作法|第7章 参考文献一覧 — フランス語文献の書き方
この章の狙い
要点: 参考文献一覧は、読者が同じ文献に辿り着けるようにするためのものである。だから必要な情報が、決まった順序で並んでいればそれでよい。
書式は分野や雑誌によって少しずつ違う。大事なのは、一つの型を決めて最後まで守ることである。途中で型が変わっている一覧が、最も読みにくい。
何を書くか — 5つの必須項目
| 項目 | 補足 |
|---|---|
| 著者名 | 訳書なら訳者も |
| 題名 | 書名か論文名 |
| 収録先 | 論文なら雑誌名と巻号、章なら書名 |
| 出版社と刊行地(日本語文献では出版社のみでよい) | |
| 刊行年 | 版を重ねているなら、使った版の年 |
論文にはさらにページ範囲が要る。ウェブ資料にはURLと閲覧日が要る。
日本語文献の型
| 種類 | 型 |
|---|---|
| 単行本 | 著者名『書名』出版社、刊行年。 |
| 訳書 | 原著者名『書名』訳者名訳、出版社、刊行年。 |
| 論文 | 著者名「論文名」『掲載誌名』巻号、刊行年、開始頁–終了頁。 |
| 論文集の1章 | 著者名「論文名」編者名『書名』出版社、刊行年、開始頁–終了頁。 |
⚡ 日本語文献で迷いやすい3点
- 書名は『 』、論文名は「 」。これは全国どこでも共通の使い分けにあたる。
- 訳者は「◯◯訳」と書く。「訳者:◯◯」とは書かない。
- 文庫は、文庫としての刊行年を書く。原著の刊行年は必要なら括弧で添える。
フランス語文献の型
日本語とも英語とも違うので、型ごと覚えてしまうのが早い。
| 種類 | 型 |
|---|---|
| 単行本 | 姓(大文字), 名, 書名(斜体), 刊行地, 出版社, coll. « 叢書名 », 刊行年. |
| 論文 | 姓, 名, « 論文名 », 雑誌名, 巻号, 刊行年, p. 開始–終了. |
| 論文集の1章 | 姓, 名, « 論文名 », dans 編者名 (dir.), 書名, 刊行地, 出版社, 刊行年, p. 開始–終了. |
| 校訂者つきの版 | 著者名, 書名, éd. 校訂者名, 刊行地, 出版社, 刊行年. |
⚡ フランス語の書誌で覚える7つの記号
- coll. — 叢書(そうしょ)の名。「コレクション」の略
- dir. — 編者。「その本をまとめた人」
- éd. — 校訂者、または「版」
- trad. — 訳者
- p. — 1ページ、pp. — 複数ページ(p. だけで済ませる書き方もある)
- t. — 巻。n° — 号
- s. l.(刊行地不明)、s. d.(刊行年不明)
⚠️ フランス語の書名で最も間違えやすいのが大文字
- フランス語の書名は、英語のように全単語を大文字にしない。
- 原則は最初の語だけ大文字。ただし最初が定冠詞のとき、次の名詞まで大文字にする慣習がある。
- 迷ったら、その本の扉(とびら)に印刷されているとおりに写す。それが最も安全な判断になる。
- 例:Les Fleurs du Mal、Madame Bovary、À la recherche du temps perdu
- 📘 斜体(イタリック):書名・雑誌名を示すために傾けた書体のこと。手書きやプレーンな文字しか使えない場合は、下線で代用する。日本語文献では『 』が同じ役割を果たす。
ウェブ資料の型
| 種類 | 型 |
|---|---|
| ウェブ上の論文 | 著者名「論文名」『掲載誌名』巻号、刊行年、頁、URL(閲覧日:20XX年X月X日)。 |
| データベース上のテクスト | 著者名『作品名』(底本の情報)、サイト名、URL(閲覧日)。 |
⚠️ ウェブ資料で必ず書くもの
- 閲覧日。内容は書き換わる。いつ見たかを示さないと確かめられない。
- 底本(ていほん)の情報。電子テクストが「何を電子化したものか」。書かれていないものは、引用の根拠には使わない(第5章)。
- DOI があれば URL より DOI を書く。リンクが切れない。
- 📘 底本:電子化や翻刻(ほんこく)のもとになった紙の版のこと。これが分からない電子テクストは、学術的には使えない。
並べ方
⚡ 一覧の組み立て
- 1. 一次資料(分析対象の作品)を最初に、別立てで。使った版を明記する。
- 2. 二次資料(研究文献)を、著者の姓の順に。
- 3. 日本語文献と欧文文献は分けてよい。分けるなら、見出しを付ける。
- 4. 同じ著者の文献が複数あるときは、刊行年の古い順に。
分け方も並べ方も、指導教員の指示があればそれに従う。指示がなければ上の形でよい。
よくある間違い
| 間違い | 直し方 |
|---|---|
| 本文で引用していない本を並べる | 引用したものだけを載せる。読んだ本の一覧ではない |
| ページ範囲が抜けている | 論文には必ず開始と終了を書く |
| 出版社と刊行地が混ざる | 日本語は出版社のみ、フランス語は刊行地→出版社の順 |
| 途中で型が変わる | 1つ決めて最後まで守る |
| 訳書なのに訳者が書かれていない | 訳者名は必須にあたる |
⚡ 一覧を楽に作る方法
- 文献カード(第4章)の書誌欄を、そのまま並べ替えるだけにしておく。
- 読んだ時点で完全な形にしておく。あとから足りない項目を調べ直すと、1本あたり数分かかる。20本なら1時間の差になる。
- 提出前に、本文の注と一覧を突き合わせる。注にあって一覧にない文献が、最も多い抜けにあたる。
一覧の実際の形
日本語と欧文を分けて、次のように並べる。(記号は自分が決めた型で統一する。)
⚡ 並べ方の例
- 一次資料
- (分析対象の作品。使った版を明記する)
- 二次資料(日本語)
- 著者名『書名』出版社、刊行年。
- 著者名「論文名」『掲載誌名』巻号、刊行年、頁。
- 二次資料(欧文)
- 姓, 名, 書名, 刊行地, 出版社, 刊行年.
- 姓, 名, « 論文名 », 雑誌名, 巻号, 刊行年, p. 開始–終了.
- ウェブ資料
- 著者名「題名」サイト名、URL(閲覧日)。
句読点の使い分け
フランス語と日本語で、区切りに使う記号が違う。
| 日本語 | フランス語 | |
|---|---|---|
| 項目の区切り | 読点(、) | コンマ(,) |
| 書名 | 『 』 | 斜体(または下線) |
| 論文名 | 「 」 | « » |
| 末尾 | 句点(。) | ピリオド(.) |
← 横に動かして読めます →
⚠️ 混ぜない
- フランス語文献の書名を『 』で囲まない。斜体か下線を使う。
- 日本語文献の書名を斜体にしない。『 』を使う。
- 1つの一覧の中で、日本語文献は日本語の作法、欧文は欧文の作法で書く。混在してよい。
提出前の突き合わせ
⚡ 3つを順に確かめる
- 1. 注に出た文献が、全部一覧にあるか。注を頭から追い、一覧に印を付けていく。
- 2. 一覧にあって、本文で使っていない文献はないか。読んだが引用しなかったものは載せない。
- 3. 同じ文献の書誌が、注と一覧で食い違っていないか。刊行年とページが最も食い違いやすい。
この作業に30分から1時間かかる。日程に組み込んでおく(第9章)。
⚡ 第7章の通過チェック
- 参考文献一覧の目的を一文で言える
- 必須の5項目を言える
- 日本語文献の単行本・訳書・論文の型を書ける
- フランス語文献の単行本と論文の型を書ける
- coll. / dir. / éd. / trad. の意味を言える
- フランス語の書名の大文字の原則と、迷ったときの判断を言える
- ウェブ資料で必ず書く3つを言える
- 一覧の並べ方の4段階を言える
次章へ
材料と作法が揃った。次は組み立てである。
次章はレポートを組み立てる。序論に何を書くか、段落をどう作るか、結論に何を書いてはいけないか。構成が決まっていれば、書くこと自体は難しくない。