🧭全体地図📘思想
4 / 20
CHAPTER 4 近世 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 8

近世|第4章 17世紀(1)— デカルトと方法

この章の狙い

要点: デカルトは、懐疑から始める点ではモンテーニュと同じだが、行き先が正反対である。判断を保留したまま留まるのではなく、疑いを徹底することで、疑いえない一点に到達しようとした。

そこから出てきたのが、「考えている私」を出発点に置くという主張である。この主張が、以後300年の哲学の土台になり、20世紀にはその土台自体が批判される(第18章)。

▲ この章の内容へ

年表

出来事
1596年 デカルト誕生
1618〜1620年 各地を移動し、諸学を検討する
1637年 『方法序説』(フランス語で刊行)
1641年 『省察』(ラテン語)
1644年 『哲学原理』
1649年 『情念論』
1650年 スウェーデンで死去
17世紀後半 デカルト的な考え方が広く受け入れられる。同時に批判も起きる

▲ この章の内容へ

方法という発想

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

  • 📘 方法:真理に到達するための、あらかじめ定められた手順のこと。デカルトは、才能ではなく手順によって知が得られると考えた。

『方法序説』の冒頭は、公有の一文として引ける。

« Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée. »

  • 訳:良識は、この世で最もよく分け与えられているものである。
  • 能力の差ではなく、使い方の差だという主張につながる。
  • だからこそ「方法」が要るという導入になっている。
  • フランス語で書かれたことも重要にあたる。学問の言語であるラテン語ではなく、俗語で哲学を書いた。

4つの規則

  • 明証(めいしょう)明晰(めいせき)かつ判明に真と認めたものだけを受け入れる。
  • 分析 — 問題をできるだけ小さな部分に分ける。
  • 総合単純なものから複雑なものへ、順序立てて進む。
  • 枚挙(まいきょ)見落としがないかを網羅的に確かめる。

▲ この章の内容へ

方法的懐疑

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

確実な出発点を得るために、疑えるものをすべて疑う。

段階 疑うもの 理由
1 感覚 感覚は誤ることがある
2 外界の存在 夢と現実を区別できないかもしれない
3 数学的な真理 欺く力があれば、これも誤らされうる

← 横に動かして読めます →

そして残るもの

  • 疑っているあいだも、疑っている私は存在している。
  • « Je pense, donc je suis. »(私は考える、ゆえに私は存在する。)
  • これは推論ではなく、直観された一点だとされる。ここから体系を組み立て直す。
  • 📘 方法的懐疑:真理に到達するために、あえて意図的に疑うという手続きのこと。懐疑そのものが目的ではない点で、モンテーニュの懐疑とは違う。

⚠️ モンテーニュとの違いを押さえる

  • モンテーニュ — 判断を保留し、その状態にとどまる。
  • デカルト — 疑いは手段であり、確実な基礎に到達したら止める。
  • 同じ「懐疑」という語でも、機能が違う。概念の履歴の代表例にあたる(第1章)。

▲ この章の内容へ

心身の二元論

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

  • 📘 二元論:世界を、考えるもの(精神)広がりを持つもの(物体)という、まったく性質の違う2つの実体に分ける考え方のこと。
精神 物体
本質 考えること 広がりを持つこと
分割 できない できる
認識 直接に知られる 感覚と理性を通して知られる

← 横に動かして読めます →

この区分の帰結

  • 自然は物体の世界として、数学的に扱える。近代科学の前提が用意される。
  • 動物は機械のようなものとされた。この点は当時から強く批判された。
  • 心と体はどうつながるのかという難問が残る。デカルト自身も明快には答えられなかった。
  • この難問が、20世紀の身体をめぐる議論の出発点になる(第13章)。

▲ この章の内容へ

神の存在と、循環の問題

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

デカルトは体系を組み立て直すために、神の存在を証明しようとする。

⚠️ 循環しているという批判

  • 明晰判明に認識したものは真であるという規則を保証するために、欺かない神を持ち出す。
  • しかし神の存在を証明する論証そのものが、明晰判明さに依拠している。
  • これを「デカルトの循環」と呼び、同時代から指摘されてきた。
  • デカルト側の応答もあるが、決着していない。

▲ この章の内容へ

情念

『情念論』は、感情を機械的な仕組みとして説明しようとした著作である。

要点

  • 情念は身体の運動が精神に引き起こすものとして説明される。
  • 理性によって情念を統御できるという方向を示した。
  • この枠組みが、同時代の悲劇と道徳論の背景になっている(第5章、作品と作家の領域)。

▲ この章の内容へ

批判と論点

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

論点 内容
循環 神の証明と明証の規則が互いに支え合っている
心身の結合 性質の違う2つが、どうして作用し合えるのか
動物機械論 動物に感覚がないという帰結を、当時から多くの人が拒んだ
出発点としての「私」 20世紀に最も強く批判された点。「私」は出発点ではなく、言語や構造や無意識によって作られるのではないか(第16〜18章)

4番目が、この教材で最も重要な論点にあたる。デカルトの「私」を疑うことが、20世紀のフランス思想の共通の出発点になる。

▲ この章の内容へ

文学とのつながり

17世紀の作品を読むときに要る背景

  • 明晰さという価値 — 古典主義の言語観と響き合う。明晰でないのはフランス語ではないという有名な言い方が、後の世紀に生まれる。
  • 理性と情念の対立 — 悲劇の枠組みそのものにあたる。情念は理性で統御されるべきものとして、しかし統御できないものとして描かれる。
  • フランス語で哲学を書いたこと — 学問と文学の言語が近づく。思想が読者を持つようになる。
  • 自伝的な語り — 『方法序説』は自分の遍歴を語る形をとっている。哲学書でありながら、語りの形式を持つ。

⚠️ この時代で混同しやすい形

  • デカルトの懐疑をモンテーニュの懐疑と同じと考える。前者は手段、後者は態度そのものである。
  • 「我思う、ゆえに我あり」を推論と考える。デカルト自身は直観された一点として扱っている。
  • 二元論を「心が大事、体は軽い」という主張と考える。性質の違う2つの実体を区別する主張にあたる。
  • 『方法序説』をラテン語で書かれたと考える。フランス語である。

▲ この章の内容へ

デカルトの受容と、反デカルト

⊳ この節の問題を解く(1問)

デカルトの主張は、そのまま受け入れられたのではない。

時期 受け止められ方
17世紀後半 広く受け入れられる一方、教会と大学から警戒された
17世紀後半 パスカルは、その体系の射程を限定的に見た(第5章)
18世紀 経験を重んじる立場から批判される
19世紀 フランス哲学の出発点として教育に組み込まれる
20世紀 現象学と構造主義が、その前提を正面から批判する(第13章・第16章)

「デカルト的」という語の使われ方

  • 明晰さと体系性を指す褒め言葉として使われることがある。
  • 同時に、身体と歴史を軽視する枠組みへの批判の語としても使われる。
  • どちらの意味で使っているかを明示しないと、議論が噛み合わない。

▲ この章の内容へ

フランス語で哲学を書くということ

⊳ この節の問題を解く(1問)

1637年の選択の意味

  • 当時の学問の言語はラテン語だった。大学の外の読者に向けて書くという選択にあたる。
  • 序文で、その理由を自ら述べている。理性は万人に共有されているという主張と一貫している。
  • 哲学が「読者を持つ」ようになる。サロンと世論の前提が用意される(第6章)。
  • 同時に、フランス語で抽象的な議論をする語彙が作られていった。この蓄積が18世紀を可能にする。

⚠️ 『省察』はラテン語である

  • 同じ思想家でも、著作によって言語を使い分けている。
  • 『方法序説』はフランス語、『省察』はラテン語にあたる。
  • 想定する読者が違う。この使い分け自体が、当時の知の状況を示している。

第4章の通過チェック

  • 方法の4つの規則を言える
  • 方法的懐疑の3段階を言える
  • デカルトの懐疑とモンテーニュの懐疑の違いを説明できる
  • 二元論の2つの実体と、その本質を言える
  • デカルトの循環と呼ばれる批判を説明できる
  • 20世紀に最も強く批判された点を言える
  • 『方法序説』がフランス語で書かれたことの意義を言える

▲ この章の内容へ

次章へ

次章は17世紀(2)— パスカルとモラリストである。デカルトとは正反対の方向から人間を見る。

理性で到達できる範囲は狭いと考え、人間の弱さと矛盾を見つめた。そしてモラリストたちが、宮廷での観察から人の動機の底にあるものを書き出す。17世紀の文学の人間像は、この側から来ている。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

この章の問題を解く ▶
🧭全体地図へ戻る