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CHAPTER 3 形式と構造 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 12

形式と構造|第3章 形式への注目 — 異化と手法

この章の狙い

要点: 意味は内容にあるのではなく、形の側にある。同じ出来事を語っても、語り方が違えば別の作品になる。

そして芸術の役割は、見慣れたものを見慣れないものにすることだという主張が現れる。この発想が、以後のすべての枠組みの土台になる。

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枠組みの中身

⊳ この節の問題を解く(3問・2枚)

  • 📘 形式主義:作品を、作者の意図や社会的な背景からではなく、そこで用いられている手法の体系として分析する立場のこと。1910年代のロシアで始まり、1960年代のフランスに大きな影響を与えた。

中心にある3つの主張

  • 文学性 — 研究の対象は「文学とは何か」ではなく、あるテクストを文学たらしめている性質である。したがって扱うのは形式にあたる。
  • 異化(いか) — 日常の知覚は自動化している。芸術は、対象を見慣れないものにすることで、知覚し直させる。
  • 素材と手法 — 素材(出来事・題材)と、それを配置する手法を区別する。同じ素材でも手法が違えば別の作品になる。
  • 📘 異化:見慣れたものを、あたかも初めて見るかのように提示する技法のこと。説明を省く、視点をずらす、名を伏せるといった形を取る。
素材 手法
何が起きたか どの順序で、誰の目から、どの速さで語るか
出来事の時系列 語りの中での配置
人物の性質 提示の仕方(説明するか、行動で示すか)

なぜこの区別が効くか

  • 筋の要約が同じでも、作品はまったく違うものになりうる。
  • したがって「あらすじ」を語ることは、作品を語ることではない(07の領域)。
  • 分析の対象は、素材ではなく手法になる。

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この枠組みで何が見えるか

取り出せるもの

  • 技法の目録。その作品が使っている手法を列挙できる。
  • 手法の働き。その手法が、読者の知覚に何をしているか。
  • 手法の分布。どの場面で、どの手法が集中しているか。
  • 同じ素材を扱う他の作品との差。手法の面で比較できる。

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何が見えなくなるか

⊳ この節の問題を解く(1問)

⚠️ 視野の外に出るもの

  • 歴史と社会の条件。なぜその時代にその手法が現れたのかは扱えない。
  • 作品の主題的な重み。何が語られているかより、どう語られているかに寄る。
  • 読者の側の条件。誰にとって「見慣れたもの」なのかが問われない。
  • これらは第8章・第10章・第12章の枠組みが引き受ける。

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分析の手順

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

5段階

  • 1. 一節を選ぶ。長くて2ページ。
  • 2. 素材を一文で書く。「登場人物が部屋に入り、手紙を見つける」。
  • 3. 手法を列挙する。順序・視点・速度・省略・繰り返し・言い換え。
  • 4. 素材と手法のずれを特定する。素材の順序と、語りの順序は同じか。
  • 5. ずれが読者の知覚に何をしているかを述べる。

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当ててみる

ラ・フォンテーヌ『寓話』の「狼と子羊」の冒頭。

本文

  • « Un Agneau se désaltérait / Dans le courant d'une onde pure. »
  • 訳:一頭の子羊が喉を潤していた/澄んだ流れの中で。
段階 内容
素材 子羊が水を飲んでいる
手法1 場所が次の行に送られる(07の詩法のまたがり)。読者は一瞬待たされる
手法2 子羊の名詞が大文字で書かれ、種としてではなく登場人物として提示される
手法3 「澄んだ」という語が、後の狼の言いがかりと衝突するように置かれている
ずれ 物語の教訓は冒頭に置かれているが、場面はその後に来る。結論を先に示す構成

ここから言えること

  • 待たされることと、大文字による人格化が、寓話の枠組みを作っている。
  • 「澄んだ」の一語が、後の不当な言いがかりを準備している。手法の分布を追うと、結末が冒頭から仕込まれていることが分かる。
  • 素材(子羊が水を飲む)だけを取り出しても、この効果は説明できない。

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形式主義のその後

どこへ流れたか

  • 物語論へ。手法の体系化が、筋と語りの分析につながる(第4・5章)。
  • 記号論へ。テクストを体系として扱う発想が引き継がれる(第9章)。
  • 文体論へ。語の選択と統語の分析。
  • 一方、社会批評からは「歴史を無視している」と批判された(第8章)。

⚠️ この章で混同しやすい形

  • 形式主義を「内容を軽視する立場」と考える。素材と手法を区別し、手法を分析の対象にする立場にあたる。
  • 異化を「難解にすること」と考える。知覚し直させることであり、難解さは手段の一つにすぎない。
  • 手法の列挙で分析が終わると考える。手法が何をしているかを述べて初めて分析になる。
  • 形式主義をフランス生まれと考える。1910年代のロシアで始まり、1960年代にフランスへ影響した。

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文体論という隣接分野

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

  • 📘 文体論:語の選択・構文・音の配置といった言語の細部を分析する分野のこと。形式への注目と近いが、言語学寄りの方法を取る。

何を数えるか

  • 語彙 — 語の種類の多さ、繰り返される語、特定の分野に偏った語。
  • 構文 — 文の長さ、従属節の深さ、並列と従属の比率。
  • 時制 — 分布と切り替え(07の領域)。
  • — 頭韻、母音の反復(07の詩法)。

形式への注目との違い

  • 文体論は、言語の単位で数える。
  • 形式主義は、手法の単位で捉える。
  • 両者は補い合う。数えた結果を、手法として意味づけるという順序で使う。

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手法の目録を作る

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

1作品につき1枚の表を作る

手法 現れる箇所 働き
省略 ◯ページ、◯ページ 出来事を飛ばし、後から補わせる
反復 ◯箇所 同じ語が◯回。強調か空転か
視点の移動 ◯ページ 誰の目から見るかが切り替わる
順序の入れ替え ◯ページ 出来事の順と語りの順が違う

← 横に動かして読めます →

表の使い方

  • 箇所と回数を先に埋める。働きの欄は後で埋める。
  • 回数の多い手法から扱う。
  • この表が、レポートの記述の章になる(第20章)。
  • 数えられるので検証できる(07の領域)。

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もう1つ当ててみる

⊳ この節の問題を解く(1問)

ボードレール「アホウドリ」の第1連(『悪の華』、著作権消滅)。

段階 内容
素材 船乗りが海鳥を捕まえ、甲板に置く
手法1 「しばしば、暇つぶしに」で始まる。行為の動機が最初に置かれ、残酷さが日常として提示される
手法2 鳥を「王」「旅の道連れ」と呼ぶ語彙が、捕獲という行為と衝突する
手法3 1連目は空、2連目は甲板。空間の落差が連の切り替えと一致する
ずれ 素材は「鳥を捕まえた」だけだが、語彙の選択が価値の反転を作っている

異化として読む

  • 見慣れた「鳥を捕まえる」という行為が、王を辱(はずかし)める行為として提示される。
  • 語彙の選択だけで、知覚が組み替えられている。
  • 素材を要約しても、この効果は残らない。
  • これが「素材と手法」の区別の実際の意味にあたる。

第3章の通過チェック

  • 文学性・異化・素材と手法の3つの主張を言える
  • 素材と手法の区別が、あらすじの扱いに何をもたらすかを言える
  • この枠組みで見えるものを4つ言える
  • 見えなくなるものを3つ言い、それを引き受ける章を言える
  • 分析の5段階を言える
  • ラ・フォンテーヌの例で、手法を3つ指摘できる
  • 形式主義が後の枠組みにどう流れたかを3つ言える

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次章へ

次章は物語論(1)— 筋の文法である。形式への注目を、物語の構造へ広げる。

すべての物語には、共通する型があるのではないか。登場人物を役割に還元し、出来事を機能に還元すると、数十の民話が同じ骨格を持っていることが見えてくる。この発想が、小説の分析にも当てられていく。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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