🧭全体地図📘文化と芸術
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CHAPTER 1 導入 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 6

導入|第1章 全体地図 — 芸術を文学のためにどう使うか

この章の狙い

要点: 文学専攻にとって芸術は、教養ではなく道具である。

作品に絵画や音楽が出てきたとき、それが何を指し、当時どういう位置にあったのかが分からないと、その記述の意味が取れない。そして同じ時代の別の形式が、同じ問題を別の材料で扱っていることがある。

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芸術を使う3つの場面

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

場面
作品の中に芸術が出てくる 登場人物が絵を見る、音楽を聴く、劇場に行く
形式の面で共通する問題がある 印象派の光の扱いと、同時期の小説の描写
同じ制度の中にある サロン(展覧会)と文芸誌が、同じ時期の同じ場を共有している

どの場面でも共通すること

  • その芸術が、当時どういう位置にあったかを確かめる。前衛だったのか、権威だったのか。
  • 作品の記述を根拠にする。「この場面には印象派的な光がある」で終えない(08の領域)。
  • 年を確かめる。作品の刊行年と、その様式が現れた年の前後関係を間違えない。

⚠️ やってはいけない使い方

  • 雰囲気で結びつける。「この小説は印象派的だ」は、根拠がなければ何も言っていない。
  • 影響関係を証拠なしに断定する(07・08の領域)。
  • 芸術の側の説明で紙幅を埋める。必要なのは、その作品の記述に関わる部分だけにあたる。

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03・04との分担

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

扱うもの
03 フランス史 政治・社会・宗教・戦争・植民地といった条件
04 思想・哲学 その時代の考え方と、概念の履歴
05 この教材 同じ時代に作られた形そのものと、文学とのつながり

3つは同じ時代を別の面から見ている

  • 17世紀の古典主義は、王権の集中(03)、理性への信頼(04)、規則に従う形式(05)として、それぞれの領域に現れる。
  • 19世紀の写実主義は、産業社会(03)、実証主義(04)、日常を主題にする絵画(05)として現れる。
  • 並べて見ると、時代の輪郭がはっきりする。

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様式の名前をどう扱うか

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

  • 📘 様式:ある時期・地域に共通して見られる形式上の特徴のまとまりのこと。後の時代が整理のために付けた名前であることが多い。

⚠️ 様式名の注意

  • 「ゴシック」「バロック」「ロココ」「印象派」は、いずれも当初は否定的な意味を含んでいた。
  • 当の芸術家が名乗ったとは限らない。「印象派」は批評家の揶揄(やゆ)から広まった。
  • 境界は曖昧である。同じ年に違う様式の作品が作られている。
  • したがって「◯◯様式である」と断定せず、「◯◯に分類されることが多い」と書く。

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制度を見る

⊳ この節の問題を解く(1問)

芸術も文学と同じく、制度の中で作られる(08の領域の場)。

制度 働き
王立のアカデミー 何が正しい芸術かを定め、教育し、展覧会を開く
サロン(展覧会) 公式の発表の場。入選と落選が経歴を左右する
注文主 王・教会・貴族・のちに市民。誰が金を出すかで作られるものが変わる
画商と市場 19世紀後半に力を持つ。アカデミーの外の道ができる
美術館 何を残すかを決める。正典の形成にあたる(08の領域)
批評 18世紀に生まれ、評価の言葉を作る

この制度の話が、文学と直結する

  • アカデミーとサロンの構造は、文学の場の構造とよく似ている(08の領域)。
  • 落選した画家が独自に展覧会を開くという動きは、文学の同人誌と同じ構図にあたる。
  • 19世紀後半に、両方の分野で「制度の外」が力を持つという同じ現象が起きる。

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用語を最小限そろえる

作品を読むために必要な、最小限の語だけを挙げる。

分野
絵画 主題・構図・色彩・筆致(ひっち)・遠近法・明暗
建築 柱・アーチ・穹窿(きゅうりゅう)・ファサード・平面
音楽 旋律・和声・リズム・音色・調性
演劇 舞台・装置・照明・上演・観客席

使い方

  • 記述に使う。「美しい」ではなく「明暗の対比が強い」と書く。
  • 専門的な分析は要らない。文学専攻に求められるのは、位置と関係を押さえることにあたる。
  • 分からない語は事典で引く(第20章)。

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この教材の地図

時代と様式の流れ(フランス) 〜15世紀中世 — ロマネスク、ゴシック、写本の装飾 16世紀イタリアからの流入。城館の建築と装飾 17世紀古典主義。アカデミーの制度。ヴェルサイユ 18世紀ロココ。サロン展と美術批評の誕生 19世紀前半ロマン主義の絵画。線と色の論争 19世紀後半写実主義、印象派。写真の普及。都市の改造 世紀末象徴主義、アール・ヌーヴォー、ポスター 20世紀前半前衛の絵画。ダダとシュルレアリスム。映画 20世紀後半抽象。美術館と文化政策。遺産という考え 太い枠は、文学の年表と対応が取りやすい時期
20章の流れと時代区分
まとまり 中心
中世〜近世 第2〜6章 大聖堂・城館・ヴェルサイユ・劇場・サロン
19世紀 第7〜13章 絵画の主題の転換・音楽・建築・写真
20世紀 第14〜18章 前衛・シュルレアリスム・音楽・映画・戦後
実践 第19〜20章 作品と芸術を結ぶ型、調べ方

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各章の形

第2章から第18章までは、同じ順序で並んでいる。

何が書いてあるか
この章の狙い その時代の芸術の核心を一文で
年表 作品と出来事の年
(2〜4の節) 何が作られ、何が変わったか
制度と条件 誰が注文し、どこで見られたか
文学とのつながり その時代の作品を読むときに要る知識
混同しやすい形 間違えやすい点
通過チェック 次に進んでよいかの確認

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図版について

⊳ この節の問題を解く(1問)

⚠️ この教材に図版はない

  • 作品名と所蔵先を示すので、各自で画像を確かめる(第20章に調べ方を書いた)。
  • 20世紀の作品は著作権が存続しているものが多い。レポートに図版を載せるときは扱いに注意する(07の領域)。
  • 文章で作品を記述する練習にもなる。見たものを言葉にできるかどうかが、そのまま分析の力になる。

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記述に使う語をそろえる

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

芸術の記述には、専門の語彙が要る。ただし文学専攻に必要なのは、位置と関係を書ける最小限にあたる。

意味 使う場面
構図 画面の中の配置 何がどこに置かれているか
明暗 光と影の対比 光がどこから来ているか
主題 何が描かれているか 宗教・神話・歴史・肖像・風景・日常
技法 何で描かれているか 油彩・水彩・版画・素描(そびょう)
様式 形の共通した特徴 時代や集団に共通する形

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記述の順序

  • 1. 何が描かれているか(主題)。
  • 2. どう配置されているか(構図)。
  • 3. 光はどこから来ているか(明暗)。
  • 4. 何で描かれているか(技法)。
  • 5. そのうえで、どの様式に属するか。
  • 様式を最初に言わない。観察を先に、分類を後に置く。

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時代区分の扱い方

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

⚠️ 区分は道具であって、事実ではない

  • 「17世紀の芸術」は、1601年に始まって1700年に終わるわけではない。
  • 様式の名は、後の世代が付けたものが多い(ロマネスク・ゴシック・ロココ・印象主義)。
  • もとは否定的な呼び名だったものがある。「ゴシック」も「印象主義」もそうである。
  • したがって「◯◯様式である」と断定せず、「◯◯と呼ばれる一群に属する」と書く。

年代を書くときの形

  • 作品には制作年を付ける。「1863年の作品」。
  • 運動には幅を付ける。「1870年代から1880年代にかけて」。
  • 世紀で言うときは前半・後半を添える。「19世紀後半」。
  • 文学の年表と並べたとき、ずれが見えるようにする。それがこの教材の使い道にあたる。

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この教材の限界

⊳ この節の問題を解く(1問)

⚠️ 扱っていないこと

  • 専門的な美術史・音楽史の論争。研究の内部の議論には入らない。
  • 技法の詳細。絵具の組成や楽器の構造は扱わない。
  • フランス以外の詳細。必要な範囲で触れるにとどめる。
  • 図版。著作権の関係で、20世紀の作品の画像は示していない(第20章)。

第1章の通過チェック

  • 芸術を使う3つの場面を言える
  • 芸術を使うときの3つの失敗を言える
  • 03・04・05の分担を、扱うものの面から言える
  • 様式名を扱うときの注意を3つ言える
  • 芸術の制度を6つ挙げ、文学の場との共通点を言える
  • 分野ごとの最小限の用語を、それぞれ4つ言える

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次章へ

次章は中世である。大聖堂と写本装飾を扱う。

ロマネスクからゴシックへ。尖(とが)ったアーチと交差リブによって壁が軽くなり、ステンドグラスの巨大な窓が生まれる。そして写本の余白に描かれた挿絵が、文字と絵が同じ頁(ページ)にあるという中世固有の読書の形を作っていた。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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