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CHAPTER 6 作法 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 8

作法|第6章 引用と注 — 書式と作法

この章の狙い

要点: 引用の作法は、「どこまでが他人の言葉で、どこからが自分の言葉か」を読者に示すためにある。装飾でも儀式でもない。

ここを間違えると、内容がどれだけよくても評価されない。盗用(とうよう)と判定されれば、単位が出ないだけでは済まないこともある。形式を先に覚えてしまえば、あとは機械的に守るだけになる。

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引用の2つの形

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

使う場面 書き方
短い引用 数語〜1文 本文の中に、鉤括弧(かぎかっこ)「 」で入れる
長い引用 2行以上 改行して、前後に空行を置き、全体を一段下げる。括弧は付けない

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長い引用は、目で見て「ここは引用だ」と分かる形にする。一段下げるのはそのためである。

引用の3原則

  • 一字一句そのまま写す。句読点も、漢字と仮名の使い分けも変えない。
  • 出典を必ず示す。著者・書名・訳者・出版社・刊行年・ページ。
  • 必要な長さだけ。長い引用で紙幅を埋めると、論じていないと判断される。

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引用の中に手を加えるとき

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

そのまま写すのが原則だが、次の3つだけは手を加えてよい。加えたことが分かる印を必ず付ける。

したいこと 書き方
途中を省く 省いた位置に […] を置く
語を補う 補った語を 〔 〕 で囲む。「彼〔ムルソー〕は〜」
強調する 傍点(ぼうてん)か太字にし、注か引用の末尾に「強調は引用者による」と書く

⚠️ 引用でやってはいけない4つ

  • 文を切って意味を変える。「〜ではない」を「〜」だけ引くのは改竄(かいざん)にあたる。
  • 前後の文脈を伏せる。皮肉として書かれた文を、主張として引かない。
  • 旧字体を勝手に新字体に直す。直すなら、その旨を注に書く。
  • 原文の誤植をそのまま引いて、指摘しない。そのままなら [原文のまま] と添える。

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フランス語を引用するとき

⊳ この節の問題を解く(1問)

原文を引くか、訳を引くか、両方かは、論の中身で決まる。

論じていること 引き方
語の選択・時制・語順 原文を引く。必要なら訳を添える
筋・人物・場面 訳だけでよい
詩の音・韻・音節 原文を引く。訳では音が消える

原文と訳を併記する形

  • 原文を先に置き、そのすぐ後に訳を括弧か次の行で示す。
  • 引用符は、フランス語では « »(ギユメ)を使う。日本語の文中に組み込むときは「 」でもよいが、論文全体でどちらかに統一する。
  • 訳が自分のものなら、「訳は引用者による」と一度書けばよい。毎回書かなくてよい。
  • 例:ラシーヌ『フェードル』の « Le jour n'est pas plus pur que le fond de mon cœur. »(陽の光も、私の心の底ほどには清らかではない)
  • 📘 ギユメ:フランス語の引用符 « » のこと。内側に半角の空きを入れるのが正式な組み方にあたる。

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注をどう付けるか

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

  • 📘 脚注(きゃくちゅう):そのページの下に置く注のこと。読者がすぐ見られる利点がある。
  • 📘 後注(こうちゅう):章末または論文末にまとめて置く注のこと。本文が読みやすくなる。

どちらでもよいが、論文の中で統一する。学部のレポートでは脚注が扱いやすい。

注に書くもの
出典 引用の根拠となる書誌とページ
補足 本文に入れると流れが切れる説明
他の説の紹介 「なお、◯◯はこれと異なる見方を示している」

⚠️ 注に書いてはいけないもの

  • 主張の核心。大事なことは本文に書く。注に隠すと、読まれない。
  • 感想。「私はこの場面が好きである」は注にも書かない。
  • 本文と無関係な知識。知っていることを見せるための注は、かえって印象を悪くする。

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2回目以降の出典の書き方

⊳ この節の問題を解く(1問)

同じ文献を何度も引くとき、毎回全部を書かなくてよい。

状況 日本語での書き方 ラテン語の慣用
すぐ前と同じ文献 同書、◯頁 ibid., p. ◯
前に出た文献(間に別の文献あり) 前掲書、◯頁(著者名を添える) op. cit., p. ◯
参照せよ 参照 cf.

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最も簡単な方法

  • 最初の注で「以下、本文中に括弧でページ数のみ記す」と宣言する。
  • 以降は本文中に(123)と書くだけでよい。注の数が激減する。
  • 複数の作品を扱うなら、(『ボヴァリー夫人』123)のように略称を添える。

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孫引きの禁止

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

  • 📘 孫引き(まごびき):他人の論文に引用されている文章を、元の文献に当たらずにそのまま引くこと。原則として禁じられている。

⚠️ なぜ禁じられるのか

  • 元の文献に誤りがあっても気づけない。引用のミスはそのまま受け継がれる。
  • 前後の文脈が分からない。引用者が都合よく切った箇所を、さらに切ることになる。
  • 確かめていないものを、確かめたように書くことになる。これが問題の本質にあたる。

どうしても元の文献が手に入らない場合は、次のように書く。

やむを得ない場合の書き方

  • 「◯◯(原典の書誌)。ただし△△(引用元の書誌)、◯頁より引用。」
  • 正直に書けば、誤りではなくなる。隠すことが問題になる。
  • ただし、まず相互利用で取り寄せることを試す。数百円と1週間で解決することが多い。

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どこまで出典を示すか

⊳ この節の問題を解く(1問)

「自分で考えたこと以外は全部」が原則になる。

内容 出典が要るか
引用した文 要る
他人の説を自分の言葉で要約した 要る(引用符は不要だが出典は必要)
作品の刊行年・作家の生没年 一般的な事実なので不要(ただし説が割れるなら要る)
本文から自分で数えた結果 不要。ただし数え方を書く
授業で教員が話した内容 要る。「◯◯先生の授業(20XX年)による」

迷ったら付ける

  • 付けすぎて減点されることはない。付け足りないと盗用を疑われる。
  • 書きながら付ける。あとから「これはどこで読んだのだったか」を探すのは、書くより時間がかかる。

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引用を論に組み込む

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

引用を貼っただけでは論にならない。前後に必ず自分の文を置く。

引用の前後に置く3つ

  • :なぜここを引くのか。「エマの心理が地の文に溶ける箇所を見る。」
  • 引用:必要な長さだけ。
  • :何が起きているか。「ここで『〜と彼女は思った』が省かれている。」
  • さらに後:だから何が言えるか。「したがって、この文は誰の判断とも決められない。」
悪い形 よい形
引用が段落の最後にある 引用のあとに、必ず2文以上の分析を置く
引用が連続して3つ並ぶ 1つずつ、あいだに分析を挟む
引用が5行以上ある 必要な1〜2行に絞る。残りは要約で足りる
引用の直前に「以下に引用する」とだけある なぜ引くのかを書く

⚠️ 引用の量の目安

  • 本文全体の1割を超えたら多すぎる。4,000字なら400字まで。
  • 引用が多いレポートは、分析が少ないレポートにあたる。
  • 削るときは、引用を短くする。自分の分析を削らない。

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詩を引用するとき

⊳ この節の問題を解く(1問)

行の切れ目が意味を持つので、散文とは扱いが違う。

詩の引用の作法

  • 3行以内なら、本文中に入れてよい。行の区切りを / で示す。「Les sanglots longs / Des violons」。
  • 4行以上なら、改行して原文の行のとおりに組む。
  • 行番号を付ける。分析で「3行目の」と指せるようにする。
  • 原文で引く。訳では音節も韻も消える(第14〜16章)。

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出典表記を軽くする工夫

注が多すぎると読みにくい。次の3つで減らせる。

工夫 書き方
本文中の括弧に統一 最初の注で宣言し、以降は(123)だけ
略号を決める 複数作品を扱うとき、最初に「以下、『ボヴァリー夫人』を『B』と略す」
同じ段落で連続する引用 段落末にまとめて1つの注を置く

どの方法でも共通すること

  • 最初に一度、規則を宣言する。読者が迷わない。
  • 最後まで同じ規則で通す。途中で変えない。
  • 迷ったら、指導教員や授業の指示に従う。分野ごとに慣習が違う。

第6章の通過チェック

  • 短い引用と長い引用の書き分けを言える
  • 引用の3原則を言える
  • 引用に手を加えてよい3つと、その印を言える
  • 原文を引くべき場面と、訳でよい場面を分けられる
  • 脚注と後注の違いを言え、注に書いてはいけないものを言える
  • 孫引きが禁じられる理由を3つ言え、やむを得ない場合の書き方を言える
  • 出典が要るものと要らないものを分けられる

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次章へ

引用が本文の中の作法だとすれば、参考文献一覧は論文の末尾の作法である。

次章は参考文献一覧を扱う。とくにフランス語の文献の書き方には、日本語とも英語とも違う決まりがある。型を覚えれば、あとは埋めるだけになる。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

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