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CHAPTER 2 導入 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 11

導入|第2章 言語の選択という問題

この章の狙い

要点: なぜ支配者の言語で書くのか。

これがこの分野の中心の問いにあたる。書かないという選択もありえた。実際に、書くのをやめた作家も、別の言語に移った作家もいる。

この章は全地域に共通する。どの地域の章を読むにしても、先にここを通す。

なぜ支配者の言語で書くのか — 4つの立場 どれが正しいかを決めない。作家ごと、時期ごとに違う 1 疎外である 支配を内面化することになる。 書く言語と話す言語がずれ、 読者もずれる 2 戦略である 支配者の言語で書けば 支配者に届く。内側から 前提を崩せる 3 現実である 学校がフランス語だった。 選んだのではなく、それしか 書けない 4 所有の問題である 言語は使う者のものになる。 語彙と統辞を作り変えて 自分の言語にする 分析では、その作家が言語についてどう述べているかを先に探す
言語の選択の四つの立場

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問いの形

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

同じ事実に、4つの評価がありうる

  • 1 疎外(そがい)である — 支配者の言語で書くことは、支配を内面化することにあたる。
  • 2 戦略である — 支配者の言語を使って、支配を内側から批判できる。
  • 3 現実である — 学校教育がフランス語で行われた。選んだのではなく、それしか書けない。
  • 4 所有の問題である言語は使う者のものになる。もはや支配者だけの言語ではない。

⚠️ どれが正しいかを決めない

  • 作家ごとに、時期ごとに立場が違う。
  • 同じ作家が、生涯の中で立場を変えることがある。
  • 論じるときは、誰がいつどう言ったかを特定する。

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4つの立場の中身

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

疎外という捉え方

中身

  • 学校で母語を否定され、フランス語を強いられた経験が背景にある。
  • 書く言語と、話す言語と、考える言語がずれる。
  • 読者もずれる。本国の読者に向けて書くことになる。
  • フランツ・ファノン(第4章)が、言語と自己像の関係を早くに論じている。

戦略という捉え方

中身

  • 支配者の言語で書けば、支配者に届く。
  • 国際的に読まれる。翻訳の経路も広い。
  • 言語の内側から、その言語が前提にしているものを崩せる。
  • これは08の領域の脱構築の発想と近い。

現実という捉え方

中身

  • 植民地の学校はフランス語で行われた。書き言葉として身についたのがフランス語である。
  • 母語に文字の伝統が薄い場合、書く手段がない。
  • したがって「選択」という言い方自体が実態と合わない場合がある。
  • この点は、地域と世代によって大きく違う。

所有という捉え方

中身

  • 言語は、使う者によって変えられる。
  • 語彙・統辞・リズムを作り変えて、自分の言語にする。
  • アマドゥ・クルマ(第5章)やパトリック・シャモワゾー(第7章)の実践がこれにあたる。
  • 「フランス語で書く」のではなく「フランス語を作り変える」という立場である。

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二言語の間で

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

  • 📘 二言語併用:2つの言語を使い分けて生きる状態のこと。フランス語圏の作家の多くがこの状態にある。

モロッコの評論家アブデルケビール・ハティビ(1938-2009)

  • 二言語の状態そのものを主題にした。
  • どちらか一方を選ぶのではなく、2つの間に立つことを積極的に捉える。
  • 母語がフランス語の下に隠れている状態を書いた。
  • この考え方は、マグレブの作家を読むときの基本の枠組みにあたる(第3章)。

⚠️ 「二言語だから豊か」で終わらせない

  • 一方が公的で、一方が私的という非対称がある。
  • 学校・行政・出版がフランス語で、家庭が母語という配置。
  • この非対称を書くことが、多くの作品の主題になっている。

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書くのをやめる/移る

⊳ この節の問題を解く(1問)

実際にあった選択

  • フランス語で書くのをやめ、アラビア語に移った作家がいる。
  • フランス語で書き続けたが、母語の構造をフランス語に持ち込んだ作家がいる。
  • フランス語で書き、母語の作品を自ら訳した作家がいる。
  • 映画に移った作家がいる。文字を読めない読者に届けるためという理由が語られる。

判断の材料になる問い

  • 誰に読まれることを想定しているか。本国の読者か、地元の読者か。
  • どこで出版されているか。パリか、地元か。
  • 翻訳されているか。どの言語へ。
  • これらは第12章の調べ方につながる。

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分析でどう使うか

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

手順

  • 1. その作家が、言語についてどう述べているかを探す。エッセイ、インタビュー、序文。
  • 2. 作品の中に、言語そのものが主題として出てくる箇所を集める。
  • 3. 文体を見る。母語の語彙・構文・リズムが入っていないか。
  • 4. 出版の場と読者を確かめる。
  • 5. そのうえで、4つの立場のどれに近いかを述べる。

⚠️ やってはいけない形

  • 作家の出身地から立場を推定する。本人が述べていることを探す。
  • 「フランス語で書いたから同化した」と断じる。最も単純な誤りにあたる。
  • 1つの立場に固定する。時期によって変わる。

⚠️ この章で混同しやすい形

  • 4つの立場のどれかが正しいと考える。作家ごと、時期ごとに違う。
  • 二言語併用を、そのまま豊かさと考える。公的と私的の非対称がある。
  • 「選択」という語を、どの地域にもそのまま当てる。書く手段がフランス語しかなかった場合がある。
  • 出身地から立場を推定する。本人の言葉を探す。

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文体に現れる4つの形

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

言語の立場は、文体に痕跡(こんせき)を残す。何を見るかを決めておく。

見るところ 何が分かるか
母語の語彙 訳さずにそのまま置かれた語。注が付くか、付かないか
統辞(とうじ) 母語の語順や構文がフランス語に持ち込まれていないか
リズム 反復、呼びかけ、列挙。口承の形式の痕跡(第5章)
説明の有無 地元の読者なら不要な説明が入っていないか

注の扱いがとくに効く

  • 母語の語に注が付いていれば、本国の読者を想定している。
  • 注がなければ、分からないまま読ませる選択にあたる。
  • グリッサンの「不透明性への権利」は、この選択を理論化したものである(第7章)。
  • 版によって注の量が違う場合がある(第12章)。

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世代による変化

⊳ この節の問題を解く(1問)

独立の前後で問いが変わる

  • 独立前 — フランス語で書くことが、支配の枠内での行為になる。
  • 独立直後国民の文学を作るという課題が加わる。どの言語で作るかが政治になる。
  • 独立から数十年後フランス語で書くことが自明になった世代が現れる。問いの立て方が変わる。
  • 現在移動と亡命が常態になり、どこの文学かという問い自体が崩れる。

⚠️ 世代を特定せずに論じない

  • 「マグレブの作家は」と一般化しない。
  • 生年と、書き始めた時期を確かめる(第12章)。

第2章の通過チェック

  • 言語の選択をめぐる4つの立場を言える
  • 疎外という捉え方の背景を説明できる
  • 所有という捉え方の実践がどういうものかを言える
  • 二言語併用の非対称を説明できる
  • 書くのをやめる/移るという選択の例を3つ言える
  • 分析の5段階と、やってはいけない形を3つ言える

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次章へ

次章から地域に入る。最初はマグレブ——アルジェリア、モロッコ、チュニジアである。

フランスの支配がいちばん長く、いちばん深かった地域にあたる。アルジェリアは1830年から132年間、フランスの一部として統治された。その条件が、この地域の文学の形を決めている。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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