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CHAPTER 9 作法 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 8

作法|第9章 卒業論文 — 計画から提出まで

この章の狙い

要点: 卒業論文は、書く技術の問題ではなく、時間の管理の問題である。2万字は、1日500字書けば40日で終わる。終わらないのは、書く前の段階で止まるからにあたる。

この章は3年の春に一度読んでおくためのものである。4年になってから読むと、間に合わない項目が出てくる。

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全体の日程

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

大学と専攻によって細部は違うが、大枠はどこも同じである。

時期 すること
3年 春 候補を3つ持つ。授業で扱った作品から選ぶ
3年 秋 1つに絞る。先行研究を読み始める
4年 春 指導教員に問いを相談する。原文を通読する
4年 夏 本論を書く。ここが山場にあたる
4年 秋 中間発表。序論と結論を書く
4年 11〜12月 推敲(すいこう)、注と参考文献の整備、提出
4年 1〜2月 口頭試問(こうとうしもん)

⚠️ 間に合わなくなる典型的な形

  • 4年の春にテーマを決め始める。先行研究を読む時間が消える。
  • 原文を読み切らないまま書き始める。書いている途中で、論が成り立たない箇所が見つかる。
  • 夏に何も書かない。秋から2万字は、他の授業と就職活動を抱えたままでは厳しい。

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テーマの決め方

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

テーマ選びの3条件

  • 原文が読める分量であること。『失われた時を求めて』の全篇を1年で原文通読するのは現実的ではない。1篇に絞るなどの限定が要る。
  • 邦訳と先行研究が手に入ること。日本語の研究がまったくない主題は、学部では難しい。
  • 1年間、飽きずに読めること。これが一番大事にあたる。面白くない作品で1年は保たない。
選び方 具体例
授業で扱って引っかかった作品 演習で読んだ短編
好きな作家の、論じられていない作品 有名作ではなく、同じ作家の別の作品
2作品の比較 同じ主題を扱った異なる時代の作品
翻訳の比較 同じ作品の複数の邦訳

指導教員に相談するときの持ち物

  • 問いを1行にしたもの(第2章)
  • 読んだ先行研究のリスト(数本でよい)
  • 扱う版(第5章)
  • この3つを持っていくと、話が具体的になる。「何を書けばいいですか」だけでは、まず問いを作るよう言われる。

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章立ての作り方

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

2万字なら、4〜5章が扱いやすい。

内容 字数の目安
序論 対象・問い・先行研究・方針 2,000字
第1章 前提の確認(作品の成り立ち、版、用語の定義) 3,000字
第2章 分析(1) 5,000字
第3章 分析(2) 5,000字
第4章 総合(2つの分析を結び、問いに答える) 3,000字
結論 まとめ・限界・今後 2,000字

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章立てで守ること

  • 分析の章を必ず2つ以上作る。1つだけだと、根拠が1本しかない論になる。
  • 各章の冒頭に、その章で何をするかを2〜3文で書く。読み手が迷わない。
  • 各章の末尾に、その章で分かったことを2〜3文で書く。次の章への橋になる。
  • 章立ては変わってよい。書きながら変える前提で、仮の形を先に置く。

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2万字をどう書くか

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

書き進める順序

  • 1. 分析の章から書く。根拠が最も揃っている節から始める。
  • 2. 1日の量を決める。500字でも、40日で2万字になる。「今日は乗らない」で止めない。
  • 3. 書けない日は、引用を集める・注を整える・文献を読む。手を止めないことが要点にあたる。
  • 4. 序論と結論は最後。
  • 5. 完成の1か月前に、いったん全部を通して読む。この時間を日程に組み込んでおく。

⚠️ 推敲を最後の1週間に詰め込む

  • 注の整備と参考文献一覧だけで、丸1日かかる。
  • 引用のページ番号の確認は、本を1冊ずつ開き直す作業になる。
  • 提出直前に発見される最も多い問題は、注と参考文献の食い違いである。

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詰まったときの対処

⊳ この節の問題を解く(1問)

症状 対処
何を書けばいいか分からない 問いが決まっていない。第2章に戻る
書くことはあるが並べられない 見出しだけを10個書き出し、並べ替える
根拠が足りない 本文をもう一度、目的を絞って読む。探す対象を1つに決めて読み直す
先行研究と同じことを言っている気がする それでよい場合もある。根拠が違えば、それは補強にあたる(第4章)
論が成り立たないと気づいた 気づいたことを書く。「当初〜と考えたが、〜のため成り立たない」は正当な記述になる

最後の行が重要である。仮説が外れることは失敗ではない。外れたと書けることが、研究の作法にあたる。

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提出前チェックリスト

⊳ この節の問題を解く(1問)

提出の3日前に確認する12項目

  • 序論の問いと、結論の答えが対応しているか
  • 各章の冒頭と末尾に、案内と要約があるか
  • 引用がすべて原文と一致しているか
  • 注の番号が飛んでいないか
  • 注に出た文献が、すべて参考文献一覧にあるか
  • 参考文献一覧の書式が最後まで統一されているか
  • 一次資料と二次資料が分けてあるか
  • ページ番号が入っているか
  • 表紙に必要事項(題名・氏名・学生番号・指導教員名・提出年月日)があるか
  • 字数が規定の範囲に収まっているか
  • 人名・作品名の表記が全体で統一されているか
  • 提出の方法と締切の時刻を確認したか

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口頭試問

⊳ この節の問題を解く(1問)

  • 📘 口頭試問:提出後に行われる、論文についての質疑のこと。論文を読んだ教員から質問を受け、その場で答える。

備え方

  • 自分の論を3分で説明できるようにする。問い・方法・結論。
  • 弱いところを自分で把握しておく。「そこは扱えなかった」と正直に答えてよい。
  • 想定質問を5つ作る。「なぜこの版を使ったか」「なぜこの作品を選んだか」「◯◯という別の解釈もあるのでは」は定番にあたる。
  • 答えられない質問には、そう言う。取り繕(つくろ)った答えは、すぐ分かる。

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中間発表の準備

多くの専攻で、4年の秋に中間発表がある。ここで方向を修正できるかどうかが、最後の数か月を決める。

中間発表で示すもの

  • 問いと、その理由。なぜこの問いなのか。
  • これまでに分かったこと。未完成でよい。分かっていないことも示す。
  • 章立ての案。変わる前提でよい。
  • 残りの日程。何をいつまでにやるか。

⚠️ 中間発表でよくある失敗

  • 完成した部分だけを見せる。詰まっているところを見せたほうが、有益な助言が返ってくる。
  • 質問への答えを用意しすぎる。その場で考えて答えてよい。
  • 指摘をメモしない。この日にもらう指摘が、最も具体的で最も役に立つ。

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章と章をつなぐ

⊳ この節の問題を解く(1枚)

2万字になると、章のあいだのつながりが見えなくなる。次の2つを必ず入れる。

位置 書くこと
各章の冒頭 この章で何を扱うか。前章とどうつながるか(2〜3文)
各章の末尾 この章で分かったこと。次章で何を扱うか(2〜3文)

効果

  • 読み手が迷わない。口頭試問で「この章は何のためにあるのか」と問われなくなる。
  • 書き手も迷わない。書いている途中で論の位置を見失わない。
  • この部分だけを抜き出して並べると、論文全体の要約になる。発表の原稿にそのまま使える。

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分量が足りないとき/多すぎるとき

⊳ この節の問題を解く(1問)

状況 対処
足りない 根拠を増やす。扱う箇所を増やす。あらすじや背景で埋めない
足りない 例外の処理を書く。自説に合わない箇所を扱うと、必ず分量が増える
足りない 先行研究との関係を丁寧に書く(第4章)
多すぎる 引用を削る。分析は削らない
多すぎる 背景説明を削る。問いに必要な分だけ残す
多すぎる 扱う対象を1つ減らす。深さを保つ

⚠️ 分量あわせで最もやってはいけないこと

  • あらすじを足す。すぐに分かる。
  • 一般論を足す。「現代社会において文学とは」。
  • 同じことを言い換えて繰り返す。読み手はすぐ気づく。

第9章の通過チェック

  • 3年春から4年冬までの日程を言える
  • 間に合わなくなる典型的な形を3つ言える
  • テーマ選びの3条件を言える
  • 指導教員に相談するときの持ち物3つを言える
  • 2万字の章立ての配分を言え、分析の章を2つ以上作る理由を言える
  • 書き進める順序を言え、序論をいつ書くかを言える
  • 提出前チェックの中で、注と参考文献に関わる3項目を言える

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次章へ

構成が決まっても、文が論文の文になっていないと読まれない。

次章は日本語で書くである。「だ・である」体、一文の長さ、避けるべき表現、断定と留保の使い分け。中身は同じでも、文体で説得力は変わる。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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