🧭全体地図📘研究法
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CHAPTER 1 導入 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 5

導入|第1章 全体地図 — 文学研究とは何をすることか

この章の狙い

要点: 文学研究とは、作品について「根拠を示して主張する」ことである。好きかどうかを述べるのでも、あらすじを紹介するのでもない。

02の文学史で流れを、10の作品と作家で中身を押さえた。この教材で扱うのは、それを材料にして自分の論を立てる手順である。前半が作法(問いの立て方から論文の書き方まで)、後半が詩法(フランス詩の数え方)にあたる。

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文学研究の3つの層

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

文学研究は、次の3つの層が重なってできている。どれか1つだけでは論にならない。

何をするか この教材の該当章
読む テクストそのものを観察する。語彙・時制・語り・音 第11〜19章
調べる 版・成立事情・先行研究・時代背景を確かめる 第3〜5章
書く 問いを立て、根拠を配置し、日本語の論文にする 第2章、第6〜10章

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3つの層が重なって、はじめて論になる 読む 語彙・時制・語り・音を観察 第11〜19章 調べる 版・成立事情・先行研究 第3〜5章 書く 問いを立て、根拠を配置する 第2章・第6〜10章 進む順序は一本道ではない 読む → 調べる → 読み直す → 書く → また調べる 書けないのは文章力の問題ではなく、観察と調査が足りていないことが多い。 いきなり書き始めない。
文学研究の3つの層
  • 📘 テクスト:分析の対象になる本文そのもの。「作品」が全体を指すのに対し、テクストは「そこに書かれている言葉の連なり」を指す。版が違えばテクストも違う。
  • 📘 先行研究:同じ作品や主題について、すでに誰かが書いた研究のこと。自分の論がどこに新しさを持つのかは、これを読まないと決められない。

3つの層は同時には進まない

  • 順番は「読む → 調べる → 読み直す → 書く」になる。1回目の読みで気になった箇所を調べ、調べた目で読み直す。
  • いきなり書き始めない。書けないのは文章力の問題ではなく、観察と調査が足りていないことがほとんどである。
  • 書きながら読み直すことになる。それは失敗ではなく、正常な過程にあたる。

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感想文・紹介・論文の違い

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

3つは目的が違う。大学で求められるのは3つ目だけである。

種類 中心にあるもの 読者に起きること
感想文 書き手の反応 書き手の人柄が分かる
紹介・解説 作品の内容 作品の内容が分かる
論文・レポート 問いと、それへの答え 作品の見え方が変わる

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⚠️ レポートで最も多い3つの形

  • あらすじで紙幅(しふく)を埋める。8割があらすじで、最後に一言「感動した」で終わる形。
  • 一般論で始めて一般論で終わる。「現代社会において〜」で始まり、作品の記述が一度も出てこない。
  • 他人の説を並べただけ。先行研究の要約が続き、自分がどこに立つのかが書かれていない。

この3つに共通するのは、問いがないことである。問いの立て方を第2章で扱う理由がここにある。

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「新しい」とは何か

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

研究には新しさが要る、と言われる。だがこれは「誰も読んだことのない作品を見つけろ」という意味ではない。

学部のレポートで成り立つ4つの新しさ

  • 対象が新しい — 論じられることの少ない作品や箇所を扱う。
  • 観点が新しい — 有名な作品を、これまで注目されなかった側面から見る。
  • 根拠が新しい — 同じ主張を、これまで使われていない箇所から示す。
  • 比較が新しい — 2つを並べることで、片方だけでは見えないものを出す。

学部の段階では、2番目と4番目が現実的である。『ボヴァリー夫人』について新しい資料を発見することは難しいが、「エマが読んだ本の記述だけを全部集める」といった作業は、いま自分の手で始められる。

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この教材の地図

全20章は4つのまとまりに分かれている。通読しなくてよい。必要な章から開く。

まとまり いつ開くか
調べて書く作法 第2〜10章 レポートや卒論に取りかかるとき
テクストを分析する道具 第11〜13章 作品を前にして、何を見ればよいか分からないとき
詩法 第14〜19章 詩を扱うとき。授業で詩が出た週に開く
仕上げ 第20章 発表の前と、引用の範囲に迷ったとき

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どこから読むか

  • 今週レポートがあるなら → 第2章(問い)→ 第8章(構成)→ 第6章(引用と注)。この3つで書ける。
  • 今週、詩が課題なら → 第14章 → 第15章 → 第16章。音節を数えられるだけで、詩の見え方が変わる。
  • 卒論のテーマを考え始めたなら → 第2章 → 第3章 → 第4章 → 第9章。
  • 時間があるなら → 第1章から順に。作法編は積み上がる形で書いてある。

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4年間の見取り図

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

いつ何が求められるかを、先に知っておく。3年の秋に慌てないための地図である。

時期 求められること 使う章
1年 授業のレポート(2,000〜4,000字)。作品を1つ選び、1つの問いに答える 2・6・8・10
2年 演習(えんしゅう)での発表とレポート。原文の抜粋(ばっすい)を扱う 3・4・11・12・20
3年 卒論のテーマを決める。先行研究を読み始める 3・4・5・9
4年 卒業論文(2万字前後)を書き、口頭試問を受ける 全章

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  • 📘 演習:少人数で、学生が順番に発表し、教員と参加者が議論する授業のこと。フランス語ではセミネールにあたる。発表の準備が、そのまま論文の練習になる。

⚠️ 卒論のテーマを4年になってから考える

  • 間に合わない。先行研究を読み、原文を読み、書くのに、それぞれ数か月かかる。
  • 3年の春から候補を3つ持っておく。授業で扱った作品のうち、引っかかった3つでよい。
  • 候補が絞れないのは、まだ読んだ量が足りないだけである。読めば必ず絞られる。

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何を成果とみなすか

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

読み終えた本の冊数ではなく、次の3つが手元に残っているかで測る。

手元に残すもの

  • 観察の記録 — どの箇所で何に気づいたか。ページ番号つきで。
  • 文献のカード — 読んだ研究の、問い・方法・結論・自分の論との関係。
  • 問いの候補 — 答えの分からない問いを、書き留めておく。これが論文の種になる。

3つとも、読んでいるその場でしか作れない。あとからまとめ直そうとすると、もう一度全部読むことになる。

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授業のどの場面で使うか

⊳ この節の問題を解く(1問)

この教材は、授業の3つの場面に対応している。

場面 何が起きるか 開く章
演習で発表を割り当てられた 短い箇所を担当し、20〜40分話す 11・12・13・20
レポート課題が出た 作品を1つ選び、問いを立てて書く 2・6・8・10
詩が課題に出た 数行の詩について何か言うことを求められる 14〜19
卒論の面談がある 進捗(しんちょく)と次の見通しを説明する 4・9

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演習の発表で求められること

  • 担当箇所を、参加者全員が読んでいる前提で話す。あらすじの紹介は最小限にする。
  • 観察を先に、解釈を後に(第11章)。「◯行目に〜がある」から始める。
  • 問いを1つ立てて終わる。答えが出ていなくてよい。議論の材料を出すのが発表の役割にあたる。
  • 配布資料に、扱う箇所の原文と訳を載せる。参加者が手元で確かめられるようにする。

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10の領域の中での位置

⊳ この節の問題を解く(1問)

フランス文学専攻の学習は、10の領域に分かれている。この教材は、そのうち「方法」を担当する。

領域 何を与えるか
フランス語 読むための言語の力
文学史 作品が置かれている流れ
作品と作家 個々の作品の中身
文学研究の方法(本教材) それらを材料に、自分の論を立てる手順
文学理論・批評 読み方の枠組みの選択肢
フランス史・思想・文化 作品の外側の条件

⚠️ 方法だけを学んでも書けない

  • 手順は、材料があって初めて働く。作品を読んでいなければ、問いは立たない。
  • 逆に、材料だけあっても書けない。読んだ量が多くても、手順を知らなければレポートにならない。
  • 両方を並行して進める。この教材を読みながら、実際に1作品を読み進めるのがよい。

第1章の通過チェック

  • 文学研究の3つの層を言え、順序を説明できる
  • 感想文・紹介・論文の違いを言える
  • レポートで多い3つの失敗の形を言える
  • 学部で成り立つ新しさを4つ挙げ、現実的なものを2つ選べる
  • 4年間で、いつ何が求められるかを言える
  • 読みながら手元に残すべき3つを言える

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次章へ

次章は問いを立てるである。すべてがここから始まる。

「フローベールについて書く」はテーマであって、問いではない。問いとは、答えが割れるもので、本文で確かめられるもので、範囲が限定されているものを指す。テーマを問いに変える型を5つ扱う。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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