🧭全体地図📘研究法
16 / 20
CHAPTER 16 詩法 読む目安 約5分 / ⚡暗記ボックス 8

詩法|第16章 押韻 — 韻の質・性・配列

この章の狙い

要点: 押韻を分析するとき、見るのは3つだけである。どれくらい濃いか(質)、e で終わるか(性)、どの順に並ぶか(配列)。

とくには、日本語の詩にも英語の詩にもない、フランス詩に固有の規則にあたる。ここを知っていると、詩の組み立てが一段はっきり見えるようになる。

▲ この章の内容へ

韻とは何か

⊳ この節の問題を解く(1問)

  • 📘 韻(rime):2つ以上の詩句の末尾の音が一致すること。フランス詩では、行末に置かれるのが原則にあたる。
  • 📘 押韻:韻を踏むこと。フランス詩は、中世から19世紀まで、押韻をほぼ義務としてきた。

⚠️ 綴りではなく音で判定する

  • 韻は音の一致である。綴りが違っても、音が同じなら韻になる。
  • ただし伝統的な規則では、行末の子音字(-s、-x、-nt など)まで一致していることが求められた。単数形と複数形は韻を踏めない、という決まりがこれにあたる。
  • 音は同じだが綴りが違う組み合わせを、目のための韻という。古典期には認められないことが多かった。

▲ この章の内容へ

質 — 韻の濃さ

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

一致している音がいくつあるかで3段階に分ける。

名前 一致する音の数
貧しい韻 1つ vu / connu(ü の音だけ)
十分な韻 2つ voyage / équipage(a と j の音)
豊かな韻 3つ以上 mers / amers(m と e と r の音)

← 横に動かして読めます →

質から何が言えるか

  • 豊かな韻が続く詩は、音の密度が高い。ボードレール以降の詩人は、豊かな韻を好んだ。
  • 貧しい韻が混ざる箇所には、理由があることがある。そこだけ音の締まりが緩む。
  • 全部を数えて分布を見る。「14行中、豊かな韻が◯組」は、そのまま論の根拠になる。

▲ この章の内容へ

性 — e で終わるかどうか

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

これがフランス詩に固有の規則にあたる。

名前 条件
女性韻 行末が無音の e で終わる voyage / équipage
男性韻 それ以外 mers / amers

← 横に動かして読めます →

  • 📘 女性韻:行末が無音の e(-e、-es、-ent)で終わる韻のこと。行末なので e は音節に数えないが、韻の性は決まる(第15章の規則③)。

交替の規則

  • 男性韻と女性韻は、交互に現れなければならない。同じ性の韻が連続してはいけない、という規則が古典期に確立した。
  • これを交替の規則という。16世紀に定まり、19世紀まで守られた。
  • 守られていない箇所を見つけたら、時代を確認する。20世紀の詩では守られないことが多い。
  • 判定は簡単である。行末を見て、無音の e があるかないかを見るだけでよい。

▲ この章の内容へ

配列 — どの順に並ぶか

⊳ この節の問題を解く(2問・1枚)

アルファベットで表す。同じ文字が同じ韻を意味する。

名前 記号
平韻(へいいん) AABB 隣り合う2行ずつが韻を踏む
交差韻 ABAB 1行おきに韻を踏む
抱擁韻(ほうよういん) ABBA 外側の2行と、内側の2行がそれぞれ韻を踏む

← 横に動かして読めます →

行末の語を書き出して、同じ音に同じ記号をつける 平韻 AABB ―――――――― A ―――――――― A ―――――――― B ―――――――― B 交差韻 ABAB ―――――――― A ―――――――― B ―――――――― A ―――――――― B 抱擁韻 ABBA ―――――――― A ―――――――― B ―――――――― B ―――――――― A 平韻は悲劇と叙事詩の標準。交差韻は抒情詩。抱擁韻は閉じた感じを作る。 性の交替 行末が無音の e なら女性韻、それ以外は男性韻。両者は交互に現れる。
韻の三つの配列

配列から分かること

  • 平韻は、悲劇と叙事詩の標準にあたる。ラシーヌやコルネイユの台詞は、ほぼこの形で書かれている。二行ずつ意味が完結しやすい。
  • 交差韻は、抒情詩でよく使われる。軽く、流れる感じになる。
  • 抱擁韻は、閉じた感じを作る。ソネットの4行連はこの形が多い(第18章)。

▲ この章の内容へ

実際に見る — ボードレール「アホウドリ」

⊳ この節の問題を解く(1問)

『悪の華』の1篇の冒頭4行を材料にする。

行末の語だけを見る

  • 1行目:équipage
  • 2行目:mers
  • 3行目:voyage
  • 4行目:amers
  • 配列:équipage と voyage、mers と amers が韻を踏む。1・3行目と2・4行目なので、交差韻(ABAB)にあたる。
  • :équipage / voyage は無音の e で終わるので女性韻。mers / amers は男性韻交互に現れているので、交替の規則が守られている。
  • :mers / amers は m・e・r の3音が一致するので豊かな韻。équipage / voyage は a・j の2音なので十分な韻

行末の4語を書き出すだけで、質・性・配列の3つが判定できる。これが押韻分析の基本の作業にあたる。

▲ この章の内容へ

韻以外の音の反復

⊳ この節の問題を解く(1問・1枚)

行末以外にも音の反復はある。押韻とは区別する。

名前 何の反復か
頭韻(とういん) 子音の反復 ラシーヌ『アンドロマック』の « Pour qui sont ces serpents qui sifflent sur vos têtes ? »(誰のために、この蛇どもは頭上で音を立てているのか)。s の音が繰り返される
母音反復 母音の反復 「秋の歌」の o と鼻母音の連なり
内部韻 行の途中と行末が韻を踏む 行の内側で音が呼び合う

← 横に動かして読めます →

⚠️ 音の反復を見つけたあと

  • 「s の音が多い」で止めない。その音が何を模しているか、何と結びついているかを述べる。
  • ただし音象徴(おんしょうちょう)の読み込みには慎重になる。「u の音は暗さを表す」といった主張は、根拠を示すのが難しい。
  • 確実に言えるのは、反復があるという事実と、その分布である。そこから先は慎重に進める。

▲ この章の内容へ

分析の手順

⊳ この節の問題を解く(1枚)

押韻を分析する5段階

  • 1. 行末の語をすべて書き出す。
  • 2. 同じ音のものに同じ記号を付ける。A、B、C……
  • 3. 配列の型を判定する。AABB か ABAB か ABBA か。
  • 4. 各行末に無音の e があるかを見て、性を記入する。交替が守られているか。
  • 5. 一致する音の数を数え、質を記入する。

この5段階を紙に書くと、詩1篇の押韻表ができる。表を作った時点で、気づくことが必ず1つは出てくる。

▲ この章の内容へ

押韻表を作る — 実際の形

第15章の音節数と合わせて、1つの表にする。

音節 行末の語
1 12 équipage A 女性
2 12 mers B 男性
3 12 voyage A 女性
4 12 amers B 男性

← 横に動かして読めます →

この表から言えること

  • 音節数が全行同じ → アレクサンドラン。
  • A B A B → 交差韻。
  • 女男女男 → 交替の規則が守られている。
  • 表を作るのに5分もかからない。そしてこの4行の分析は、すでに1段落分になる。

▲ この章の内容へ

韻を意味と結ぶ

押韻は、音だけの問題ではない。韻を踏む2語が、意味の面でも関係を作る。

見るべき3つ

  • 韻を踏む2語が、意味の上で近いか、遠いか。遠い2語が音で結ばれると、思いがけない結びつきが生まれる。
  • 韻の位置に、その詩の重要語が置かれているか。行末は目立つ位置にあたる。
  • 同じ韻が、詩集の他の詩でも使われているか。繰り返される韻は、その詩人の語彙の特徴を示す。
関係 効果
意味の近い2語 結びつきが自然。流れる印象
意味の遠い2語 音が意味を作る。分析の対象になる
反対の意味の2語 対比が音の上で強調される

⚠️ 韻を踏む語の関係を読み込みすぎない

  • 韻を優先した結果、たまたまその語になった場合もある。
  • 同じ組み合わせが繰り返されるかを確かめる。1回だけなら偶然の可能性が残る。
  • その詩人の他の詩でも同じ韻が使われているかを見ると、判定しやすい。

▲ この章の内容へ

押韻がない詩

⊳ この節の問題を解く(1問)

押韻は義務ではなくなった。

時期 状況
中世〜19世紀 押韻はほぼ義務
19世紀後半 緩む。貧しい韻や、規則を外した配列が増える
20世紀 押韻しない詩が普通になる(第19章)

押韻のない詩をどう扱うか

  • 音の反復を探す。頭韻・母音反復は残っていることが多い。
  • 行末に置かれた語を並べる。韻を踏まなくても、行末という位置は目立つ。
  • 押韻がないこと自体を書く。「この詩では押韻が放棄されており、代わりに〜が結束を作っている」。

第16章の通過チェック

  • 韻を判定するのが綴りではなく音である理由と、その例外を言える
  • 韻の質の3段階と、その基準を言える
  • 女性韻と男性韻の区別を言える
  • 交替の規則とは何か、いつ確立していつ崩れたかを言える
  • 配列の3つの型を記号で言え、それぞれの使われ方を言える
  • 「アホウドリ」の冒頭4行の質・性・配列を説明できる
  • 頭韻と母音反復の違いを言える
  • 押韻を分析する5段階を言える

▲ この章の内容へ

次章へ

行の長さと行末が分かった。残るのは、行の内側と、行と行のあいだである。

次章はリズムと切れ目である。アレクサンドランは12音節をどこで区切るのか。区切りが破られるとどうなるか。そして、文が行をまたぐとき何が起きるか。

読了の記録はこの端末の中だけに残ります。

📗 読み終えたら、この章の問題で理解を確かめましょう。

この章の問題を解く ▶
🧭全体地図へ戻る