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CHAPTER 6 意味を読む 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 9

意味を読む|第6章 意識の批評 — 主題を追う読み

この章の狙い

要点: 1人の作家の全作品を通して、同じ主題やイメージが繰り返される。その繰り返しを追うと、その作家に固有の世界の捉え方が見えてくるのではないか。

フランスで独自に発展した枠組みにあたる。構造の分析とは違い、繰り返されるものの中身を扱う。そして現在は批判も多い。その批判の中身まで押さえる。

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枠組みの中身

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

  • 📘 主題批評:作品に繰り返し現れるイメージ・感覚・関係を集め、その作家の世界の捉え方を再構成しようとする批評のこと。テマティック批評とも呼ばれる。

前提にしていること

  • 作品は、1人の意識が世界と関わる仕方の現れである。
  • その意識は、繰り返されるイメージの中に読み取れる。
  • したがって、1作品ではなく全作品を材料にする。
  • 現象学の影響を受けている(04の領域)。意識と世界の関わりを記述するという構えが共通する。

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何を集めるか

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

種類
物質のイメージ 水・火・空気・土。液体と固体、透明と不透明
感覚 触覚・温度・光の強さ・音の質
空間の関係 高いと低い、内と外、開くと閉じる、中心と周縁
時間の感覚 持続・切断・反復・停止
身体の関係 距離・接触・隔たり

集め方

  • 語そのものではなく、感覚の質で集める。「水」という語がなくても、流れる・溶ける・浸すは同じ系列にあたる。
  • 全作品から集める。1作品では偶然かもしれない。
  • 対立する項を探す。乾と湿、明と暗。対立が見つかると構造が見える。
  • 中心になるイメージが1つか2つに絞れたら、それがその作家の核にあたるとされる。

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この枠組みで何が見えるか

取り出せるもの

  • 作家に固有のイメージの体系。
  • 作品をまたぐ一貫性。初期作と後期作をつなぐ線。
  • 描写の細部の意味。背景として読み飛ばされる部分が、体系の一部として意味を持つ。
  • 他の作家との差。同じ主題を扱っても、感覚の質が違う。

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何が見えなくなるか

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

⚠️ 視野の外に出るもの

  • 歴史と社会。イメージの体系が、どんな条件で作られたのかは扱えない。
  • 作品ごとの差。全作品を1つの意識に還元すると、個々の作品の設計が消える。
  • 形式と構造。語りや筋の分析とは相性が悪い。
  • 他の作家との共有。あるイメージが、その作家固有ではなく時代の共有物である可能性。

⚠️ 現在の主な批判

  • 「作家の意識」を前提にしている。主体を出発点に置く枠組みへの批判が、そのまま当てはまる(04の領域)。
  • 選択が恣意(しい)的になりやすい。何を集めるかで結論が決まる。
  • 検証しにくい。集めなかった例外をどう扱うのかが示されない。
  • したがって現在は、この枠組みを単独で使うことは少ない。

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分析の手順

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

6段階

  • 1. 1つの感覚の系列を決める。まずは1つだけ。
  • 2. 作品からその系列に属する記述を全部拾う。ページ番号つきで。
  • 3. 数える。何箇所あるか。総数を示す(07の領域)。
  • 4. 分布を見る。どの部分に集中しているか。誰に結びついているか。
  • 5. 対立する系列を探す。あれば、対の構造として整理する。
  • 6. 例外を書く。系列に合わない箇所を明示する。これが恣意性への対策になる。

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当ててみる

⊳ この節の問題を解く(1問)

ボードレール『悪の華』(1857/1861年、著作権消滅)の「上と下」の系列。

段階 内容
系列 上昇と下降。飛ぶ・昇る/落ちる・沈む・重い
集める 部立ての名からして「憂鬱」と「理想」が対になっている
分布 上昇の語は詩の前半に、下降の語は後半に集中する詩が多い
対立 上昇(空・鳥・香り・光)/下降(泥・重さ・深淵・墓)
例外 上昇と下降が同じ行に現れる詩がある。ここが単純な対立を崩す

ここから言えること

  • 詩集全体に「上がろうとして落ちる」という運動があるという指摘が可能になる。
  • 「アホウドリ」は、この運動を1篇に凝縮した詩として読める。空では優美な鳥が、甲板では歩けない。
  • 例外の詩が、この運動の単純化を防いでいる。
  • 数と分布を示せば、この読みは検証できる。

⚠️ 注意

  • 「ボードレールの意識はこうだった」とは書かない。書けるのは「テクストにこの系列がこう分布している」までにあたる。
  • 作家の伝記に結びつけない(第2章)。
  • 他の詩人にも同じ系列があるかを確かめる。その作家固有かどうかは、比較しないと言えない。

⚠️ この章で混同しやすい形

  • 主題批評を「テーマを述べる批評」と考える。感覚とイメージの系列を集める方法にあたる。
  • 1作品だけで分析できると考える。全作品を材料にする枠組みである。
  • 集めた例だけを示す。例外を明示しないと恣意的になる。
  • 現在も主流の方法と考える。単独で使われることは少なく、他の枠組みと組み合わせられる。

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現象学的批評との関係

⊳ この節の問題を解く(1問)

主題批評は、意識をめぐる哲学と近い場所にある(04の領域)。

共通するもの

  • 説明する前に記述するという構え。
  • 意識と世界の関わりを扱う。
  • 科学的な説明への距離。

⚠️ 違うもの

  • 哲学は意識一般を、主題批評は1人の作家の意識を扱う。
  • 哲学は方法を反省するが、主題批評は方法の反省が薄いという批判がある。
  • 04の領域で扱う現象学と、この章の批評を同一視しない。

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実際の読み方

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

1つの系列を追うとき、どう作業するか。

手順の細部

  • 紙に印刷して、色分けする。画面上より速い。
  • 系列ごとに色を決める。水/火/上下/内外。
  • 色の分布を眺める。どの部分に集中しているかが目で見える。
  • 集中している部分だけを精読する(07の領域)。
  • 数を数える。印象で「多い」と書かない(07の領域)。

1作品から始める

  • 本来は全作品を材料にする枠組みだが、学部では1作品でよい。
  • その場合、「この作品では」と範囲を限定して書く。
  • 「この作家は」と書くには、複数の作品を確かめる必要がある。
  • 範囲の限定を明示することが、この枠組みを使うときの最低条件にあたる(第18章)。

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もう1つ当ててみる

⊳ この節の問題を解く(1問)

ラシーヌ『フェードル』の「光と闇」の系列(著作権消滅)。

段階 内容
系列 光・陽・見られること/闇・隠れること・地下
集める 主人公の台詞に、光を避ける語と、見られることへの恐れが繰り返される
分布 告白の場面に集中する。語ることと、光にさらされることが重なる
対立 光(真実・裁き・父の視線)/闇(隠蔽・欲望・死)
例外 光を求める台詞もある。単純な対立ではない

注意

  • 「ラシーヌの意識」とは書かない(本章)。この作品ではと限定する。
  • 他の作品にも同じ系列があるかは、比較しないと言えない。
  • この系列は、脱構築の読み(第11章)とも接続する。光を避けながら光を求めるという矛盾が、決定不能の箇所を作る。

第6章の通過チェック

  • 主題批評が前提にしている4つを言える
  • 集める対象を5種類言える
  • 語ではなく感覚の質で集める理由を言える
  • この枠組みで見えるものと見えなくなるものを、それぞれ3つ言える
  • 現在の主な批判を3つ言える
  • 分析の6段階を言い、恣意性への対策がどれかを言える
  • 『悪の華』の上下の系列について、言えることと言えないことを分けられる

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次章へ

次章は精神分析批評である。繰り返しの中でも、説明のつかない繰り返しと、不自然な欠落を扱う。

なぜこの人物は同じ失敗を繰り返すのか。なぜこの場面だけが語られないのか。意識では説明のつかない反復と空白を、別の論理で読む枠組みにあたる。同時に、最も誤用されやすい枠組みでもある。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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