🧭全体地図📘思想
KEY POINTS ⚡ 161 個 / やってはいけない形 435 件 / 通過チェック 20 章

要点161

時代の順に、覚える中身・混同しやすい形・通過チェックを並べてあります。作品に出てきた概念を確かめるときと、試験前の総ざらいに使ってください。 各章は 結論 → ⚡ 覚える中身 → やってはいけない形 → 通過チェック の順に並びます。 それぞれの下のリンクから、その要点が出てくる本文の節に戻れます。

導入 第1章 全体地図 — 思想をどう読むか

思想史は、人名と主著を覚えるものではない。「何が問われ、どう答えられ、どこが批判されたか」という問いの連鎖を追うものである。
⚡ 1

思想を使う3つの水準

  • 1. 語の履歴を確かめる。作品に出てくる概念が、いつどんな文脈で作られたかを知る。
  • 2. 枠組みを知る。その時代に何が論じられ、何が論じられなかったかを押さえる。
  • 3. 作品と思想のずれを見る。作品は思想の例解ではない。ずれているところにこそ、その作品固有のものがある。
本文で読む:なぜ文学のために思想を学ぶのか ▶
⚡ 2

4つを取り出す

  • 1. 問い。何を問題にしているのか。たいてい冒頭か序文に書いてある。
  • 2. 定義。鍵になる語をどう定義しているか。同じ語でも思想家ごとに違う。
  • 3. 論証。なぜそう言えるのか。前提から結論までの道筋。
  • 4. 反論への応答。想定される反論に、どう答えているか。
本文で読む:哲学書をどう読むか ▶
⚡ 3

学部での読み方

  • 全文を読まなくてよい。序文と結論、そして目次の見出しから入る。
  • 入門書と事典で位置を確かめてから、原典の一部を読む。
  • 原典は訳で読んでよい。ただし鍵になる語だけは原語を確かめる(訳語が訳者ごとに違うため)。
  • 1つの主張を、自分の言葉で3行に要約できれば、その部分は読めている。
本文で読む:哲学書をどう読むか ▶
⚡ 4

3文で書く型

  • 1文目:作品の記述を示す。「この場面で、人物は自分の行為に理由を与えることを拒む。」
  • 2文目:概念を、誰の定義かを明示して導入する。「◯◯は、〜をこう定義している(出典)。」
  • 3文目:作品の記述と概念を突き合わせる。一致だけでなく、ずれも書く。
本文で読む:レポートで思想を使う型 ▶
⚡ 5

原語を確かめる理由

  • 同じ原語が、訳者によって違う日本語になる。逆に、違う原語が同じ日本語に訳されることもある。
  • たとえば「意識」と「良心」は、フランス語では同じ語にあたる。訳し分けられた時点で、原文にあった二重性が消えている。
  • 鍵語だけでよい。全文を原語で読む必要はない。
本文で読む:思想の用語をどう調べるか ▶
✓ 通過チェック

第1章の通過チェック

  • 思想を使う3つの水準を言える
  • 作品を思想の見本として読んではいけない理由を言える
  • この教材と08文学理論・批評の分担を説明できる
  • 哲学書から取り出す4つを言える
  • 「自然」「理性」「主体」が時代で意味を変えることを、例で示せる
  • この教材が原文を引用する範囲を言える
本文で読む:思想の用語をどう調べるか ▶

中世 第2章 中世 — 信仰と理性、普遍論争

中世の思想の中心にあるのは、「信じることと知ることはどう関係するのか」という問いである。
⚡ 6

なぜ形式が決まっていたか

  • 大学は討論の場だった。教師が問いを出し、学生が反論を述べる。
  • 文献の権威が重い。聖書と教父、そしてアリストテレスが引かれた。
  • 手順が定型化したことで、議論が積み上がるようになった。
  • ただしこの形式は、16世紀に「空虚な言葉遊び」として批判される(第3章)。
本文で読む:スコラ学とは何か ▶
⚡ 7

なぜこの論争が重要か

  • 語と物の関係を問う論争にあたる。言葉は世界をそのまま写しているのか。
  • 神学上の帰結があった。たとえば「教会」や「三位一体」をどう理解するかに関わる。
  • 20世紀の言語学と構造主義は、まったく違う枠組みで同じ問題を扱う(第16章)。語は物を指すのではなく、体系の中の差異で意味を持つという主張は、唯名論の遠い親戚として語られることがある。
本文で読む:普遍論争 ▶
⚡ 8

3つの立場

  • 理解するために信じる — アンセルムス。信仰が先にあり、そこから理解へ進む。
  • 信仰と理性は別々の道 — 両者は矛盾しないが、扱う領域が違う。
  • 理性で証明できる範囲を区切るトマス・アクィナス。神の存在は理性で示せるが、三位一体などは啓示(けいじ)によるとした。
本文で読む:信仰と理性 ▶
⚡ 9

文学との関わり

  • 知の言語はラテン語だったので、俗語(ぞくご)で書かれる文学とは別々の世界にあった(フランス史の領域を参照)。
  • ただし完全に切れてはいない。寓意(ぐうい)の技法、七つの罪といった枠組みは、俗語の文学にも入っている。
  • 13世紀の『薔薇物語』には、当時の学問的な議論の反響が見られると論じられてきた。
本文で読む:大学という場 ▶
⚡ 10

のちに何が批判されたか

  • 形式主義 — 討論の手続きが自己目的化し、実質のない議論になったという批判。16世紀の人文主義者が繰り返した。
  • 権威への依存 — 論証よりも文献の権威が重んじられたという批判。
  • ただしこの批判自体が、部分的には誇張である。中世の論理学は精密で、20世紀に再評価されている。
  • 「暗黒の中世」という像は、後の時代が作ったものにあたる。
本文で読む:批判と論点 ▶
⚡ 11

中世の作品を読むときに要る背景

  • 寓意 — 抽象的な観念を人物として描く技法。中世の文学に広く使われる。
  • 七つの大罪・四元徳 — 人物と行為を分類する枠組みとして機能した。
  • 恋愛の理論化 — 宮廷風恋愛は、単なる感情ではなく体系として論じられた
  • 写本と注釈 — テクストに注を付ける文化が、読み方そのものを形づくった。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 12

それでも接点はあった

  • 寓意(ぐうい)の技法が、両方で使われた。
  • 説教が、学問の内容を俗語で伝える通路になった。
  • 13世紀以降、学問的な議論を俗語で扱う作品が現れる。
  • したがって「完全に別世界」ではなく、翻訳と要約を通じてつながっていた。
本文で読む:学問の言語と、俗語との距離 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第2章の通過チェック

  • スコラ学の方法を、手順の面から説明できる
  • 普遍論争の3つの立場と、その代表者を言える
  • この論争がなぜ語と物の関係を問うものかを説明できる
  • 信仰と理性をめぐる3つの立場を言える
  • アンセルムスの神の存在証明の形式を言える
  • 1277年の禁令が何を示すかを言える
  • パリ大学の4つの特徴を言える
本文で読む:写本と注釈という条件 ▶

近世 第3章 16世紀 — 人文主義と懐疑

16世紀の思想は、2つの動きが重なってできている。古代の原典に戻ろうとする人文主義と、宗教の分裂がもたらした確信への疑いである。
⚡ 13

スコラ学のどこを批判したか

  • 言葉が古びている。中世のラテン語を、古典期の文体から遠いとして退けた。
  • 注釈の注釈を論じている。原典に戻るべきだと主張した。
  • 議論が現実から離れている。人間の生き方に関わる学問を求めた。
  • ただし人文主義者も、神学を否定したのではない。やり方を変えようとした。
本文で読む:人文主義 ▶
⚡ 14

思想としての要点

  • 聖書に立ち返る。教会の権威よりも聖書の言葉を上に置く。
  • 人間の意志の弱さを強調する。救いは人間の努力ではなく神の側にある。
  • この人間観が、17世紀のジャンセニスムと響き合う(第5章)。
  • 同時に、俗語で神学を書くという選択が、思想の言語を変えた。
本文で読む:宗教改革と思想 ▶
⚡ 15

問いの立て方が新しい

  • 支配は力によるのではなく、服従する側の同意によって成り立っているとした。
  • したがって、従うのをやめれば支配は崩れるという論理になる。
  • この問いは、20世紀にも繰り返し参照される。権力を「上から押しつけるもの」ではなく「関係の中で成り立つもの」と見る視点の先駆けとして扱われる(第18章)。
  • モンテーニュの親友であり、『エセー』はこの友情の記述を含んでいる。
本文で読む:ラ・ボエシと自発的隷従 ▶
⚡ 16

3つの核心

  • 判断の保留 — 対立する意見を並べ、どちらとも決めない。「私は何を知っているのか」という問いが、その態度を要約している。
  • 自己を書く — 「私が描くのは私自身である」という趣旨のことを冒頭で述べる。自分を対象にすること自体が新しかった。
  • 加筆による厚み — 版を重ねるごとに書き足された。前の記述を消さずに重ねるので、考えが変わる過程がそのまま残る。
本文で読む:モンテーニュ ▶
⚡ 17

公有の一文から

  • « Que sais-je ? »(私は何を知っているのか。)— 問いの形で終わることに意味がある。
  • 断定ではなく問いを標語にすることで、判断を宙づりにする態度そのものを示している。
本文で読む:モンテーニュ ▶
⚡ 18

16世紀の作品を読むときに要る背景

  • 『エセー』 — 判断の保留という態度は、宗教的な確信が人を殺していた状況と切り離せない(作品と作家の領域を参照)。
  • ラブレーの作品 — 人文主義の学問と民衆的な笑いが同居している。神学部から批判を受けた。
  • プレイヤード派の詩 — 古代の詩を範として、俗語で高い文学を作るという主張。人文主義の文学版にあたる。
  • 「エセー」という形式が、以後のフランスの散文に長く影響する。論文でも小説でもない、考えながら書く形式である。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 19

見分け方

  • その懐疑は、どこで止まるのか。止まらないなら保留型、止まるなら方法型にあたる。
  • 目的は何か。態度そのものか、基礎の確立か、記述の準備か。
  • 概念の履歴を追う練習として、この3つは最もよい例になる(第1章)。
本文で読む:懐疑の3つの型 ▶
⚡ 20

読み方の手順

  • 通読しなくてよい。章ごとに独立している。有名な章から入る。
  • 加筆の層に注意する。版を重ねるごとに書き足されており、版によって前後の記述が矛盾することがある。
  • 引用が多い。古代の著作からの引用を、自分の議論に組み込む形式にあたる。
  • 結論を探さない。結論を出さないことが方法である。
本文で読む:『エセー』をどう読むか ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第3章の通過チェック

  • 人文主義がスコラ学を批判した4点を言える
  • 印刷術が人文主義を支えた理由を言える
  • カルヴァンの思想の要点と、その言語上の意義を言える
  • 『自発的隷従論』の問いの立て方を説明できる
  • 『エセー』の3つの核心を言える
  • ピュロン主義との関係を言える
  • 『エセー』をめぐる現在の論点を挙げられる
本文で読む:『エセー』をどう読むか ▶

近世 第4章 17世紀(1)— デカルトと方法

デカルトは、懐疑から始める点ではモンテーニュと同じだが、行き先が正反対である。判断を保留したまま留まるのではなく、疑いを徹底することで、疑いえない一点に到達しようとした。
⚡ 21

« Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée. »

  • 訳:良識は、この世で最もよく分け与えられているものである。
  • 能力の差ではなく、使い方の差だという主張につながる。
  • だからこそ「方法」が要るという導入になっている。
  • フランス語で書かれたことも重要にあたる。学問の言語であるラテン語ではなく、俗語で哲学を書いた。
本文で読む:方法という発想 ▶
⚡ 22

4つの規則

  • 明証(めいしょう)明晰(めいせき)かつ判明に真と認めたものだけを受け入れる。
  • 分析 — 問題をできるだけ小さな部分に分ける。
  • 総合単純なものから複雑なものへ、順序立てて進む。
  • 枚挙(まいきょ)見落としがないかを網羅的に確かめる。
本文で読む:方法という発想 ▶
⚡ 23

そして残るもの

  • 疑っているあいだも、疑っている私は存在している。
  • « Je pense, donc je suis. »(私は考える、ゆえに私は存在する。)
  • これは推論ではなく、直観された一点だとされる。ここから体系を組み立て直す。
本文で読む:方法的懐疑 ▶
⚡ 24

この区分の帰結

  • 自然は物体の世界として、数学的に扱える。近代科学の前提が用意される。
  • 動物は機械のようなものとされた。この点は当時から強く批判された。
  • 心と体はどうつながるのかという難問が残る。デカルト自身も明快には答えられなかった。
  • この難問が、20世紀の身体をめぐる議論の出発点になる(第13章)。
本文で読む:心身の二元論 ▶
⚡ 25

要点

  • 情念は身体の運動が精神に引き起こすものとして説明される。
  • 理性によって情念を統御できるという方向を示した。
  • この枠組みが、同時代の悲劇と道徳論の背景になっている(第5章、作品と作家の領域)。
本文で読む:情念 ▶
⚡ 26

17世紀の作品を読むときに要る背景

  • 明晰さという価値 — 古典主義の言語観と響き合う。明晰でないのはフランス語ではないという有名な言い方が、後の世紀に生まれる。
  • 理性と情念の対立 — 悲劇の枠組みそのものにあたる。情念は理性で統御されるべきものとして、しかし統御できないものとして描かれる。
  • フランス語で哲学を書いたこと — 学問と文学の言語が近づく。思想が読者を持つようになる。
  • 自伝的な語り — 『方法序説』は自分の遍歴を語る形をとっている。哲学書でありながら、語りの形式を持つ。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 27

「デカルト的」という語の使われ方

  • 明晰さと体系性を指す褒め言葉として使われることがある。
  • 同時に、身体と歴史を軽視する枠組みへの批判の語としても使われる。
  • どちらの意味で使っているかを明示しないと、議論が噛み合わない。
本文で読む:デカルトの受容と、反デカルト ▶
⚡ 28

1637年の選択の意味

  • 当時の学問の言語はラテン語だった。大学の外の読者に向けて書くという選択にあたる。
  • 序文で、その理由を自ら述べている。理性は万人に共有されているという主張と一貫している。
  • 哲学が「読者を持つ」ようになる。サロンと世論の前提が用意される(第6章)。
  • 同時に、フランス語で抽象的な議論をする語彙が作られていった。この蓄積が18世紀を可能にする。
本文で読む:フランス語で哲学を書くということ ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第4章の通過チェック

  • 方法の4つの規則を言える
  • 方法的懐疑の3段階を言える
  • デカルトの懐疑とモンテーニュの懐疑の違いを説明できる
  • 二元論の2つの実体と、その本質を言える
  • デカルトの循環と呼ばれる批判を説明できる
  • 20世紀に最も強く批判された点を言える
  • 『方法序説』がフランス語で書かれたことの意義を言える
本文で読む:フランス語で哲学を書くということ ▶

近世 第5章 17世紀(2)— パスカルとモラリスト

同じ17世紀に、デカルトとは正反対の方向から人間を見る思想があった。理性で到達できる範囲は狭いと考え、人間の弱さと矛盾を見つめる方向である。
⚡ 29

中心にある主張

  • 人間は自力では善をなしえない。救いは神の側の働きによる。
  • 人間の本性は堕落している。その自覚から出発すべきだとする。
  • イエズス会と激しく対立した。相手は、人間の意志の役割をより大きく見ていた。
  • 最終的に王権によって弾圧された(フランス史の領域を参照)。
本文で読む:ジャンセニスム ▶
⚡ 30

3つの核心

  • 人間の二重性偉大さと悲惨さを同時に持つ。どちらか一方だけを見る立場を、両方とも退ける。
  • 理性の限界 — 理性は有効だが、理性が届かない領域がある。そこは別の仕方で捉えられる。
  • 気晴らし — 人は自分の状態を直視できないので、注意をそらすことに逃げる。これが人間の行動の多くを説明する。
本文で読む:パスカル ▶
⚡ 31

« Le cœur a ses raisons que la raison ne connaît point. »

  • 訳:心には、理性の知らない理性がある。
  • 「理性」という語が2回、違う意味で使われている。訳しにくさそのものが要点にあたる。
  • 理性の否定ではなく、理性とは別の秩序があるという主張である。
本文で読む:パスカル ▶
⚡ 32

« L'homme n'est qu'un roseau, le plus faible de la nature ; mais c'est un roseau pensant. »

  • 訳:人間は一本の葦(あし)にすぎず、自然の中で最も弱いものである。しかしそれは考える葦である。
  • 弱さと偉大さが1つの文の中で結ばれている。人間の二重性を示す最も知られた表現にあたる。
本文で読む:パスカル ▶
⚡ 33

« Nos vertus ne sont, le plus souvent, que des vices déguisés. »

  • 訳:われわれの美徳は、多くの場合、装いを変えた悪徳にすぎない。
  • 『箴言集』の巻頭に置かれた文である。
  • 自己愛が、善に見える行為の底にあるという見方を要約している。
本文で読む:モラリスト ▶
⚡ 34

モラリストの方法の特徴

  • 体系を作らない。断章を並べ、読者に判断させる。
  • 観察の場は宮廷にあたる。人が地位と評判を争う場所での振る舞いが材料になる(フランス史の領域を参照)。
  • 一般化して書く。「われわれは」「人は」という主語を使い、個人を特定しない。
  • 短さが効く。説明を省くことで、読者が自分に当てはめる余地が生まれる。
本文で読む:モラリスト ▶
⚡ 35

なぜ同じ時代に両方が出てくるか

  • どちらも「人間とは何か」を中心の問いにしている。
  • どちらも中世の権威に頼らない。自分で確かめる方向は共通している。
  • 違うのは、理性をどこまで信頼するかにあたる。
  • 17世紀の文学は、両方の枠組みを使っている。
本文で読む:デカルトとの対比 ▶
⚡ 36

17世紀の作品を読むときに要る背景

  • 悲劇の人間像 — 情念に抗(あらが)えない人物。ジャンセニスム的な人間観との近さが繰り返し論じられてきた。
  • 箴言という形式 — 短く、断定的で、逆説を含む。小説の地の文にも影響する。
  • 自己愛という概念 — 行為の底に自己への愛を見る見方は、19世紀の心理小説まで受け継がれる。
  • 気晴らしという概念 — 退屈から逃れるための行動という枠組みは、後の文学に繰り返し現れる。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 37

なぜ断章か

  • 人間の矛盾を扱うから。一貫した体系にすると、矛盾が消えてしまう。
  • 読者に働きかけるため。説明を省くことで、読者が自分に当てはめる余地が生まれる。
  • 順序を固定しない。どこから読んでもよい形にあたる。
  • 『パンセ』の場合は未完という事情もあるが、断章という形式自体は意図されていた。
本文で読む:断章という形式 ▶
⚡ 38

この修道院が果たした役割

  • 教育 — 独自の学校を持ち、言語の教授法でも知られた。
  • 論理学と文法一般文法の著作が生まれ、後の言語学に影響した(第16章とのつながりが論じられることがある)。
  • 文学との人的な関係 — ここで教育を受けた作家がいる。悲劇の人間観との近さが繰り返し論じられてきた(作品と作家の領域)。
  • 弾圧 — 18世紀初頭に建物が破壊された。思想が政治的に扱われた例にあたる(フランス史の領域)。
本文で読む:ポール・ロワイヤルと文学 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第5章の通過チェック

  • ジャンセニスムの主張の中心を2つ言える
  • ジャンセニスムとプロテスタントの関係を説明できる
  • パスカルの3つの核心を言える
  • 「考える葦」が示している人間観を説明できる
  • 賭けの議論の前提と、それへの批判を言える
  • モラリストの方法の特徴を4つ言える
  • デカルトとパスカルの対比を、5つの面から言える
本文で読む:ポール・ロワイヤルと文学 ▶

近世 第6章 18世紀(1)— 啓蒙という枠組み

啓蒙とは、特定の学説の名前ではなく、態度の名前である。理性を使って、権威と伝統と迷信を批判するという姿勢を指す。
⚡ 39

共通する4つの姿勢

  • 1. 批判 — あらゆる主張を、理性の前に引き出して検討する。権威だからという理由では認めない。
  • 2. 公開 — 議論は公衆の前で行われるべきだとする。世論という新しい場が前提になる(フランス史の領域)。
  • 3. 有用性 — 知は人間の生活を改善するためにある。『百科全書』が技術を扱った理由にあたる。
  • 4. 寛容 — 信仰の違いを理由に人を罰することを退ける。
本文で読む:啓蒙とは何か ▶
⚡ 40

具体的な事件が議論を動かした

  • 冤罪(えんざい)事件が、寛容をめぐる議論の出発点になった。ヴォルテールは実際の裁判に介入し、名誉の回復を求めた。
  • 抽象的な原理から始まったのではなく、事件から始まったという点が重要にあたる。
  • この形式は、19世紀末のドレフュス事件で反復される(フランス史の領域を参照)。
本文で読む:何を批判したのか ▶
⚡ 41

なぜ思想史上重要か

  • 知を体系として並べ直した。神学を頂点とする中世の秩序ではなく、人間の能力を基準に分類した。
  • 技術を知として扱った。職人の手仕事を図版とともに記述した。知は書物の中だけにあるのではないという主張になる。
  • 項目間の参照を使って、直接は書けないことを示した。検閲を避けるための技法にあたる。
  • 多数の執筆者による共同事業であり、統一した学説はない。啓蒙が運動であって学説でないことを、形の面から示している。
本文で読む:『百科全書』 ▶
⚡ 42

どう使われたか

  • 社会以前の状態を仮に想定し、そこから現在の社会が正しいかを測る。
  • 自然権 — 人が生まれながらに持つとされる権利。制度によって与えられるのではないとする点が要点にあたる。
  • したがって「自然に反する」は、強い批判の言葉になる。
  • この用法が、1789年の人権宣言に流れ込む(第9章)。
本文で読む:自然と自然権 ▶
⚡ 43

何を前提にしているか

  • 知は蓄積する。世代を越えて積み上がる。
  • 教育によって人は変わる。したがって社会も変えられる。
  • 歴史には方向がある。
  • この3つが、19世紀の実証主義と社会主義に受け継がれる(第10章)。
本文で読む:進歩という考え方 ▶
⚡ 44

18世紀の作品を読むときに要る背景

  • 哲学的な物語 — 検閲を避けつつ議論を届ける形式。『カンディード』が代表にあたる。
  • 書簡体 — 外から社会を見る視点を作る装置として使われる。『ペルシア人の手紙』
  • 「自然」という語 — 作品に出てきたら、批判の言葉として使われていないかを疑う。
  • 形式そのものが主張になる — 論文ではなく物語で書くことに意味がある。読者を広げるためであり、検閲を避けるためでもある。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 45

担い手の職業

  • 多くは聖職者でも大学人でもない。文筆で生きる人々、法曹、医師、技術者。
  • 大学の外で思想が作られたという点が、中世との決定的な違いにあたる(第2章)。
  • したがって読者を意識した書き方になる。形式の工夫が思想の一部になる。
本文で読む:誰が担い、どこで議論したか ▶
⚡ 46

レポートで扱うときの注意

  • 「啓蒙思想では〜」と一括りにしない。誰の主張かを示す。
  • その主張がどの場で、誰に向けて書かれたかを確かめる。
  • 検閲の条件を踏まえる。書かれた形が、書きたかった形とは限らない(第7章)。
本文で読む:啓蒙の外側 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第6章の通過チェック

  • 啓蒙に共通する4つの姿勢を言える
  • 啓蒙が一枚岩でない理由を3つ言える
  • 批判の対象を5つ言える
  • 議論が事件から始まったことを、例を挙げて説明できる
  • 『百科全書』が思想史上重要な理由を4つ言える
  • 18世紀の「自然」がどう使われたかを説明できる
  • 進歩の観念が前提にしている3つを言える
本文で読む:啓蒙の外側 ▶

近世 第7章 18世紀(2)— 法・寛容・百科全書

個々の思想家に入ると、啓蒙が一枚岩でないことがはっきりする。
⚡ 47

3つの要点

  • 政体の分類共和政・君主政・専制の3つに分け、それぞれを支える原理を示した。共和政は徳、君主政は名誉、専制は恐怖であるとする。
  • 権力の分立立法・執行・裁判の権力が別々の手にあるべきだとした。権力が権力を止めるという発想にあたる。
  • 条件との関係 — 法は、気候・土地・人口・宗教・慣習といった条件と関係している。普遍の法を演繹(えんえき)するのではなく、比較する。
本文で読む:モンテスキュー — 制度を比較する ▶
⚡ 48

方法の特徴

  • 具体的な事件から始める。抽象的な原理から演繹しない。
  • 短く、繰り返し、広く配る。小冊子・書簡・物語など、形式を使い分ける。
  • 敵を1つに絞る。「不寛容」を標的として繰り返し攻撃した。
  • 文学の形式を武器にした。『カンディード』のような物語も、議論の手段にあたる。
本文で読む:ヴォルテール — 事件に介入する ▶
⚡ 49

ディドロの位置

  • 『百科全書』の編集を最後まで担った。組織者としての功績が大きい。
  • 思想としては、物質の側から生命と精神を説明する方向へ進んだ。
  • 対話の形式を好んだ。結論を出さずに、複数の声を並べる。
  • 多くの著作が生前に刊行されていない。死後に刊行されたものが評価を変えた。
本文で読む:ディドロ — 物質から考える ▶
⚡ 50

共通点と相違点

  • 共通 — 権威をそのまま受け入れない。公衆に向けて書く。検閲を意識した形式を使う。
  • 相違 — 何を最大の問題と見るかが違う。制度か、迷信か、自然の説明か。
  • この違いが、革命期に別々の系譜として引き継がれる(第9章)。
本文で読む:3人の比較 ▶
⚡ 51

どう対応したか

  • 国外で印刷する。スイスやオランダで刷り、持ち込む。
  • 匿名と偽の刊行地。
  • 形式を変える。論文ではなく物語、直接の主張ではなく登場人物の発言にする。
  • 項目間の参照を使う。『百科全書』の技法にあたる。
  • この条件が、18世紀の文学の形式そのものを作っている(フランス史の領域を参照)。
本文で読む:検閲という条件 ▶
⚡ 52

この時代の作品を読むときに要る背景

  • 『ペルシア人の手紙』 — 外から見る装置。比較という方法の文学版にあたる。
  • 『カンディード』 — 楽天主義への反駁が主題だが、同時に旅と見聞という形式が比較を可能にしている。
  • 対話形式 — 複数の声を並べ、結論を出さない。検閲への対応でもあり、思想の方法でもある。
  • 事典という形式 — 断片を並べて全体を作る。19世紀以降の小説の構成にも影響を与えたと論じられる。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 53

なぜ受容史を見るのか

  • 「その思想家が何を言ったか」と「どう読まれてきたか」は別である。
  • 作品に思想家の名が出てきたとき、その時代の読まれ方を確かめる必要がある。
  • たとえば19世紀の小説に出てくるヴォルテールは、共和派の象徴として機能していることが多い。
  • これは表象の分析にあたる(フランス史の領域)。
本文で読む:3人の受容史 ▶
⚡ 54

手順

  • 執筆者を確かめる。署名のあるものとないものがある。
  • 参照の指示を追う。「〜の項を見よ」という指示が、直接は書けない主張を運んでいることがある。
  • 図版を見る。技術の記述は、本文だけでは分からない。
  • 穏健な記述と急進的な記述の混在を前提に読む。全体の統一した学説を探さない。
本文で読む:『百科全書』の項目をどう読むか ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第7章の通過チェック

  • 『法の精神』の3つの要点を言える
  • 気候の議論をどう扱うべきかを説明できる
  • ヴォルテールの方法の特徴を4つ言える
  • 理神論とは何かを言える
  • ディドロの評価が死後に変わった理由を言える
  • 3人の中心の問いをそれぞれ言える
  • 検閲への対応を4つ言える
本文で読む:『百科全書』の項目をどう読むか ▶

近世 第8章 18世紀(3)— ルソー、自然と契約

ルソーは、同じ18世紀にいながら、他の啓蒙思想家と正面から対立した。
⚡ 55

主張の骨格

  • 学問と芸術は、贅沢(ぜいたく)と虚栄から生まれた。
  • 人は他人の目を意識するようになり、見せかけを重んじるようになった。
  • したがって進歩は、道徳の面では後退である。
  • この主張が、進歩を前提とする他の啓蒙思想家との対立を決定的にした(第6章)。
本文で読む:進歩への疑い ▶
⚡ 56

『人間不平等起源論』の論の運び

  • 1. 自然状態の人間は、孤立して生き、自足しており、他人と比べることがない。善でも悪でもない。
  • 2. 憐(あわ)れみという感情を持つ。他人の苦しみを見て動かされる。
  • 3. 完成可能性 — 人間は変わりうる。この能力が、堕落の原因にもなる。
  • 4. 私有の発生 — 「これは自分のものだ」と言い、他人がそれを信じたところから、不平等が始まる。
  • 5. 社会の成立 — 富める者が、自分の所有を守るために法と国家を作らせた。したがって既存の社会は不平等を固定する装置である。
本文で読む:不平等の起源 ▶
⚡ 57

« L'homme est né libre, et partout il est dans les fers. »

  • 訳:人は自由なものとして生まれた。しかしいたるところで鎖につながれている。
  • 『社会契約論』の冒頭にあたる。
  • 事実の記述ではなく、問いの提示である。なぜこうなったのか、どうすれば正当な社会が可能かを続けて論じる。
本文で読む:社会契約 ▶
⚡ 58

社会契約の構図

  • 各人が、自分の権利をすべて共同体に譲り渡す。
  • 全員が同じことをするので、誰も他人に従属しない。
  • その結果生まれる主権者は、人民全体にあたる。
  • したがって法に従うことは、自分自身の意志に従うことになる。
本文で読む:社会契約 ▶
⚡ 59

要点

  • 子どもは小さな大人ではない。子ども固有の時期があるとした。
  • 教えるより、経験させる。書物より事物から学ばせる。
  • 社会の影響を遅らせることで、比較と虚栄を避ける。
  • ただし女子の教育については、男子と全く違う扱いをしている。この点は19世紀以降、繰り返し批判される(第19章)。
本文で読む:教育と自己 ▶
⚡ 60

思想史上の位置

  • 内面を語るという行為そのものを、正当な主題にした。
  • 「私」が真実を語れるという前提に立っている。
  • この前提が、20世紀に疑われる(第18章)。語る「私」は、語ることによって作られているのではないか。
本文で読む:教育と自己 ▶
⚡ 61

この時代の作品を読むときに要る背景

  • 『告白』 — 自伝という形式の出発点として扱われる。作品と作家の領域で正面から扱う。
  • 『新エロイーズ』 — 感情を主題にした書簡体小説。18世紀後半の読者の感受性を変えたとされる。
  • 自然という語 — ルソーの用法は、社会の批判のためであると同時に、内面の真実の基準でもある。
  • ロマン主義への影響 — 内面・自然・孤独という主題が、19世紀の文学に受け継がれる(文学史の領域)。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 62

受容史から分かること

  • 同じテクストが、正反対の立場から引用されてきた。
  • したがって「ルソーは〜と主張した」と書くときは、どの著作のどの箇所かを示す。
  • 著作ごとに立場が違って見えることがある。『社会契約論』と『エミール』では、社会の扱いが異なる。
本文で読む:ルソーの受容史 ▶
⚡ 63

『告白』が開いたもの

  • 内面を語ることを、正当な主題にした。
  • 恥ずべきことも書くという宣言が、以後の自伝の型になる。
  • 19世紀の自伝と、20世紀の自伝的な作品が、この形式を引き継ぐ(作品と作家の領域)。
  • 同時に、「語る私」の真実性という問題を残した。
本文で読む:自伝という形式の余波 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第8章の通過チェック

  • 『学問芸術論』の主張の骨格を言える
  • 「自然に帰れ」という要約が正確でない理由を言える
  • 『人間不平等起源論』の論の運びを5段階で言える
  • 2種類の不平等の区別を言える
  • 一般意志と全体意志の違いを言える
  • 一般意志をめぐる2つの読みを説明できる
  • 『告白』の前提と、それが20世紀に疑われる点を言える
本文で読む:自伝という形式の余波 ▶

革命の時代 第9章 革命期の思想 — 主権・人権・恐怖

革命期は、18世紀に用意された概念が、実際の政治の場で使われた時期である。
⚡ 64

人権宣言が前提にしていること

  • 権利は生まれながらのものである。身分によらない。
  • 主権は国民にある。王にあるのではない。
  • 法は一般意志の表明である。ルソーの語がそのまま使われている(第8章)。
  • 自由とは、他人を害しないすべてをなしうることであり、その限界は法によってのみ定められる。
本文で読む:人権宣言の思想 ▶
⚡ 65

その論理

  • 共和政は徳を必要とする(モンテスキューの分類を踏まえている。第7章)。
  • しかし戦争と内戦の非常時には、徳だけでは足りない。
  • したがって恐怖が必要になる、という議論が組み立てられた。
  • 正しさを実現するために暴力を用いるという構図が、ここで明示的に語られた。
本文で読む:徳と恐怖 ▶
⚡ 66

論の立て方

  • 人権宣言の条文の形式をそのまま用いる。
  • 「人」の中に女性が含まれていないことを、形式の上で示す。
  • 同じ原理を使って、その原理の適用の不徹底を突くという方法にあたる。
  • この方法は、以後の解放の運動が繰り返し用いる形になる(第19章)。
本文で読む:女性の権利 ▶
⚡ 67

なぜ重要か

  • 教育の普及によって、不平等は縮小しうると論じた。
  • 女性の権利と、奴隷制の廃止を支持した。
  • 数学的な方法を社会の問題に適用しようとした。
  • 進歩の観念の最も明確な表明であり、19世紀の実証主義と社会主義の前提になる(第10章)。
  • 迫害されながら進歩を書いたという事実が、この著作の読み方を難しくしている。
本文で読む:進歩の思想 ▶
⚡ 68

なぜこの批判が思想史上重要か

  • 保守主義という立場が、革命への応答として形を取った。
  • 「理性で社会を設計できるか」という問いが立てられた。
  • この問いは20世紀に、別の形で反復される(第18章・第20章)。
本文で読む:革命への批判 ▶
⚡ 69

この時期と文学の関係

  • 革命期そのものに書かれた文学作品は多くない。政治文書と演説が言葉の中心にあった。
  • 19世紀の文学が、革命を主題として繰り返し扱う。どう評価するかで作家の立場が分かれる(フランス史・文学史の領域)。
  • 「人権」「主権」「徳」という語が、19世紀の小説の登場人物の言葉に入り込んでいる。
  • 『レ・ミゼラブル』の1832年の蜂起は、革命の記憶をめぐる立場の対立の上に置かれている。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 70

観察できること

  • 概念は、条文になるときに限定される。「人」の権利が、実際には男性の納税者の権利になった(第9章)。
  • 限定は、後から批判の足場になる。除外された側が、同じ条文を根拠に包摂を要求する。
  • したがって、概念と制度のずれが、そのまま以後の政治の争点になる。
本文で読む:概念が制度になるとき ▶
⚡ 71

19世紀を通じて

  • 革命をどう評価するかが、そのまま政治的な立場を示す指標になった。
  • 共和派は1789年を、王党派はその否定を、社会主義者は「未完の革命」を掲げた。
  • 歴史記述もこの対立の中で書かれた。中立な記述はほとんどない。
  • したがって19世紀の歴史書を読むときは、書き手の立場を先に確かめる(フランス史の領域)。
本文で読む:革命の評価が政治の軸になる ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第9章の通過チェック

  • 人権宣言が前提にしている4つを言える
  • 普遍の主張と適用範囲の緊張を説明できる
  • 徳と恐怖を結びつける議論の論理を言える
  • 1791年の文書が用いた方法を説明できる
  • コンドルセの著作がなぜ重要かを4つ言える
  • 革命への批判の3つの型を言える
  • ルソーの責任をめぐる論点をどう扱うべきかを言える
本文で読む:革命の評価が政治の軸になる ▶

19世紀 第10章 19世紀前半 — 実証主義と社会主義の誕生

革命の後、社会をどう作り直すかが問われた。答えは大きく2つの方向に分かれる。
⚡ 72

コントの3段階の法則

  • 神学的段階 — 現象を神々や霊の意志で説明する。
  • 形而上学的段階 — 抽象的な実体や本質で説明する。
  • 実証的段階観察と法則で説明する。なぜではなく、どのようにを問う。
  • 人類の精神も、個々の学問も、この順に進むとされた。
本文で読む:実証主義 ▶
⚡ 73

共通していること

  • 政治の変革だけでは足りないという認識。1789年は所有の問題に触れなかった。
  • 労働と生産の組織を問題にする。
  • 具体的な計画を示す。理念だけでなく、共同体や組織の設計を書いた。
  • 1848年に、この要求が政治の舞台に出て、そして敗れる(フランス史の領域を参照)。
本文で読む:社会主義の誕生 ▶
⚡ 74

19世紀前半の共通の枠組み

  • 歴史には段階がある。
  • 現在は移行期である。古い秩序は崩れ、新しい秩序はまだない。
  • 知によって、次の段階を準備できる。
  • この枠組みが、文学にも入る。時代を診断し、方向を示すという役割を、作家が引き受けるようになる。
本文で読む:進歩と歴史 ▶
⚡ 75

思想の側で何が起きたか

  • 調査という方法が現れる。労働者の住居・賃金・健康を数字で記述した報告書が出版された。
  • 貧困が、道徳の問題から社会の問題へ移された。怠惰の結果ではなく、仕組みの結果として語られるようになる。
  • この転換が、文学の主題にも直結する。貧困を描くことが、社会を描くことになった。
  • 同時に、貧困層を「危険な階級」として語る枠組みも作られた。記述の仕方そのものが論点になる。
本文で読む:貧困という新しい問題 ▶
⚡ 76

この時期の文学との関係

  • 社会を描くという任務 — 19世紀の小説が、社会全体を記述しようとする志向を持つのは、この枠組みと無関係ではない。
  • 貧困と労働 — 新しい主題として小説に入る。『レ・ミゼラブル』が代表にあたる。
  • 診断者としての作家 — 時代を診断し、方向を示すという役割意識。
  • 調査という方法 — 作家が現場を取材し、資料を集めるという方法は、この時期に確立していく。自然主義でさらに徹底される(第11章)。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 77

何が起きたか

  • 統計が制度になる。人口・犯罪・貧困・衛生が数えられるようになった。
  • 数えられることで、社会が「対象」になる。
  • 平均という概念が、人間の集団に当てはめられた。
  • この方法が、実証主義の主張を支えた(第10章)。
本文で読む:数字で社会を捉える ▶
⚡ 78

語の使われ方に注意

  • 現在「実証主義的」という語は、しばしば否定的な含みで使われる。
  • 19世紀の学説としての実証主義と、批判の語としての用法を区別する(第1章)。
  • レポートで使うなら、どちらの意味かを明示する。
本文で読む:実証主義のその後 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第10章の通過チェック

  • 実証主義の定義と、何を退けるかを言える
  • 3段階の法則を順に言える
  • 社会学が最後に来る理由を説明できる
  • 19世紀前半の社会主義の3つの構想を言える
  • 社会主義に共通する4点を言える
  • 貧困が道徳の問題から社会の問題へ移ったことを説明できる
  • 法則と自由をめぐる問題が、文学とどう関わるかを言える
本文で読む:実証主義のその後 ▶

19世紀 第11章 19世紀後半 — 科学・決定論・その反動

19世紀後半は、科学の権威が最も高まった時期である。遺伝と環境が人間を決めるという考え方が広まり、小説がそれを方法として取り込んだ。
⚡ 79

19世紀後半に広まった形

  • 遺伝 — 個人の性質は先祖から受け継がれる。
  • 環境 — 生活の条件が人を作る。
  • 時代 — その時代の一般的な精神が個人を規定する。
  • この3つの組み合わせで、人間と作品を説明しようとする方法が広く受け入れられた。
本文で読む:決定論という枠組み ▶
⚡ 80

何が争点だったか

  • 信仰の対象を、歴史の資料として分析してよいのか。
  • 科学的な説明は、宗教的な意味を消してしまうのか。
  • この論争が、政教分離をめぐる政治的な対立とも重なった(フランス史の領域を参照)。
  • 知の領域の線引きそのものが問われた時期にあたる。
本文で読む:科学と宗教 ▶
⚡ 81

なぜこの問いが出てきたか

  • 科学の内部から。幾何学や物理学の基礎が問い直された。
  • 心理学の側から。意識を実験で扱おうとしたことで、かえって扱いにくさが見えた。
  • 社会の側から。科学が進歩をもたらすという期待に、疑いが混じり始めた。
  • この問いが、20世紀の哲学の出発点を作る(第12章・第13章)。
本文で読む:科学の限界という問い ▶
⚡ 82

この時期に成立したもの

  • 社会学が大学の学問になる。社会的な事実を、個人の意図に還元せずに扱う方法が示された。
  • 歴史学が史料批判の方法を確立する。文書の真正性と成立事情を検証する手続きにあたる。
  • 文献学と言語学が精密になる。この蓄積が、20世紀の構造言語学の土台になる(第16章)。
  • 文学研究も、この方法意識の中で形を取る(文学研究の方法の領域を参照)。
本文で読む:歴史と社会の学問 ▶
⚡ 83

この時期の作品を読むときに要る背景

  • 自然主義の方法 — 遺伝と環境という枠組みを、小説の構成に取り込んだ。登場人物が、条件の帰結として描かれる。
  • 資料と取材 — 作家が現場を調べ、専門書を読む。方法としての調査が確立する。
  • 世紀末の反動 — 科学と合理主義への反発が、象徴主義や内面への関心を生んだと語られる(文学史の領域)。
  • 決定論と語り — 人物が条件に決められているとき、語り手はどこに立つのか。この問題が、語りの技法と直結する(文学研究の方法の領域)。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 84

作品の側の対応

  • 条件を提示しながら、人物の内面を細かく書く。決定と経験を両方見せる。
  • 語り手が説明せず、記述にとどまる場面を作る。
  • 例外的な人物を置く。条件から外れる人物が、枠組みを浮かび上がらせる。
  • この緊張の処理の仕方が、作品ごとの違いになる(文学研究の方法の領域を参照)。
本文で読む:決定論と語りの緊張 ▶
⚡ 85

19世紀末に立てられた問い

  • 事実の記述から、何をすべきかは導けないという指摘がある。
  • 実証主義は、科学が道徳と社会の指針を与えられると考えた(第10章)。
  • その前提が、世紀末に疑われた。
  • この問いは20世紀を通じて残り、現在の技術と環境をめぐる議論でも反復される(第20章)。
本文で読む:科学は価値を語れるか ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第11章の通過チェック

  • 決定論の定義と、それが問題にすることを言える
  • 19世紀後半に広まった3つの規定要因を言える
  • 小説を実験として構想することの問題点を言える
  • 19世紀末に立てられた科学への4つの問いを言える
  • この時期に成立した学問を3つ言える
  • 「種族」の議論を扱うときの注意を言える
  • 決定論が語りの技法とどう関わるかを説明できる
本文で読む:科学は価値を語れるか ▶

20世紀 第12章 ベルクソン — 持続と生

ベルクソンは、19世紀の科学的な枠組みへの、最も影響力のある応答である。
⚡ 86

測れる時間との違い

  • 測れる時間は、空間の比喩で考えられている。時計の針の位置、直線上の点。均質で、分割でき、順序を入れ替えられる。
  • 持続は、分割できない。分けた瞬間に、別のものになる。
  • 過去が現在に食い込んでいる。前の状態が消えずに残り、次の状態と混じり合う。
  • 同じ1時間でも、退屈な1時間と集中した1時間は「同じ」ではない。
本文で読む:持続 ▶
⚡ 87

2種類の記憶

  • 習慣としての記憶 — 身体に定着した動作。繰り返しによって身につく。身体に蓄えられている。
  • イメージとしての記憶 — 出来事の記憶。一回きりの過去がそのまま残る。
  • 前者は身体の働きとして説明できるが、後者は脳に蓄えられているのではないとした。
  • 脳は、記憶を蓄える器ではなく、行動に必要な記憶を選び出す装置だと論じた。
本文で読む:記憶と身体 ▶
⚡ 88

要点

  • 機械論(原因の連鎖で説明する)と目的論(あらかじめの目的で説明する)を、どちらも退ける。
  • どちらも、結果から遡って考えているという点で同じ誤りを犯しているとする。
  • 生命は、予測できない仕方で新しいものを生み出すとした。
  • その動きを「生の躍動」と呼んだ。
本文で読む:生の躍動 ▶
⚡ 89

なぜ文学と関係が深いか

  • 時間の質的な捉え方が、20世紀の小説の時間の扱いと響き合う。プルーストとの関係が繰り返し論じられてきた。
  • ただし影響関係の主張は慎重に扱う。同時代に共通の問題意識があったと見るほうが正確な場合が多い。
  • 記憶の2つの型という区別は、記憶を主題にする作品の分析に使える。
  • 『笑い』は、喜劇的なものが生じる条件を論じた著作で、演劇と小説の分析に用いられてきた。「生きたものに機械が重なるとき笑いが生じる」という趣旨の定式が知られている。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 90

なぜ評価が動いたか

  • 問いの立て方が、時代の関心と合うかどうかで位置が変わった。
  • 「直観」という方法が、実証的な検証を重んじる時期には受け入れられにくい。
  • 一方、同一性より差異を重んじる時期には、その発想が生きる。
  • 思想の評価が時代に左右されるという、この教材の一般的な論点の好例にあたる。
本文で読む:読まれ方の変遷 ▶
⚡ 91

要点

  • 生きているものの上に、機械のようなこわばりが重なるときに笑いが生じる、という趣旨の定式を示した。
  • 笑いは社会的な機能を持つとした。硬直した振る舞いを矯正する働きである。
  • したがって笑いには、集団と、共感の一時的な停止が必要になる。
  • 喜劇と諷刺(ふうし)の分析に使われてきた(作品と作家の領域を参照)。
本文で読む:笑いの理論 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第12章の通過チェック

  • 持続と、測れる時間の違いを4点言える
  • 時間を空間の言葉で考える癖が、何を捉え損なうかを言える
  • 2種類の記憶を言い、脳の役割をどう考えたかを説明できる
  • 機械論と目的論をどちらも退けた理由を言える
  • 直観と知性による分析の対比を4つの面から言える
  • ベルクソンへの主要な批判を3つ言える
  • 文学への影響を語るときの作法を説明できる
本文で読む:笑いの理論 ▶

20世紀 第13章 現象学の受容 — 意識と身体

1930年代、ドイツで生まれた現象学という方法が、フランスに入ってくる。
⚡ 92

この指摘の帰結

  • 意識を「内側の容器」として考える見方が退けられる。
  • 主観と客観をあらかじめ分けてから、どうつなぐかを問うという設定自体が誤りだとされる。デカルト以来の問題設定への批判にあたる(第4章)。
  • したがって、まず現れているものをそのまま記述することから始める。
  • 説明する前に記述するという方針が、現象学の方法の核心になる。
本文で読む:志向性という出発点 ▶
⚡ 93

科学の世界と、生きられた世界

  • 科学が記述する世界は、測定と抽象を経て作られたものである。
  • 私たちが実際に生きている世界は、それに先立っている。「太陽が沈む」という経験は、地動説を知っていても消えない。
  • 現象学は、後者を軽視せず、記述の対象にする。
  • むしろ科学の世界は、生きられた世界の上に築かれているとした。
本文で読む:生きられた世界 ▶
⚡ 94

主張の要点

  • 身体は、私が持っている物ではなく、私が世界に接する仕方そのものである。
  • 知覚は、受け身の受容ではない。身体が動き、方向づけることで成り立つ。
  • したがって心と物という二分法(第4章)は、身体において崩れる。身体は物であると同時に、感じるものにあたる。
  • 習慣は、身体が世界を扱う仕方が定着したものとして説明される。
本文で読む:身体 ▶
⚡ 95

何が受け取られたか

  • 自己意識は、他者の承認を通じてしか成り立たないという論点。
  • 主人と奴隷の関係についての分析。支配する側が、承認を得られないという逆説を含む。
  • 歴史が対立を通じて進むという枠組み。
  • これらが、戦後の実存主義とマルクス主義の受容の下地になった(第14章・第17章)。
本文で読む:ヘーゲルの受容 ▶
⚡ 96

文学の分析にどう効くか

  • 記述という方法 — 説明する前に、現れているとおりに書く。精読の態度と重なる(文学研究の方法の領域)。
  • 知覚の描写 — 光・音・触覚の記述を、単なる背景ではなく世界との関わり方の記述として読める。
  • 身体の描写 — 人物の身体の記述を、性格の説明ではなく世界への接し方として読む。
  • 他者 — 他人が現れる場面を、認識の問題として扱える。
  • 戦後の小説と演劇は、この語彙を同時代の共通の言語として持っていた。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 97

どこまで有効か

  • 強み — 説明の枠組みを先に持ち込まず、経験の細部を取り出せる。
  • 弱み記述には、すでに枠組みが入っている。「そのまま」というのは理念にすぎないという批判がある。
  • 弱み社会の構造や歴史を捉えにくい。個人の経験の記述にとどまりやすい。
  • この2つ目の弱みが、構造主義の出発点になる(第16章)。
本文で読む:記述という方法の限界 ▶
⚡ 98

それでも残るもの

  • 精読の態度としては、現在も有効にあたる(文学研究の方法の領域)。
  • 観察を先に、解釈を後にという順序は、この方法と同じ構えを持つ。
  • 「説明する前に記述する」は、レポートの書き方の原則としても使える。
本文で読む:記述という方法の限界 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第13章の通過チェック

  • 志向性とは何か、その帰結を3つ言える
  • 判断の停止が、懐疑とどう違うかを言える
  • 生きられた世界と科学の世界の関係を説明できる
  • 身体をめぐる主張を、デカルトの枠組みと対比して4点言える
  • 1930年代のヘーゲル受容で何が受け取られたかを3つ言える
  • 現象学への主要な批判を3つ言える
  • この方法が文学の分析にどう効くかを3つ言える
本文で読む:記述という方法の限界 ▶

20世紀 第14章 実存主義 — 自由と責任

実存主義の中心にある主張は1つである。人間はあらかじめ本質を持たない。先に存在し、後から自分が何であるかを作る。
⚡ 99

主張の構造

  • 道具は本質が先にある。ペーパーナイフは「切るためのもの」という規定が、作られる前にある。
  • 人間にはそれがない。神による設計図を認めないなら、あらかじめ決まった人間の本質もない。
  • したがって人間は、まず存在し、そのあとで自分が何であるかを作る。
  • この順序の逆転が、実存主義の核心にあたる。
本文で読む:存在が本質に先立つ ▶
⚡ 100

帰結としての自由と責任

  • 選ばないという選択も、選択である。逃れられない。
  • 自分を選ぶことは、同時に人間のあり方を選ぶことでもあるとされた。
  • したがって責任が伴う。「そう育ったから」「そういう時代だから」は言い訳にならない。
  • この厳しさが、当時の読者に強い印象を与えた。
本文で読む:存在が本質に先立つ ▶
⚡ 101

どういう形を取るか

  • 役割に自分を同一化する。「私は給仕だから」と、役割が自分そのものであるかのようにふるまう。
  • 過去に責任を押しつける。「私はこういう人間だ」と、変えられないものとして扱う。
  • 他人の視線を、自分の本質として受け取る。
  • これらはいずれも、自由から逃げる形として分析された。
本文で読む:自己欺瞞 ▶
⚡ 102

視線という主題

  • 他人に見られることで、自分が「対象」になる。自分では捉えられない自分の姿が、他人の側にある。
  • したがって他者との関係は、根本的に緊張をはらむとされた。
  • 「地獄とは他人のことだ」という趣旨の台詞が戯曲に出てくるが、これは特定の状況を語った台詞であって、単純な人間嫌いの表明ではない。
  • 前章のヘーゲル受容(承認をめぐる論点)が、ここに流れ込んでいる(第13章)。
本文で読む:他者 ▶
⚡ 103

自由は状況の中にある

  • 自由は無条件ではない。身体・階級・時代・言語といった条件の中で行使される。
  • その条件を「状況」と呼び、自由は状況の中でこそ意味を持つとした。
  • したがって政治への参加が問題になる。書くことも行為であり、選択にあたる。
  • 文学は何のためにあるかという問いが、この文脈で立てられた。
本文で読む:状況と参加 ▶
⚡ 104

なぜ文学と結びついたか

  • 思想家自身が小説と戯曲を書いた。理論と作品が同じ人の手から出ている。
  • 具体的な状況を描く必要があった。抽象的な議論より、場面のほうが主張を伝える。
  • 戦後の読者が、占領期の経験(フランス史の領域)を語る言葉を求めていた。
  • 「参加する文学」という考え方が、作家の役割をめぐる議論を組み替えた。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 105

何が起きたか

  • 新聞と雑誌で語られ、思想の内容より態度として受け取られた。
  • 「自由に生きる」「反抗する」という標語に還元された面がある。
  • カフェや服装と結びつけて語られ、流行として消費された。
  • 当の思想家自身が、この単純化に対して説明を試みている。
本文で読む:流行と単純化 ▶
⚡ 106

なぜ舞台か

  • 状況を具体的に提示できる。抽象的な議論より、場面のほうが伝わる。
  • 他者の視線を、文字どおり舞台の上で作れる。
  • 占領下と戦後の統制の中で、寓意(ぐうい)として語る手段になった(フランス史の領域)。
  • 観客に届く。思想が読者から観客へ広がった。
本文で読む:演劇という形式 ▶
⚡ 107

分析するときの注意

  • 戯曲は上演されて完成する(作品と作家の領域)。ト書きと沈黙を飛ばさない。
  • 登場人物の台詞は、作者の主張ではない。
  • 同じ主題が、論考と戯曲で違う扱いを受けていることが多い。その差が分析の対象になる。
本文で読む:演劇という形式 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第14章の通過チェック

  • 「存在が本質に先立つ」という主張の構造を、道具との対比で説明できる
  • 自由から帰結する責任の中身を言える
  • 自己欺瞞が取る3つの形を言える
  • 他者の視線をめぐる論点と、その出どころを言える
  • 状況という概念が自由をどう限定するかを言える
  • 実存主義への最大の批判が何かを言える
  • 作品を思想の例解として読んではいけない理由を言える
本文で読む:演劇という形式 ▶

20世紀 第15章 不条理と反抗 — カミュをめぐる論争

カミュは、実存主義者と呼ばれることを拒んだ。主張の中身が違うからである。
⚡ 108

定義の要点

  • 不条理は、世界の側の性質ではない。
  • 人間の側の性質でもない。
  • 人間と世界のあいだに生じる関係である。
  • どちらか一方を消せば、不条理も消える。だから、この関係を保ち続けることが問題になる。
本文で読む:不条理 ▶
⚡ 109

3つの応答と、その評価

  • 自殺 — 一方の項(人間)を消す。カミュはこれを退ける。
  • 飛躍 — 意味を与えてくれる何か(信仰や体系)に身を投じる。これも「哲学的な自殺」として退ける。
  • 反抗ずれを認めたまま、生き続ける。カミュが選ぶのはこれにあたる。
本文で読む:不条理 ▶
⚡ 110

論の骨格

  • 反抗は「否」と言うことから始まる。それは同時に、守るべき何かを肯定することでもある。
  • したがって反抗は、個人を超えた価値を含んでいる。
  • しかし歴史の中で、反抗はしばしば革命に転じ、革命は新しい抑圧を生む。
  • その転回点は、目的のために現在の人間を犠牲にしてよいと考えたときにある。
  • したがって反抗は、限度を持たなければならないとした。
本文で読む:反抗 ▶
⚡ 111

何が問題にされたか

  • 暴力への反対を、双方に等しく向けた。それが独立を求める側への支持の欠如と受け取られた。
  • アルジェリア生まれのフランス系住民であるという立場が、判断に影響したという指摘がある。
  • カミュ自身は、拷問への反対や、現地の困窮についての報告を早くから書いていた。単純な立場ではない。
  • 評価は現在も割れている。
本文で読む:アルジェリアをめぐって ▶
⚡ 112

なぜ混同されるか

  • 同時代であり、主題が重なる。不条理・自由・責任。
  • どちらも小説と戯曲を書いた。
  • 戦後の流行の中で、まとめて語られた。
  • しかし出発点も、歴史観も、暴力の扱いも違う。この違いが1952年に表面化した。
本文で読む:実存主義との違い ▶
⚡ 113

作品を読むときに要る背景

  • 『異邦人』の文体 — 説明せず、理由を述べない。その文体自体が不条理という主題を担っている(作品と作家の領域)。
  • 『ペスト』 — 反抗を、共同の行為として描いた作品として読まれてきた。
  • 戯曲 — 歴史と暴力の問題を、舞台の上で扱っている。
  • 論説と小説を分けて読む。同じ主題でも、扱い方が違う。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 114

5段階

  • 1. 何が発端かを特定する。著作の刊行と、それへの書評という順序を押さえる。
  • 2. 争点を分ける。暴力・歴史・立場という3つが絡んでいる(本章の表)。
  • 3. 双方の論拠を、相手が認める形で要約する(文学研究の方法の領域)。
  • 4. どこで噛み合っていないかを特定する。前提が違うのか、事実認識が違うのか。
  • 5. 当時の政治状況を添える(フランス史の領域)。
本文で読む:論争をどう読むか ▶
⚡ 115

カミュの場合に特に問題になる

  • アルジェリア生まれのフランス系住民という出自が、判断とどう関わるかが論じられてきた。
  • 貧しい家庭で育った経験が、思想の色合いに影響したという読みもある。
  • 一方、伝記で思想を説明し尽くすことはできない。
  • 「出自がこうだから、こう考えた」という形の説明は、単純化になりやすい。
本文で読む:伝記と思想の距離 ▶
⚡ 116

扱い方

  • 伝記的な事実は、条件として示す。原因として断定しない。
  • テクストの記述を根拠にする。
  • 「〜という指摘がある」という形で、研究の主張として紹介する。
本文で読む:伝記と思想の距離 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第15章の通過チェック

  • 不条理の定義を、関係という面から正確に言える
  • 3つの応答と、そのうち2つが退けられる理由を言える
  • 『反抗的人間』の論の骨格を4段階で言える
  • 限度という概念が何を禁じるかを言える
  • 1952年の論争の3つの争点を、両側から言える
  • この論争が第9章のどの問いの反復かを言える
  • 実存主義とカミュの違いを5つの面から言える
本文で読む:伝記と思想の距離 ▶

20世紀 第16章 構造主義(1)— 言語と親族

構造主義は、思想史の大きな転換点である。
⚡ 117

3つの基本命題

  • 1. 恣意(しい)性 — 音と概念の結びつきに、必然的な理由はない。同じ概念が言語ごとに違う音を持つのはそのためである。
  • 2. 差異語の意味は、他の語との違いによって決まる。それ自体に中身があるのではない。
  • 3. 体系 — したがって、語は体系の一部としてしか意味を持たない。
本文で読む:記号の考え方 ▶
⚡ 118

なぜこれが転換になるのか

  • 意味の起源が、話す人の意識から、体系の側へ移る。
  • 「私が言葉に意味を与える」のではなく、「言葉の体系の中で私が話す」という順序になる。
  • この順序の逆転が、そのまま人間観の転換につながる(第18章)。
本文で読む:記号の考え方 ▶
⚡ 119

決定的だったこと

  • 音を、それ自体の性質ではなく、他の音との対立で捉える。
  • 意味を区別する働きを持つ差異だけを取り出す。
  • 要素の数は少なくても、組み合わせで膨大な語が作れる。
  • この「少数の要素と、その組み合わせの規則」という発想が、言語以外の対象にも当てはめられた。
本文で読む:音韻論からの発想 ▶
⚡ 120

論の骨格

  • 親族の名称と婚姻の規則を、体系として扱う。
  • 重要なのは個々の名称の意味ではなく、それらの対立と組み合わせの規則である。
  • 近親婚の禁止を、自然から文化への移行点として位置づけた。禁止によって、集団の間で人が交換されるようになる。
  • したがって親族の体系は、交換の体系として捉えられる。
本文で読む:親族の構造 ▶
⚡ 121

方法の要点

  • 神話を、要素の組み合わせとして扱う。
  • 1つの版が正しいのではなく、諸版の全体が神話であるとした。
  • 対立する項(生と死、自然と文化など)が、どう媒介されるかを見る。
  • 神話は、解決できない矛盾を扱う思考の形式だと論じた。
本文で読む:神話の分析 ▶
⚡ 122

文学研究に何をもたらしたか

  • 作品を体系として扱う視点。要素の関係から意味を読む。
  • 作者の意図を出発点にしない読み方。
  • 物語を、要素の組み合わせとして分析する試み。
  • ただし具体的な分析の方法は、文学理論・批評の領域で扱う。この教材は、その考え方の出どころを押さえる。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 123

どこまでを構造主義と呼ぶか

  • 厳密には、言語学の方法を明示的に他分野へ移した仕事を指す。
  • しかし1960年代には、体系や関係を重んじる議論が広く「構造主義」と呼ばれた。
  • 当人が否定した例も多い。レヴィ=ストロース以外は、自ら名乗っていないことがある。
  • したがって「構造主義者」という括りは、慎重に使う。
本文で読む:「構造」という語の広がり ▶
⚡ 124

文学研究で「構造」を使うとき

  • 要素の関係の総体を指すのか、繰り返し現れる型を指すのかを区別する。
  • 後者は、構造主義とは無関係にも使われる語にあたる。
  • どちらの意味で使っているかを、最初に定義する。
本文で読む:「構造」という語の広がり ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第16章の通過チェック

  • 記号の3つの基本命題を言える
  • 意味の起源がどこへ移ったかを説明できる
  • 3つの対(体系と発話、共時と通時、統合と選択)を言える
  • 音韻論からの発想の要点を4つ言える
  • 親族の体系がなぜ交換の体系とされるかを言える
  • 構造の無意識と、精神分析の無意識の違いを言える
  • 構造主義への主要な批判を2つ言える
本文で読む:「構造」という語の広がり ▶

20世紀 第17章 構造主義(2)— 記号・無意識・イデオロギー

言語学から始まった発想が、1960年代に一斉に他の領域へ広がった。
⚡ 125

『神話作用』の発想

  • 日常の文化的な事象を取り上げ、そこに込められた含みを取り出す。
  • 重要なのは、その含みが「当たり前のこと」として提示される点にある。
  • 歴史的に作られたものが、自然なことのように見えるようにする働きを「神話」と呼んだ。
  • したがって分析の目的は、自然に見えるものを歴史に戻すことにあたる。
本文で読む:文化を記号として読む ▶
⚡ 126

なぜ文学研究に効くか

  • 文体・語彙・語り方が、それ自体で価値観を運んでいるという見方が可能になる。
  • 「中立な書き方」というものがあるのかという問いが立てられた。
  • 作品の分析への応用は、文学理論・批評の領域で扱う。
本文で読む:文化を記号として読む ▶
⚡ 127

中心の主張

  • 無意識は、言語のように構造化されているとされた。
  • したがって、夢や言い間違いを、意味の体系として読むことができる。
  • 比喩と換喩(かんゆ)にあたる2つの働きが、無意識の作用として位置づけられた。
  • 「私」は、言語に入ることによって成立するとされた。主体は出発点ではなく、結果になる。
本文で読む:無意識と言語 ▶
⚡ 128

主張の要点

  • 社会を、諸要素の関係の総体として捉える。個人の意識から説明しない。
  • 歴史を、あらかじめ定まった方向を持つ過程としては見ない。
  • イデオロギーは、誤った考えというより、人々が自分の生活条件と結ぶ想像上の関係として捉え直された。
  • したがってイデオロギーは、外から取り除けるものではなく、社会が機能するための一部とされる。
本文で読む:社会の構造とイデオロギー ▶
⚡ 129

なぜ重要か

  • 「主体」もまた、社会の仕組みによって作られるという論点が明示された。
  • 教育・宗教・家族といった制度が、その働きを担うとされた。
  • この論点が、1970年代以降の批評に大きく入っていく(文学理論・批評の領域)。
本文で読む:社会の構造とイデオロギー ▶
⚡ 130

「人間の死」という言い方

  • 1960年代に、人間を出発点に置く思考の終わりが宣言されたという言い方が流行した。
  • 人間がいなくなるという意味ではない。人間を説明の出発点にすることをやめる、という方法上の主張である。
  • この言い方が、実存主義(第14章)への直接の反論として受け取られた。
本文で読む:共通する姿勢 ▶
⚡ 131

この時期に文学研究が変わった

  • 作者の意図を問わない読み方が、正面から主張された。
  • テクストを、要素の関係として読む方法が広がった。
  • 文体と語りの選択が、それ自体で意味を持つという見方が定着した。
  • 具体的な方法は文学理論・批評の領域で扱う。この教材では、その発想がどこから来たかを押さえる。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 132

なぜ場を知ると読みやすいか

  • 論争の相手が誰かが分かる。多くの文章は、特定の相手への応答として書かれている。
  • 口頭の記録が後から本になる場合、文体の難しさに理由がある。
  • 同じ時期の別の著作を並べると、共通の問題設定が見える。
  • これは受容史の一部にあたる(第7章)。
本文で読む:1960年代の議論の場 ▶
⚡ 133

よい使い方の形

  • 「本稿では、◯◯の定義に従い、△△を〜の意味で用いる。」
  • 「この場面には、◯◯が言う意味での△△が見られる。すなわち〜。」
  • 定義 → 適用 → 作品の記述という順序を守る。
本文で読む:専門用語の扱い ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第17章の通過チェック

  • 『神話作用』が「神話」と呼んだ働きを説明できる
  • 記号の2つの層を言える
  • 無意識をめぐる中心の主張を言える
  • 鏡像の段階が含む論点を言える
  • イデオロギーの捉え直しの内容を言える
  • 4つの領域で、出発点から外されたものを言える
  • 1968年が構造主義への批判を強めた理由を言える
本文で読む:専門用語の扱い ▶

現代 第18章 ポスト構造主義 — 知・差延・生成

ポスト構造主義は、構造主義を否定したのではなく、その前提を内側から崩した動きである。
⚡ 134

フーコーの発想の転換

  • 知は権力の外にあるのではない。何が知として認められるかは、その時代の仕組みと結びついている。
  • したがって「正しい知が権力を批判する」という図式が成り立たない。
  • 代わりに、「ある時代に、何が語りうることとされたのか」を調べる。
  • 狂気・病・犯罪・性といった主題を、その線引きの歴史として扱った。
本文で読む:知と権力 ▶
⚡ 135

権力の捉え方

  • 権力は、上から押しつけるものだけではない。
  • 関係の中に行き渡り、日常の実践の中で働くとされた。
  • 監視のような仕組みは、暴力ではなく、見られているという意識によって働く。
  • したがって、権力は禁じるだけでなく、人を作り出す。「正常な人間」という像そのものが、その産物とされる。
本文で読む:知と権力 ▶
⚡ 136

デリダの発想

  • 西洋の思考が、対になる項の一方を優位に置いてきたことを問題にする。話し言葉と書き言葉、現前と不在、自然と文化。
  • その優位が、実は成り立たないことをテクストの内側から示す。
  • 外から批判するのではなく、テクストが自分で崩れる箇所を見つけるという手続きにあたる。
  • したがって「破壊」ではない。組み立て直しの含みを持つ語である。
本文で読む:脱構築 ▶
⚡ 137

構造主義との関係

  • 意味が差異から生じるという点は、構造主義から受け継いでいる(第16章)。
  • しかし、その差異の体系が安定して閉じているという前提を外す。
  • 意味は完結せず、常にずれ続けるとされる。
  • したがって「最終的な読み」は原理的にありえないことになる。
本文で読む:脱構築 ▶
⚡ 138

ドゥルーズの方向

  • 同一性を先に置き、差異をその不足として考えるという伝統を逆転させる。
  • 差異そのものから出発する。同一性は、差異の反復から生じた効果とされる。
  • 存在ではなく生成、状態ではなく過程を基本に置く。
  • 哲学史の読み直しを通じて、この方向を作った。主流から外れた思想家を積極的に取り上げた。
本文で読む:差異と生成 ▶
⚡ 139

共著による展開

  • 1972年以降の共著で、欲望を欠如としてではなく、生産する力として捉え直した。
  • 精神分析の枠組み(第17章)への批判を含んでいる。
  • 社会・経済・心的な過程を、同じ平面で論じるという方法を取った。
  • 概念を次々に作る書き方が特徴で、読解の難しさの原因にもなっている。
本文で読む:差異と生成 ▶
⚡ 140

第4章からの長い線

  • デカルトが「考える私」を出発点に置いた(第4章)。
  • 19世紀は、それを歴史と社会が規定するものとして相対化した(第10章・第11章)。
  • 実存主義は、意識する主体から再び出発した(第14章)。
  • 構造主義がそれを外し(第16章・第17章)、ポスト構造主義が、構成される過程そのものを主題にした。
  • この線を追えるようになることが、この教材の目的の一つにあたる。
本文で読む:主体の位置 ▶
⚡ 141

文学研究に何をもたらしたか

  • テクストの読みが完結しないという前提。
  • 周縁に置かれてきたものを主題にする視点。
  • 知の枠組みそのものを歴史的に見る態度。
  • 具体的な分析の方法は、文学理論・批評の領域で扱う。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 142

難しさの理由

  • 既存の語彙では言えないことを言おうとして、語を作る。
  • 述べる内容と述べ方を切り離せないという立場を取る。明晰に要約すると、主張が変質するとされる。
  • 口頭の記録が元になっている場合がある(第17章)。
  • 一方で、難解さが権威として機能しているという批判もある。
本文で読む:難解さをどう扱うか ▶
⚡ 143

何が起きたか

  • 1970〜80年代に、英語圏の大学で盛んに読まれた。文学研究への応用が進んだのもこの文脈にあたる。
  • 「フランス理論」という括りが、英語圏で作られた。
  • その形が日本にも入り、フランス国内での位置づけとずれることがある。
  • フランス国内では、同時期にこの潮流への反動もあった。
本文で読む:英語圏を経由した受容 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第18章の通過チェック

  • 知と権力の関係についての発想の転換を説明できる
  • 言説とは何かを言える
  • 権力が「人を作り出す」とされる意味を言える
  • 脱構築の手続きを説明でき、「破壊」でない理由を言える
  • 差延が何を重ねた語かを言える
  • 差異と同一性の順序の逆転を説明できる
  • デカルトから現在までの主体をめぐる線を、5段階で言える
本文で読む:英語圏を経由した受容 ▶

現代 第19章 性差と他者 — フェミニズムの思想

この章の中心にあるのは、女は生まれるのではなく作られるという主張である。1949年の著作で示され、以後の議論の出発点になった。
⚡ 144

1. 記述

  • 生物学・精神分析・史的唯物論による説明を検討し、いずれも十分でないとした。
  • 神話・文学・宗教における女性の像を集め、それがどう作られてきたかを示した。
  • 実際の生活の局面(幼年期・結婚・母性・老い)を記述した。
本文で読む:『第二の性』 ▶
⚡ 145

2. 概念の提出

  • 女は生まれるのではなく作られる——生物学的な事実が、そのまま社会的な位置を決めるのではない。
  • 女性は「他者」として構成されている——男性が基準(普遍)とされ、女性はそこからの差異として定義される。
  • これは対称的な区別ではない。一方が基準になり、他方が「その他」になるという非対称にあたる。
  • 内在と超越という対で、状況の中に押しとどめられることと、そこを越えて企てることを区別した。
本文で読む:『第二の性』 ▶
⚡ 146

実存主義との関係

  • 状況の中の自由という枠組み(第14章)を、性差の分析に適用している。
  • 「本質」を前提にしないという点で、実存主義の主張と一貫している。
  • ただし、状況の重さの記述が、自由の主張より前面に出る場面がある。この緊張が論点になってきた。
本文で読む:『第二の性』 ▶
⚡ 147

フランス固有の事情

  • 共和政の原則は、市民を出自や属性ではなく個人として扱う(フランス史の領域を参照)。
  • したがって「女性として」の権利を主張することが、原則と衝突しうる。
  • この緊張が、制度をめぐる議論(選挙の候補者の男女同数など)で表面化した。
  • 同じ対立が、移民や宗教をめぐる議論でも反復される(第20章)。
本文で読む:平等か差異か ▶
⚡ 148

中心にある問い

  • 言語そのものが、一方の側の視点で組み立てられているのではないか。
  • 文法上の性、比喩、語の連想。これらは中立ではないのではないか。
  • したがって、別の書き方が可能なのではないか。
  • 身体の経験を書くことが、言語の組み替えにつながるという主張が出された。
本文で読む:言語と身体をめぐる議論 ▶
⚡ 149

論点

  • 同じ「女性」といっても、階級・出自・国籍によって置かれている条件が違う。
  • 性差だけを軸にすると、その差が見えなくなる。
  • 植民地の歴史を踏まえた批判が、旧植民地に出自を持つ書き手から提出された(フランス史の領域)。
  • したがって、複数の軸を同時に見る必要がある。
本文で読む:交差する差別 ▶
⚡ 150

この章が思想史に投げかけるもの

  • 第4章から第18章までに出てきた思想家は、ほとんどが男性である。
  • これは偶然ではなく、教育と出版と制度の条件による(フランス史の領域)。
  • したがって「普遍的な人間」を論じてきたテクストが、実際には特定の位置から書かれていたという指摘が成り立つ。
  • この指摘は、思想を無効にするのではなく、読み方を変える。どこから書かれているかを問うことになる。
本文で読む:思想史そのものへの問い ▶
⚡ 151

文学研究にどう関わるか

  • 正典の見直し — 誰の作品が読み継がれてきたのかを問う。文学史の枠組みそのものへの問いにあたる。
  • 書き手の位置 — 作品がどの位置から書かれているかを、分析の要素として扱う。
  • 描かれ方の分析 — 作品の中で人物がどう描かれているかを、表象の問題として読む(フランス史の領域の表象を参照)。
  • 読者の位置 — 誰に向けて書かれているかを問う。
  • 具体的な方法は、文学理論・批評の領域で扱う。
本文で読む:文学とのつながり ▶
⚡ 152

共和政の原則との衝突が具体化した例

  • 選挙の候補者の男女同数 — 属性による区分を持ち込むことになるため、憲法上の議論を要した。
  • 公的な統計 — 属性ごとに人を数えないという運用(フランス史の領域)。
  • 公立学校での宗教的な標章性差と宗教と共和政の原則が交差する争点になった。
  • これらはいずれも、普遍と差異の緊張が制度の形で現れた例にあたる(第20章)。
本文で読む:フランス固有の制度的な争点 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第19章の通過チェック

  • 『第二の性』が同時に行った2つのことを言える
  • 「他者」として構成されるという主張の非対称を説明できる
  • 内在と超越の対を言える
  • 平等を求める方向と差異を主張する方向を、4つの面から対比できる
  • 共和政の原則との衝突がなぜ起きるかを説明できる
  • 交差性の議論の論点を言える
  • この章が思想史そのものに投げかける問いを言える
本文で読む:フランス固有の制度的な争点 ▶

現代 第20章 現代 — いま何が問われているか

この教材が追ってきた線が、現在のどこに届いているかを確かめる章である。
⚡ 153

現在の3つの立場

  • 普遍を放棄する — 共通の基盤はなく、それぞれの立場があるだけだとする。相対主義という批判を受ける。
  • 普遍を作り直す — 内容をあらかじめ決めず、手続きや対話の場として普遍を考える。
  • 普遍を要求として使う除外された側が、同じ原理を使って包摂を求める(第9章・第19章)。普遍は完成した内容ではなく、批判の道具になる。
本文で読む:普遍性はまだ主張できるか ▶
⚡ 154

問いの形

  • 人は、同じものとして扱われることを求めると同時に、違いを認められることも求める。
  • この2つは、しばしば衝突する(第19章の平等と差異)。
  • フランスでは、共和政の原則がこの衝突を先鋭化させる(フランス史の領域を参照)。
  • 公的な場で属性を数えないという運用が、平等を守るのか、差別を見えなくするのか。
本文で読む:承認と差異 ▶
⚡ 155

なぜ哲学の問題になるか

  • 20世紀の経験——大戦、占領、収容所、植民地——をどう語るかが問われた(フランス史の領域)。
  • 証言は、事実の記述でも、単なる主観でもない。その中間にある言葉として論じられる。
  • 語りえないものを語るという主題が、文学と哲学の両方で扱われた。
  • 忘却と赦(ゆる)しをめぐる議論が、1990年代以降に力を持った。
本文で読む:記憶と証言 ▶
⚡ 156

人間という前提が揺らぐ

  • 技術 — 情報技術と生命技術が、人間の能力と境界を変える。「人間とは何か」が実務上の問いになる。
  • 環境 — 人間の活動が地質学的な規模の影響を持つという議論が、人文学に入ってきた。
  • 動物と非人間 — 人間と動物の線引きそのものが問い直される。デカルトの動物機械論(第4章)への長い応答にあたる。
  • これらは、主体をめぐる問い(第18章)の続きとして読める。人間を中心に置く思考の外へ出られるか。
本文で読む:技術・環境・非人間 ▶
⚡ 157

20世紀後半と現在の違い

  • かつては、少数の思想家が公共の場で大きな影響力を持っていた。新聞・雑誌・テレビ。
  • 現在は、専門分化が進み、議論の場が分散している。
  • 国際的な受容が先に進むことがある。フランスの思想が英語圏で読まれ、その形で逆輸入される。
  • したがって「フランス思想」という括り自体が、扱いにくくなっている。
本文で読む:思想の場が変わった ▶
⚡ 158

4つの線

  • 知の基礎はどこにあるか — 信仰と理性(第2章)→ 方法的懐疑(第4章)→ 実証主義(第10章)→ 知と権力(第18章)。
  • 人間とは何か — 二重性(第5章)→ 自然状態(第8章)→ 決定論(第11章)→ 自由(第14章)→ 構成される主体(第16〜18章)。
  • 正しい社会とは何か — 法の比較(第7章)→ 社会契約(第8章)→ 徳と恐怖(第9章)→ 承認と差異(第19章・第20章)。
  • 普遍は可能か — 啓蒙(第6章)→ 人権(第9章)→ 相対化(第16〜18章)→ 作り直し(第19章・第20章)。
本文で読む:この教材を終えて ▶
⚡ 159

これからの使い方

  • 作品に概念が出てきたら、早見表で出どころを引く。
  • 同じ語の意味が時代で変わることを、常に疑う(第1章)。
  • 思想を作品の説明に使わない。作品と思想のずれを見る。
  • 理論を読み方の道具として使うときは、文学理論・批評の領域へ進む。
本文で読む:この教材を終えて ▶
⚡ 160

5段階

  • 1. 事典で位置を確かめる。新しい主題は、事典に項目がないこともある。その場合は概説書へ。
  • 2. 主要な論者を2〜3人に絞る。網羅しようとしない。
  • 3. 対立する立場を並べる。一方だけを読むと、それが定説に見える。
  • 4. 刊行年を必ず確かめる。議論が速く動く領域では、10年で状況が変わる。
  • 5. 「〜という議論がある」と書き、記述の時点を明示する。
本文で読む:現代の思想をどう調べるか ▶
⚡ 161

使う順序の例

  • 作品に概念が出てきた → 04で出どころを確かめる → 07で問いを立てる → 10で作品の記述に戻る。
  • 理論で読みたい → 04で思想の中身を押さえる → 08で読み方の道具として使う。
  • 時代から入る → 03で条件を確かめる → 04で同時代の思想を見る → 02で作品の流れへ。
本文で読む:この教材と他の領域のつなぎ方 ▶

✕ やってはいけない形

✓ 通過チェック

第20章の通過チェック

  • 普遍をめぐる3つの立場を言える
  • 承認と差異の衝突が、フランスでなぜ先鋭化するかを言える
  • 証言をめぐる問いがなぜ哲学の問題になるかを言える
  • 技術・環境・非人間の議論が、主体の問いとどうつながるかを言える
  • 思想の場が20世紀後半とどう変わったかを3点言える
  • この教材が追ってきた4つの線を言える
  • この教材と文学理論・批評の領域の分担を説明できる
本文で読む:この教材と他の領域のつなぎ方 ▶

📗 一通り目を通したら、一問一答で言えるかどうか確かめましょう。

一問一答で総ざらいする ▶
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