「17例」だけでは多いか少ないか分からない。
  • 数え方を書く。再現できる形にする。
  • 底本を明記する。どの電子テクストを使ったか(07の領域)。
  • 数字だけで結論にしない。その分布が何をしているかを述べる。
本文で読む:当ててみる ▶
⚡ 160

共通点

  • いずれも、従来の枠組みが扱ってこなかった部分を対象にしている。
  • いずれも、文学研究の外の分野の方法を持ち込んでいる。
  • したがって、移せる部分と移せない部分を述べる必要がある(第15章)。
本文で読む:3つの潮流を見分ける ▶
⚡ 161

現実的な線

  • 認知使わなくてよい。先行研究で言及されていたら、位置を確かめる程度。
  • 情動音とリズムの分析に限定すれば使える(07の詩法)。
  • デジタル1作品の中での語の計量なら使える(本章)。
本文で読む:学部でどこまでやるか ▶
⚡ 162

知っておく意味

  • 先行研究を読むときに、その研究がどの潮流に属するかが分かる(07の領域)。
  • 10年前の研究と現在の研究で、関心が違う理由が分かる。
  • 卒論の「今後の課題」に書ける。
本文で読む:学部でどこまでやるか ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第17章の通過チェック

  • 認知的なアプローチが扱う4つを言える
  • そのアプローチの問題点を3つ言える
  • 情動という語が、感情とどう区別されるかを言える
  • 情動をめぐる方向の危険を言える
  • デジタルな方法でできるようになったことを4つ言える
  • その方法の問題点を4つ言える
  • 学部で現実的にできる計量の形を、手順で言える
本文で読む:学部でどこまでやるか ▶

素材と現在 第18章 理論への批判と「理論の後」

理論そのものが批判の対象になった。
⚡ 163

どの批判も、部分的に当たっている

  • すべてを退けるのも、すべてを受け入れるのも誤りにあたる。
  • 重要なのは、自分が使う枠組みに、どの批判が当てはまるかを知っておくこと。
  • 当てはまる批判に、あらかじめ答えておく。これがレポートの強さになる。
本文で読む:主な批判 ▶
⚡ 164

1990年代以降の傾向

  • 理論を全否定するのではなく、道具として限定して使う。この教材の立場にあたる(第1章)。
  • 歴史と実証への回帰。版・草稿・受容の史料に戻る(第16章、07の領域)。
  • 対象の拡大。正典の外、文学の外へ(第12・15章)。
  • 立場の明示。どこから読んでいるかを書くようになった(第13・14章)。
  • 複数の枠組みを組み合わせる。単一の理論に依拠しない。
本文で読む:「理論の後」に何が起きたか ▶
⚡ 165

現在よく言われること

  • 理論を当てる前に、作品を読む。
  • 精読の技術が、改めて重視されている(07の領域)。
  • ただし、理論以前の印象批評に戻るのではない(第2章)。
  • 数えられる根拠を示すという原則は残っている。
本文で読む:読むことへの回帰 ▶
⚡ 166

4つの守り方

  • 1. 範囲を限定する。「本稿は、この枠組みを〜の分析にのみ用いる。」
  • 2. 扱えないことを明示する。「〜については、この枠組みでは扱えない。」
  • 3. 予測できない結論を目指す。作品の記述が予想を裏切る箇所を探す(第1章)。
  • 4. 術語を最小限にする。説明できる語だけを使う。
本文で読む:自分の使う枠組みを守る ▶
⚡ 167

この4つを序論に1文ずつ書く

  • それだけで、主な批判の大半に応答したことになる。
  • 長く書く必要はない。各1文で足りる。
  • 07の領域の序論の4要素と組み合わせる。
本文で読む:自分の使う枠組みを守る ▶
⚡ 168

理論が残したもの

  • 作者の意図が唯一の基準ではないという前提。
  • 形式が意味を持つという前提。
  • 読み方には複数の可能性があるという前提。
  • 自分がどこから読んでいるかを問う習慣。
  • これらは、いまや前提であって、理論として意識されないほど定着している。
本文で読む:理論を学ぶ意味 ▶
⚡ 169

範囲の限定(1文)

  • 「本稿は、◯◯の枠組みを、△△の分析にのみ用いる。」
  • 「本稿が用いるのは、◯◯のうち△△の概念に限られる。」
本文で読む:批判にどう答えるか ▶
⚡ 170

扱えないことの明示(1文)

  • 「本作品の語りの構造については、本稿の枠組みでは扱えない。」
  • 「◯◯の観点からの分析は、別の枠組みを要するため本稿では行わない。」
本文で読む:批判にどう答えるか ▶
⚡ 171

なぜこれが効くか

  • 「この枠組みでは説明できないことがある」という批判に、先に答えている(第1章)。
  • 審査する側は、書き手が枠組みの限界を理解しているかを見る。
  • 2文で足りる。長く書く必要はない。
本文で読む:批判にどう答えるか ▶
⚡ 172

この教材が取った方針

  • 理論の紹介ではなく、当て方を書く。各章に「分析の手順」と「当ててみる」を置いた。
  • 見えなくなるものを必ず併記する。枠組みの限界を先に示す。
  • 公有の作品で例を示す。読者が自分で確かめられる。
  • 最後に読み比べを置く(第19章)。枠組みの差が、1つの作品の上で見える。
本文で読む:理論をどう教えるか、という問題 ▶
✓ 通過チェック

第18章の通過チェック

  • 理論への主な批判を6つ言える
  • 1990年代以降の傾向を5つ言える
  • 「理論は終わった」という言い方をどう扱うべきかを言える
  • 理論以前の批評と、理論以後の精読の違いを4つの面から言える
  • 自分の枠組みを守る4つの方法を言える
  • 理論が残した前提を4つ言える
  • 「理論を使わない読み」がない理由を言える
本文で読む:理論をどう教えるか、という問題 ▶

実践 第19章 読み比べ — 1つの作品を5つの枠組みで

同じ作品が、枠組みによってどう違って見えるか。
⚡ 173

場面の内容(あらすじではなく設定)

  • 町の広場で農業共進会が開かれ、壇上で式典の演説が行われている。
  • 同じ時間に、建物の窓辺で、ロドルフがエマを口説いている。
  • テクストは、演説の断片と、二人の会話を交互に置く。
  • 賞の授与の言葉と、口説きの言葉が並ぶ。
本文で読む:材料 ▶
⚡ 174

見えるもの

  • 語りの速さ。この場面は場面にあたる(第5章)。物語内容の時間とテクストの時間がほぼ等しい。
  • 交互配置。演説と会話の断片が何回、どの長さで交替するかを数えられる。
  • 焦点化。エマの内面に入る箇所と、外から眺める箇所の切り替え。
  • 語り手の位置。演説をそのまま引く箇所と、要約する箇所がある。
本文で読む:1. 物語論で読む ▶
⚡ 175

やること

  • 切り替えの位置を全部拾い、表にする。
  • 各断片の長さ(行数)を測る。
  • 切り替えの頻度が、場面の進行とともに変化するかを見る。
本文で読む:1. 物語論で読む ▶
⚡ 176

見えるもの

  • 2つの言葉が、どちらも決まり文句でできていること(第9章)。
  • 式典の言葉が運ぶ第二の層。進歩・農業・国家。
  • 口説きの言葉が運ぶ第二の層。運命・魂・宿命。
  • 並置によって、どちらの言葉も「中身がない」ことが露呈する。
本文で読む:2. 記号論で読む ▶
⚡ 177

やること

  • 両方の言葉から、決まり文句を拾って一覧にする。
  • 同じ語が両方に出てくるかを確かめる。
  • 決まり文句の密度を比べる。
本文で読む:2. 記号論で読む ▶
⚡ 178

見えるもの

  • 式典が、何を称揚しているか(第8章)。農業の生産と、地方の名士の権威。
  • 賞を受ける人物と、受けない人物。
  • エマとロドルフの階層。地主と医者の妻。
  • この場面が、七月王政期の地方社会の何を示しているか(03の領域)。
本文で読む:3. 社会批評で読む ▶
⚡ 179

やること

  • 式典で言及される職業・生産物・賞を拾う。
  • 登場する人物の階層を一覧にする。
  • 当時の地方の行事について、史料で確かめる(03・07の領域)。
本文で読む:3. 社会批評で読む ▶
⚡ 180

見えるもの

  • 語りの視点と、描写の対象のずれ(第13章)。エマの内面が語られながら、エマが眺められてもいる。
  • 口説きの言葉が、エマに何を提供しているか。
  • 式典の壇上に誰が立っているか。
  • エマの発話量と、ロドルフの発話量の差。
本文で読む:4. ジェンダーの批評で読む ▶
⚡ 181

やること

  • 二人の発話の行数を数える。
  • エマの内面が語られる箇所と、外から描写される箇所を数える。
  • 当時の小説の一般的な形と比べる(第13章の5段階目)。
本文で読む:4. ジェンダーの批評で読む ▶
⚡ 182

見えるもの

  • この場面の草稿が大量に残っている(第16章)。
  • 交互配置が、最初からあったのか、推敲の過程で作られたのか。
  • 削られた語。説明的な語が消えていく方向(第16章)。
  • 演説の文言が、どう変えられたか。
本文で読む:5. 生成研究で読む ▶
⚡ 183

やること

  • 草稿の公開状況を確かめる(07の領域)。
  • 段階を並べ、差を記述する。
  • 差を分類する。語彙・構文・内容。
本文で読む:5. 生成研究で読む ▶
⚡ 184

組み合わせるときの原則

  • 主となる枠組みを1つ決める。
  • 補助を1つまで。3つ以上混ぜると、術語が衝突する(第1章)。
  • 交わる組み合わせを選ぶ。並行する2つを並べても、論が2本になるだけにあたる。
  • 衝突する組み合わせを使うなら、衝突そのものを論点にする。
本文で読む:どこで交わり、どこで衝突するか ▶
⚡ 185

共通して指摘されること

  • どの枠組みからも、「2つの言葉の並置」が中心の技法として浮かび上がる。
  • 並置が何をしているかの説明が、枠組みごとに違う。
  • 技法の指摘は共通し、意味づけが分かれるという構図になる。
本文で読む:5つを並べて分かること ▶
⚡ 186

それでも5つに絞った理由

  • 枠組みを増やすほど、1つあたりが浅くなる。
  • レポートでは主1つ、補助1つまで(第1章)。
  • この章は「差が見える」ことが目的なので5つ並べたが、実際に書くときは絞る。
本文で読む:6つ目の枠組みを足すなら ▶
⚡ 187

4つの条件

  • 1. 技法がはっきりしている。交互配置、視点の切り替え、時間の飛躍など。
  • 2. 社会的な内容を含む。職業・階層・金・制度。
  • 3. 人物の関係が動く。関係の変化がある。
  • 4. 短い。2〜4ページ。長いと、記述だけで紙幅が尽きる。
本文で読む:場面選びの基準 ▶
⚡ 188

他に向く場面の例

  • 『赤と黒』の、主人公が上流の家に入る場面(03の領域と接続する)。
  • 『ゴリオ爺さん』の、下宿の食卓の場面(第8章)。
  • 『脂肪の塊』の、2つの食事の場面(第4章)。
  • いずれも公有の作品にあたる。
本文で読む:場面選びの基準 ▶
✓ 通過チェック

第19章の通過チェック

  • この場面が5つの枠組みすべてに当てられる理由を言える
  • 物語論で数えるものを3つ言える
  • 記号論で拾うものを言える
  • 社会批評で確かめるものを3つ言える
  • ジェンダーの批評で数えるものを3つ言える
  • 生成研究で並べるものを言える
  • 交わる組み合わせと並行する組み合わせを、それぞれ2つ言える
  • 5つに共通して浮かび上がるものを言える
本文で読む:場面選びの基準 ▶

実践 第20章 卒論で理論を使う

枠組みをどう選び、どう書き、どこで失敗するか。
⚡ 189

5段階

  • 1. 作品を読み、引っかかりを記録する(07の領域)。まだ枠組みは考えない。
  • 2. 引っかかりを疑問文にする。問いを1行にする。
  • 3. 問いの種類を判定する。語りの問題か、社会の問題か、読者の問題か(第1章の対応表)。
  • 4. その種類を扱える枠組みを、早見表から選ぶ。
  • 5. 選んだ枠組みの入門書を1冊読み、術語を3つに絞る。
本文で読む:枠組みを選ぶ手順 ▶
⚡ 190

6文の型

  • 1. 対象を示す。作品と版(07の領域)。
  • 2. 問いを示す。
  • 3. 先行研究の中での位置。
  • 4. 用いる枠組みを1つ挙げ、誰の定義かを示す。
  • 5. 範囲を限定する。「本稿は、この枠組みを〜の分析にのみ用いる。」
  • 6. 扱えないことを明示する。「〜については、本稿では扱えない。」
本文で読む:序論に書くこと ▶
⚡ 191

推奨する形

  • 第1章 前提の確認。版・作品の成立事情・術語の定義。
  • 第2章 記述。数えられる形で、テクストの事実を確定する。枠組みの適用はまだしない。
  • 第3章 分析。枠組みを当て、記述の意味を論じる。
  • 第4章 総合。問いに答える。
  • この形なら、第2章が誰にでも検証できる土台になる。
本文で読む:本論の組み立て ▶
⚡ 192

記述と分析を同じ分量にする

  • 記述が薄いと、分析が浮く。
  • 分析が薄いと、資料の整理で終わる。
  • 半々を目安にすると、両方が支え合う。
本文で読む:分量の配分 ▶
⚡ 193

想定される5つの質問

  • なぜこの枠組みを選んだのか。他の枠組みでは何が説明できないのか。
  • この枠組みの限界は何か。(第18章の批判に答える)
  • 数えた基準は何か。何を数え、何を数えなかったか。
  • 理論に合わない箇所はなかったか。
  • 版はなぜこれを使ったのか。(07の領域)
本文で読む:口頭試問で問われること ▶
⚡ 194

答え方

  • 1つ目と2つ目は、序論の5・6文目がそのまま答えになる。
  • 3つ目は、本論の記述の章に書いてある。
  • 4つ目は、書いてあれば強い。書いていなければ「そこは扱えていない」と正直に言う(07の領域)。
本文で読む:口頭試問で問われること ▶
⚡ 195

最後に残る3つ

  • 問いが先、枠組みが後。
  • 記述を先に固め、そのあとで意味づける。
  • どの枠組みも、何かを見えなくする。それを明示することが誠実さになる。
本文で読む:この教材を終えて ▶
⚡ 196

他の領域とのつなぎ方

本文で読む:この教材を終えて ▶
⚡ 197

枠組みについての7項目

  • 用いる枠組みを1つに絞り、序論で明示したか
  • 誰の定義かを示したか
  • 範囲の限定と、扱えないことを1文ずつ書いたか(第18章)
  • 術語を3つ以内に抑えたか
  • 記述の章と分析の章を分けたか
  • 数えた基準を書いたか(07の領域)
  • 理論に合わない箇所を書いたか
本文で読む:提出前チェック ▶
⚡ 198

07の領域と合わせて

  • 序論の問いと結論の答えが対応しているか
  • 引用がすべて原文と一致しているか
  • 注に出た文献が参考文献一覧にあるか
  • 版を明記したか
本文で読む:提出前チェック ▶
⚡ 199

枠組みを使うときの構成

  • 理論の原典1〜2点でよい。該当する概念の箇所だけ。
  • 入門書 — 1点。位置づけのため。
  • その枠組みで書かれた実際の分析2〜3点。最も重要にあたる。当て方が学べる。
  • 作品についての先行研究 — 5〜10点。枠組みとは別に必要(07の領域)。
  • 一次資料 — 使った版(07の領域)。
本文で読む:参考文献をどう選ぶか ▶
⚡ 200

配分の目安

  • 理論に関する文献が、参考文献全体の3分の1を超えたら多すぎる。
  • 卒論は作品についての論文であって、理論についての論文ではない。
本文で読む:参考文献をどう選ぶか ▶
✓ 通過チェック

第20章の通過チェック

  • 枠組みを選ぶ5段階を言え、順序を逆にしない理由を言える
  • 序論の6文の型を言い、どの2文が批判への先回りかを言える
  • 本論の4章構成を言い、第2章が果たす役割を言える
  • よくある失敗を6つ挙げ、直し方を言える
  • 記述と分析を同じ分量にする理由を言える
  • 口頭試問で想定される質問を5つ言える
  • この教材の結論となる3つを言える
本文で読む:参考文献をどう選ぶか ▶

📗 一通り目を通したら、一問一答で言えるかどうか確かめましょう。

一問一答で総ざらいする ▶
🧭全体地図へ戻る