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CHAPTER 13 分析 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 8

分析|第13章 修辞 — 比喩と文彩を見分ける

この章の狙い

要点: 修辞(しゅうじ)の名前を覚える目的は、分類することではなく、見つけられるようになることである。名前を知らない形は、目の前にあっても見えない。

そして見つけたあとが本番である。「これは隠喩(いんゆ)である」で止まると、何も言っていないことになる。その比喩が何と何を結んでいて、それによって何が起きているのかまで書いて、初めて分析になる。

  • 📘 修辞:言葉を、通常とは違う形で用いて効果を生む技術のこと。フランス語ではレトリック。個々の技法を文彩(ぶんさい)と呼ぶ。

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比喩の4つ

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

名前 仕組み
直喩(ちょくゆ) 「〜のように」を使って2つを並べる 「氷のように冷たい手」
隠喩 「〜のように」を使わず、一方を他方として述べる 「彼女の心の氷」
換喩(かんゆ) 隣接するもので置き換える 「ペンを執(と)る」(ペン=書く行為)
提喩(ていゆ) 部分で全体を、全体で部分を指す 「一枚の帆が見えた」(帆=船)

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4つを見分ける手順

  • 「のように」があるか → あれば直喩。
  • なければ、2つのものが似ているか、隣り合っているか → 似ているなら隠喩、隣り合っているなら換喩。
  • 部分と全体の関係か → 提喩。
  • 迷ったら、隠喩と換喩の区別だけ付ければ十分にあたる。細かい分類より、何と何が結ばれているかのほうが重要である。

⚠️ 比喩を見つけたあとに書くこと

  • 何と何を結んでいるか。「心」と「氷」。
  • どちらの領域から、どちらへ移されているか。物質の領域から感情の領域へ。
  • その作品の中で、同じ領域の比喩が繰り返されるか。繰り返されるなら、それはその作品の比喩の体系にあたる。
  • 3つ目が最も論になりやすい。1つの比喩を論じるより、同種の比喩を集めるほうが強い。

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対比と逆説

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

名前 仕組み
対句(ついく) 同じ形の句を並べる 「昼は働き、夜は書く」
対照法 反対のものを並べて際立たせる 「都市の光と、路地の闇」
撞着語法(どうちゃくごほう) 矛盾する語を直接結ぶ 「輝く闇」
逆説 一見矛盾するが、考えると通る言い方 「急がば回れ」

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対比を見つけたら

  • 対比される2項を書き出す。光/闇、内/外、上/下、都市/田舎。
  • 作品全体で同じ対比が繰り返されるかを確かめる。繰り返されるなら、その作品の構造にあたる。
  • どちらの項に価値が置かれているかを見る。置かれていない場合、それ自体が特徴になる。

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反復

⊳ この節の問題を解く(1問)

名前 仕組み
首句反復 複数の句や行の先頭で、同じ語を繰り返す
畳語法(じょうごほう) 同じ語をすぐ続けて繰り返す
列挙 同種のものを並べる
漸層法(ぜんそうほう) 程度を強めながら並べる

反復を分析するときの3つの問い

  • 何回か。数える。
  • どこに集中しているか。冒頭か、末尾か、特定の人物の台詞か。
  • 強調か、空転か。同じ語の繰り返しが、意味を強めているのか、意味を失わせているのか。不条理の演劇では後者が意図的に使われる。

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強調と抑制

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

名前 仕組み
誇張法 大げさに言う 「千回も言った」
緩叙法(かんじょほう) 控えめに言って、かえって強める 「悪くない」(=とてもよい)
曲言法(きょくげんほう) 否定を使って肯定を言う 「知らないわけではない」
省略 言わずに済ませる 「もし彼が来ていれば……」

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緩叙法はフランス文学で重要な技法にあたる

  • 古典主義の作品では、激しい感情ほど抑えた言い方で示される。
  • 抑制された言い方が出てきたら、その裏を読む。
  • ラシーヌ『フェードル』の « Le jour n'est pas plus pur que le fond de mon cœur. »(陽の光も、私の心の底ほどには清らかではない)は、「私は潔白だ」を、否定と比較を使って述べている。

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語順と構文

⊳ この節の問題を解く(1問)

名前 仕組み
倒置 通常の語順を入れ替える
挿入 文の途中に別の要素を差し込む
接続詞の省略 「そして」を省いて並べる。速度が上がる
接続詞の多用 「そして」を重ねる。列挙が続く印象を作る

⚠️ フランス語の倒置は日本語より重い

  • フランス語は語順が意味を決める言語なので、倒置は目立つ。
  • 詩では、韻を踏むために倒置が起きることがある(第16章)。この場合、意味的な効果を読み込みすぎない。
  • 散文での倒置は、ほぼ必ず効果を狙っている。そこは分析の対象になる。

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見つけたあと何を言うか

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

修辞を列挙しただけのレポートは、最も多い失敗の1つにあたる。

書き方 評価
「ここには隠喩が用いられている」 分類しただけ。論ではない
「隠喩によって表現が豊かになっている」 何も言っていない
「氷・霜・冷気の隠喩が第2部に◯箇所集中する。第1部には◯箇所しかない。この偏りは、〜と対応している」 数と分布を示し、他の要素と結んでいる

修辞を論にする3手順

  • 1. 同じ種類のものを集める。1つでは偶然かもしれない。
  • 2. 分布を見る。どの部分に集中しているか。
  • 3. 他の要素と結ぶ。筋の展開、人物の変化、語りの変化と重なるか。

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比喩の体系を作る

⊳ この節の問題を解く(1問)

1つの比喩を論じるより、同じ領域の比喩を集めるほうが強い(本章の3手順)。実際の作り方を示す。

手順

  • 1. 作品を読みながら、比喩に印を付ける。種類は問わない。
  • 2. 印を付けた比喩を、「何の領域から来ているか」で分類する。水・火・光・闇・動物・機械・病・戦い・貨幣など。
  • 3. 領域ごとに数える。どの領域が多いか。
  • 4. 分布を見る。特定の人物、特定の場面に偏っていないか。
  • 5. 偏りを、筋や主題と結ぶ。
領域の例 よく結びつくもの
水・流れ 時間、感情、忘却
光・闇 認識、道徳、真実
動物 本能、身分の低さ、力
社会の状態、道徳の腐敗
貨幣・取引 人間関係、感情の交換

⚠️ 領域の分類は自分で作る

  • 既成の一覧に当てはめようとしない。その作品に出てくる領域を、読みながら作る。
  • 分類の基準を書く。「本稿では、〜を〜の領域に含めた。」再現できる形にする(第10章)。
  • どこにも入らない比喩は、無理に入れない。「分類できないものが◯例あった」と書けばよい。

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フランス語で修辞を見るとき

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

日本語訳では消える修辞がある。

消えるもの 理由
音による技法(頭韻・母音反復) 音が変わる
語順による強調(倒置) 日本語の語順が違う
語の多義性を使った表現 訳語は1つの意味しか持てない
同じ語根の反復 訳語が別々の語になる

原文に当たるべき場面

  • 音を論じるとき。必ず原文(第5章)。
  • 同じ語の繰り返しを論じるとき。訳では別の語になっている可能性がある。
  • 逆に、比喩の内容そのものを論じるなら、訳でも扱える。「心の氷」は訳しても残る。

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名前が分からないとき

修辞の名前が分からなくても、分析はできる。

名前より先に書くこと

  • どんな操作が行われているか。「AをBとして述べている」「同じ語が3回繰り返される」。
  • その操作が何を作っているか。
  • 名前は、あとから事典で確かめればよい(第3章)。
  • 名前だけ正しくて操作の記述がないより、名前がなくても操作が正確に書けているほうが、はるかによい。

第13章の通過チェック

  • 修辞を学ぶ目的を一文で言える
  • 比喩の4つを、仕組みの面から言い分けられる
  • 比喩を見つけたあとに書くべき3つを言える
  • 対照法と撞着語法の違いを言える
  • 反復を分析する3つの問いを言える
  • 緩叙法とは何か、フランス古典主義で重要な理由を言える
  • 修辞を論にする3手順を言える

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次章へ

ここまでは散文にも詩にも使える道具だった。次からは詩だけの道具に入る。

次章から第19章までが詩法である。フランス詩は音節の数で作られている。数え方さえ分かれば、詩は「読むもの」から「測れるもの」に変わる。まず、その枠組みを確認する。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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