導入|第1章 9つの教材の地図 — 何をどこで扱うか
この章の狙い
要点: 9つの教材は、同じ対象を別の角度から扱っている。
作品を1つ読むとき、必要になる知識は1種類ではない。語学・文学史・作品そのもの・研究の作法・歴史・思想・芸術・理論——これらが同時に要る。9つに分けたのは、1つに詰め込むと引けなくなるからである。
このサイトは読む教材ではなく、引くための道具にあたる。どこを開けばよいかを決めたら、そのサイトへ移る。
9つの分担
| 番号 | 教材 | 何を扱うか | 何を扱わないか |
|---|---|---|---|
| 01 | フランス語 | 語の仕組みと語彙。発音・文法・単語帳 | 作品の内容 |
| 02 | フランス文学史 | 流れ。誰が誰の後に来て、何に反応したか | 個々の作品の中身 |
| 10 | 作品と作家 | 20作品の中身。あらすじ・人物・文体・論点 | 分析の方法 |
| 07 | 文学研究の方法 | 作法。引用・注・書誌・精読・詩法 | 理論の枠組み |
| 03 | フランス史 | 政治と社会の条件。政体・戦争・制度 | 考え方の中身 |
| 04 | 思想・哲学 | 考え方。主体・理性・言語をめぐる問い | 政治の経過 |
| 05 | 文化と芸術 | 同じ時代に作られた形。美術・建築・音楽・映画 | 専門的な様式論 |
| 08 | 文学理論・批評 | 枠組みの選択。どの道具で読むか | 主張の当否 |
| 09 | フランス語圏 | 本国の外のフランス語文学。地域ごとの入口 | 各地域の詳しい文学史 |
← 横に動かして読めます →
⚠️ 09だけは仮の版にあたる
- 12章で作ってある。ほかは16〜26章である。
- 卒業論文で扱う領域が決まったら、その地域の章を厚くする。
- 何を厚くするかが進路で変わるので、先に全部を書かない。
なぜこの分け方なのか
⚡ 分ける基準は「引く場面」にした
- 原文が読めない → 01。
- この作家はどの時代の人か → 02。
- この作品は何の話か → 10。
- 注をどう付けるか → 07。
- 当時何が起きていたか → 03。
- 当時どう考えられていたか → 04。
- 当時どんな絵が描かれていたか → 05。
- どの枠組みで読むか → 08。
- 本国の外の作家が出てきた → 09。
⚠️ 内容で分けていない
- 「19世紀」という教材は作っていない。19世紀は02にも03にも04にも05にも出てくる。
- 時代で切ると、引く場面と対応しない。
- したがって、同じ時代の記述が複数のサイトに分かれている。それを結ぶのが第4章の横断索引にあたる。
隣り合う教材の境目
混同しやすいのは、隣り合う4組である。
| 組 | どう分けているか |
|---|---|
| 02と10 | 02は流れ、10は中身。02は「誰の後に誰」、10は「その作品は何の話か」 |
| 03と04 | 03は起きたこと、04は考えられたこと。革命の経過は03、革命期の思想は04 |
| 04と08 | 04は主張の当否、08は枠組みの選択。「その主張は正しいか」が04、「その道具で何が見えるか」が08 |
| 07と08 | 07はどの立場でも必要な基礎、08は立場の選択。07が先、08は後 |
| 09と10 | 10は本国の20作品、09は本国の外。カミュは本国の側(09の1章) |
⚡ 迷ったときの決め方
- 「それは本当か」を問いたい → 04。
- 「それで何が見えるか」を問いたい → 08。
- 「どう書けばよいか」を知りたい → 07。
- 「いつ何があったか」を知りたい → 03。
1つの作品に、8つが関わる
『ボヴァリー夫人』(1857年)を例にする。
| 教材 | この作品について何が書いてあるか |
|---|---|
| 01 | 原文の難度と、読むのに必要な文法の範囲 |
| 02 | 写実主義の位置。前後に誰がいるか |
| 03 | 第二帝政。同年の裁判の制度的な背景 |
| 04 | 同時代の実証的な考え方 |
| 05 | 写実主義の絵画、歌劇場、写真の普及 |
| 07 | 引用のしかた。草稿を使った研究の入口 |
| 08 | 自由間接話法をどの枠組みで論じるか |
| 10 | あらすじ・人物・文体・解釈の分かれ目 |
| 09 | 本国の作家なので使わない。本国の外の作家のときに開く |
⚡ 読む順序
- 1. 10で中身を掴む。
- 2. 02で位置を確かめる。
- 3. レポートの主題が決まったら、03・04・05から必要なものだけ引く。
- 4. 書く直前に07、枠組みを選ぶときに08。
- 原文に入るときだけ01。
このサイトの使い方
⚡ 全8章の構成
- 第1章(この章)— 9つの分担。
- 第2章 — 学年ごとの進め方。いつ何を開くか。
- 第3章 — 場面から引く。授業・レポート・試験・卒論。
- 第4章 — 横断索引の使い方。同じ対象が複数のサイトに出るということ。
- 第5章・第6章 — 9サイトの中身。それぞれ何章あって、何が書いてあるか。
- 第7章 — つまずいたときの導線。症状から章へ。
- 第8章 — これからの足し方。
⚠️ この章で混同しやすい形
- 9つを順に通読しようとする。そういう作りにはなっていない。必要な章だけ開く。
- 時代で分かれていると考える。引く場面で分かれている。
- 02と10を同じものと考える。流れと中身は別にあたる。
- このサイトを先に読まないと使えないと考える。9つの教材は単独で完結して動く。
この教材群の前提
⚡ 誰のために作ってあるか
- 明治大学 文学部 文学科 フランス文学専攻の学生を想定している。
- フランス語は初級から。A0 から B2 までを01で扱う。
- 1日1〜2時間を前提にした分量にしてある。
- 卒業論文を書くところまでを射程に入れている。
⚠️ 前提にしていないこと
- 会話と作文の練習。読解に振ってある。
- 検定試験の対策。CEFR の水準は語彙の目安として使っているだけである。
- 文学以外のフランス語圏の学習。
⚡ 共通の書き方
- 専門用語は初出で📘を付けて一行で説明する。それが自動的に用語集になる。
- 難解な漢字には初出の1回だけ読み仮名を付ける。
- ⚡は覚える中身、⚠️は間違えやすい形。要点集にまとめて出る。
- 各章の末尾に通過チェックがある。そこが言えれば次へ進んでよい。
⚡ 第1章の通過チェック
- 9つの教材の分担を、番号と一言で言える
- 分ける基準が「引く場面」であることを説明できる
- 02と10、03と04、04と08、07と08、09と10の境目を言える
- 1つの作品に8つがどう関わるかを、順序つきで言える
- 09だけが仮の版である理由を言える
次章へ
次章は使う順序である。4年間のどこで何を開くか。
1年次から卒業論文まで、学年ごとに開くべき教材が変わる。そして開かなくてよい教材も、その時期ごとにある。全部を同時に進めないための章にあたる。