🧭全体地図📘フランス語圏
KEY POINTS ⚡ 120 個 / やってはいけない形 301 件 / 通過チェック 12 章

要点120

地域の順に、覚える中身・混同しやすい形・通過チェックを並べてあります。卒論の領域を選ぶときと、授業でその地域が出たときに使ってください。 各章は 結論 → ⚡ 覚える中身 → やってはいけない形 → 通過チェック の順に並びます。 それぞれの下のリンクから、その要点が出てくる本文の節に戻れます。

導入 第1章 全体地図 — フランコフォニーとは何か

フランス語で書かれた文学は、フランス本国だけのものではない。
⚡ 1

2つの意味がある

  • 小文字で書くとき — フランス語を話す人々と地域そのもの。
  • 大文字で書くとき国家間の組織としてのフランコフォニー。
  • 日本語では区別がつかないので、どちらの意味かを文脈で決める。
本文で読む:フランコフォニーという語 ▶
⚡ 2

この違いが決定的にあたる

  • 型1は、言語の選択が問題にならない。フランス語が母語である。
  • 型2は、言語の維持が問題になる。英語に囲まれている。
  • 型3は、クレオール語との関係が問題になる(第7章)。
  • 型4は、なぜ支配者の言語で書くのかが問題になる(第2章)。
  • したがって、4つを同じ枠で論じない。
本文で読む:4つの成り立ちの型 ▶
⚡ 3

読む順序

  • 第2章は必ず読む。全地域に共通する問いにあたる。
  • そのあとは、関心のある地域の章へ直行してよい。
  • 第11章と第12章は、卒論を考え始めたときに読む。
本文で読む:この教材の構成 ▶
⚡ 4

数で見ておく

  • フランス語を日常的に使う人の多くは、フランス本国の外にいる。人口の伸びはアフリカが中心にあたる。
  • したがって「フランス語の文学」の重心は、長期的には本国の外へ動く。
  • 一方で、出版と批評の中心は現在もパリにある。
  • この「話者の分布」と「出版の集中」のずれが、この分野の構造的な問題にあたる(第11章)。
本文で読む:規模と読者 ▶
⚡ 5

呼び方が複数ある

  • フランス語圏の文学 — この教材が使う呼び方。
  • フランコフォニー文学 — 組織の名に由来する呼び方。
  • フランス語による世界文学 — 2007年の宣言が提案した呼び方(第11章)。
本文で読む:この分野の名前をめぐって ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第1章の通過チェック

  • フランコフォニーという語の由来と、2つの意味を言える
  • 4つの成り立ちの型と、それぞれの地域を言える
  • 型ごとに何が問題になるかを言える
  • この教材と03・08・10との分担を言える
  • カミュの位置が、アルジェリアの作家と違う理由を言える
  • 「現地語」という語を避ける理由を言える
本文で読む:この分野の名前をめぐって ▶

導入 第2章 言語の選択という問題

なぜ支配者の言語で書くのか。
⚡ 6

同じ事実に、4つの評価がありうる

  • 1 疎外(そがい)である — 支配者の言語で書くことは、支配を内面化することにあたる。
  • 2 戦略である — 支配者の言語を使って、支配を内側から批判できる。
  • 3 現実である — 学校教育がフランス語で行われた。選んだのではなく、それしか書けない。
  • 4 所有の問題である言語は使う者のものになる。もはや支配者だけの言語ではない。
本文で読む:問いの形 ▶
⚡ 7

中身

  • 学校で母語を否定され、フランス語を強いられた経験が背景にある。
  • 書く言語と、話す言語と、考える言語がずれる。
  • 読者もずれる。本国の読者に向けて書くことになる。
  • フランツ・ファノン(第4章)が、言語と自己像の関係を早くに論じている。
本文で読む:疎外という捉え方 ▶
⚡ 8

中身

  • 支配者の言語で書けば、支配者に届く。
  • 国際的に読まれる。翻訳の経路も広い。
  • 言語の内側から、その言語が前提にしているものを崩せる。
  • これは08の領域の脱構築の発想と近い。
本文で読む:戦略という捉え方 ▶
⚡ 9

中身

  • 植民地の学校はフランス語で行われた。書き言葉として身についたのがフランス語である。
  • 母語に文字の伝統が薄い場合、書く手段がない。
  • したがって「選択」という言い方自体が実態と合わない場合がある。
  • この点は、地域と世代によって大きく違う。
本文で読む:現実という捉え方 ▶
⚡ 10

中身

  • 言語は、使う者によって変えられる。
  • 語彙・統辞・リズムを作り変えて、自分の言語にする。
  • アマドゥ・クルマ(第5章)やパトリック・シャモワゾー(第7章)の実践がこれにあたる。
  • 「フランス語で書く」のではなく「フランス語を作り変える」という立場である。
本文で読む:所有という捉え方 ▶
⚡ 11

モロッコの評論家アブデルケビール・ハティビ

(1938-2009)

  • 二言語の状態そのものを主題にした。
  • どちらか一方を選ぶのではなく、2つの間に立つことを積極的に捉える。
  • 母語がフランス語の下に隠れている状態を書いた。
  • この考え方は、マグレブの作家を読むときの基本の枠組みにあたる(第3章)。
本文で読む:二言語の間で ▶
⚡ 12

実際にあった選択

  • フランス語で書くのをやめ、アラビア語に移った作家がいる。
  • フランス語で書き続けたが、母語の構造をフランス語に持ち込んだ作家がいる。
  • フランス語で書き、母語の作品を自ら訳した作家がいる。
  • 映画に移った作家がいる。文字を読めない読者に届けるためという理由が語られる。
本文で読む:書くのをやめる/移る ▶
⚡ 13

判断の材料になる問い

  • 誰に読まれることを想定しているか。本国の読者か、地元の読者か。
  • どこで出版されているか。パリか、地元か。
  • 翻訳されているか。どの言語へ。
  • これらは第12章の調べ方につながる。
本文で読む:書くのをやめる/移る ▶
⚡ 14

手順

  • 1. その作家が、言語についてどう述べているかを探す。エッセイ、インタビュー、序文。
  • 2. 作品の中に、言語そのものが主題として出てくる箇所を集める。
  • 3. 文体を見る。母語の語彙・構文・リズムが入っていないか。
  • 4. 出版の場と読者を確かめる。
  • 5. そのうえで、4つの立場のどれに近いかを述べる。
本文で読む:分析でどう使うか ▶
⚡ 15

注の扱いがとくに効く

  • 母語の語に注が付いていれば、本国の読者を想定している。
  • 注がなければ、分からないまま読ませる選択にあたる。
  • グリッサンの「不透明性への権利」は、この選択を理論化したものである(第7章)。
  • 版によって注の量が違う場合がある(第12章)。
本文で読む:文体に現れる4つの形 ▶
⚡ 16

独立の前後で問いが変わる

  • 独立前 — フランス語で書くことが、支配の枠内での行為になる。
  • 独立直後国民の文学を作るという課題が加わる。どの言語で作るかが政治になる。
  • 独立から数十年後フランス語で書くことが自明になった世代が現れる。問いの立て方が変わる。
  • 現在移動と亡命が常態になり、どこの文学かという問い自体が崩れる。
本文で読む:世代による変化 ▶
✓ 通過チェック

第2章の通過チェック

  • 言語の選択をめぐる4つの立場を言える
  • 疎外という捉え方の背景を説明できる
  • 所有という捉え方の実践がどういうものかを言える
  • 二言語併用の非対称を説明できる
  • 書くのをやめる/移るという選択の例を3つ言える
  • 分析の5段階と、やってはいけない形を3つ言える
本文で読む:世代による変化 ▶

地域 第3章 マグレブ — アルジェリア・モロッコ・チュニジア

フランスの支配がいちばん長く、いちばん深かった地域である。
⚡ 17

なぜこの違いが効くか

  • アルジェリアだけが「フランスの一部」とされた。したがって独立が本国にとって国土の喪失を意味した。
  • 入植者の数が多かった。カミュの家族もその一部にあたる(10の18章)。
  • 独立が戦争になったのはアルジェリアだけである(第4章)。
  • 文学の主題の重さが、この条件から来ている。
本文で読む:3国の条件の違い ▶
⚡ 18

複数の言語が層をなしている

  • アラビア語 — 正則アラビア語(書き言葉)と、地域ごとの口語アラビア語。
  • ベルベル語(タマジグト) — 先住の言語。地域によって話者が多い。
  • フランス語 — 植民地期の学校と行政の言語。
  • これが1人の中に同時にある。第2章の二言語併用が、実際には三重・四重になる。
本文で読む:言語の状況 ▶
⚡ 19

カテブ・ヤシン

(1929-1989)

  • 『ネジュマ』(1956年)が代表作にあたる。
  • 時間の順序を崩し、視点を交代させる構成。筋が直線に進まない。
  • 同時代の本国の前衛的な小説と、形式の面で並行する部分がある(08の領域)。
  • 後に演劇へ移り、口語アラビア語で上演を行った。第2章の「移る」の例にあたる。
本文で読む:アルジェリアの作家 ▶
⚡ 20

アシア・ジェバール

(1936-2015)

  • 小説と映画の両方で活動した。
  • 女性の声と記憶を主題にする。書かれずに消えた声を書くという姿勢。
  • 2005年にアカデミー・フランセーズ会員に選ばれた。マグレブ出身者として初めてにあたる。
  • 歴史の資料と自伝と虚構を混ぜる構成を取る。
本文で読む:アルジェリアの作家 ▶
⚡ 21

モハメッド・ディブ

(1920-2003)

  • 植民地期の農村と都市を描く三部作から出発した。
  • 後期は、より抽象的で詩的な作風へ移る。
  • 1つの作家の中で作風が大きく変わる例にあたる。
本文で読む:アルジェリアの作家 ▶
⚡ 22

タハール・ベン・ジェルーン

(1944- 、モロッコ)

  • 1987年にゴンクール賞。マグレブ出身者として初めてにあたる。
  • 語りの形式に、口承の物語の構造を取り込む。
  • 本国で最も広く読まれるマグレブ出身の作家の1人である。
本文で読む:モロッコとチュニジアの作家 ▶
⚡ 23

アブデルケビール・ハティビ

(1938-2009、モロッコ)

  • 評論と小説の両方。
  • 二言語の状態そのものを理論化した(第2章)。
  • 社会学と文学批評をまたぐ仕事にあたる。
本文で読む:モロッコとチュニジアの作家 ▶
⚡ 24

アルベール・メンミ

(1920-2020、チュニジア)

  • ユダヤ系チュニジア人として、支配する側にも支配される側にも完全には属さない位置から書いた。
  • 植民地の状況を分析した評論(1957年)が広く読まれた。
  • 小説と評論の両方を書いている。
本文で読む:モロッコとチュニジアの作家 ▶
⚡ 25

独立で終わらない

  • アラビア語化政策により、フランス語で書く作家の位置が国内で不安定になる。
  • 1990年代のアルジェリアの内戦で、多くの知識人が国外へ出た。この時期の作品は亡命の文学として読める。
  • 本国で出版し、本国の読者に読まれるという構図が続く。第2章の読者の問題にあたる。
本文で読む:独立後の問題 ▶
⚡ 26

この地域に固有の条件

  • 教育の機会が男性に偏っていた時期が長い。書く側に立てる女性が限られた。
  • したがって初期の作品は、男性の視点から女性が描かれる形が多い。
  • 1970年代以降、女性作家の作品が増える。
  • アシア・ジェバールの「書かれずに消えた声」という主題は、この条件そのものへの応答にあたる。
本文で読む:女性作家の位置 ▶
⚡ 27

分析でどう使うか

  • 誰が誰を語っているか(08の13章・14章)。
  • 女性の登場人物が、発話するか、されるだけか。数えられる。
  • 家の内と外の空間の配分。
  • 08の領域のジェンダーの批評が、この地域で最もよく効く部分にあたる。
本文で読む:女性作家の位置 ▶
⚡ 28

この地域では映画が重要にあたる

  • 文字を読めない層に届く(第5章のセンベーヌと同じ理由)。
  • アシア・ジェバールは映画も撮っている。
  • フランスとの共同製作が多く、資金と検閲の条件が作品に影響する。
  • 05の領域の映画の章と、第11章の文化研究の枠組みで扱える。
本文で読む:映画との接続 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第3章の通過チェック

  • 3国の支配の形と期間の違いを言える
  • アルジェリアだけが戦争になった理由を、統治の形から説明できる
  • この地域の言語が何層になっているかを言える
  • カテブ・ヤシンの形式上の特徴と、後の選択を言える
  • アシア・ジェバールの主題と、2005年の出来事を言える
  • 独立後に起きた3つの問題を言える
本文で読む:映画との接続 ▶

地域 第4章 アルジェリア戦争と文学

フランス本国にとっても、アルジェリアにとっても決定的な出来事である。
⚡ 29

どういう位置にいたか

  • アルジェリア生まれのフランス人。貧しい入植者の家庭に育った(10の18章)。
  • 1930年代から、植民地下の生活の困窮を報道で告発していた。
  • 独立には賛成せず、共存の道を主張した。
  • 1956年に休戦を呼びかけたが、どちらの側からも受け入れられなかった。
本文で読む:カミュの立場 ▶
⚡ 30

作品の読み直し

  • 『異邦人』(1942年)でアラブ人が名前を持たないという点が、後の批評で繰り返し論じられてきた(10の18章、08の14章)。
  • この読み直しは、作品を否定するためではなく、何が書かれ何が書かれなかったかを見るためにあたる。
  • 後の世代の作家が、この作品に応答する形の小説を書いている。
本文で読む:カミュの立場 ▶
⚡ 31

フランツ・ファノン

(1925-1961)

  • マルティニック生まれ。カリブ海の出身にあたる(第7章)。
  • 本国で医学を学び、精神科医としてアルジェリアに赴任した。
  • 独立運動に加わり、その理論家になる。
  • カリブ海出身者がアルジェリアの独立を理論化したという経路そのものが、この分野の特徴を示している。
本文で読む:ファノンの理論 ▶
⚡ 32

文学研究にとっての意味

  • 言語と自己像の関係を論じた部分が、第2章の問いに直結する。
  • 「支配者の言語を話すことは、その文化を引き受けることでもある」という指摘。
  • 08の領域のポストコロニアル批評の出発点の1つにあたる。
  • 文学作品ではないが、この分野を読むための基本文献である。
本文で読む:ファノンの理論 ▶
⚡ 33

何が起きたか

  • 拷問の使用が明らかになり、知識人が態度の表明を迫られた。
  • 1960年に、兵役の拒否を支持する宣言が出され、多数の作家が署名した。
  • 署名した者が処分を受けた。
  • 一方で、フランスの統治の継続を支持する側の宣言も出た。
  • 同じ文壇が真っ二つに割れたという状況にあたる。
本文で読む:本国の作家たちの分裂 ▶
⚡ 34

文学史としての意味

  • 作家が政治的な立場の表明を求められるという構図は、この時期に極まった。
  • これはドレフュス事件以来の構図の反復にあたる(03・02の領域)。
  • その後の作家の位置づけに、この時期の態度が影響している。
本文で読む:本国の作家たちの分裂 ▶
⚡ 35

戦後に起きたこと

  • 本国に引き揚げた入植者フランス側についたアルジェリア人移民として渡った人々それぞれ別の記憶を持つ。
  • 長く公的に語られなかった。教科書での扱いも限られていた。
  • 1990年代以降、記憶をめぐる作品と研究が増える。
  • 第10章の郊外の文学は、この記憶の延長線上にある。
本文で読む:記憶の問題 ▶
⚡ 36

戦争を本国の側から書いた作品

  • 徴兵された若者の経験を書いた小説がある。
  • 拷問を告発した記録が、当時発禁になった例がある。
  • 時間をおいてから書かれた作品のほうが多い。同時代には書きにくかった。
  • これは第二次大戦の記憶と同じ構図にあたる(03の領域)。
本文で読む:本国の側の作品 ▶
⚡ 37

1962年以降

  • アルジェリアに住んでいたヨーロッパ系の住民が、大量に本国へ移った。
  • フランス側についたアルジェリア人は、多くが取り残された。
  • 本国に渡った者も、長く不安定な地位に置かれた。
  • この2つの集団の記憶が、それぞれ別に書かれてきた。
本文で読む:引き揚げた人々 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第4章の通過チェック

  • 戦争の期間と、独立の年を言える
  • 本国で長く「戦争」と呼ばれなかったことと、その承認の年を言える
  • カミュの位置と、批判されてきた点を言える
  • ファノンの出身と経歴、2つの著作を言える
  • 本国の文壇が割れた経緯を言える
  • 記憶の複数性を、立場を挙げて説明できる
本文で読む:引き揚げた人々 ▶

地域 第5章 サハラ以南アフリカ

マグレブとは条件が違う。
⚡ 38

マグレブとの違い

  • 入植者の数がはるかに少ない。したがって独立が戦争にならなかった国が多い。
  • 言語の数が多い。1つの国に複数の言語があり、フランス語が共通語として機能する場合がある。
  • 書き言葉の伝統が、アラビア語圏とは違う形にあたる。
  • 口承の伝統が強い。これが文学の形に直接影響する。
本文で読む:条件 ▶
⚡ 39

書かれた文学にどう入るか

  • 語り手が作品の中に登場する構成。
  • 繰り返しと呼びかけといった、聞かせるための形式が文章に入る。
  • 諺(ことわざ)と決まり文句が地の文に埋め込まれる。
  • 時間の扱いが、直線的でない場合がある。
本文で読む:口承と書き言葉 ▶
⚡ 40

シェイク・ハミドゥ・カン

(1928-2024、セネガル)

  • 『あいまいな冒険』(1961年)が代表作にあたる。
  • 主人公が、伝統的な宗教教育とフランス式の学校教育の間で引き裂かれる。
  • 独立の年の前後に書かれた作品として、この地域の問いを最も明確な形で示している。
  • 第2章の言語の問題が、教育の問題として現れる例である。
本文で読む:主要な作家 ▶
⚡ 41

アマドゥ・クルマ

(1927-2003、コートジボワール)

  • 『独立の太陽』(1968年)が代表作にあたる。
  • 母語の構文とリズムをフランス語に持ち込んだ。「フランス語を作り変える」実践の代表例である(第2章)。
  • 独立後の失望を主題にする。独立を到達点として書いていない。
  • 2000年に別の作品でルノドー賞を受けた。少年兵を主題にしている。
本文で読む:主要な作家 ▶
⚡ 42

マリアマ・バー

(1929-1981、セネガル)

  • 『こんなに長い手紙』(1979年)が代表作にあたる。
  • 書簡の形式。女性の立場から、一夫多妻と社会の変化を書く。
  • この地域の女性作家として最も広く読まれた1人である。
  • 08の領域のジェンダーの批評と結びつけやすい。
本文で読む:主要な作家 ▶
⚡ 43

ウスマン・センベーヌ

(1923-2007、セネガル)

  • 小説から映画へ移った。
  • 理由として、文字を読めない読者に届けるためということが語られる。
  • 第2章の「移る」の最も明確な例にあたる。
  • 05の領域の映画とも接続する。
本文で読む:主要な作家 ▶
⚡ 44

1960年代後半以降に現れる主題

  • 独立後の権力の腐敗。
  • 都市への移動と、そこでの困窮。
  • 伝統と近代の間で引き裂かれる個人。
  • 内戦と少年兵。1990年代以降に増える。
本文で読む:独立後の主題 ▶
⚡ 45

構造上の問題

  • 本国の出版社から出る作品が、国際的に読まれる。
  • 賞も本国のものが基準になる。
  • その結果、本国の読者に向けた説明が作品に入る場合がある。
  • 地元の読者向けの出版は、部数も流通も限られる。
本文で読む:出版と読者 ▶
⚡ 46

独立後に各国が直面したこと

  • 国内に複数の言語があり、どれを国語にするかが決めがたい。
  • 1つを選ぶと、ほかの言語集団との対立になる。
  • 結果として、フランス語を公用語のまま残した国が多い。
  • マグレブのアラビア語化政策(第3章)とは、逆の選択にあたる。
本文で読む:独立と国語の政策 ▶
⚡ 47

口承の要素を、分析の言葉で書く

  • 語り手が読者に呼びかける → 物語論の用語では、語りの水準の操作にあたる(08の5章)。
  • 同じ句が繰り返される → 反復の頻度と位置を数える。
  • 諺が地の文に埋め込まれる → 引用の形式を取らない引用にあたる(08の9章の間テクスト性)。
  • 時間が円環(えんかん)を描く → 語りの順序の分析(08の5章)。
本文で読む:語りの形式を記述する ▶
⚡ 48

なぜ言い換えるか

  • 「口承的である」だけでは記述になっていない(08の領域)。
  • 08の道具に置き換えると、数えられる形になる。
  • これがこの分野のレポートで最も効く手順にあたる(第11章)。
本文で読む:語りの形式を記述する ▶
✓ 通過チェック

第5章の通過チェック

  • この地域とマグレブの条件の違いを4つ言える
  • 口承の要素が書かれた文学にどう入るかを4つ言える
  • 『あいまいな冒険』の主題と、書かれた時期の意味を言える
  • クルマの言語の実践と、独立をどう書いたかを言える
  • センベーヌが映画に移った理由を言える
  • 出版と読者の構造上の問題を説明できる
本文で読む:語りの形式を記述する ▶

運動 第6章 ネグリチュード

1930年代のパリで、アフリカとカリブ海の学生たちが始めた運動である。
⚡ 49

エメ・セゼール

(1913-2008、マルティニック)

  • 『帰郷ノート』(1939年)が代表作にあたる。長い詩の形式。
  • カリブ海への帰還と、そこで見たものを書く。
  • 政治家としても長く活動した。マルティニックの市長・国会議員を務めている。
  • シュルレアリスムの手法(05・02の領域)を、この主題に用いたという点が形式上の特徴である。
本文で読む:3人の中心人物 ▶
⚡ 50

レオポール・セダール・サンゴール

(1906-2001、セネガル)

  • 詩人であり、セネガルの初代大統領(1960-1980)にあたる。
  • アフリカの文化的な価値を体系的に論じた。
  • 1983年にアカデミー・フランセーズ会員に選ばれた。アフリカ出身者として初めてである。
  • フランコフォニーの構想の推進者でもあった(第1章)。
本文で読む:3人の中心人物 ▶
⚡ 51

レオン=ゴントラン・ダマス

(1912-1978、ギアナ)

  • 3人の中で最も早く詩集を出している(1937年)。
  • 短く、口語に近い、リズムを前面に出した詩。
  • 3人の中では扱われることが少ないが、形式の面では最も先鋭にあたる。
本文で読む:3人の中心人物 ▶
⚡ 52

中身

  • 同化への拒否。フランス文化に溶け込むことを目標としない。
  • アフリカに由来する文化を、劣ったものではなく別の価値として提示する。
  • 地域を超えた連帯。アフリカとカリブ海を1つの経験として結ぶ。
  • フランス語で書きながら、フランス語の詩の規範を崩す。
本文で読む:何を主張したか ▶
⚡ 53

なぜフランス語だったか

  • 参加者がパリの学校で学んだ世代にあたる。
  • フランス語が、地域を超えて通じる唯一の共通語だった。
  • 支配者の言語を使って、支配の前提を否定するという構図である(第2章の「戦略」)。
本文で読む:何を主張したか ▶
⚡ 54

カリブ海からの応答

  • エドゥアール・グリッサン(第7章)が「アンティル性」を対置した。アフリカへの回帰ではなく、カリブ海そのものの歴史から考える。
  • 1989年の『クレオール礼賛』は、ネグリチュードを乗り越えるべきものとして名指した(第7章)。
  • この批判の系譜を追うことが、カリブ海の文学を読む骨格にあたる。
本文で読む:批判 ▶
⚡ 55

1948年

  • アンソロジーにサルトル(04の14章)が序文を書いた。
  • この運動を、より大きな解放の運動の一段階として位置づけた。
  • その位置づけ方が、後に当事者から批判された。「終わるべき段階」として扱ったためである。
  • セゼールとファノンの双方が、この序文に反応している(第4章)。
本文で読む:サルトルの序文 ▶
⚡ 56

レポートの題材として

  • 運動の記述が、どの時点で誰を含めるようになったかを追える。
  • 文学史の記述そのものを資料にするという方法である(08の領域)。
  • 記述が固まるので、論証として成立させやすい。
本文で読む:女性の不在という論点 ▶
⚡ 57

3人に共通する形式上の特徴

  • 長い行と短い行を混ぜる。定型の詩句を使わない(07の領域)。
  • 列挙を多用する。同じ構文を繰り返して積み上げる。
  • 呼びかけが多い。声に出されることを前提にした形式にあたる。
  • アフリカと関わる地名・語彙を、注を付けずに置く。
本文で読む:詩の形式 ▶
⚡ 58

07の詩法をどう使うか

  • 音節を数える(07の15章)と、定型から外れていることが確かめられる。
  • 反復の位置を図にすると、構成が見える。
  • 「自由詩」の枠で記述できる(07の19章)。
  • 形式の分析が、主張の内容と結びつく点がこの運動の特徴にあたる。
本文で読む:詩の形式 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第6章の通過チェック

  • 運動が形成された場所と時期を言える
  • 3人の名前・出身地・代表作を言える
  • サンゴールが1960年と1983年に何をしたかを言える
  • この運動が主張した4つの点を言える
  • 後の世代からの3つの批判を言える
  • サルトルの序文がなぜ論点になったかを説明できる
本文で読む:詩の形式 ▶

地域 第7章 カリブ海とクレオール性

ネグリチュードへの応答として展開した地域である。
⚡ 59

段階が進むほど、外への参照が減る

  • 1はアフリカを参照する。
  • 2はカリブ海の歴史を参照する。
  • 3は現在の混淆した状態そのものを参照する。
  • 後の段階が前を否定するのではなく、前を条件として現れている。
本文で読む:3つの段階 ▶
⚡ 60

グリッサン

(1928-2011、マルティニック)

  • 小説・詩・評論のすべてを書いた。
  • 1981年の評論でカリブ海の歴史と文化を体系的に論じた。
  • 1990年の評論で「関係の詩学」を提示した。
本文で読む:エドゥアール・グリッサン ▶
⚡ 61

主要な考え方

  • アンティル性 — アフリカへの回帰ではなく、カリブ海で起きたことそのものから考える。
  • 関係 — 単一の起源を持たず、複数のものが関わり合う状態を積極的に捉える。
  • 不透明性への権利他者を完全に理解できるという前提を拒む。分かりやすく説明されることを求めない権利。
  • 全世界 — 世界全体が混淆した状態にあるという捉え方。
本文で読む:エドゥアール・グリッサン ▶
⚡ 62

1989年

  • 3人の共著による宣言が出された。ジャン・ベルナベ、パトリック・シャモワゾー、ラファエル・コンフィアン。
  • 「われわれはヨーロッパ人でもアフリカ人でもアジア人でもなく、クレオールである」という趣旨の主張から始まる。
  • ネグリチュードを、必要な段階ではあったが乗り越えるべきものとして位置づけた。
  • クレオール語の価値を正面から主張した。
本文で読む:クレオール性の宣言 ▶
⚡ 63

パトリック・シャモワゾー

(1953- 、マルティニック)

  • 1992年にゴンクール賞。
  • フランス語の中にクレオール語の語彙とリズムを持ち込む文体。
  • 第2章の「所有」の立場の、最も明確な実践にあたる。
  • 語り手が読者に呼びかける構成を取ることが多い。口承の形式である。
本文で読む:クレオール性の宣言 ▶
⚡ 64

マリーズ・コンデ

(1934-2024、グアドループ)

  • アフリカ、カリブ海、アメリカを舞台にした小説を書いた。
  • クレオール性の運動とは距離を取り、独自の位置にいた。
  • 女性の登場人物を中心に置く作品が多い。08の領域のジェンダーの批評と結びつけやすい。
本文で読む:マリーズ・コンデとハイチ ▶
⚡ 65

ハイチ

  • 1804年に独立。カリブ海のほかの地域と条件がまったく違う。
  • 20世紀に長い独裁の時期があり、多くの作家が国外へ出た。
  • 亡命先はケベック(第8章)とフランスと北米。
  • ケベックの文学とハイチの文学が接続するという経路がある。
本文で読む:マリーズ・コンデとハイチ ▶
⚡ 66

この地域に固有の主題

  • 元の言語と社会が断たれている。したがって起源に遡(さかのぼ)れない。
  • 奴隷制の時期の記録が、支配する側の文書しか残っていない。
  • したがって「書かれなかった歴史をどう書くか」が形式上の問題になる。
  • 想像による補いを、どこまで、どう示すか。
本文で読む:空間と歴史をどう書くか ▶
⚡ 67

形式に現れること

  • 複数の語り手。1つの視点から全体を語らない。
  • 年代記の形式と、その中断。
  • プランテーションの空間が繰り返し現れる。
  • 地形そのものを主題にする。山、森、海。
本文で読む:空間と歴史をどう書くか ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第7章の通過チェック

  • 対象となる地域と、それぞれの現在の地位を言える
  • ハイチがほかと違う理由を言える
  • クレオール語が方言でない理由を言える
  • 3つの段階と、それぞれの中心人物を言える
  • グリッサンの4つの考え方を言える
  • 1989年の宣言の主張と、それへの批判を言える
本文で読む:用語の整理 ▶

地域 第8章 ケベック

条件がまったく違う。
⚡ 68

この地域の中心の問題

  • 英語に囲まれた中で、フランス語をどう維持するか。
  • 同化への圧力が、支配者からではなく周囲の多数派から来る。
  • したがって「言語を守る」ことが政治の中心の争点になる。
  • マグレブとは問題の向きが逆にあたる。
本文で読む:経過 ▶
⚡ 69

文学に何が起きたか

  • 主題が農村から都市へ移る。
  • カトリックの規範を正面から扱う作品が現れる。
  • 話し言葉を書くという選択が可能になる。
  • フランス本国の文学からの独立が意識される。
本文で読む:静かな革命と文学 ▶
⚡ 70

ジュアルをめぐる論争

  • 1960年代に、これを文学で使うかどうかが争われた。
  • 使う側実際に話されている言葉を書かなければ、この社会は書けない。
  • 使わない側貧しさの記号を固定することになる。国際的にも読まれなくなる。
  • この論争は、第2章の言語の問題がケベックの形を取ったものにあたる。
本文で読む:静かな革命と文学 ▶
⚡ 71

ガブリエル・ロワ

(1909-1983)

  • 1945年の小説が代表作にあたる。モントリオールの労働者地区を舞台にする。
  • 農村を描くそれまでの流れから、都市の貧困へ主題を移した。
  • 本国の文学賞(フェミナ賞)を受けている。
本文で読む:主要な作家 ▶
⚡ 72

アンヌ・エベール

(1916-2000)

  • 詩から出発し、小説へ。
  • 1970年の小説が代表作にあたる。19世紀の実際の事件を下敷きにしている。
  • 抑圧された欲望と、閉じた共同体を主題にする。
  • 本国と行き来しながら書いた。
本文で読む:主要な作家 ▶
⚡ 73

ミシェル・トランブレ

(1942- )

  • 1968年初演の戯曲が代表作にあたる。
  • ジュアルを舞台の言語として全面的に用いた。上演時に論争になった。
  • 登場人物は労働者層の女性たち。合唱のように語る場面がある。
  • 話し言葉を書くという選択が、そのまま政治的な意味を持った例である。
本文で読む:主要な作家 ▶
⚡ 74

ダニー・ラフェリエール

(1953- 、ハイチ生まれ)

  • ハイチからケベックへ亡命した(第7章)。
  • 2013年にアカデミー・フランセーズ会員に選ばれた。
  • カリブ海とケベックが接続する経路を示す例にあたる。
本文で読む:主要な作家 ▶
⚡ 75

1977年のフランス語憲章

  • 公的な場、職場、商業の表示におけるフランス語の使用を定めた。
  • 移民の子どもの就学についても規定がある。
  • 法律によって言語を維持するという方法にあたる。
  • 賛否の両方が現在まで続いている。
本文で読む:言語の政策 ▶
⚡ 76

1980年代以降

  • ハイチ、レバノン、中国、マグレブなどからの移民の作家が書き始める。
  • ケベックのフランス語で書くが、ケベック人としての自己規定を共有するとは限らない。
  • 「守るべきフランス語」の内側に、複数の来歴が入ってくる。
  • 現在のケベック文学の最も活発な部分にあたる。
本文で読む:移民の文学 ▶
⚡ 77

一方通行ではない

  • 19世紀から20世紀前半は、本国の文学を規範として仰(あお)ぐ関係にあった。
  • 1960年代以降、本国からの独立が意識される。
  • 現在は、本国で読まれる作家も、本国を参照しない作家も両方いる。
  • 「本国の文学の一部か、別の文学か」という問いは、ベルギー・スイスと共通する(第9章)。
本文で読む:本国との関係 ▶
⚡ 78

近年の重要な論点にあたる

  • ケベックには先住民の集団がいる。フランス語で書く作家がいる。
  • 「フランス語を守る側」の枠組みが、そのままでは当てはまらない。
  • 入植によって言語を失った側という位置にあり、この教材のほかの地域の条件に近い。
  • ケベックの内部に、支配と被支配の別の層があるということにあたる。
本文で読む:先住民の文学 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第8章の通過チェック

  • 1763年に何が起きたかを言える
  • 静かな革命の内容と、文学に起きた4つの変化を言える
  • ジュアルとは何かを言い、論争の両側の主張を言える
  • 主要な作家3人と、その代表作の年を言える
  • 1977年の法律の内容と、その両義性を言える
  • 移民の作家がこの地域で持つ位置を説明できる
本文で読む:先住民の文学 ▶

地域 第9章 ベルギー・スイス

この2つは、植民地支配とは無関係である。
⚡ 79

この2地域に固有の問題

  • フランス語が母語なので、書く言語をめぐる葛藤(かっとう)がない。
  • 代わりに、パリで出版されると「フランスの作家」として扱われる。
  • 国籍が意識されない。作品が本国の文学史に吸収されていく。
  • したがって「独自の文学があるのか」という問いが繰り返し立てられてきた。
本文で読む:条件 ▶
⚡ 80

19世紀末が中心の時期にあたる

  • 象徴主義の時期に、ベルギーの作家が本国の運動と深く関わった(02・05の領域)。
  • 雑誌と出版の拠点がブリュッセルにもあった。
  • 本国の作家がベルギーで発表することもあった。
本文で読む:ベルギー ▶
⚡ 81

モーリス・メーテルランク

(1862-1949)

  • 象徴主義の演劇で知られる。
  • 1911年にノーベル文学賞。
  • フランス本国の象徴主義の運動の中で論じられることが多い。
  • 「ベルギーの作家」として扱われるか「フランス語の作家」として扱われるかが揺れる典型例にあたる。
本文で読む:ベルギー ▶
⚡ 82

エミール・ヴェラーレン

(1855-1916)

  • 詩人。近代の都市と産業を主題にした。
  • 同時代の絵画の運動とも関わりがある(05の領域)。
本文で読む:ベルギー ▶
⚡ 83

20世紀以降

  • ジョルジュ・シムノン(1903-1989)— 推理小説を大量に書いた。通俗と高級の境の問題に関わる(08の領域の正典)。
  • アメリー・ノートン(1966/1967- )— 現在最も広く読まれるベルギー出身の作家の1人にあたる。
  • 絵と文字を組み合わせた形式が、この国では独自の発達をした。
本文で読む:ベルギー ▶
⚡ 84

シャルル=フェルディナン・ラミュ

(1878-1947)

  • この地域を代表する作家にあたる。
  • 山と農村の共同体を主題にする。
  • 標準的なフランス語からずらした文体を意識的に用いた。この点は第2章の「所有」の立場に近い。
  • 本国の文壇からの独立を主張した。
本文で読む:スイスのフランス語圏 ▶
⚡ 85

ブレーズ・サンドラール

(1887-1961)

  • スイス生まれ。後にフランス国籍を取得している。
  • 20世紀初頭の前衛の詩(05・02の領域)の中で活動した。
  • 旅と移動を主題にする。
  • 「どの国の作家か」が最も決めがたい例の1つにあたる。
本文で読む:スイスのフランス語圏 ▶
⚡ 86

レポートで扱うなら

  • 「独自の文学か、本国の一部か」という問いそのものを論点にできる。
  • どこで出版され、どの文学史に記載されているかを調べる(第12章)。
  • 作家自身が、自分の位置をどう述べているかを探す。
  • 文体に、その地域の言語的な特徴が入っているかを見る。
本文で読む:この2地域をどう扱うか ▶
⚡ 87

20世紀後半に提示された考え方

  • 大きな言語の中で、少数の集団が書く文学を、独自の型として捉える見方がある。
  • 特徴として挙げられるもの — 言語がずらされている、個人の問題が集団の問題と直結する、政治から切り離せない。
  • ベルギーとスイスにも当てはめられてきた。
  • ケベックにも当てはめられる(第8章)。
本文で読む:「小さな文学」という捉え方 ▶
⚡ 88

この2地域で扱いやすい論点

  • 文学史への記載。本国の文学史に載っているか、載り方はどうか(08の12章)。
  • 出版の場所。パリか、ブリュッセルか、ジュネーヴか。
  • 賞。本国の賞を受けているか、地域の賞があるか。
  • 作家自身の発言。自分をどう位置づけているか。
  • 文体。地域の語彙や言い回しが入っているか。
本文で読む:何を調べれば論になるか ▶
⚡ 89

記述が固まる

  • すべて調べられる(第12章)。
  • 正典の枠組みで論じられる(08の12章)。
  • 「なぜこの作家は本国の文学史に入り、この作家は入らないのか」という形の問いが立てやすい。
本文で読む:何を調べれば論になるか ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第9章の通過チェック

  • この2地域に固有の問題を説明できる
  • ベルギーで19世紀末が中心の時期になる理由を言える
  • メーテルランクの受賞年と、帰属が揺れる理由を言える
  • シムノンが正典の問題と結びつく理由を言える
  • ラミュとサンドラールの位置の違いを言える
  • この2地域にポストコロニアル批評が効かない理由を言える
本文で読む:何を調べれば論になるか ▶

地域 第10章 移民と郊外の文学

地理的には本国の中の話である。
⚡ 90

条件が違う

  • 第1世代 — 移民として来た人々。多くは労働のために単身で来た。フランス語が第二言語にあたる。
  • 第2世代フランスで生まれ育った。フランス語が母語である。フランス国籍を持つ。
  • 第2世代にとって、言語の選択という問題は生じない(第2章)。
  • 代わりに「フランス人として扱われるか」という問題が中心になる。
本文で読む:第1世代と第2世代 ▶
⚡ 91

メフディ・シャレフ

(1952- )

  • 1983年の小説が、この流れの最初期の作品として扱われる。
  • 郊外の若者の日常を、話し言葉に近い文体で書く。
  • 後に映画監督になった。05の領域と接続する。
本文で読む:1980年代の作品 ▶
⚡ 92

アズーズ・ベガグ

(1957- )

  • 1986年の小説が代表作にあたる。子どもの視点から、仮設の居住地区での生活を書く。
  • 社会学者でもあり、後に閣僚を務めた。
  • 学校教育と言語を主題の中心に置く。
本文で読む:1980年代の作品 ▶
⚡ 93

フェイザ・ゲーヌ

(1985- )

  • 2004年の小説が代表作にあたる。十代の少女の一人称。
  • 口語と若者言葉を全面的に用いた文体。
  • 広く読まれ、多くの言語に翻訳された。
  • 1980年代の作品と比べると、主題が親の世代の記憶から、現在の生活そのものへ移っている。
本文で読む:2000年代以降 ▶
⚡ 94

現在の状況

  • 「移民の文学」という括りへの拒否が、書き手の側から繰り返し表明されている。
  • 主題も形式も多様化しており、1つの枠に収まらない。
  • 一方で、出版と批評の側がその枠で受け取り続けるという構図がある。
  • この受け取られ方そのものを分析の対象にできる(08の領域)。
本文で読む:2000年代以降 ▶
⚡ 95

第4章とのつながり

  • 親の世代が語らなかったことを、子の世代が書くという構図がある。
  • アルジェリア戦争の記憶が、家庭の中の沈黙として現れる。
  • フランス側についたアルジェリア人とその家族の問題も、この文脈で扱われる。
  • 「語られなかったことをどう書くか」という形式上の問題が生じる。
本文で読む:記憶の継承 ▶
⚡ 96

形式に現れること

  • 断片的な構成。まとまった物語として書けない。
  • 証言の引用と、想像による補い。
  • 語り手が調べていく過程そのものを書く。
  • これは10の領域の記憶をめぐる作品と、形式の面で共通する。
本文で読む:記憶の継承 ▶
⚡ 97

扱いやすい論点

  • 言語の層。標準的なフランス語、口語、若者言葉、アラビア語からの借用が、1つのテクストの中でどう配置されているか。数えられる。
  • 空間の描写。建物、階段、広場。どこが描かれ、どこが描かれないか。
  • 学校の場面。言語と社会的な位置が交差する場所にあたる。
  • 語り手の年齢と視点。子どもの視点が多い理由。
本文で読む:分析でどう使うか ▶
⚡ 98

この分野に固有の構造

  • 作品が「社会問題の証言」として読まれやすい。
  • 書評が、文学としてではなく現象として扱う場合がある。
  • 作家が、出身と結びつけて紹介される。
  • この受け取られ方そのものへの拒否が、書き手の側から繰り返し表明されている。
本文で読む:出版と受け取られ方 ▶
⚡ 99

分析の対象にできる

  • 書評を集めて、何が論じられているかを分類する。
  • 作品の紹介文に、作家の出身がどう書かれているかを見る。
  • 同時期の本国出身の作家の紹介文と比べる。
  • これは08の領域の受容理論と正典の問題にあたる(第11章)。
本文で読む:出版と受け取られ方 ▶
⚡ 100

文字以外の経路が大きい

  • 1980年代以降、この層から音楽と映画が広く出た。
  • 文学より先に、広い層に届いた。
  • 作品の中に、音楽が主題として繰り返し現れる。
  • 05の19章の型で扱える。言及・描写・経験のどれかにあたる。
本文で読む:音楽と映画 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第10章の通過チェック

  • 移民が増えた時期と、定住が進んだ経緯を言える
  • 「郊外」という語の含みを説明できる
  • 第1世代と第2世代の条件の違いを言える
  • 第2章の問いがどう反転しているかを説明できる
  • 1980年代と2000年代の作品の主題の違いを言える
  • 記憶の継承が形式にどう現れるかを4つ言える
本文で読む:音楽と映画 ▶

実践 第11章 理論との接続

08の文学理論のどの枠組みが、この分野で使えるか。
⚡ 101

最もよく使えるのは正典の枠組みにあたる

  • なぜこの作家は文学史に入らないのか。
  • どの賞を、いつ、誰が受けたか。
  • どこで出版されたか。
  • すべて調べられる。記述が固まるので、論証として成立させやすい(07・08の領域)。
本文で読む:使える枠組み ▶
⚡ 102

地域によって使う道具を変える

  • マグレブ・アフリカ・カリブ海 — ポストコロニアル批評が中心。
  • ケベック言語政策と少数派の維持。正典と場の枠組み。
  • ベルギー・スイス中心と周縁、正典の問題。
  • 移民と郊外正典とジェンダーと文化研究。ポストコロニアル批評は間接的に効く。
本文で読む:効きにくい枠組み ▶
⚡ 103

この分野で実際に使う操作

  • 1 誰が語っているかを特定する。当事者か、外部の観察者か。
  • 2 何が書かれていないかを見る。登場しない集団、名前のない人物。
  • 3 誰に向けて説明されているかを見る。説明の入る箇所を数える(第5章)。
  • 4 対(つい)になる概念を探す。文明と野蛮、近代と伝統。その対そのものを問う。
  • 5 抵抗の形を、単純な対立にしない。混淆・模倣・ずらしも抵抗の形にあたる。
本文で読む:ポストコロニアル批評の要点 ▶
⚡ 104

2007年の宣言

  • 本国と各地域の作家、あわせて数十名が連名で宣言を出した。
  • 主張の核は、「フランコフォニー文学」という区分の廃止にあたる。
  • 本国の文学が中心で、その周りに「フランス語圏の文学」があるという構図そのものを否定した。
  • 代わりに「フランス語による世界文学」という枠を提案した。
本文で読む:フランコフォニーという枠組みへの批判 ▶
⚡ 105

なぜ問題にされたか

  • 「フランコフォニー」の枠は、本国を中心に置く。
  • 本国の作家は「フランス文学」、それ以外は「フランス語圏の文学」と呼ばれる。
  • この非対称そのものが、植民地の構造の残りだという指摘にあたる。
本文で読む:フランコフォニーという枠組みへの批判 ▶
⚡ 106

この教材の名前について

  • この教材は「フランス語圏の文学」という枠を使っている。
  • その枠自体に批判があることを、ここで示しておく。
  • 枠を使うことと、枠を疑うことは両立する(08の領域)。
本文で読む:フランコフォニーという枠組みへの批判 ▶
⚡ 107

推奨する形

  • 1 地域と時期を1つに絞る。「フランス語圏の文学」全体を論じない。
  • 2 作品を1〜2作に絞る。
  • 3 記述を固める。言語の層、語りの位置、説明の入る箇所。数えられる形にする。
  • 4 枠組みを1つ選ぶ。08から。
  • 5 出版と受容を調べる(第12章)。
本文で読む:レポートでの組み立て ▶
⚡ 108

使い方

  • 問いを先に立て、そこから枠組みを引く。
  • 枠組みを先に決めない(08の領域)。
  • 1つに絞る(08の20章)。
本文で読む:08の各章との対応表 ▶
⚡ 109

この分野に固有の扱いやすさ

  • 多くの作品が複数の言語に翻訳されている。
  • 翻訳の有無と時期が、評価の変化を示す(第12章)。
  • 邦訳がある作品は、訳語の選択そのものを分析できる(07の領域)。
  • 母語の語がどう訳されているか。注が付いているか、そのまま音写されているか。
本文で読む:翻訳という論点 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第11章の通過チェック

  • この分野で使える枠組みを6つ、08の章番号とともに言える
  • 正典の枠組みが最もよく使える理由を言える
  • 地域ごとに使う道具が変わることを説明できる
  • ポストコロニアル批評の5つの操作を言える
  • 2007年の宣言の主張と、それへの批判を言える
  • レポートの組み立ての5段階と、最も多い失敗を言える
本文で読む:翻訳という論点 ▶

実践 第12章 調べ方と卒論への接続

この教材は仮の版である。
⚡ 110

この分野に固有の注意

  • 本国で出版される際に、改稿(かいこう)や削除がある場合がある。
  • 地元の版と本国の版で本文が違うことがある。
  • 語彙に注(ちゅう)や用語集が付けられる場合がある。誰に向けた版かが分かる。
  • どの版を使うかを最初に決めて明記する(07の5章)。
本文で読む:版の問題 ▶
⚡ 111

注や用語集そのものが資料になる

  • 何に注が付いているかで、想定された読者が分かる。
  • 版によって注の量が違う場合、その差が受容の変化を示す。
  • これは第2章の読者の問題を、具体的に調べる方法にあたる。
本文で読む:版の問題 ▶
⚡ 112

調べられること

  • どこで出版されたか。パリか、地元か。
  • どの賞を受けたか。本国の賞か、地域の賞か。
  • 書評がどこに出たか。
  • 翻訳された言語と、その時期。
  • 教科書とアンソロジーに入っているか。08の領域の正典の問題にあたる。
本文で読む:受容を調べる ▶
⚡ 113

なぜこれが有効か

  • すべて記録が残っており、確かめられる。
  • 記述が固まるので、論証として成立させやすい(07・08の領域)。
  • 「誰がこの作家を文学に入れたか」を具体的に示せる。
本文で読む:受容を調べる ▶
⚡ 114

選ぶ前に確かめる5つのこと

  • 1 原文が入手できるか。
  • 2 邦訳があるか。
  • 3 先行研究が日本語または読める言語であるか。
  • 4 背景の歴史を、どこまで自分で調べる必要があるか。
  • 5 指導を受けられるか。この分野を扱う教員がいるかを確かめる。
本文で読む:卒論の領域として選ぶなら ▶
⚡ 115

最初に取りかかりやすいのは

  • マグレブと移民・郊外にあたる。背景が03の領域でおおむね足り、邦訳と研究がある。
  • カリブ海は理論から入れる。グリッサンの翻訳がある(第7章)。
  • サハラ以南アフリカとケベックは、背景の調査に時間がかかる。
本文で読む:地域ごとの取り組みやすさ ▶
⚡ 116

領域が決まったら足すもの

  • その地域の章を、作家ごとの節に分ける。10の領域の章の型を使う。
  • 作品ごとに、あらすじ・主題・文体・解釈の分かれ目を書く。
  • その地域の歴史の年表を詳しくする。
  • 索引に、扱った人物と作品を1行ずつ足す(00の領域)。
本文で読む:この教材を厚くするとき ▶
⚡ 117

この分野では年表が要る

  • 地域ごとに歴史が違い、03の領域の年表だけでは足りない。
  • 扱う地域の年表を、自分で1枚作る。
  • 列は3つ。政治の出来事/その地域の作品/本国の出来事。
  • 3列を並べると、作品が何に反応しているかが見える。
本文で読む:年表を自分で作る ▶
⚡ 118

入れるもの

  • 支配の開始と終了の年。
  • 独立の年。
  • 言語に関する法律と政策の年(第3章・第8章)。
  • 扱う作品の刊行年。
  • 作家の生年と、書き始めた時期(第2章の世代)。
本文で読む:年表を自分で作る ▶
⚡ 119

この分野に固有の事情

  • 本国の研究、北米の研究、当該地域の研究で、力点が違う。
  • 英語の研究が多い分野にあたる。ポストコロニアル批評の主要な議論は英語圏で展開した。
  • 日本語の研究は、地域によって厚みが大きく違う。
  • 07の3章と4章の手順で探し、どの立場からの研究かを確かめる。
本文で読む:先行研究の探し方 ▶
⚡ 120

これからの使い方

  • 授業でこの分野の作家が出たら、その地域の章を開く。
  • 第2章の4つの立場を、その作家に当ててみる。
  • 枠組みを選ぶときは第11章、調べるときはこの章。
  • 卒論の領域を決めたら、その章を厚くする。
本文で読む:この教材を終えて ▶
✓ 通過チェック

第12章の通過チェック

  • 資料を探す6つの場所を言える
  • 版の問題として、この分野に固有の注意を3つ言える
  • 注や用語集が資料になる理由を言える
  • 受容を調べるときに確かめる5項目を言える
  • 卒論の領域を選ぶ前に確かめる5つのことを言い、最も重要なものを言える
  • 最初に取りかかりやすい地域と、その理由を言える
本文で読む:この教材を終えて ▶

📗 一通り目を通したら、一問一答で言えるかどうか確かめましょう。

一問一答で総ざらいする ▶
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