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CHAPTER 4 形式と構造 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 11

形式と構造|第4章 物語論(1)— 筋の文法

この章の狙い

要点: すべての物語には、共通する型があるのではないか。登場人物を役割に還元し、出来事を機能に還元すると、数十の民話が同じ骨格を持っていることが見えてくる。

この発想が小説にも当てられ、筋を要素の組み合わせとして分析する方法が作られた。筋の分析は、この教材の中で最も手続きがはっきりしている。

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枠組みの中身

⊳ この節の問題を解く(1問)

  • 📘 物語論:物語を、内容ではなく構造として分析する立場のこと。何が語られたかではなく、どういう仕組みで物語が成り立っているかを扱う。

出発点になった発想

  • 民話を大量に集め、共通する要素を抽出する。
  • 人物の名前や属性は変わっても、その人物が果たす働きは共通している。
  • したがって、人物ではなく機能を単位にすれば、物語の骨格が取り出せる。
  • 機能の並ぶ順序にも規則がある。

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機能と行為項

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

  • 📘 機能:物語の進行に対して、ある行為が果たす働きのこと。「誰が」ではなく「何をしたか」で数える。
  • 📘 行為項:物語の中で果たされる役割の型のこと。1人の人物が複数の役割を兼ねることも、複数の人物が1つの役割を分担することもある。
行為項 働き
主体 何かを求めて動く
対象 求められるもの
送り手 求める動機を与える
受け手 求めたものが最終的に向かう先
助力者 主体を助ける
敵対者 主体を妨げる

この枠組みの強み

  • 人物の数と、役割の数が一致しないことが見える。
  • 役割が途中で入れ替わることが特定できる。助力者が敵対者になる瞬間。
  • 対象が何であるかが、作品によって曖昧なことが分かる。その曖昧さ自体が論点になる。

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筋の型

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

よく使われる5段階

  • 1. 初めの均衡 — 状態が安定している。
  • 2. 均衡を破る出来事 — 何かが起きる。
  • 3. 不均衡の展開 — 探索・試練・対立。
  • 4. 均衡を取り戻す行為 — 解決の試み。
  • 5. 新しい均衡 — 元とは違う安定。

⚠️ この型を機械的に当てない

  • 当てはまるのは当たり前である。多くの物語はこの形をしている。
  • 論になるのは、当てはまらない部分にあたる。
  • たとえば5がない作品(新しい均衡に至らない)。2が繰り返される作品。
  • 「この作品は5段階に当てはまる」で終わらせない。

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この枠組みで何が見えるか

取り出せるもの

  • 役割の配置と、その入れ替わり。
  • 筋の骨格と、そこからの逸脱。
  • 複数の作品の構造上の比較。時代もジャンルも違う作品を並べられる。
  • 繰り返しの構造。同じ機能が何度現れるか。

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何が見えなくなるか

⚠️ 視野の外に出るもの

  • 文体と語彙。同じ骨格でも文章はまったく違う。
  • 語りの水準。誰が語っているかは、この章の枠組みでは扱えない(第5章が引き受ける)。
  • 歴史的な条件。なぜその型がその時代に好まれたのか。
  • 意味の重み。構造が同じでも、作品の力は同じではない。

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分析の手順

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

6段階

  • 1. 出来事を時系列で書き出す。箇条書きでよい。
  • 2. 各出来事を機能で言い換える。「〜が〜する」の形に統一する。
  • 3. 行為項の表を作る。6つの役割に、人物を割り当てる。
  • 4. 役割が入れ替わる箇所に印を付ける。
  • 5. 5段階の型に当て、当てはまらない部分を特定する。
  • 6. 当てはまらない部分が何をしているかを述べる。ここが結論になる。

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当ててみる

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

モーパッサン『脂肪の塊』(1880年、著作権消滅)。

段階 内容
初めの均衡 乗合馬車に乗った一行が、占領下の町を出る
均衡を破る 食料がなく、一行が空腹になる
展開 主人公が食料を分け与える。次に宿で足止めされる
解決の試み 一行が主人公を説得し、要求に応じさせる
新しい均衡 出発できる。しかし一行は主人公を軽蔑し、食料を分け与えない

行為項で見る

  • 主体 — 前半は一行(出発を求める)。後半も一行のまま。
  • 助力者と敵対者が入れ替わる。主人公は前半では助力者、後半では障害として扱われる。
  • 対象 — 「出発」だが、後半では「自分たちの体面」も対象になっている。
  • 最後の均衡は、最初の均衡と形が同じで内容が反転している。食事の場面が2回あり、2回目は与えられない。

ここから言えること

  • 構造が対称になっている。2つの食事の場面が枠を作る。
  • 役割の入れ替わりが、道徳的な評価の反転と一致している。
  • 「新しい均衡」は、実は最初より悪い。5段階の型の第5段階が、通常とは逆に働いている。
  • この構造上の指摘は、作品を読んでいない人にも検証できる。

⚠️ この章で混同しやすい形

  • 行為項を登場人物と同じものと考える。役割の型であり、1人が複数を兼ねうる。
  • 機能を「出来事」と同じと考える。物語の進行に対して果たす働きを指す。
  • 5段階の型に当てはまることを結論にする。当てはまらない部分が論になる。
  • 物語論で語り手を分析できると考える。それは次章の枠組みにあたる。

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民話と小説の違い

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

この枠組みは民話の分析から生まれた。小説に当てるときは、差を意識する。

民話 小説
人物 役割がほぼ固定 役割が入れ替わる
機能 数が限られ、順序も安定 順序が崩れ、機能が省かれる
目的 明示される 曖昧なことが多い
結末 均衡が回復する 回復しない作品が多い

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したがって

  • 小説では、型からの逸脱が論点になる(本章)。
  • 「当てはまらない」という結果が、そのまま発見にあたる。
  • 19世紀以降の小説ほど、逸脱が大きくなる傾向がある。

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筋の分析の限界

⊳ この節の問題を解く(1問)

⚠️ この枠組みでは扱えないこと

  • 同じ構造を持つ2作品の、質の違い。
  • 文体と語彙。
  • 語りの水準(第5章)。
  • なぜその型がその時代に選ばれたか(第12章)。

それでも使う理由

  • 手続きがはっきりしている。誰がやっても同じ結果になる部分が大きい。
  • 作品を読んでいない人にも検証できる。
  • 他の枠組みの土台になる。構造を確定してから、意味づけに進める。
  • レポートの「記述の章」に最も向く(第20章)。

短編で練習する

  • 長編でいきなりやると、出来事の書き出しだけで挫折する。
  • 短編なら、1時間で機能の一覧が作れる。
  • 『脂肪の塊』のような、構造のはっきりした短編から始めるとよい。

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もう1つ当ててみる

ペローの童話(17世紀、著作権消滅)の構造。

機能 内容
初めの均衡 主人公が家にいる
禁止または命令 「〜してはいけない」または「〜しに行きなさい」
違反または出発 禁止が破られる、または旅立つ
加害 敵対者が現れ、害を加える
助力 助力者が現れ、手段を与える
解決 敵対者が打ち負かされる
新しい均衡 結婚、または帰還

小説と比べる

  • 童話では、機能の順序がほぼ固定している。
  • 19世紀の小説では、この順序が崩れる。加害が最後に来る、解決がない、均衡が回復しない。
  • 『ボヴァリー夫人』を童話の型に当てると、「助力者」に当たる人物がすべて敵対者に転じることが分かる。
  • この「当てはまらなさ」が、そのままレポートの論点になる(本章)。

第4章の通過チェック

  • 物語論が扱う問いを、内容との対比で言える
  • 機能と行為項の定義を言える
  • 6つの行為項を言える
  • 筋の5段階を言え、機械的に当てない理由を言える
  • この枠組みで見えるものと見えなくなるものを、それぞれ3つ言える
  • 分析の6段階を言い、どこが結論になるかを言える
  • 『脂肪の塊』の構造上の対称を説明できる

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次章へ

次章は物語論(2)— 語りの体系である。筋から語りへ移る。

同じ筋でも、誰がどこから語るかで作品は変わる。07の領域で扱った話法・焦点化・時間を、ここでは体系として整理する。そしてその体系が、作品の分析でどう働くかを見る。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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