🧭全体地図📘理論
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CHAPTER 1 導入 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 4

導入|第1章 全体地図 — 理論とは何をする道具か

この章の狙い

要点: 理論は、作品を説明するための正解ではなく、作品の別の面を見えるようにする道具である。

同じ『ボヴァリー夫人』を、語りの体系として読むか、欲望の構造として読むか、19世紀の出版市場の産物として読むかで、見えるものが変わる。そしてどの枠組みも、何かを見えるようにする代わりに、何かを見えなくする。

この教材が扱うのは、その取捨(しゅしゃ)である。

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04・07との分担

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

同じ人名と同じ術語が、3つの領域に出てくる。分担を先に決めておく。

扱うもの 中心の問い
04 思想・哲学 思想そのもの その主張は正しいか、どこが弱いか
07 文学研究の方法 どの立場でも必要な基礎 問いをどう立て、どう引用し、どう精読するか
08 この教材 読み方の枠組み その枠組みで読むと、作品の何が見えるか

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順序

  • 07が先。問いの立て方と引用の作法がないと、理論を使っても論にならない。
  • 04は並行でよい。概念の出どころが気になったときに引く。
  • この教材は、07の上に載る選択の話にあたる。

⚠️ 理論から入らない

  • 枠組みを先に決めて、当てはまる作品を探すのは順序が逆である。
  • 作品を読み、引っかかりを見つけ、その引っかかりを扱える枠組みを選ぶ。
  • 問いが先、枠組みが後。この順序を守れば、理論が作品を押しつぶすことはない。

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理論を使う4段階

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

問いが先、枠組みが後 1 引っかかり 作品のどこが気になるか まだ枠組みは要らない 2 種類を見る 語りか、欲望か 社会か、読者か 3 枠組みを選ぶ 早見表が対応表 主1つ、補助1つまで 4 当てる 術語を定義してから 作品の記述に当てる 3つの危険 術語だけを借りる 説明できない語は使わない。誰の定義かを示す。 作品を理論の例解にする 合わない部分こそ、その作品固有のもの。 結論を先に決める 結論が予想できるなら、その分析は要らない。 枠組みを先に決めて作品を探すのは、順序が逆にあたる。 どの枠組みも、何かを見えるようにする代わりに、何かを見えなくする。
理論を使う4段階

手順

  • 1. 引っかかりを特定する。作品のどこが気になるのか。まだ枠組みは要らない。
  • 2. 引っかかりの種類を見る。それは語りの問題か、欲望の問題か、社会の問題か、読者の問題か。
  • 3. その種類を扱える枠組みを選ぶ。この教材の早見表が対応表になっている。
  • 4. 枠組みの術語を定義してから、作品の記述に当てる。
引っかかりの種類 使える枠組み
誰がどこから語っているか 物語論 第4・5章
なぜこの語・この形式なのか 形式への注目 第3章
同じ主題が繰り返される 意識の批評 第6章
説明のつかない執着や欠落 精神分析批評 第7章
金・階級・仕事の描かれ方 社会批評 第8章
他の作品の反響がある 間テクスト性 第9章
読者がどう扱われているか 受容理論 第10章
論理が自分で崩れている 脱構築 第11章
なぜこの作品が正典なのか 文学史の理論 第12章
性差の描かれ方 ジェンダーの批評 第13章
誰の視点が欠けているか ポストコロニアル批評 第14章
草稿と刊行版が違う 生成研究 第16章

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理論が「見えなくするもの」

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

どの枠組みも、視野を作ると同時に、視野の外を作る。

枠組み 見えるようになるもの 見えなくなりやすいもの
形式への注目 技法の働き 歴史と社会の条件
物語論 語りの構造 内容の重みと、政治的な含み
精神分析批評 反復と欠落 作品の歴史的な位置
社会批評 生産と受容の条件 形式の細部
受容理論 読者の関与 テクストの内部の構造
脱構築 論理の亀裂 作品の全体の設計
ジェンダーの批評 性差の作られ方 他の差別の軸との交差

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だから複数を組み合わせる

  • 1つの枠組みですべてを説明しようとしない。
  • ただし、無闇(むやみ)に混ぜない。術語が衝突すると、何を言っているのか分からなくなる。
  • 学部のレポートでは、主となる枠組みを1つ決め、必要なら1つ補助に使う。この形が扱いやすい。

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理論を使うときの3つの危険

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

⚠️ 1. 術語だけを借りる

  • 「脱構築する」を「批判する」の意味で使うといった誤用が最も多い。
  • 説明できない語は使わない。この基準を守れば、ほとんどの誤用は防げる。
  • 必ず「誰の定義か」を示す。同じ語でも論者ごとに中身が違う。

⚠️ 2. 作品を理論の例解にする

  • 「この作品は◯◯理論を体現している」は、作品を見ていない。
  • 理論に合わない部分こそ、その作品固有のものにあたる。
  • 合わない部分を書く。それが分析になる。

⚠️ 3. 結論を先に決める

  • 枠組みを選んだ時点で結論が決まってしまうことがある。
  • 結論が予想できるなら、その分析は要らない。
  • 作品の記述が予想を裏切る箇所を探す。

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引用の方針

⊳ この節の問題を解く(1問)

この教材は、理論家の著作の原文を引用していない。多くが著作権の存続する著作にあたる。

扱い
理論家の著作 記述で扱う。主張の中身と、批判の論点
分析の例に使う文学作品 著作権の切れたものだけ(ラシーヌ、ラ・フォンテーヌ、スタンダール、バルザック、フローベール、ボードレール、モーパッサン、プルーストなど)

自分でレポートに引用するときは、版と訳者を明記する(07の領域)。

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この教材の地図

まとまり 何を扱うか
導入 第1〜2章 理論とは何か、理論以前の批評
形式と構造 第3〜5章 技法・筋・語り
意味を読む 第6〜9章 主題・無意識・社会・他のテクスト
テクストと読者 第10〜12章 受容・脱構築・文学史
立場から読む 第13〜15章 ジェンダー・植民地・文化
素材と現在 第16〜18章 草稿・新しい潮流・理論への批判
実践 第19〜20章 読み比べ、卒論での使い方

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各章の形

第3章から第18章までは、同じ順序で並んでいる。

何が書いてあるか
この章の狙い その枠組みの核心を一文で
枠組みの中身 誰が何を主張したか
この枠組みで何が見えるか 分析で取り出せるもの
何が見えなくなるか この枠組みの視野の外
分析の手順 実際にどう当てるか
当ててみる 公有の作品での実例
混同しやすい形 間違えやすい点
通過チェック 次に進んでよいかの確認

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この教材を読む順序

通読しなくてよい。必要な章から開く。

状況 読む順
卒論の方法を決める 第1章 → 第20章 → 該当する枠組みの章
語りを分析したい 第5章。その前に07の領域の語りの章
理論の全体像を掴みたい 第1〜2章 → 各章の「この枠組みで何が見えるか」だけを拾い読み
レポートで枠組みを1つ使う 早見表 → 該当章 → 第20章の失敗の一覧
時間があるなら 第1章から順に。第19章の読み比べで全体がつながる

各章の中でも、読む順序がある

  • 「この枠組みで何が見えるか」と「何が見えなくなるか」を先に読む。
  • 使うと決めてから、枠組みの中身に戻る。
  • 「分析の手順」と「当ててみる」が、実際に書くときの型になる。

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術語をどう調べるか

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

使うもの
1 文学理論の事典。定義と、その語がどの立場のものかが分かる
2 入門書。枠組み全体の中での位置が分かる
3 その概念を提出した著作の該当箇所。訳でよい
4 その概念を使った実際の分析。どう当てているかを見るのが最も効く

⚠️ 4番目を飛ばさない

  • 定義を読んでも、当て方は分からない。
  • 実際の分析を1本読むと、手順が見える。
  • その分析が扱っている作品は、自分の作品と違っていてよい。
  • 04の領域は概念の出どころ、こちらは当て方にあたる。使い分ける。

第1章の通過チェック

  • 理論が「正解」ではなく「道具」である意味を説明できる
  • 04・07・08の分担を、中心の問いの面から言える
  • 理論を使う4段階を言え、問いと枠組みの順序を言える
  • どの枠組みも何かを見えなくすることを、例を挙げて言える
  • 理論を使うときの3つの危険を言える
  • この教材が原文を引用しない理由を言える

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次章へ

次章は理論以前である。理論が現れる前、文学はどう論じられていたのか。

作家の生涯と時代から作品を説明する批評と、読んだ印象を語る批評。この2つが長く主流だった。理論は、この2つへの不満から生まれてくる。何が不満だったのかを押さえると、以後の章の意味が分かる。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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