🧭全体地図📘フランス語圏
6 / 12
CHAPTER 6 運動 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 10

運動|第6章 ネグリチュード

この章の狙い

要点: 1930年代のパリで、アフリカとカリブ海の学生たちが始めた運動である。

地域を超えて結ばれた最初の運動であり、そして後の世代から強く批判された運動でもある。

この章は第5章と第7章をつなぐ。アフリカとカリブ海が、パリで出会った地点にあたる。

ネグリチュード — 1930年代のパリで出会った3人 セゼール マルティニック(カリブ海) 『帰郷ノート』1939年 サンゴール セネガル(アフリカ) 初代大統領 1960年 ダマス ギアナ(南米) 最も早い詩集 1937年 出身地も政治的な立場も詩の形式も違う。1つの語がこの差を覆い隠している 後の世代からの3つの批判 1 本質主義 — 支配する側の分類を裏返しただけになっている 2 地域の差を消す — アフリカとカリブ海の歴史は違う 3 パリで作られた — 本国の中で、本国の知識人に向けて形成された
ネグリチュードの位置

▲ この章の内容へ

成り立ち

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

出来事
1930年代 パリに留学した学生たちが交流する
1934年 学生の雑誌が創刊される。運動の名がこの時期に生まれる
1939年 セゼール『帰郷ノート』が発表される
1947年 アフリカとカリブ海の文化を扱う雑誌と出版社が設立される
1948年 アンソロジーが刊行され、サルトルが序文を書く
1960年 セネガル独立。サンゴールが初代大統領になる
  • 📘 ネグリチュード:黒人であることを否定的な条件ではなく、積極的な価値として引き受ける立場のこと。1930年代のパリで、フランス語で書く学生たちが作った語にあたる。

▲ この章の内容へ

3人の中心人物

⊳ この節の問題を解く(2問・2枚)

エメ・セゼール(1913-2008、マルティニック)

  • 『帰郷ノート』(1939年)が代表作にあたる。長い詩の形式。
  • カリブ海への帰還と、そこで見たものを書く。
  • 政治家としても長く活動した。マルティニックの市長・国会議員を務めている。
  • シュルレアリスムの手法(05・02の領域)を、この主題に用いたという点が形式上の特徴である。

レオポール・セダール・サンゴール(1906-2001、セネガル)

  • 詩人であり、セネガルの初代大統領(1960-1980)にあたる。
  • アフリカの文化的な価値を体系的に論じた。
  • 1983年にアカデミー・フランセーズ会員に選ばれた。アフリカ出身者として初めてである。
  • フランコフォニーの構想の推進者でもあった(第1章)。

レオン=ゴントラン・ダマス(1912-1978、ギアナ)

  • 3人の中で最も早く詩集を出している(1937年)。
  • 短く、口語に近い、リズムを前面に出した詩。
  • 3人の中では扱われることが少ないが、形式の面では最も先鋭にあたる。

⚠️ 3人を同じものとして扱わない

  • 出身地が違う。カリブ海(マルティニック)、アフリカ(セネガル)、南米(ギアナ)。
  • 政治的な立場も違う。独立の捉え方が一致していない。
  • 詩の形式も違う。
  • 「ネグリチュード」という1つの語が、この差を覆い隠している。

▲ この章の内容へ

何を主張したか

中身

  • 同化への拒否。フランス文化に溶け込むことを目標としない。
  • アフリカに由来する文化を、劣ったものではなく別の価値として提示する。
  • 地域を超えた連帯。アフリカとカリブ海を1つの経験として結ぶ。
  • フランス語で書きながら、フランス語の詩の規範を崩す。

なぜフランス語だったか

  • 参加者がパリの学校で学んだ世代にあたる。
  • フランス語が、地域を超えて通じる唯一の共通語だった。
  • 支配者の言語を使って、支配の前提を否定するという構図である(第2章の「戦略」)。

▲ この章の内容へ

批判

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

⚠️ 後の世代からの3つの批判

  • 1 本質主義である — 「黒人であること」に共通の本質を認めてしまっている。これは支配する側の分類をそのまま裏返しただけだという指摘。
  • 2 地域の差を消す — アフリカとカリブ海の歴史は違う。1つにまとめることで、それぞれの固有性が見えなくなる。
  • 3 パリで作られた本国の中で、本国の知識人に向けて形成された運動であるという指摘。

カリブ海からの応答

  • エドゥアール・グリッサン(第7章)が「アンティル性」を対置した。アフリカへの回帰ではなく、カリブ海そのものの歴史から考える。
  • 1989年の『クレオール礼賛』は、ネグリチュードを乗り越えるべきものとして名指した(第7章)。
  • この批判の系譜を追うことが、カリブ海の文学を読む骨格にあたる。

⚠️ 批判があるから価値がない、とはならない

  • 当時の条件の中で何をしたかを見る。
  • 同化を唯一の道とする状況を、初めて正面から拒否した。
  • 後の運動は、この運動があったから可能になった側面がある。
  • 批判とともに位置づけるのが、この分野の標準的な扱いにあたる。

▲ この章の内容へ

サルトルの序文

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

1948年

  • アンソロジーにサルトル(04の14章)が序文を書いた。
  • この運動を、より大きな解放の運動の一段階として位置づけた。
  • その位置づけ方が、後に当事者から批判された。「終わるべき段階」として扱ったためである。
  • セゼールとファノンの双方が、この序文に反応している(第4章)。

⚠️ 本国の知識人による位置づけという構図

  • 誰が誰を語るかという問題そのものが、ここに現れている。
  • 08の領域の「語る主体は誰か」という問いに直結する。
  • この場面は、レポートの題材として扱いやすい。

⚠️ この章で混同しやすい形

  • 3人を同じ立場と考える。出身地も政治的な立場も詩の形式も違う。
  • アフリカで始まった運動と考える。パリで形成された。
  • 批判があるから価値がないと考える。当時の条件の中で何をしたかを見る。
  • サルトルの序文を、単なる紹介と考える。位置づけ方そのものが論点になった。

▲ この章の内容へ

女性の不在という論点

⊳ この節の問題を解く(1問)

⚠️ この運動の3人の中心はいずれも男性である

  • 同時期に、カリブ海出身の姉妹が編集した雑誌が、この運動の前史として近年再評価されている。
  • 長く文学史から落ちていた。
  • 「誰が運動の創始者とされるか」という正典の問題にあたる(08の12章)。

レポートの題材として

  • 運動の記述が、どの時点で誰を含めるようになったかを追える。
  • 文学史の記述そのものを資料にするという方法である(08の領域)。
  • 記述が固まるので、論証として成立させやすい。

▲ この章の内容へ

詩の形式

⊳ この節の問題を解く(1問)

3人に共通する形式上の特徴

  • 長い行と短い行を混ぜる。定型の詩句を使わない(07の領域)。
  • 列挙を多用する。同じ構文を繰り返して積み上げる。
  • 呼びかけが多い。声に出されることを前提にした形式にあたる。
  • アフリカと関わる地名・語彙を、注を付けずに置く。

07の詩法をどう使うか

  • 音節を数える(07の15章)と、定型から外れていることが確かめられる。
  • 反復の位置を図にすると、構成が見える。
  • 「自由詩」の枠で記述できる(07の19章)。
  • 形式の分析が、主張の内容と結びつく点がこの運動の特徴にあたる。

第6章の通過チェック

  • 運動が形成された場所と時期を言える
  • 3人の名前・出身地・代表作を言える
  • サンゴールが1960年と1983年に何をしたかを言える
  • この運動が主張した4つの点を言える
  • 後の世代からの3つの批判を言える
  • サルトルの序文がなぜ論点になったかを説明できる

▲ この章の内容へ

次章へ

次章はカリブ海とクレオール性である。

ネグリチュードへの応答として展開した地域にあたる。アフリカへの回帰ではなく、カリブ海そのものの混淆(こんこう)から考える。グリッサンの「関係の詩学」と、1989年の宣言を扱う。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

この章の問題を解く ▶
🧭全体地図へ戻る